導入成功事例 〔株式会社JTB〕「社員を育てる」から「自ら育つ社員」へ。社員の行動変容を促す人財育成をLMSで実現する

〔株式会社JTB〕「社員を育てる」から「自ら育つ社員」へ。社員の行動変容を促す人財育成をLMSで実現する
課題
人財育成において「社員を育てる」という観点から、「社員が自ら育つ。それを会社が支援する」という方向性にシフト。人財育成のあり方を再構築する必要があった。
成果
・LMS導入により、人財育成の見える化・データ化が実現。
・いつでもどこでも好きなデバイスからアクセスできるので、いま必要な学びや指針を提供する環境を構築できた。

目指すべき社員像として「自律創造型人財」を掲げる企業が増えています。予測困難なビジネス環境のもと、今までにないような課題に取り組み、顧客に価値を提供できる、そんな社員が求められています。社員の育成を担当する人財教育部門の中には、どうすれば「自律創造型人財」が育つのか、その方法を模索して、頭を抱えている方もいるのではないでしょうか?

株式会社JTB(以降、JTB)では、経営資源の中で飛躍的に生産性を向上させられるのは人財資源であり、人事・人財育成は経営戦略の中核のひとつである、という信念のもと、成長の原動力となる「自律創造型人財」の育成に注力することを宣言しています。「自律創造型人財」育成のミッションを担うのが教育研修プラットフォーム「JTBユニバーシティ」です。JTBユニバーシティでは、これまでも、JTBグループ社員約27,000人を対象に年間約100種類、本数にして約1,000本もの研修を企画・実行し、積極的に人財育成を進めてきました。会社の更なる成長に向けて、2019年より、これまでの「社員を育てる」という観点から、「社員が自ら育つ。それを会社が支援する」という方向性にシフト。人財育成のあり方を再構築する「研修改革プロジェクト」を推進しています。また、そのための仕組みとして、ライトワークスのLMS「CAREERSHIP」を採用。JTBグループの人財教育・キャリア形成支援のためのハブ「J-Campus」として、利用を開始しています。

「社員が自ら育つ」を実現する「研修改革プロジェクト」の全容とLMS導入の狙い、またLMS導入によって可能となる、見える化・データ化への期待など、JTB グループコーポレート 人事部 人財開発チームの櫻井康一様[1]にお話を聞きました。

[1]2020年12月取材当時の情報です。

各業界における人材育成の課題と解決方法をまとめた事例集

各業界における人材育成の課題と解決方法をまとめた事例集

1. 研修改革プロジェクト:社員の行動変容を起こすために

―現在進めている「研修改革プロジェクト」について教えてください。

櫻井様:プロジェクトを1枚図で表現したものがこのシートです。

 


図:研修改革プロジェクトによって実現「する」姿

 

まずは、JTBユニバーシティが育成する理想の人財像を以下のように定義しました。

  1. 社の成長、グループの発展を支える自律創造型人財
  2. 自分らしさを発揮し、イキイキ輝く社員
  3. 世代を問わず社内外で活躍し続ける市場価値の高い社員

そして、そのための人財育成の基本方針と組織のあり方を明文化しました。JTBユニバーシティの基本方針としては、一人ひとりに「必要なときに必要な学びの機会を提供する」ということと、社員が自ら育つための「行動変容の機会を提供する」ということ。ただ、機会を提供するだけでは、おそらく動かないだろうという思いもあって、最終的にどういう組織を目指すのか、というのを右側に具体的に書いています。それが「学び続ける組織、お互いに教え合う組織」です。そのためには我々JTBユニバーシティも何かを提供するだけじゃなくて、自分たち自身も一緒になって成長するんですよ、と。これはJTBユニバーシティメンバーへのメッセージでもありますね。

 

―「気づき」や「刺激」とありますが、真ん中に置いてあるのにはどのような意味があるのでしょう?

櫻井様:学びというのは究極的には自分でやることです。学びから「行動変容」を起こすのも自分自身であり、社員一人ひとりの問題です。我々JTBユニバーシティがそれについて直接何かできるものではありません。我々ができるのは、質の高い教育コンテンツを揃え、いつでもどこでも必要な時に学べるようにする環境の整備や、学びの意味や成長につながる道程を解像度高く提示すること。あとは、行動変容につながるようなきっかけや機会、気づきや刺激の提供まででしかない。であれば、様々な仕組みや仕掛けの中で社員が何か「あっ」と思える瞬間をできるだけ作っていこう、と。そのためのさまざまな取り組みや施策や「場」づくりを、今回のプロジェクトに組み込んでいこうということで書いています。

2.学びを変える「レッスンルーブリック」

―今回の研修改革では、「必要な学び」や教育コンテンツそのものを再定義しているとのことですが、具体的にはどのように進めているのでしょうか?

櫻井様:常に念頭に置いているのは3つの人財像です。まずは人材像ごとに必要な力(例:「企画構築力」「実行力」「リーダーシップ」など)を明記したJTBオリジナルの判断軸を作成しました。その判断軸に対して、個々の「〇〇力」を身に付けるために、どのような学びのアイテム(研修)が必要かをプロットしています。また、研修一つひとつについても、改めて、その目的や意義、内容、最適な提供方法などを見直しています。そのための核となるのが「レッスンルーブリック」です。

 

―「レッスンルーブリック」とは、どのようなものでしょうか?

櫻井様:レッスンルーブリックは、もともと教育改革の文脈で使われる、パフォーマンス評価のための指標です。JTBユニバーシティにおいては、研修ごとに「この研修を受けるとどのような力が身に付くのか」を定義したものです。これまでも研修ごとの目的はあったのですが、それをさらに具体的にして、「社として求める人財像とどう繋がっているのか」を明確に定めています。「〇〇力」の習得度合いはレベル1からレベル4まであり、レベル2が研修を受ける前提として必要な到達レベル、レベル3が研修で身につく力、レベル4が研修後に目指すものを表すよう作成しています。

 

図:オリジナルレッスンルーブリックフォーマットイメージ

 

櫻井様:レッスンルーブリックは、研修改革の心臓部分で、講師はレッスンルーブリックに基づいてレッスンマニュアルを作り込みます。また、受講者である社員やその上長も、講師と同じレベル感で研修の意義を理解することが可能になります。

 

―研修ごとに受講者が入力する「アクションプランシート」も、今回の研修改革において、レッスンルーブリックとの関連付けを改善しているそうですね?

櫻井様:アクションプランシートは、研修を受けての行動変容を促すためのものです。受講者自らが研修前に目標設定を行い、研修終了直後に学んだ内容をどのように活用していくかを考え、研修受講の1週間後・1カ月後・3カ月後にその実践状況や成果、改善方法を具体的に記すものです。改善した新アクションプランシートは、レッスンルーブリックを見ながら、自分の業務と結びつけて記入できるようになっており、より実践的になっています。JTBの研修施設と最寄り駅との間にある橋を「忘却の橋」と呼ぶことがあるのですが、これは、研修を受けた瞬間は学んだという感覚があっても、その橋を渡りきる頃には忘れてしまう、日常の業務に戻ると結局研修前と何も変わっていなかったりすることを揶揄したものです。レッスンルーブリックや新アクションプランシートの運用で、「忘却の橋」が無くなると信じています。

関連記事:ルーブリック評価について詳しく解説!評価表の作成方法と企業で活用事例

3. LMS導入に踏み切る理由:見える化・データ化の意義

―「研修改革プロジェクト」では、LMS導入も大きなポイントかと思います。今回LMS導入に踏み切ったのはなぜなのでしょうか?

櫻井様:「必要な時に必要な学びを提供する」には、いつでもどこでも、好きなデバイスでアクセスすることができる、クラウドLMSが最適と考えました。さらに、レッスンルーブリックやアクションプランシート、研修アンケートなんかもLMSで運用できるようになれば、利便性が上がるのはもちろんのこと、見える化・データ化も進み、全体にとっての効果が大きいと考えています。見える化について具体例を出すと、社員や上司が記入するアクションプランシートがLMSに入っていれば、お互いにいつでも内容を確認して役立てることができます。レッスンルーブリックも同様に、いつでもLMSで見られるようにしておければ、たとえばある社員が「課長になりたい」と思っているとして、新任課長が受ける研修のレッスンルーブリックを見て、「課長になるために、自分には今この部分が足りてないんだな」というようなことを具体的に知ることができます。これが学びの指針になっていくことが狙いです。

 

―データ化については、いかがでしょうか?どんなとことを期待されていますか?

櫻井様:人財育成に関する様々なデータをLMSに蓄積し、それらのデータを活用することで、日々の改善や将来的な育成企画に役立てていくことを期待しています。日々の改善レベルでいうと、たとえば、ある研修の効果がうまく出ていないという時に、その原因が何であるのか、受講者の問題なのか研修自体に見直すべきところがあるのか、これまでは推測の域でしかないんです。LMSに蓄積される受講率、研修に紐づくテストでの獲得点数や設問毎の初回点数、アンケート結果などのデータを解析することで、そのあたりがより精度高く検証・改善できるようになると期待しています。

 

―冒頭で伺った「理想の人財像」育成の実現度や取り組み成果は、どのように測っていこうとお考えですか?

櫻井様:3つの人財像のうち、市場価値の高い社員というのは、いずれ数値化して測ることができると考えています。残りの2つ、「イキイキ働く」や「自律型」というのは、個々の社員の話でありつつ、会社のカルチャーの話でもありますよね。「自律創造スコア」のような形での単純な数値化はできませんが、年に1回実施している社員意識調査やマネジメント意識調査の結果とLMSに蓄積されるデータを照らし合わせてあぶり出せるのではないかと思います。

 

―LMSによる「スキルシェア」や「ナレッジシェア」にも重きを置かれているそうですね。

櫻井様:「ナレッジシェア」は、我々の旅行ビジネスにおいて非常に大きい価値を生み出すものです。たとえば法人営業の場面で、お客様から「ベトナムに視察旅行したいんだけど・・・」と相談を受けたとします。その相談を受けた社員は、ベトナムにそれほど詳しくなくて、「2月だったら気温はこれくらいですね」なんていうネットで調べられるようなことしか言えないかもしれない。けれど、グループ全社員20,000人以上の中にはベトナムにめちゃくちゃ詳しい人や現地とのつながりを持っている人が必ずいます。そういう、ある人にとっては当たり前のちょっとした知識が、ある場面ではものすごく価値のある情報だったりするんです。そういうことを考えると、20,000人以上のノウハウがそれぞれの脳みそに眠っているというのは、ものすごくもったいないことです。将来的にはLMSの機能を活用して、「J-Campus」がナレッジシェアの場になったり、社員同士で特定のスキルや資格を持つ人を検索できたりするように構築していきたいですね。[1]

[1]CAREERSHIP」には、社内SNS機能(「ルーム」)や各種履歴情報を記録・保管する機能(「キャリアカルテ」)があります。

4. 「CAREERSHIP」とライトワークスへの評価

―JTBの研修改革を実現するLMSとして「CAREERSHIP」を採用した理由を教えてください。

櫻井様:CAREERSHIP」採用の一番の理由は、機能が非常に充実していて、それぞれの機能が柔軟に設計・利用設定できるところです。例えば集合研修管理については、案内の配信や申込み受付・参加承認・成績登録・アンケート・レポートなど、集合研修に関わる様々な機能が予めパッケージ化されていて、これまで使っていたスクラッチ開発のシステムを上回る機能の豊富さでした。また、コース機能やコレクション機能を使えば、単発のeラーニングを配信するだけでなく、新入社員や新任役職者向けに必要な研修アイテムをまとめたプログラムを作成できたり、eラーニングと集合研修とを効果的に組み合わせたブレンディッド・ラーニングとして実行できたりするところも魅力でした。あとは、大企業での実績が多いところですね。全社はもちろん、事業部ごとでの利用を想定した権限設定機能、受講対象者を年次や階層別に抽出するといったグルーピングも簡単です。また、申請の承認フローも容易にカスタマイズでき、組織の実態に合わせやすいシステムだと思います。導入当初、まずは新入社員教育に活用しましたが、全社での利用や「研修改革プロジェクト」の構想を見据えて、「CAREERSHIP」であれば将来的にもやりたいことを実現できるかも、と感じることができました。

 


図:J-Campusの画面キャプチャ

 

―現在、研修改革プロジェクトの構想を「CAREERSHIP」で実現すべく、設計のプロセスにありますが、パートナーとしてのライトワークスをどう評価されていますか?

櫻井様:私自身、事業開発の部門にいたのが長かったこともあり、プロジェクトの推進、特に「改革」と名が付くようなものについては、「いかに共感してもらえるか」ということが本当に大事だと考えています。ですので、自分たちが思っていることや目指していること、JTBが本気で変わろうとしているんだという話を、できるだけオープンにライトワークスの担当者に伝えるよう心掛けていて、それがちゃんと刺さっているというか、受け止めた上で、併走してくれているんじゃないかなと感じています。ちょっと難しいかなと思うようなオーダーも、プロジェクトにとって必要なことであれば、ライトワークスとしての共感ポイントを捉えて、「社内で承認取ってきました」と、戻してくれる。そういうところは、間違いなく信頼していますね。お金の発生するビジネスの関係ではあるんですけど、それはいったん脇に置いて、「一緒にやりたいな」と思える相手だということの方が重要です。今回のような、長い期間併走するプロジェクトの場合、予定通りにいかないことなんてしょっちゅうあるじゃないですか。そういうのはやっぱり信頼関係と、仮にそこでこうなっちゃったら、次は挽回してくれるだろうというのはお互いさまだと思うんですよね。そういう繰り返しが結果的にはいい方向に進むと信じています。

 

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5.今後の展望

―「J-Campus」の今後の展望をお聞かせください。

櫻井様:「J-Campus」は、既に新入社員の教育に導入していますが、2021年度からは全社員向けに拡大します。現在進めているレッスンルーブリックやアクションプランシート等の実装とともに、その後はしっかりとモニタリングしながら、次のステップとしてリコメンドやロールモデルの設計を進めたいと考えています。リコメンド一つとっても、どういうリコメンドが良いのか、リコメンドする内容だったりタイミングだったりも含めて、データ検証もしながら進めていきたいです。データ化による構想はいろいろと膨らみますが、まずは「J-Campus」をハブとした学びのプラットフォームを作っていきたいと考えています。これまでは、研修の申込みやeラーニング動画の閲覧、推奨資格についての情報はそれぞれ別のところで、というようにバラバラでした。今後追加していく、さまざまなコンテンツや機能、仕掛けも含めて「J-Campus」に集約していき、社員が学びたい時、キャリアについて考えたい時や迷った時に、「J-Campus」にアクセスすれば、次の行動につながる何かが必ず見つかるようにしていきたいです。

 

まとめ

JTBユニバーシティが進める研修改革プロジェクトは、多くの企業の人事・教育担当者が頭を抱える「社員の行動変容をどのように起こすか」という悩みを解決するための、考え方・アプローチ方法・具体的な取り組みを示しています。そして、それらを徹底的に見える化・データ化することで、学び続ける・教えあう組織、改善し続ける組織を目指しています。理想の人財像を実現するために引かれた一本の道の上に、徹底的に練られた施策を投じていく過程は、まさに戦略的と言えるでしょう。データ・ドリブンな人財開発を実現し、戦略人事に役立てたいという思いはあっても、実際にはまだまだ手探り状態という企業がほとんどなのではないでしょうか?JTBユニバーシティの進めるプロジェクトが実現すれば、それは初めての成功例になるかもしれません。このプロジェクトが目指すLMSのあり方やデータ活用が、多くの企業にとっても価値のあるものであるとの想いから、ライトワークスはこれからもJTBグループと共に、「企業にとってあるべき人財開発を追求するLMS」の開発を進めていきます。

 

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