導入成功事例 〔株式会社タカラトミー〕11カ国・8言語での配信をわずか3人で運用 LMSをコンプライアンスの“インフラ”に

〔株式会社タカラトミー〕11カ国・8言語での配信をわずか3人で運用 LMSをコンプライアンスの“インフラ”に
課題
コンプライアンス方針や行動規範を、国内だけでなく海外のグループ会社にも浸透させる必要があった。
成果
・11ヵ国・8言語での配信をわずか3人で運用。
・海外拠点も含め、効率良い学習の場の提供を少人数の運用で実現。

コンプライアンス(法令遵守)は今や、企業が健全な経営を続けるために欠かせない項目の一つと言えるでしょう。法令違反や不正が発生した際に企業が受けうるダメージは、金銭的な損失だけでなく、企業のブランド棄損や信頼の失墜にまで及ぶ場合すらあります。コンプライアンスは、日々のあらゆる業務に関わっているからこそ、経営陣はもちろん、社員一人ひとりが意識すべきものです。

一方で、コンプライアンス推進を担う部門の方は、コンプライアンスの意識を社内に根付かせることの難しさを感じているのではないでしょうか?

株式会社タカラトミーでは、2014年にグループ会社において外部取引に絡んだ不適切な会計処理が発生したことから、同じ過ちを二度と繰り返さないよう、内部統制・監査部が中心となって積極的なコンプライアンス活動を進めてきました。同社のグループ会社は、日本国内だけでなく、アジア地域や欧米諸国にも点在します。それゆえ、対象となる社員も多く、日本人には馴染みの薄い海外の法令や慣習にも対応しなければなりません。そのような状況下で、タカラトミーグループでは、LMS(学習管理システム)「CAREERSHIP」を活用してグループ全社員との繋がりを構築し、個々の社員がコンプライアンスを“自分事”化して考えられるような数々の取り組みを推進しています。

株式会社タカラトミー 内部統制・監査部 エキスパートの原田由美子様、千葉ゆう子様、係長の相川稔様に、タカラトミーグループにおけるコンプライアンス活動とLMS「CAREERSHIP」の活用法についてお話を伺いました。

 

各業界における人材育成の課題と解決方法をまとめた事例集

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1. コンプライアンスの様々な取り組み

―タカラトミーグループでは、積極的にコンプライアンス活動を進めていらっしゃるとお聞きしましたが、どのような想いで取り組まれているのでしょうか?

相川様 タカラトミーグループはおもちゃ会社ですから、一番大切なお客様である子どもたちの見本となるような存在であり続けたい。そのためには、不正や違反などの行動は絶対にしてはいけないと考えており、コンプライアンスを根付かせるためのさまざまな活動をスタートしました。

 

―具体的にはどのような活動をされていますか?

相川様 まず中軸にあるのが「タカラトミーグループビジネス行動指針(COBC:Code of Business Conduct)」です。これは当社グループが、誠実かつ公正な企業活動を通じて社会的な責任を果たしていくことを具体的な行動規範として明確にしたもので、法令の遵守、創業理念・企業理念・企業指針・行動基準といったタカラトミーグループ社員の基本を学び、コンプライアンスの重要性を周知徹底するための研修を実施しています。COBC研修は海外拠点も含む全社員が受講できるよう、多言語でのeラーニングや集合研修の形で提供しています。

原田様 年に一度、「コンプライアンスを考える日」というイベントも実施しています。国内グループ会社全ての社員が一堂に会し、文字通り、コンプライアンスについて考え、理解を深め、重要性を再認識する場です。どうしても会場に来ることができない社員や、海外の駐在員も、動画視聴という形で参加できるようにしています。「コンプライアンスを考える日」は今年で6回目の開催となりますが、過去のコンプライアンス事例をもとにした再現ビデオを上映し、何が問題だったのかを社員に説明したり、社会的に問題になっていることや社員の関心が高そうなことを題材として取り上げたりしています。たとえば長時間労働や過労死の問題などについて、専門家の先生からお話を伺いつつ、タカラトミーとしてはどう考えるかを説明する機会となっています。

原田様 そのほか、社員が業務で必要とする法令知識を効率よく学習する場を提供するために、LMS「CAREERSHIP」を使ってeラーニングも実施しています。COBC研修の他に、今年は、「漫画で学ぶSNS編」や「コンプライアンスのツボ(情報管理・セクハラ・個人情報保護編)」などの教材を用意し、年4回実施しました。社会情勢や経営状況を踏まえ、その時に合う内容を学べるようにしています。

 

―日々のコンプライアンス活動はどのようなものでしょうか?

千葉様 内部統制・監査部発信でメールマガジンの配信やポスターの掲示を実施しています。
メールマガジンは月に1回、また「コンプラ便り」というメルマガの簡易版のようなものも1回、あわせて月2回の配信を行っています。意識啓発を目的とした違反事例やケーススタディの紹介、クイズなどをテーマに設定し4コマ漫画を使ったりして、見やすくわかりやすいものになるよう心掛けています。ポスターは、2カ月に1回貼り替え、オフィスだけでなく、イントラネットにも掲示しています。今期はコンプライアンス全般をテーマにしており、コミュニケーション・内部通報・ハラスメント・労働問題など。また、年末年始の時期には飲酒の強要をしない、といった時節柄のトピックも扱いました。

 

―部門ごとに1年任期の「コンプライアンスリーダー」を任命されているそうですね。「コンプライアンスリーダー」はどんな役割を担っているのでしょうか。

千葉様
 コンプライアンスリーダーには自部門が取り組む課題を決めていただき、その改善に向けた活動を進めてもらいます。リーダー制度確立に先立って実施した社員の意識調査の結果を部門ごとに開示しているので、調査結果に基づいて、自部門で点数の低かったところを課題として改善活動をしている部門もあれば、通常業務の中で課題を見つけて活動している部門もあります。

 

―各部門での活動に対して、内部統制・監査部としてはどのように関わっているのでしょうか?

千葉様 内部統制・監査部としては各リーダーの自主性に任せて活動していただきたいので、リーダーに対してこれをやってくれ、これはやめてくれと言うことは基本的にありません。年に1回、活動の内容と結果を報告していただき、良い取り組みについては他の部門にも知っていただきたいので、情報共有したり発表の場を設けたりしています。その他、部門内でアンケートを実施したいというようなリクエストがあれば「CAREERSHIP」で作成して提供する、というような活動サポートをしています。

千葉様 また、コンプライアンスリーダーには四半期毎に一回、集合研修にも参加してもらいます。今年は、「コンプライアンスとは?」という基本の内容に加え、労働法令・ハラスメント・財務・リスクマネジメントについて、また、実務に近いところでは判子・契約書の基礎知識といった内容で実施しました。これらの研修に関する自部門へのフィードバックの仕方もそれぞれのリーダーに任せています。

 

―内部統制・監査部としては、必要な情報発信や仕組みづくり、「CAREERSHIP」を活用した活動支援などが主だった役目ということでしょうか?

原田様 コンプライアンスリーダーに対してはそうですね。

2. コンプライアンスを難しくする3つの課題

―コンプライアンス活動を進めていく上で、難しいと感じているのはどんな部分でしょうか?

相川様 コンプライアンスは徹底する必要があるのですが、たとえば私たちが商品を作る上で守るべきST(玩具安全基準)やグループとして求める品質基準など、明確に設定されている基準とは異なり、コンプライアンスの場合、決まった法律やはっきりとした基準・規定がない、“グレーゾーンなもの”もたくさんあります。そのような基準がないものについては、タカラトミーグループとしてどのようにラインを引くべきか、というのが大きな課題の一つですね。

千葉様 グレーゾーンなものについては、個々人で捉え方・考え方もさまざまで、十人十色です。同じ事象でもブラックという人もホワイトという人もいますからね。

相川様 そういったことに対して、どのようにラインを引くべきかと迷うこともあります。そんな時にはやはり当社の創業理念や行動基準に立ち返って考えるようにしています。

 

―多くの会社で担当者が苦労している「コンプライアンスを根付かせる」という部分についてはいかがですか?

千葉様 コンプライアンスというと、どうしても固くて難しい話というイメージが先行しがちですが、堅苦しいものではなく「身近なものである」と感じさせ、興味をもってもらう必要がありますね。

相川様 先ほどの“グレーゾーンなもの”の話にも通じますが、労働問題やハラスメントなどは説明も理解も比較的しやすいのですが、明確な基準の無い“モラル”のようなものや海外の慣習といったものを理解し、業務に取り込んでもらうのは難しいです。

原田様 部門ごとに携わる業務や環境もさまざまなので、どこか特定の部門が中心的にコンプライアンス活動を行っても効果には限界があると思っています。やらされるのではなく、率先してやってほしいですし、職場の状況に応じた取り組みを推進するためにも、コンプライアンスリーダー制度のように、私たち内部統制・監査部は環境を整えたり社員の声を集めたりといった活動支援に徹して、あとは部門や個々の社員の自主性に任せることが重要だと考えています。

原田様 その他の課題としては、コンプライアンス活動も業務の時間内に実施するわけなので、いかに通常業務への支障を出さずに社員に取り組んでもらえるか、という実務的な課題です。100人いれば100通りの考え方があるので、全員が満足のいくコンプライアンス活動というのはなかなか難しいですが、アンケートで社員の声を聴きながら、極力参考にして活動に反映させています。たとえばeラーニングでは、一昨年、昨年と、受講時間が長めのコンテンツを提供していましたが、アンケートの反応を受けて、コンテンツ自体を10~15分の短いものにしたり、実施の回数も絞って繁忙期を避けたりと、社員が取り組みやすい方向に改善しています。

3. タカラトミーらしいコンプライアンスを求めて

―今年の「コンプライアンスを考える日」では、落語家・春雨や風子(はるさめやふうこ)さんによるコンプライアンス落語『権力者』が披露されましたね。

原田様 はい。「コンプライアンスを考える日」でこのような企画を実施するのは初めてで、社員にも事前には伝えずサプライズでした。ホールに集まって専門家のお話を聞くと思っていた社員が多かったと思うので、驚いたと思いますが、事後のアンケートでは概ね好評でした。この結果を踏まえ、来年はどのような「コンプライアンスを考える日」にするか、早速検討をスタートさせています。

 

―富山会長からは「タカラトミーらしいコンプライアンス活動を進めていってほしい」というお話もありましたが、“タカラトミーらしいコンプライアンス活動”とはどのようなものでしょうか?

相川様
 コンプライアンスに関わる“見えない基準”に委縮するのではなく、大人として堂々と、子どもたちに胸を張っていられること。それを基準として守るべきラインを作ることができれば、タカラトミーらしいコンプライアンス活動も進めやすくなると思います。

千葉様 トップダウンでコンプライアンスを進めなさい、ということだけでなく、社員みんなで考えてコンプライアンスを実行していくことが、“タカラトミーらしい”コンプライアンス活動のあり方かなと思います。活動内容についても、社員から提案してほしいと思っています。実際にメルマガや啓発ポスターに対して感想を寄せてくださる方や、「こんなことやってみたら?」と意見を寄せてくださる方もいます。今期は、新たな取り組みとして、社員から「コンプライアンス標語(川柳)」を募るということを実施しています。

原田様 提供されるものを学ぶだけでなくて、社員誰もがコンプライアンスについて提案する場が設けられていて、チーム一丸となって楽しみながら学んでいくものになってほしいと思います。子どもたちのためのおもちゃを作る会社なので、堅苦しくがんじがらめになってしまうと、自由な発想でおもちゃを作り出すことができなくなってしまうのではないでしょうか。社員それぞれの解釈や考えを尊重することを意識してコンプライアンス活動を進めています。

 

―同じ内部統制・監査部の御三方でも、それぞれの考え方があり、それが許容されているのですね。

原田様
 そうですね。それぞれの解釈、それぞれの考えを尊重して、みんなの意見を取り入れながらコンプライアンス活動を進めていくのも、“タカラトミーグループらしいコンプライアンス”のあり方だと思います。

4. グループ全社員をつなぐLMS「CAREERSHIP」の活用法と効果

―LMS導入の経緯を教えていただけますか?

相川様
 全グループにタカラトミーとしての方針をきちんと伝えようという目的で、「CAREERSHIP」を導入しました。

 

―具体的にはどのように活用されているのでしょうか?

原田様
 タカラトミーグループの中で全社員とつながっているシステムは「CAREERSHIP」だけです。ですので、情報共有するときには必ず「CAREERSHIP」を使います。COBC研修、eラーニング、メルマガ/コンプライアンス通信の配信、研修欠席者へ動画配信、アンケート調査など、ポスター以外はすべて「CAREERSHIP」の機能を活用していますね。動画配信の機能を活用して、新年式や全社方針発表などの動画も共有していますし、アンケートはかなり頻繁に使っています。

相川様 タカラトミーでは、国内外にグループ会社がありますので、11カ国・8言語での配信を実施しています。LMSの管理についてはグループ会社に1名ずつ担当がおりますが、運用については私たち内部統制・監査部の3名のみで多地域・多言語配信を実現できています。問い合わせ対応やトラブルシューティングも、アジア圏の香港・深圳・上海・シンガポール・タイでは各社の日本人現地スタッフに窓口になってもらっていますが、韓国とアメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアに関しては、私たちが直接個々のユーザーとやりとりし、対応しています。

 

―LMSが海外も含めたタカラトミーグループのコンプライアンス活動の“インフラ”のように機能しているのですね。では、その効果をどのように感じていますか?

原田様 eラーニングの部分では、社員の方に気軽に手軽に効率よく学習を提供する場になっていると思います。LMSとしては、機能をうまく活用して業務の整理ができたり、業務効率が向上できたりすると感じています。また、アンケートなどを使ってユーザー(社員)の声を直に見られる効果も大きいです。

5. 今後の取り組み

―今後、取り組んで行きたい課題はありますか?

原田様
 グループ全体としては、業務時間の問題が出てきています。4月には改正労働基準法の施行も控えていますし、改めて本格的に取り組む必要性を感じます。改正法に対応した知識の啓蒙という部分もありますが、「CAREERSHIP」を活用して業務時間の実質的な短縮にも貢献できたらと思っています。現在、一部例外を除いて、私たち内部統制・監査部しか「CAREERSHIP」の機能を知らない状態です。これをグループ各社にも周知して、活動に生かしてほしいと考えています。実際に、社員の健康診断やインフルエンザの予防接種の申し込みを、メールでのやりとりから「CAREERSHIP」に切り替えたところ、それまでグループ7社で7名がその業務に携わっていたのが、7社分を1名で対応できるようになりました。動画やマニュアルの配信など、「CAREERSHIP」の得意とするところをうまく活用して、業務時間を短縮できる部門は少なくないのではと思っています。

原田様 もう一つ、今後新たにというよりは、継続していきたいと考えているのは社員の意識調査です。コンプライアンス推進活動もPDCAが重要で、その「P」や「C」のためには社員の声をしっかりと聴く必要があると思います。どこに不平不満があるかを知り、どのようにそれを解決していけばいいのか考え、今後の活動に活かすことで、コンプライアンス活動をより“タカラトミーらしく”進化させていきたいと考えています。

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6. まとめ

コンプライアンスが必要なのはわかるけど、なんだか難しいし、目の前の業務の方が重要。
多くの方がそんな風に感じているのではないでしょうか。そんな中、コンプライアンス推進担当になったとしたら、どのように活動を進めていけば良いのでしょうか?

タカラトミーグループのコンプライアンス活動には、たくさんのヒントが含まれていました。社会情勢や経営状態、社員の関心に合わせてテーマ選びをすること。コンプライアンスを堅苦しいものではなく、身近なもの親しみやすいものとして、さまざまな施策を通して発信すること。社員の声を聴き、社員が主体になれるような仕組みを作り、活動をサポートしていくこと…。そしてそのベースにはグループとしての明確な行動基準があり、国内外問わず、全グループ社員をつなぐLMSを通じて、“タカラトミーらしい”コンプライアンスを発信し続けています。

会社の風土や組織文化によっても、効果的なコンプライアンス活動は異なると思いますが、タカラトミーの事例を参考にしながら、自社に合うコンプライアンスのあり方を探してみてください。

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