人材育成の新たな手法として、企業内大学への注目が集まっています。理由は大きく二つ。就職先に「成長できる環境」や「人材育成・研修の充実」を求める優秀な若手人材に向けた採用戦略の一環として。もう一つはVUCA(Volatility:変動性・Uncertainty:不確実性・Complexity:複雑性・Ambiguity曖昧性)と表現される世界において、ビジネスを切り拓き収益を生み出す人材を育てる経営戦略として。
企業内大学は、単発の研修の積み重ねとは一線を画し、大学のように年次ごとに必要なスキルや知識の会得を目指す仕組みです。近年ではウェビナーやeラーニングを活用し、オンラインで教育と履修管理を行えるプラットフォームを構築する動きがみられます。システムを活用すると、教材の配信や成績の管理を自動化できるため、より柔軟な大学の運営が可能になります。これを背景として、「自律学習」や「主体的な成長」といったワードが注目されており、従業員が自身の目標やキャリアプランに合わせて必要な能力を身に付けられるよう、様々なベンダーのプログラムを組み合わせ、必修コースを受けるだけでなく選択コースから任意のプログラムを選べるようにしている企業も多いようです。
兼松株式会社は電子・デバイス、食料、鉄鋼・素材・プラント、車両・航空などを中心とした幅広い分野で事業を展開する総合商社です。商社にとっては、人こそが企業成長の原動力。人材育成=最重要経営課題と捉えている企業も多いです。成長をもたらす経営人材育成を目指し、同社は2019年7月に企業内大学「兼松ユニバーシティ」を開校しました。さらに、「兼松ユニバーシティ」が掲げる教育の在り方を実現するシステムとして、2021年2月にライトワークスの「CAREERSHIP」を導入、運用を開始しています。
企業内大学の核となるカリキュラムの体系化やコース設計を進め、「兼松ユニバーシティ」の草創期を支えた兼松株式会社 人事部 人材開発課 課長 森俊成様、そして「兼松ユニバーシティ」のインフラとなるLMSの選定や導入を担った同課長補佐 松尾智子様、IT企画部の北村祥之様[1]にお話を聞きました。
[1] 部署名・肩書は取材当時のものです。
各業界における人材育成の課題と解決方法をまとめた事例集
目次
企業内大学設立の背景:経営人材を育てるために
―まず、「兼松ユニバーシティ」とはどんなものか教えてください。
松尾様:「兼松ユニバーシティ」は兼松における企業内大学で、兼松の成長を担う経営人材を育成することを目的に2019年に設立されました。現時点では、入社1年~10年目を対象とした「Under Graduate(学士課程)」と、11年~15年目の社員に向けた「Graduate School(修士課程)」があります。さらに「Under Graduate(学士課程)」は、ベーシック・アドバンス・プロフェッショナルの3つのコースに分かれております。各コースおよび「Graduate School(修士課程)」では、それぞれの年次に必要な知識やスキルに応じた学習プログラムをeラーニングと集合研修、もしくはその組み合わせであるブレンディッド・ラーニングの形式で提供しています。カリキュラムは必修科目と選択科目で構成されており、例えば、ベーシックコース1年目の社員は、年間20程度の必修科目の単位取得が求められます。2~3年目は、9つの必修科目+選択科目のうち3科目の単位取得でベーシックコースを修了し、次のアドバンスコースに進級します。というような仕組みで、年次に応じて必要な学びを得られるようにカリキュラムを体系化しております。
―どのような経緯で企業内大学を創ろうということになったのでしょうか?
森様:私が人事部に着任した2018年の末に、当時社長だった谷川(現・会長)から「研修体系を統一して、企業内大学にせよ」という指示がありました。2018年という年は、兼松グループが2024年までの中期経営計画「future135」を発表した年でもあり、その「future135」では、M&Aも含めた事業投資を通じて事業規模の拡大と付加価値の獲得を追求し、会社を成長させていくという経営目標が示されました。これを推進していくには、事業投資した会社や買収した会社を経営する人がいないといけないということになります。当社はそれまで、トレーディングを主体としたビジネスを中心に展開してきたため、新規事業の創造や経営に必要なノウハウを持った人材が限られていました。そこで、その面を強化できるような研修体系を作るというのが、私たちに与えられたミッションでした。
―もともと人材を重んじ、育成に積極的な社風だったのでしょうか?
森様:商社という業界の特性上、収益を生み出すのは人しかないんです。モノを製造している訳でもなければ、技術力で勝負ということでもない。この業界の仕事は人がすべて。「人材」ではなく「人財」と書いても良いくらいです。会社を成長させるには、時流を見る目であったり、どんな商品を扱うかという選択であったり、いろいろな要素が必要ですが、結局それらすべては、人間がやることなんですよね。そういった、収益を生み出す原動力として人材を重んじるというところはありつつ、育成にすごく力を入れていたかというと、そうではなくて。むしろ、もともと研修はものすごく少なかったですね。
―そうなのですね。現状からはあまり想像できませんが…。
森様:兼松グループでは1999年に大きな事業の再編成がありまして、研修の費用などが真っ先に削減されたわけです。「コストの高い研修は不要。仕事は現場で覚えるものだ」という時代が、そこから20年近く続いていました。そのような風潮が強い中、研修の必要性自体を社内で理解してもらうことが最初の課題でした。「兼松ユニバーシティ」構想が動き出す少し前、まずは上の人から学ばせないといけない、ということで、年齢層の一番高い部長たちに研修を受けてもらうというところから始まりました。実際に研修を受けてもらうと、「新しいことを習って覚えるというのは、なかなか良いことだ」という反応が意外にも多かったんです。これはおそらく、研修を受け入れる素地が整ってきたのだろうと。それも見計らって、谷川がそろそろ企業内大学を創ろうと声を上げたのだと思います。
―育成や研修を強化させようというトップの強い思いがあったのですね。
森様:もう一つ、事業の再編成以降の「お金が使えない」という流れの中で、兼松自体が事業投資を伴う新規分野での事業開拓に消極的な会社になってしまっていたんですね。もともと得意としているトレーディングの領域で稼ぎましょう、なるべく知見のないことはやらずに、知見のある分野の中で、ビジネスを大きくしていきましょうという風潮が強くなっていました。そうすると、社内で新たな事業にトライしようという声が上がっても、社内の審議もかなり厳しく結局実現に至らないというということが続いたこともありました。でも、昨今のビジネス環境や業界全体を見渡しても、もはやそういう時代ではないという事実があった訳です。事業投資がいつでも一番正しい手段というわけではないし、いろいろある手段の一つではありますが、もし事業投資がその時の一番正しい方法であるのならば、迷いなくそれを選択できるようにする、そして企業買収なら、買収に必要なお金と収益の見積りをするだけではなく、買収した後の統合や経営もきちんとできるようにならなければいけない。そういったことが「future135」で示された経営目標達成に向けた課題として明示されて、「兼松ユニバーシティ」のミッションにもつながっていると捉えています。
カリキュラム体系化:全社員の能力を底上げできる人材育成を目指して
―どのように「兼松ユニバーシティ」のカリキュラム作りを進められたのですか?
森様:まずは体制面のお話をすると、当時の企画部から2名の社員と私を含む人事総務部(現在は人事部)2名が「兼松ユニバーシティ」設立の担当でした。しかし、社内の人間だけで検討していても、今までの研修の焼き直しとか、くくり直しにしかならないだろうということで、企業研修を得意とする外部コンサルにも入ってもらい、我々が目指す企業内大学の実現に向け、1から検討していくことになりました。
森様:カリキュラム作りのプロセスとしては、まずは発案者である谷川の考えをしっかりとくみ取るべく、経営者を育てるために必要な要素についてヒアリングを行いましたね。そのヒアリングした内容をそのまま、外部コンサルと共有して。「それらを体系化し、社員が会得できるようにするには、要素ごとに分解した方が良い」、「大項目・中項目・小項目と細かく分類した方が良い」などのアドバイスを貰いながら、検討を重ねていきました。より具体的には、例えば、必要なスキルや知識を「対人技術」と「対業務技術」とに大きく分け、さらに「対人技術」を「対自己」と「対相手」に分類し、「対自己」であれば「コンプライアンス意識を高める」とか「ストレスマネジメントする」、「対相手」であれば「ビジネスマナー」や「ビジネスコミュニケーション」など、といった感じで一つひとつ要素分解しました。さらに、要素分解した小分類の項目に、学習プログラムを当てはめるという流れで、全体を設計していきました。
―具体的な研修コンテンツとしては複数の会社のものを採用されていますが、これはどのように決定されたのですか?
森様:先ほどお話した大項目・中項目・小項目の、中項目あたりまで決めたタイミングで、コンサルの方から「こういう会社が、〇〇の項目に合いそうな研修プログラムを提供している」という情報を提供してもらいました。そこで、松尾の前任者中心にネットで調べたり、研修を企画運営している会社の方にお話を聞いたりして、個々の研修プログラムの内容を吟味していきました。トータルで、100件以上の研修プログラムついて検討したと記憶しています。そうやって、「兼松ユニバーシティ」のカリキュラムとして採用すべき、ベストな研修を各小項目の下に当て込んでいきました。
―カリキュラムを作るにあたって、商社ならではの難しさや苦労した点などはありますか?
森様:当社の事業領域が多分野にまたがるため、部門が違えば別の会社に勤めていると言えるほど業務の違いがあるわけです。そんな中で、社員全員の力を底上げして収益を上げていくには、何か単一分野のことを勉強するだけでは不十分です。当社に限らずですが、やはり商社であれば人材の能力レベルそのものを上げないと、会社の収益力を上げて成長していくことは難しく、彼らが実際のビジネスで多分野・多業種の取引に携わる中で、「商社マンとして、社員の年代ごとに必要とされること、研修で身に付けてもらうべきことは何だろうか」を抽出し、「兼松ユニバーシティ」のカリキュラムとして取捨選択していくところに一番手間を掛けました。例えば、部門は違っても「クリティカルシンキング」や「デザインシンキング」は必要だね、とか、海外との取引が多いので「異文化コミュニケーション」や、海外の法令にも対応した「コンプライアンス知識」も全社共通で身に付けるべきだ、とか。各事業部門で扱う個別商品の情報以外、共通するものは漏れなくすべてカリキュラムに入れていくという基本方針で作り上げていきました。
―どれくらいの期間をかけてコース設計やカリキュラム作りを実施されたのでしょうか?
森様:パートナーとなるコンサルを選んで、コンサルに相談し始めたのが2019年の1月末か2月初めでした。「兼松ユニバーシティ」開校が7月でしたので、研修プログラムを提供する会社との契約や、eラーニングを配信したり集合研修の申し込み管理をしたりできるシステムの準備まで含め、実質半年弱だったと思います。
―それだけの大仕事を当時の担当4名で、かなり短期間で進められたのですね。
森様:そうですね。ですので、振り返って考えるとシステムの選定や設計について取組みが十分だったかというと、そうとも言えないかと思っています。当時の体制ではITやシステムに関して専門的な意見を言えるメンバーもいませんでしたし、まずは、「兼松ユニバーシティ」の中身を構築して提供する、ということが優先事項でした。
図)「兼松株式会社KGREPORT2020夏号」P8-9
LMS再選定:ユニバーシティの単位管理ができ拡張性の高いシステムに
―「CAREERSHIP」導入前の旧システムには、どのような課題があったのでしょうか?
森様:先ほど申し上げた通り、十分な検討もほとんどできなかった状態で導入した旧システムです。いざ運用を始めてみると、eラーニング教材の配信や集合研修の申込みは可能ながら、それ以外はほぼ人力に頼らざるを得ない、たいへん使い勝手の悪いシステムでした。
松尾様:私自身、兼松に入社したのは2020年3月なのですが、企業内大学に深く関われるという募集要項に魅力を感じてエントリーしたという個人的な背景があります。入社後、まずは「兼松ユニバーシティ」の履修状況・単位取得状況を確認しようとしたところ、旧システムにおいて表示される取得単位数と、本来付与されるべき単位数が合致していないことに気付きました。冒頭にご説明しました通り、「兼松ユニバーシティ」では複雑な単位取得ルールが決められており、そのルールに沿い単位管理ができる機能をカスタマイズしたうえで導入したのですが、正しく機能していませんでした。また、旧システムには限界があり、単位管理が全て自動化されていなかったので、管理をする私たち人事部としてもユニバーシティの運用に非常に手間がかかっていました。受講者側も、自身が受講すべき研修の全体像や単位取得状況が一目でわからないような状態で。結果として、受講率も低迷しておりました。受講者がストレスなく必要な研修を受けられて、管理をする私たちも簡単に単位取得状況の把握ができ、適切な運用が叶うシステムの導入を進めるべきだろうという話になりました。
―改めて「兼松ユニバーシティ」に最適なLMSを選定するプロジェクトがスタートしたわけですね。
松尾様:はい。私たち人事部と外部コンサルの方と、そして今回は、システム面に精通しているスタッフとして、IT企画部の北村にもチームに参加してもらい、LMSの要件を整理するところから始めました。「兼松ユニバーシティ」の軸となるのは、やはり単位管理・履修管理の部分です。これを要件として分解していくと、冒頭にご説明した、「Under Graduate(学士課程)」の3つのコース(ベーシック・アドバンス・プロフェッショナル)、さらにLMSの入れ替えと同時に導入を進めていた「Graduate School(修士課程)」の計4つについて、カリキュラムや履修科目のコース設定、必須科目と選択科目の区分と必要単位数の設定、個別の受講状況と必要単位数に対する達成度の把握などの機能が必要ということが見えてきました。
北村様:カリキュラム変更に対応しうる、将来的な拡張性や柔軟性についても、要件として検討する必要がありました。旧システムはいわゆるパッケージ製品にあたり、追加開発という形で単位を表現する機能を載せたものでした。その結果、やはり不具合というか、こちらの思うように動いてくれない部分が多くあり、単位計算の設定変更が臨機応変にできるシステムが良いだろうと考えました。
―拡張や変更というのは、例えばどういうものを想定されて、要件に組み込まれたのでしょうか?
北村様:先ほど松尾が申し上げた通り、LMSの入れ替えと同時に、「Graduate School」という新たな課程を「兼松ユニバーシティ」に追加するということを進めておりました。このような、課程やコースの追加や各コースの対象年次の変更などは、社会の変化に応じて今後も起こりえると考えていましたし、そこまでいかなくても、教育に求めるコンテンツや必要な研修科目、採用する教材の見直しが年単位で発生することも予測できておりました。そういったことを前提に、柔軟なカリキュラム設計や追加・変更ができることも要件として設定しました。
森様:教育コンテンツというのは、割と陳腐化が早いんです。ハラスメントやSDGsなど、採用した当初は良いなと思っていたものも、2年も経過すると、内容的に古くて使えないものになってしまいます。実際に2020年度と2021年度で既にカリキュラムや教材の変更も発生しています。
―要件定義の次の、ベンダーおよびLMSの選定はどのように進められたのでしょうか?
松尾様:私とIT企画部の所属長とコンサルの方とでベンダーをピックアップし、結果的に20社くらいのシステムが候補に挙がりました。それら20社の各システムの機能をコンサルの方に詳しく見ていただいたところ、履修単位の管理ができるのが、ライトワークスの「CAREERSHIP」ともう1社の2つだけ、ということが判明しました。その2社に絞ってトライアルした上で、どちらを採用するか決定しようということになりました。さらに、単位管理に限らず、先ほどお話したような要件が全部で40個弱あったのですが、それらが実現可能か不可能かベンダーに確認してみると、ほぼすべての項目について「できる」と回答いただけたのがライトワークスでした。
図)「新システムに必要な機能」(要件表/一部抜粋)
運用設計:企業内大学として「CAREERSHIP」を最適化する
―トップページも、「兼松ユニバーシティ」ならではの工夫をされたそうですね。
北村様:受講者がログインした際のトップページで何を表示するかを設計する工程では、成果一覧やコース全体像などの見せ方に重きを置きました。旧システムでは、ほとんどの受講者が一目で自身のステータスを把握できていないという状況がありました。トップページに400程ある研修プログラムがすべて表示されていて、そこから受けたい研修を検索して受講するというような仕様でした。ユニバーシティに入っているのはわかるのだけれども、そもそも何を受けたらいいのか、何が終わっているのか、取得単位は何単位残っているのか。そういったことがわからないという声が非常に多くありました。ですので、新しいトップページでは「CAREERSHIP」の単位管理の機能を最大限活かせるよう、「成果一覧」の部分で必要単位の取得状況を円グラフで視覚的に見せたり、トップ画面から簡単に自分のコースのカリキュラム全体を確認できるようなリンクを設置したりしました。受講者にとって、使いやすい・わかりやすいものができたと思います。
松尾様:新しいトップページを見て、「このようなシステムが欲しかった」と声を寄せてくれた社員もいたくらいです。
図)トップ画面のキャプチャ画像
―「兼松ユニバーシティ」ではグロービスはじめ複数社の研修プログラムを採用されています。これら外部教材の履修チェックは、どのようなフローで実施されていますか?
北村様:例えばeラーニングは、他社様のプログラムも併用しています。eラーニングを受講する場合、視聴が終わって「わかった」という気持ちで終わってしまう場合が多いように思います。しかし、企業内大学の中の1科目として捉えたときにそれでは不十分で、「eラーニングを視聴して何を学んだのか」、「学んだことを仕事にどう生かすか」を考えアウトプットするところまでをLMSでフォローできるようにしようということになりました。具体的には、「CAREERSHIP」のアンケート機能を利用しており、科目を選択すると、当該科目のアンケート画面に飛び、そこにeラーニングへのリンクがあります。視聴後にアンケートに回答し、提出(送信)すると「受講完了」となるような運用にしています。このようにすれば、外部教材も問題なく、履修チェックやカウントをすることが可能です。
「CAREERSHIP」の効果:導入初年度で80%が必要な単位を取得
ー2021年2月から「兼松ユニバーシティ」の新システムとして「CAREERSHIP」が稼働しましたが、期待していた通りの運用はできていますでしょうか?
松尾様:全て自動化の単位管理機能が実現して、私たち人事部・受講対象者本人・その上長が、受講状況のチェックを簡単にできるようになりました。また、集合研修の運用についても、かなり業務の簡略化・効率化が進みました。例えば「CAREERSHIP」導入以前は、集合研修の案内は、エクセルで作成した受講者とその上長のメールアドレスのリストを使用してOutlookでメール送信し、出欠予定は旧システムで管理していました。しかし、開催前日の資料配布はまたOutlookを使用し、当日の出欠はオンライン会議ツールの参加者一覧から目視で確認、研修後はオンラインのフォームを用いてアンケートを実施し、回収後に手作業で旧システムにて単位登録・・というように、とにかく一つひとつの工程がバラバラで煩雑で、ものすごく手間がかかってしまっていました。それが今は、受講者とその上長への案内・参加申し込み管理・研修事前事後課題やアンケートなど、全てが「CAREERSHIP」の中で完結できるようになりました。
森様:「兼松ユニバーシティ」の全体的な管理や状況把握の面でいうと、部門ごとや年次ごとの受講率なども簡単に集計して出すことができるようになったのも大きいですね。経営会議に向けて報告書を作成し、進捗状況を会長・社長や各部門長と共有しているのですが、学んだ成果を見える化する・比較できるようにする、というのは割と意味があると思っています。管理職や役員層が、研修への関心を高めてくれたり、部門間の競争意識も芽生えて、部門長が受講者たちの学びを後押ししてくれたりするようになってきました。「研修なんて必要ない」という時代も見てきた立場からすると、学びに対する社内の意識が変わりつつあるのを感じています。
―受講率の面ではいかがでしょうか?効果についてはいかがですか?
松尾様:2021年2月から「CAREERSHIP」での運用がスタートしましたが、以前に比べるとログイン率も飛躍的に向上しました。また、7月~翌6月の期間で学期を設定していまして、2021年6月を終えて状況を確認したところ、受講者の約80%が必要な単位の取得を終えた状態になっていました。中には、想定を上回る短期間で履修を終えた受講者もいまして、システムが刷新されたことや利便性が向上したことで、楽しく学習を進められるところがあったのではないかと思います。
LMS(eラーニング)機能要件リストをご提供
RFP(提案依頼書)作成時にも役立つ
機能要件リスト
これまで1,500社以上のLMS(eラーニング)導入に関わってきたライトワークスが、選定時に確認すべき代表的なポイントをリスト化しました。ぜひご活用ください。
今後の展望:「兼松ユニバーシティ」を拡張し、育成を強化していく
―今後、「CAREERSHIP」を活用して、取り組んでいきたいことはありますか?
松尾様:今後も「兼松ユニバーシティ」の改善・強化は続きますが、ユニバーシティのカリキュラムには含まれていないような研修、例えば、各部門が主催している専門知識や取扱商品についての研修なども、各部門に「CAREERSHIP」の使用方法を伝えて一元管理できるようにしたいね、と話しているところです。権限が柔軟に設定できるロール機能も備えているため、そういった利用の拡張も企画・検討しやすいです。研修以外にも、1年目及び3年目に実施している、実務に関する社内検定を、現在は紙ベースで実施し、1か月ほどかけて手作業で集計しているのですが、それも「CAREERSHIP」での実施が実現すれば、1週間もあれば全て完了でき、大きな効率化に結び付くと思います。
森様:現在も「兼松ユニバーシティ」のいくつかのeラーニング教材を一部のグループ会社に提供していますが、当社が掲げる「グループ経営」を推進し、グループ全体として収益力を高めていくためにも、グループ全体の人材育成を考え、実行していく必要があると思っております。