導入成功事例 〔株式会社サザビーリーグ・前編〕コロナ禍で原点回帰へ。自律的に「ありたい姿」を目指す社員が半歩先の小売の価値を創る

課題
・店舗スタッフとホールディングスとの直接的なコミュニケーション方法がなく、店舗との距離が遠かった。
・スタッフのリテンション向上と自律的キャリア形成のための仕組みをつくる必要があった。
成果
・「CAREERSHIP」でスタッフとの直接コミュニケーションが実現したことで、LMSへのログイン率が増加。キャリア相談の件数はコロナ前の2.8倍にまで上昇。
・対面研修とeラーニングを組み合わせた「ブレンディッド・ラーニング」も推進。

コロナ禍は、生活者の価値観や消費行動を大きく変えたと言われています。緊急事態宣言によって休業を余儀なくされた小売の現場では、休業明け以降も、売上へのインパクトのみならず、そういった“生活者の変化”にも直面することになりました。デジタルシフトがこれまでになく進む中で、リアル店舗の意義や価値、また、そこで働く店舗スタッフの在りようも、今、大きく変わろうとしているのではないでしょうか?

株式会社サザビーリーグと、同社および関連事業会社を含むThe SAZABY LEAGUEは、衣・食・住のさまざまな分野で事業を展開する企業グループです。小売や飲食の店舗を多く傘下に持つ同社では、店舗スタッフのリテンション向上を目的に、2018年にライトワークスのLMS「CAREERSHIP」を導入。スタッフへの教育拡充とキャリア開発のためのプラットフォーム「S-Career Academy」を構築し、事業会社の店舗スタッフ(正社員・限定正社員、契約社員)を対象に 、eラーニングやキャリア相談窓口、研修を通じたスタッフ同士の交流の場を提供してきました。

コロナ禍とそれに伴う生活者の変化は、事業領域のほとんどすべてが生活者と共にあるThe SAZABY LEAGUEに、さまざまな変革をもたらしています。社内コミュニケーションの在り方から、店舗スタッフの役割、そして理想とするキャリア形成まで。変革の渦中にある同社のスタッフ教育とキャリア開発について、株式会社サザビーリーグ 戦略人事部 組織開発課の志水聡子様、青木光葉様、栗原佳穂様にお話を聞きました。

 

各業界における人材育成の課題と解決方法をまとめた事例集

各業界における人材育成の課題と解決方法をまとめた事例集

 

INTRODUCTION:課題とミッション

―まずは、みなさんが所属する「戦略人事部 組織開発課」のミッションや業務領域を教えてください。

志水様:私たち「組織開発課」は、2010年に立ち上がった「人材開発部」という部署を前身としています。当時、The SAZABY LEAGUE自体が、創業メンバーである鈴木と森のツートップ 体制から次の世代へと、経営のバトンタッチをしていくフェーズを迎えていました。次世代の経営を担える人たちを積極的に育てていこうという狙いのもと作られたのが、「人材開発部」です。以降、次世代経営者育成のミッションに沿って活動を続けていたところに、2017年・2018年あたりから、店舗における慢性的な人材不足の問題が徐々に顕在化してきました。最初は個別ブランドの課題であったものが、各事業会社共通の課題となり、さらにはリーグ全体の経営課題として認識されるようになったのです。そこで、2017年に「人材開発部」は「戦略人事部」となり、スタッフのリテンション向上を目的とした店舗スタッフ個人の育成支援とそれを支える組織の支援までミッションの範囲を拡大することになりました。

 

―「組織開発課」の中での、皆さんそれぞれの役割分担はありますか?

青木様:私は、主に店舗のスタッフ向けの教育研修プログラムの企画・実行を担当しています。さらに、教育研修プログラムの実施を通して1人ひとりの強みや今後の成長課題などを記したカルテを作成し、それぞれの育成責任者と研修参加者1人ひとりについて今後の活躍や成長支援のための日々の関わり方についてダイアログ(対話)することをミッションとしています。あとは、今年から始めた活動として、我々の取り組みについて社内に発信したり、それらの取り組みを活用してキャリア自律を主体的に進めている店舗スタッフにスポットを当て社内報で紹介したり、というようなプロモーション活動も行っています。現在はまだ、社内向けの活動が中心になっていますが、同様の情報を社外に向けても発信していきたいと考えています。

栗原様:私も青木と一緒に店舗スタッフ向けの教育の企画・実行をしています。その中でも特に、若手社員に向けた教育を担当しています。グループ全体で、新入社員が内定したタイミングから入社2年目まで、学生から社会人へのマインドセットをするだけでなく、個別コーチングも取り入れながら支援をしています。新入社員は、新しい組織で学ぶことが沢山あり大変ですが、できていないこと以上にできるようになったことを振返って、自分がどれだけ成長できたかを感じてもらい、他の人にはない自分の強みを職場でどう生かすかを考えてもらうことで、学生から社会人へのトランジションをポジティブに乗り越えてほしいと考えています。
それに加えて、「S-Careers Academy」の企画と運用もメインで担当しています。より使いやすいようにトップページにガジェットを追加して、新たな情報を発信したり、「S-Career Academy」に掲載する「資格取得支援・教育制度」の対象資格や通信講座を選定し、スタッフに配布する「S-Careers Academy」のパンフレット企画制作などもやっております。

志水様:私自身の役割は、部署全体として店舗スタッフ向けの教育を拡充していく中で、教育をしっかりとやっていくだけでは解決できないような、より本質的な組織体制や支援制度の問題などについて、どう取り組んでいくかというところの戦略作りと推進です。これらの課題解決にあたっては、各事業会社の販売部長や人事部長など、ダイアログ(対話)しながら解決策を提案し、推進するよう努めています。こうした業務と並行して、本部の「次世代経営者育成」というミッションも依然として続いているので、本部の部長向けの人材開発会議など、本部内の人材育成の仕組み構築やプログラム開発というのも、私の方で担当して進めています。

 

LMS導入背景と選定理由:コミュニケーションと教育、両輪での拡充へ

―LMSを導入した2018年頃に遡ってお話を聞かせてください。当時の経営課題として「店舗の慢性的な人材不足」がある中で、その解決策・改善策としてLMSが必要と考えたのはなぜでしょうか?

青木様:店舗スタッフのリテンション向上を考えた時に、まずはホールディングスとしても店舗スタッフの方々と私たちが直接コミュニケーションを取る機会を増やすことで、私たちが考えていることや社員に対する想いを伝えることが出来る、それがまずは大事なのではないかという想いがありました。コミュニケーションの観点で実態を見てみると、私たちとお店との距離がものすごく遠かったんです。例えば、私たちからお店のスタッフの方に向けて直接情報を発信したいとなっても、当時は各店舗に1台あるパソコンにメールを出すという方法しかありませんでした。ですので、私たちが伝えたいことが、伝えたい温度感で伝わっているかというと、全然そうではなかったと思っています。LMSを導入することで、一人ひとりの店舗スタッフが、社用のメールアドレスやPCを持っていなくても、各自のスマホからLMS にログインしてアクセスできるようになります。ホールディングスの私たちから、スタッフ一人ひとりと直接コミュニケーションを取ることが可能になれば、会社が考えていることや方向性、キャリア形成に対する考え方なども、もっとダイレクトにお伝えできるのでは、と考え、LMSの必要性を感じました。

 

―さまざまなLMSがある中で、ライトワークスの「CAREERSHIP」を採用いただいた理由を教えてください。

青木様:LMSの選定の際は、栗原とふたりで「何社にお話を聞いた!?」というくらい、たくさんの会社から説明を受けたのですが、いろんな会社のお話を聞いてみると、大きく二分されるなと。一方は、eラーニングコンテンツとかeラーニングの機能がすごく充実しているもの。もう一方は従業員とのコミュニケーション機能が充実していて、例えばコミュニケーション用のアプリが自分たちで簡単に作れるようなもの。先ほど述べたように、私たちとしてはコミュニケーションの重要性を感じていたのですが、同時に、教育もしっかり充実させていきたいという考えでしたので、eラーニングかコミュニケーションか、どちらかが強いという会社さんが多い中で、ライトワークスの「CAREERSHIP」はちょうど良くバランスが取れているなという印象でした。もちろんeラーニングのコンテンツもすごく充実していますし、スタッフとコミュニケーションする上での機能もしっかり搭載されていて、私たちのやりたいことが実現できると思えたのが一番大きな採用理由でした。そのほか、小売業での導入実績がたくさんあって、導入後どのように運用していくかがイメージしやすかったというのも評価したポイントです。

LMSの活用を広げる取り組み

―LMSの導入後、どのように活用を広めていかれたのでしょうか?

青木様:私たちの場合は、ホールディングスと各グループ会社という関係性もあるので、The SAZABY LEAGUEの各ブランドや各事業会社まで活用を広めるのは、簡単なことではありませんでした。会社によっては、既に何かしらの教育システムを導入していたりもしました。例えば店舗スタッフ向けのマニュアル動画ひとつにしても、私たちは「CAREERSHIP」と「教材コーチ君®」を使ってやっていきたいと考えていますが、YouTubeや別のシステムを使って工夫している会社もあります。ですので、各社の意向を尊重しながら、店舗スタッフ目線でより使いやすく整理していくために、各社に向けさまざまな提案をして少しずつ改革を進めてきています。まだ課題は残っているので、今後もしっかりと取り組む必要があると考えています。

志水様:これまでを振り返ると、やはり継続は力だな、活用が広がってきたなとも思っています。導入初年度はパラパラと使われる程度の位置付けだったんですけれども、「S-Career Academyを使うと、こういう風にあなたの成長やキャリア開発に役立ちますよ」ということを発信し続けることで、今では70%近くの人に活用されるまでになってきています。そこまで広げることができたのはなぜだろうと考えてみると、例えば単にeラーニングを受けられますよ、というだけだとそこまでうまくいかなかったと思うのですが、eラーニングに加えて、資格取得の補助の申し込みが「S-Career Academy」からできますよ、こんな研修も「S-Career Academy」を使ってやりますよ、という風に、いろんな施策と組み合わせて提供したことで、利用率が高まったというのがあると思います。今では、「S-Career Academy」を使って、IT推進部が情報セキュリティ講習を提供したり、別の部門が確定拠出年金の情報を出したりと、スタッフにとって有益な情報が、少しずつ「S-Career Academy」に集約されるようになってきています。

栗原様:その他にもいろいろな啓蒙活動を実施していて、冒頭でも少しお話した「S-Career Academy」のパンフレット制作もそのひとつです。このパンフレットは2018年から発行しているのですが、「S-Career Academy」やその中で提供している「資格取得支援・教育制度」について、まずは知ってもらいたいという想いで、一人ひとりに現物で渡せる紙の冊子にして作り始めました。パンフレット自体も年々進化していて、最初は全員が利用できるeラーニングや通信講座・対象資格の紹介だけだったものから、The SAZABY LEAGUE全ブランド共通のキャリアマップがあり、階層別におすすめの学習内容の紹介やサイトの活用方法などを掲載していて、「S-Career Academy」を使いこなすためのガイドの役割も担うようになりました。さらに現在では、キャリアに対する私たちの想いや、こういう風にキャリアを形成していってね、というメッセージを盛り込んだものになってきています。

画像)「S-Career Academy」パンフレット(※クリックで拡大表示)

志水様:そのようなさまざまな取り組みの結果として利用率が高まってきた、という事がありつつ、やはりコロナ禍の影響が追い風となったことも事実です。弊社グループの場合ですと、1回目の緊急事態宣言が出された2020年の3月~4月に百貨店などの大型商業施設が一斉休業になってしまい、それら商業施設の店舗スタッフ全員が自宅待機という状態になりました。初めての事態で、スタッフに家で何をしてもらえばいいのだろうかと議論になった時に、「S-Career Academy」のeラーニングがあるね!という話になり、それまで以上に活用が進みました。そのことでさらに、他部署や事業会社からも「『S-Career Academy』なんだか役に立ちそう!活用したい!」という声が上がるようになり、活用が広がってきています。

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転機:コロナ禍を契機に原点回帰したキャリア開発

―コロナ禍で「S-Career Academy」の活用が進んだとのお話がありましたが、The SAZABY LEAGUEにとって、コロナ禍はどのようなインパクトがありましたか?

志水様:コロナ禍をきっかけとして、生活者の価値観もライフスタイルも、本当に目に見える形で変化したと思います。これまで以上にECでお買い物をするようになったり、行動や価値観の変化が見られたりする中で、私たちとしても生活者の変化を理解しながら、「半歩先の提案」をどう提供していくのか、というのを改めて考えていかなければいけないフェーズに来ているなと感じています。

 

―そのような変化は、店舗の役割やThe SAZABY LEAGUEが理想とするスタッフの在り方にも影響を及ぼしたのでしょうか?

志水様:コロナ禍以前は、私たちのブランドとしての提供スタイルが、ある程度確立されている中でビジネスをやってきていました。ですので、お客様へどのような価値をどのように提供するかが定まっているなかで、店舗の人たちがそれに沿ってお客様に直接価値を提供する役割を担ってもらっていました。それが今は、生活者のライフスタイル自体がどんどん変わっていって、本部も店舗もみんな、これまでのやり方にこだわらずに、どういう価値を提供することが望ましいのかということを模索しながらビジネスを進めているような状況になってきています。必ずしも本部が正解を持っているわけではないので、本部も店舗もみんなで一緒に考えるという動きに事業会社各社が変化してきているのを感じます。「正解がわからない」からこそ、事業会社は店舗スタッフに対して、「お客様に対して価値を発揮していくために何ができるのか」を、もっと自律的に考えて行動してもらい、店舗のアイデアや発見を本部が受け入れて、「みんなで新しい価値提供のあり方を考えていこう」というスタイルに変化してきています。そうすると、組織自体も、より一層本部と店舗が、共に共創する自律共創型の組織に変えていかなければいけないというふうに変化してきています。

 

―それは大きな変化ですね。

志水様:そうですね。でも、突き詰めて考えてみると、それってThe SAZABY LEAGUEの原点みたいな考え方だね、と思い至りました。The SAZABY LEAGUEの前身のサザビーという会社は、本当にいろんな個性や才能を持った人たちが集まって、喧々諤々議論しながら、その時代には無かったビジネスを創っていったところからスタートしています。もともと、そのようなバックグラウンドというかスピリットの会社で。弊社には「ピープルビジネス」という言葉があって、それは「人の成長がビジネスの成長につながる」ということを表しています。組織のために自分が成長しなきゃ、学ばなきゃ、ではなくて、自分の本当に「ありたい姿」のために学んで、「ありたい姿」に沿って日々少しずつ成長して、それを組織に還元していくっていうのが、The SAZABY LEAGUEの理想とするキャリア形成なんだ、ということを発信し、意識を変えていく必要を感じています。

 

―「ありたい姿」をめざすキャリア形成とは具体的にどういうものでしょうか?

志水様:先ほど「ピープルビジネス」のお話をした通り、「ありたい姿」を思い描くときに、必ずしも自分の現在の所属やブランドにこだわる必要はないと考えています。本当に自分が描く、ありたい姿や人生のプランを追求してもらいたいと。ですので、「S-Career Academy」に搭載している「資格取得支援・教育制度」では、さまざまな資格の取得を支援する情報や補助の仕組みがあるのですが、現在の業務に直結していない資格について申請しても全く構いません。例えば、雑貨を担当している人がワインアドバイザーになりたいと思ったら、それも補助しちゃうよというスタンスです。本当に興味がある事やありたい姿を追求してもらいたいと思っているんです。それを通じて、自己実現につなげてもらいたいし、エンプロイアビリティーを高めてもらって、自分の資産にしてもらいたいと考えています。

 

―そのようなキャリア形成の考え方に関して、一従業員としてはどのように感じていますか?

栗原様:The SAZABY LEAGUEは“衣・食・住、多岐にわたるライフスタイル提案”を生業としているのですが、キャリアに対するこういう考え方も本当に「うちらしいな」と感じています。本部スタッフも店舗スタッフも「日々のライフスタイルを楽しむ一生活者であること」、働く私たち自身も「今日はいい1日だったな」と感じて過ごすことを大事にしている会社なんです。だからこそ、お客様にも同じように「今日はいい1日だったな」と感じてほしいと心から思える。キャリア開発において「ありたい姿」を描いたときに、どんな可能性があってもいいし、それに向けて頑張ることを承認してもらえるっていうのが、やはりThe SAZABY LEAGUEらしいキャリアの築き方なんじゃないかと思っています。

 

―皆さんのミッションも、コロナ禍を機に変化しているのですね。

青木様:「S-Career Academy」を立ち上げた頃とは変わってきていますね。The SAZABY LEAGUEらしさに原点回帰し、それを強みとしてもっと活かせるようにした方が、このコロナ禍においては他社との差別化につなげられると考えています。

志水様:当初は店舗の慢性的な人材不足の解決が目的で「リテンション向上プロジェクト」としていましたが、それぞれの「ありたい姿」を目指して成長することを支援し、お客様にどんな価値が提供できるかを自ら考えて行動できるようなスタッフの育成を図る「自律型キャリア形成プロジェクト」にシフトチェンジした形です。「S-Career Academy」も、「自分の成長を支援するための総合サイト」という位置付けで、教育の提供方法やコンテンツ、トップページの見え方など、最適な形を模索しながら、日々改善しています。

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