導入成功事例 〔綿半ホールディングス〕1店舗200人規模のスタッフ教育から、グループシナジー創出の土台づくりへ

綿半ホールディングス様
課題
スタッフ教育が体系化されておらず、店舗やOJT担当者によって教育内容がまちまちだったことから、店舗間のサービスレベルにばらつきが出始めていた。
成果
・LMS導入により、1店舗200人規模のスタッフ教育の基盤ができた。
・教育が体系化され、高い水準のサービスレベル均一化・スタッフの早期戦力化が実現。

長野県飯田市に本店を置く綿半ホールディングス。その起源は西暦1500年代にまでさかのぼります。安土桃山時代に綿屋として創業後、時代の変遷とともに事業を転換し、現在は、地元に根付き・貢献する企業として、3つの領域(小売事業・建設事業・貿易事業)でビジネスを行っています。

グループ売上の約6割を占める小売事業において中軸となっているのが、スーパーマーケットとホームセンターを融合した「スーパーセンター」という業態です。ここに来れば何でも揃う「スーパーセンター」では、1店舗当たり150人から200人ものスタッフが働いています。この巨大店舗のスタッフ教育のプラットフォームとして、2016年にライトワークスのLMS『CAREERSHIP』が採用されました。

綿半グループの教育プラットフォーム「eWAT」として運用をスタートした『CAREERSHIP』がどのように活用され、4年の運用を経てどう変化していっているのか、「スーパーセンター」でのスタッフ教育とグループ全体での活用拡大について、綿半ホールディングス株式会社 経営戦略室 経営企画グループ 屋ヶ田光一様、株式会社綿半ホームエイド 管理部 人事教育グループの田中志穂様にお話を聞きました。

各業界における人材育成の課題と解決方法をまとめた事例集

各業界における人材育成の課題と解決方法をまとめた事例集

1. 背景:出店拡大時にサービスレベルを下げないために

-まずは、ご担当職務のゴールやミッションについて教えてください。

田中様:私たちは店舗運営をサポートする裏方として、会社の成長や従業員の成長をゴールとし、教育の支援や働きがいの創出、働きやすい環境づくりをミッションとしています。その延長上の業務として、LMSの管理と教育コンテンツの作成を担当しています。

 

-LMS導入の背景を教えてください。

屋ヶ田様:綿半ホームエイドでは、2014年以降、スピード出店を見込み、組織や教育制度について大幅な見直しを行いました。それ以前は、店舗でのスタッフ教育はきちんと体系化されておらず、新人に何から教えるかといったことも店舗によってまちまちでした。その結果として、店舗数が増えるにしたがって、店舗間のサービスレベルのばらつきが顕在化するようになりました。そもそも私たちのような小売の現場では、教育に優先的に時間をかけることが難しい状況があります。そんな中で、店舗数の拡大期にあっても、高い水準でのサービスレベルの均一化を実現し、増え続ける新人スタッフを早期に戦力化するには、本部としてそれを支援する教育体系や仕組みの構築が必須であると考えました。ライトワークスのコンサルティングを受けながら、店舗スタッフに必要なスキルを洗い出して体系化し、「eWAT」という名前のLMSが立ち上がったのが、2016年2月のことです。

2. スタッフ200人規模の巨大店舗で教育を推進する

-御社が運営する「スーパーセンター」とは、どのようなお店ですか?

田中様:スーパーマーケットとホームセンターが融合した「スーパーセンター」という業態は、生鮮品・お惣菜から食品・日用品・園芸用品・家電・資材まで何でもそろう「ワンストップショッピング」を実現するお店です。1つの店舗内には「食品」と「ノンフーズ」という2つのグループがあり、グループはさらに「野菜」「惣菜」「インテリア」など、商品カテゴリ/専門領域ごとに分かれた6つのブロックによって構成されています。人員的には、店舗経営に責任を持つマネージャーと補佐役のサブマネージャー、グループやブロックのリーダー職・チーフ職、バイヤー、パートやアルバイトスタッフという構成です。1店舗当たりのスタッフ数は150~200人にもなる組織です。

 

-LMSも、その組織構成に基づいて設計されたのでしょうか?

田中様:そうです。各ブロックリーダーが自身のグループに所属するスタッフの育成に責任を持つことになっています。「eWAT」にもこの仕組みを反映し、ブロックごとでスキル管理ができるようにしました。100以上のスキルと、それに連動する学習コンテンツを「eWAT」上に格納し、個々のスタッフが今の自分に必要なスキルについて学ぶことができるようになっています。

屋ヶ田様:ブロックごとに必要な知識を習得し、専門性を高めていくためのコンテンツとは別に、マネージャー層育成のための「店舗マネジメント職研修」や「バイヤー養成コース」などもあります。これらは、集合研修とeラーニングを組み合わせたプログラムになっています。

 

3. 導入効果:「eWAT」が社内・店舗の共通言語になった

-導入から4年以上が経過していますが、これまでのLMSの効果をどう評価されていますか?

屋ヶ田様:離職率や顧客満足度などの指標に照らして評価しているわけではありませんが、肌感として、「eWAT」に真摯に取り組んでいるスタッフほど、長く定着している感はあります。LMSでの学びが、働きがいにもつながる部分があるのではないかと思っています。

田中様:「eWAT」という教育プラットフォームができたことで、「eWAT」の内容が社内の共通言語になりました。例えば、LMS導入以前は取り組むべきことや目指すものが属人的だったため、社員の異動の際に、異動してきた社員が前任者とは違う指示を出して現場が混乱する、というようなことが起こっていました。社員の異動はどうしても発生するものですので、人が変わっても、基準として「eWAT」が中軸にあることで、混乱なくスムーズに現場が動き続けられる環境ができたのは大きいですね。

 

-その他、LMSの効果や利点を感じる点はありますでしょうか?

屋ヶ田様:想定していなかった点としては、LMSがあったおかげでコロナ禍でも研修が実施できたということですね。例えば「店舗マネジメント研修」は、半年間にわたる研修プログラムですが、もともとの設計として、すべてを集合研修だけで行うのではなく、eラーニングで事前学習を進めた上で、月1回程度の集合研修を行うという形でした[1]。店舗側の感染予防対策などが急務だったため、研修の開始時期は例年より2ヶ月ほど遅れましたが、それでも集合研修部分をZoomに置き換えて問題なく遂行することができたのは、教育の土台として「eWAT」があったからです。

 

[1] このようにeラーニングと集合研修を組み合わせた学習法を「ブレンディッドラーニング」といいます。

4. 「一店舗一経営」を実現する、教育方針の転換

-ブロックごとのスキル管理については、見直しをされているそうですね?

田中様:これまでの、入社3日目までに〇〇をできるようになる、次に入社7日目まではこれ、14日目まではこれ…といった細かい時間軸を取り払い、「基本編」「スキルアップ編」という大枠の分類に見直しました。こうすることで、店舗の状況や個々のスタッフがもともと持っているスキルに合わせて、OJT担当者がフレキシブルに教育計画を立てられるようにすることを狙ったものです。

 

 

屋ヶ田様:「一店舗一経営」という考えのもと、個々の店舗が地域のお客様に寄り添い、それぞれの個性を尖らせていこうという方針で、店舗づくりが進められています。これを受け、スタッフ教育も店舗主導で店舗の中で完結する形を、より明確に目指すようになりました。その流れの中で、スキルの達成スケジュールも本部側が細かく指定するより、店舗が独自に活用しやすい枠組みにした方が良いだろうという議論になり、見直しを決定しました。とはいえ、店舗側にそのアナウンスを行ったのは今年(2020年)の7月のことなので、このやり方がどう各店舗で根付いていくか、仕組みとして形骸化しないか、今後しっかりと見ていく必要があると思っています。

5. LMS活用をグループ全体に拡大する

―綿半ホームエイド以外のグループ各社でのLMS利用状況はどうなっていますか?

田中様:グループの経営理念や行動指針などのマインドセットや、1598年まで遡る綿半の歴史やブランディングストーリーについては、グループ会社の新入社員全員が「eWAT」で学ぶことになっています。その他、建設事業の綿半ソリューションズでは、工事の手順や安全に工事を行うための注意点なども学習しています。グループが理想とする人財である「自分で考えていく人」を育てるために、「新規事業研究会」や「次世代経営者育成研修プログラム」といった取り組みを行っていますが、それらの基礎となる学習は「eWAT」上で受講できる仕組みとなっています。

 

-2020年8月にはLMSの勉強会を実施されたそうですが、これは誰を対象とした、どのような目的のものなのでしょうか?

田中様:実施の目的としては、「eWAT」の利用拡大に向け、グループ内の理解者・協力者を増やす、ということでした。綿半ホームエイドからは、本部の店舗運営に関わるスタッフと人事の私が参加しました。綿半ソリューションズからは人事の担当が参加しています。中には、この勉強会で始めて「eWAT」の管理画面に触るという人もいました。ライトワークスの担当者にLMSの使い方や新機能、教育・eラーニング教材のトレンドについて講義をしてもらい、参加者間で使い方や使い勝手についての情報共有をしました。

 

-第2回目の勉強会を実施するとしたら、どんなテーマが良いと思いますか?

田中様:「eWAT」に力を入れていくに当たり、教育コンテンツを作れる人・管理できる人を増やしていきたいので、コンテンツ作成をテーマにしたいです。先日の勉強会で、eラーニング教材は短い動画コンテンツ(マイクロコンテンツ)が主流になっているというお話を聞いたので、特に動画コンテンツについて、作り方やコツなどを知りたいと思っています。

 

6. 今後の展望:グループシナジーを目指して

-今後、グループ全体の人財育成のために、LMSをどのように活用していきたいとお考えですか?

田中様:2010年以降、綿半グループはさらなる成長を目指し、M&Aを推進しています。それにより、多くの企業がグループ入りしていますが、これらの会社は、これまでは別の価値観を持っていた会社です。これらの会社を含めグループ全体として一堂に会する機会を作るのは簡単ではありません。そこで、グループのスタンダードとしての「eWAT」での学びを通して、綿半グループの価値観を共有し、同じ方向に向かって働けるようにしていきたいと思います。そうすることで、グループシナジーも生まれてくると信じています。

屋ヶ田様:そのような理想を持ちつつ、実態としてはグループ入りしたばかりで「eWAT」を知らない企業もあるので、まずは「こんなに便利なものがあるんだよ」と地道に周知し、より多くの社員を巻き込んでいくことが、意味のある有効な取り組みだと思っています。

 

クラウド型LMS 売り上げシェアNo.1 *
「CAREERSHIP」

careership-cta

eラーニングや研修管理、アンケート配信、スキル管理など、人材育成に必要なあらゆる機能を網羅している高性能LMS「CAREERSHIP」。これがあれば、「学習」のみならず人材育成に係る一連のプロセスを簡単に管理することができます。

*出典:富士キメラ総研「2023 SX/GXによって実現するサステナビリティ/ESG支援関連市場の現状と将来展望」
学習管理システム(クラウド)2022年度金額シェア

7. まとめ

2020年3月期の決算において、綿半ホールディングスは過去最高の売上・利益を達成しています。今期はコロナ禍の影響を受けながらも、お客様や地域に貢献する様々な取り組みを推進している様子は、同グループの決算説明会資料などからも伺えます[2]。安土桃山時代から続くこれまでの歴史同様、今後も時代の潮流に合わせて、M&Aや業態変革を積極的に行っていくであろう綿半ホールディングス。その成長を支える人財育成の土台として「eWAT」の活用が広がっていき、個々のスタッフの成長から、グループシナジーの創出までを支援できるLMSになるよう、『CAREERSHIP』も進化・変革していく必要を感じました。

[2] 綿半ホールディングス 決算説明会資料 https://watahan.co.jp/ir/presentation.html

3分でわかるCAREERSHIPダウンロード

こちらの記事もあわせて読まれています

各業界における人材育成の課題と解決方法をまとめた事例集

各業界における人材育成の課題と解決方法をまとめた事例集