社員の自律的な学習促進、多様化する研修ニーズ、そしてジョブ型やDXなど新たな潮流への対応。これらは多くの企業が抱える人財育成の課題ではないでしょうか。
その解決のヒントが、コンビニエンスストア業界の株式会社ローソンの取り組みにあります。同社は企業内大学「ローソン大学」が中心となり、10年以上にわたってライトワークスのLMS「CAREERSHIP」を活用した先進的な人財開発を実践しています。
本記事では、ローソン様が目指す「自律型人財」の育成をCAREERSHIPでどう支援しているのかを深掘り。ジョブ型人事制度に対応する学習環境の構築や、eラーニングとリアル研修の効果的な連携など、LMS導入・活用を成功に導く具体的なノウハウが満載です。
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お話を伺った方(部署名・肩書は2025年5月取材時のもの)
株式会社ローソン 人事本部ローソン大学
事務局長 吉田 卓史様
――まず、吉田様のお役割とローソン大学の概要について教えていただけますか?
吉田様:私は2021年よりローソン大学の事務局長をしております。
設立当初(2008年頃)は加盟店教育とローソン社内の研修の両方をバランスよく受け持つ組織でしたが、現在は加盟店教育の一部(店舗5宣言と経営計画書の作成)と、人事本部の所管で全社員の教育を担う組織として機能しています。
ローソン大学を運用するのは14名のスタッフです。新入社員から管理職までの階層別研修の他、全社員向けの共通研修からDX教育まで幅広く管理及び運用しており、ライトワークスさんのCAREERSHIPを教育運営の重要な要として活用しています。
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CAREERSHIP歴10年超、その活用の背景とは
<ローソン大学事務局長 吉田様>
――ローソン大学において、CAREERSHIPはどのような位置づけで活用されていますか?
吉田様:CAREERSHIPを導入したのは10年以上前のことです。当初は限定的な活用でしたが、現在では全社員がアクセスできる教育プラットフォームとして機能しています。
ローソン大学はCAREERSHIPの運用管理者として、主に2つの点で活用しています。1つは、eラーニング教材や各種学習ツールを常時提供することによる「社員の自己啓発の促進」、もう1つは、全社共通および階層別の必須知識習得をeラーニングで管理する「効率的な教育運営」です。
――ローソン大学が提供する教育と、各部門が実施する教育は、現在どのように連携・運用されているのでしょうか。
吉田様:全社共通の教育、例えばコンプライアンス研修などは主管部署が作成しCAREERSHIPを通じて全社に展開しています。一方で、営業、開発、商品といった各部門に特化した専門的なテクニカルスキル教育は、ローソン大学が全てを網羅することは難しいため、各部署に委ねています。
そうした場合でも、各部署がCAREERSHIPのプラットフォーム上に部署毎の内製の研修コンテンツを搭載し、部門内教育に活用するケースは日常的に見られます。ローソン大学は、このような各部署の利用をシステム管理者としてサポートする役割を担っています。
内容のすり合わせや情報共有は必要に応じて行いますが、専門性の高い領域については、各部署の主体性にお任せしています。
――2024年からは、当社のeラーニング受け放題サービスである「まなびプレミアム」も導入いただきました。
吉田様:それ以前にもライトワークスさんのeラーニング教材を使っていましたが、「まなびプレミアム」の導入は大きな変化をもたらしました。様々なビジネススキルを網羅的に学習できる環境が整ったことで、1つのプラットフォームの中から適切な教材を選択できるようになったんです。
これまでは必要があれば複数の業者から個別に教材を調達する必要がありましたが、それが無くなったことで我々の業務も非常に効率的になりました。
――ローソン大学では10年以上にわたりCAREERSHIPを活用なさっていますが、その理由は何でしょうか?
吉田様:CAREERSHIPは、ライトワークスから提供される汎用的なビジネススキル教材に加え、ローソン独自の研修コンテンツや管理の仕組みを柔軟に組み込める点が大きな魅力です。
コンビニ業界は「変化対応業」とも言われるように、お客様のニーズや市場環境がめまぐるしく変化します。このような環境下で競争力を維持・向上させていくためには、社員一人ひとりが常に知識をアップデートし、環境変化に迅速に対応できる能力を磨き続けることが不可欠です。
特に、昨今の環境で最も必要とされる「コンプライアンス&リスク管理」については、CAREERSHIPをフル活用して、もれなく全社員に、同じ内容、同じ温度感、かつ定期的に研修を実施することで、「理解や意識の醸成=誠実さの実現」に大いに貢献しており、ひいては「安心して働ける環境」作りに役立っていると実感しています。
さらに、ローソン大学が展開する階層別研修の事前学習教材として「まなびプレミアム」を活用するなど、企業と従業員双方の学習効率と生産性向上に繋がっています。
将来的には、対面研修、Web研修、eラーニングといった多様な教育手段を統合的に案内する「総合的な学びのプラットフォーム」としての機能をCAREERSHIPに持たせていきたいと考えています。
「教育」と「育成支援」で“自律型人財”の育成を目指す
――ローソン様はジョブ型人事制度への移行を進められていますが、その中でのCAREERSHIPの利活用について教えてください。
吉田様:ローソンでは、部署ごとに「役割記述書」を策定・公開し、社員が目指すキャリアを明確化する取り組みを進めています。2025年度からは、まず管理職層を対象にジョブ型の志向を取り入れた人事制度を導入しました。
これに伴い、管理職層のCAREERSHIPでは「カスタムダッシュボード機能」を活用し、個々の等級や役割に応じて必要な学習科目へ楽にアクセスできるように仕様を変更して提供しています。
<求められる能力・スキルを分かりやすく明示した管理職向けカスタムダッシュボード画面>
例えば、学習者が「課題抽出力に課題がある」と感じているのであれば、その能力開発に役立つeラーニング教材群へスムーズに辿り着けるように工夫しています。学習者が必要な情報に数クリックで到達できるよう、ストレスのない直感的な操作性を重視しました。
新入社員を含む店舗社員向けにも同様の仕組みを導入しており、学習者のストレス軽減と利用促進に繋がっています。
<円グラフで研修の進捗を可視化した店舗社員向けのダッシュボード画面>
また、店舗社員向けには、習得すべきスキル項目をリスト化しその進捗を管理する「スキルチェック」機能も活用しています。年間で習得すべき約40項目について、自己評価や上長評価を記録・管理できるため、育成計画の実行と効果測定に役立っています。
――ローソン様における教育体系はどのようなものでしょうか?
吉田様:ローソン大学では、教育アプローチを「教育」と「育成支援」に分けて考えています。
「教育」は、会社が求める役割に必要な基本的な能力を身につけてもらうために、いわゆる会社の義務として提供するもの。一方「育成支援」は、そこから先の「もっと学びたい」「知りたい」というニーズに対して、学習環境を整備して支援することです。
私たちは、社員一人ひとりが「自ら考え、自ら行動する」ことができる“自律型人財”の育成を目指しています。そのためには、まず環境整備が重要です。CAREERSHIPや「まなびプレミアム」によって、社員が「学びたいときに、より多くの学びを、いつでもどこでも学べる環境」が構築できたことは嬉しいですね。
――学習者の目線に立った運用をされているのですね。対面研修・集合研修との組み合わせについても教えてください。
吉田様:現在は、事前学習としてeラーニングを活用するケースが多いと思います。リアルな研修を行う際に「基礎知識をどこから教えればいいのか」という課題がありましたが、「このeラーニングを受けてきてください」と事前課題を設定することで、効率的な研修が可能になりました。
いわゆるブレンディッドラーニングの考え方ですね。オンラインで基礎を学び、リアルで応用や実践を行う。この組み合わせが、現時点では最も効率的だと感じています。
――現在、DX教育にも注力されているとお聞きしました。
吉田様:はい。会社の方針の一つとして設定されておりまして、未来のコンビニエンスストアのあり方を様々な観点で見据えて、全社員の「デジタル人財化」を目指しています。その知識習得にも「CAREERSHIP」の仕組みを活用していますし、「まなびプレミアム」も活用しています。
基本的には、他の主管部署が策定する内製研修を「CAREERSHIP」を使って全社員に展開していますが、ローソン大学では基礎リテラシーの習得を担っており、特に「まなびプレミアム」の「DX推進シリーズ」は全社員の97%以上が学習する高い利用率を誇っています。それ以外にも「デザインシンキング」など、DX活用に繋がる多様なコンテンツが揃っている点は、「まなびプレミアム」の大きな利点だと思います
更に、DX分野の認定制度(オープンバッジ)の学習教材提供や受講管理もCAREERSHIPで行っており、社員のDXスキル習得状況の可視化にも役立っています。
全社的なCAREERSHIP活用は「基本に忠実に」
<吉田様は「環境を地道に整備していくこと」が不可欠と語ります>
――長年のCAREERSHIP活用で得られた、全社的な活用促進の成功要因を教えてください。
吉田様:私たちもまだ道半ばであり、成功と呼ぶには早いかもしれませんが、長年の運営経験から言えるのは、基本に忠実に「組織全体の教育方針を明確にし、社員の学習意欲を高める環境を地道に整備していくこと」が不可欠だということです。
また、提供するコンテンツを定期的に見直し、学習者からのフィードバックを積極的に取り入れながら、プラットフォームを進化させ続ける努力も重要だと考えています。
――今後、CAREERSHIPやライトワークスに期待することはありますか?
吉田様:CAREERSHIPを、eラーニングだけでなく、対面研修やOJTも含めたあらゆる学びの機会を統合的に案内・管理できる「総合的な学びのハブ」としてさらに進化させていきたいと考えています。社員が「困ったとき、何かを学びたいと思ったときに、まずCAREERSHIPを見る」という状態が理想です。
また、コンテンツに関しても、特にDX教育のような変化の速い分野では、より柔軟性が求められます。企業や業種、個々の課題に応じて、必要な部分だけを選択・学習できるような、モジュール化された実践的なコンテンツが充実することを期待しています。
ライトワークスさんには、教育のパートナーとして、今後も私たちの人財育成戦略を共に推進していけるような、先進的で質の高いサービス提供を期待しています。
――貴重なお話をありがとうございました。
吉田様:こちらこそありがとうございました。
【取材・文】株式会社ライトワークス