eラーニングとは、「電子機器とインターネットを活用した教育手法」を指します。日本では2000年代から企業に普及し始めました。

eラーニングにはメリット・デメリット双方ありますが、新型コロナウイルスの影響ビジネス全般のオンライン化が進んでいること、また、今後のウィズコロナ時代にも人を育てていく必要があることに鑑みれば、メリットの方が断然上回ると考えてよいでしょう。

eラーニングの手法は従来よりも多様化しており、今では下記のようなトレンドが見られます。

(1) 「動画の利用」が当たり前
(2) 集合研修など他の手法と合わせて活用する「ブレンディッド・ラーニング」が主流
(3) 隙間時間を利用して学習する「マイクロラーニング」が注目
(4) 自社に即した教育を行える「教材コンテンツの内製化」が浸透
(5) 遊びの要素を取り入れた「ゲーミフィケーション」も新たな手法として追求

では、実際にeラーニング導入するにはどうすればよいのでしょうか?費用は?具体的な使い方は?事例は?

これらの「よくある質問」について、本編で詳しく解説していきます。

eラーニング大百科

教育担当がこっそり開くパーフェクトガイド

eラーニングの運用を成功させる方法・簡単に魅力的な教材を作る方法・失敗しないベンダーの選び方など、eラーニングを成功させるための具体的な方法や知識を全70ページに渡って詳細に解説しています。

eラーニングとは?まずは簡単に解説

eラーニング(e-Learning)は、「イーラーニング」と読みます。「e」はelectric、つまり「電子的な」という意味です。eメールの「e」と同じですね。

つまり、eラーニングとは「電子機器とインターネットを活用した教育手法」と理解していただければ問題ありません。電子機器とはパソコンやタブレット、スマートフォンなどの電子端末を指します。

個々人が持っているこうした端末で、インターネットで配信される教材を受講する。これが今現在普及しているeラーニングの形です。

eラーニングは「教材コンテンツ」「LMS(学習管理システム)」で構成されており、企業はベンダーが提供するクラウドサービスを利用するのが一般的です。

eラーニングとオンライン研修(オンライン授業)の違い

eラーニングとオンライン研修(オンライン授業)は、パソコンやスマートフォンなどの電子機器を利用して学習するという点では共通していますが、いくつかの異なる特徴があります。

eラーニングは、主にインターネットを利用して学習コンテンツにアクセスすることを指す教育手法です。専用の学習コンテンツや動画、テスト形式の教材などで個々のペースで進めることが一般的です。自主性が高く、時間などの制約も少ないのが特徴です。

一方、オンライン研修は、特定の時間にオンラインで行われる研修やセミナーを指します。リアルタイムの交流が特徴で、参加者同士や講師との間でやりとりを行うことが可能な教育形式です。

Webカメラやマイクを使用してディスカッションを行ったり、リアルタイムでのQ&Aセッションが行われることが多くなっています。

つまり、eラーニングは自律的・自主的な学習、オンライン研修はリアルタイムのコミュニケーションを含んだ学習の形式という点で違いがあります。

eラーニングのメリット、特徴

eラーニングのメリットは、往々にして集合研修と比較する形で語られます。キーワードは「効率化」と「自由」です。ここでは管理者と学習者、それぞれにとってのメリットをご紹介します。

管理者のメリット

学習履歴を活用し、体系的な教育を提供できる

企業には経営目標に基づいた人材育成計画があり、どの部署のどんなレベルの社員にどんな知識やスキルを身に付けてもらいたいか、そのプロセスまでが定義されています。ただ、この計画を元に、「あなたはこういう能力アップをしてください」と指示を出すだけで社員が育ってくれるなら、こんなに楽なことはありません。

個人の成長が個人の財産となる学校と違い、企業では個人の成長業績を左右します。教育サービスの提供側受講側が、運命共同体なのです。そのため、企業の人材育成シーンでは、学習目標とそれを達成するための体系的な教育用意し、一人ひとりの社員目標到達するまでのプロセス管理してあげるのが理想的です。

これを可能にするのが学習履歴です。学習履歴とは、が、いつどの教材を、どのくらい閲覧し、テストがある場合は何点取ったか、といった情報のことです。eラーニングの学習履歴は、配信システムであるLMS(学習管理システム)から簡単にエクスポートすることができ、学習履歴ファイルには、学習の進捗状況(未/中/完など)実施時間帯所要時間テストの点数などの項目が羅列されています。これを集計し、社員の学習状況を事務局が定期的に確認することで、個人の、または組織全体学習進捗率達成度合い(合否や点数)分かるのです。

参考:LMS(学習管理システム)とは?

この仕組みを活用することで、進捗の悪い社員に学習を促す連絡をしたり、理解度の低い社員に必要なサポートを行ったり、といった施策が可能になります。eラーニングを使うと、一人ひとりの社員を、目標に向けて誘導することができるのです。

運用の手間を削減できる

「一人ひとりの社員を、目標に向けて誘導する」と書きましたが、この作業を人の手で行うのは大変です。社員研修が集合研修メインだった時代、研修のスケジュールや受講者リストをエクセルで管理し、通知文書を作成して社員にメールで配信し、研修当日には出欠を記録し、成績をエクセルに手入力して集計し、会社への報告資料を作る…、といった一連の業務を、毎年研修のたびにやるには、とにかく人手時間が必要でした。

戦略人事が当たり前となった今、人材開発部門のメンバーに求められるのは「自社のビジネスを知り、経営方針を把握し、それに基づいた人材育成計画を作成・推進すること」です。煩雑な事務作業にリソースを割くことは望ましくありません。eラーニングを導入すると、先ほどご紹介したLMSを活用することで、実施日時から受講者の管理、メール連絡、学習履歴の取得とその集計まで、ほぼ全てをシステム上自動的に行うことができます。

また、集合研修を実施するには、会場と参加者の日時を押さえる必要がありますが、eラーニングでは必要ありません。LMSにeラーニングコンテンツを登録したら、必要に応じて実施期間を決め、対象者に向けて配信するだけです。
業務負担の軽減もさることながら、現場の手を止めて研修に参加してもらうという意識をもたなくて済むことも、管理者にとっては大きなメリットと言えるでしょう。

さらに、学習者とのコミュニケーションに関しても効率化することができます。eラーニングの受講案内は、LMSから一斉配信する形が一般的です。その他の不定期な連絡も問い合わせ対応もシステム経由でできますし、関連資料の配布も簡単です。よくある質問はFAQという形でシステムに掲載しておけば、問い合わせ自体も減らすことができるでしょう。
電話やメールによる個別連絡に比べると、圧倒的手間がかかりません

こうした効率化で空いた時間に、人材開発部門の方には、本来の仕事に注力していただけます。eラーニングは、戦略人事の強い味方といえます。

大勢の学習者に均質的な教育を届けることができる

集合研修では実施一回当たりの参加人数が限られます。また、同じテキストを使っても講師によって品質ムラが生じることがあります。eラーニングなら、例えば1万人の学習者にまったく同じ教育内容を届けることができます。大規模運用はLMS(学習管理システム)を活用したeラーニングの得意分野です。

集合研修に比べて低コスト

eラーニング導入の先駆である株式会社オートバックスセブンが試算を行ったところ、同社がeラーニングを用いて始めた教育施策を集合研修で行うと仮定した場合、eラーニングの4倍のコストがかかるという結果が出ています。

また、ある大手学習塾では、新人講師向けの初期教育として実施していた3時間×4コマの集合研修のうち1コマをeラーニングに置き換えることで、教壇に立つまでの期間の圧縮と、集合研修のトレーナーにかけていたコストを25%削減することに成功しました。

教育施策にオリジナリティを出しやすい

企業の人材育成プランは自社の課題に基づいて設計されるのがベストです。もちろん、自社オリジナルの集合研修を開発することも可能ですが、基本的には専門家である講師のプログラムベースにすることになります。

eラーニングの教材の調達方法はそれに比べると多様で、①既製品を買う②オーダーメイドする③既製品をカスタマイズする④自社で制作(よく「内製」と言います)する、という選択肢があります。これらを組み合わせて活用することで、自社の人材育成上の課題に対して最も理想的な教育施策を追求することが可能です。

eラーニングの教材の調達方法

学習者のメリット

情報の信頼性

インターネットの世界にはとにかく情報が溢れていますが、その内容は玉石混交です。誤った情報を鵜呑みにしてしまうと学習において逆効果になりかねませんし、「どの情報が正しいか」を正しく判断しようと思うと、かえって時間がかかってしまうこともあります。その点、ベンダーが提供しているeラーニングは専門家の監修の下で制作されており、自社製のもの(※)も会社のお墨付きがあるわけですから安心して学習することができます。

(※eラーニングは内製することができます。詳しくは「eラーニングのトレンド」をご参照ください。)

学習した実績がきちんと会社に伝わる

eラーニングの配信・受講は、基本的にLMS(学習管理システム)を使いますが、個人の学習履歴は全てそのサーバに記録されるのが一般的です。そして、管理者はそのデータをいつでも参照することができるため、個々人が学習に取り組む姿勢を評価してもらうことができます。

いつでもどこでも自分のペースで学習できる

日時と場所が決められている集合研修と違い、eラーニングは端末インターネット環境さえあればいつでもどこでも学習できます。拘束されず、自分のペース自由に学習できるのは大きなメリットです。気軽に学習できる分、学習の習慣化にもつながります。
※秘匿性の高いeラーニングコンテンツについては、社外で閲覧できないよう、アクセス制限をかけることができます。

何度も復習できる

集合研修は時間が過ぎたら終わってしまいます。テキストは手元に残っても、「教えてもらう」機会は一度きりです。一方、eラーニングは繰り返し受講可能ですので、理解できるまで徹底的に反復学習ができます。
※テストなど、一度しか受講できない教材もあります。

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eラーニングのデメリット、課題

eラーニングのデメリット、その多くは「人ではない」こと起因します。こう聞くとなんだか致命的なイメージを持たれるかもしれませんが、そもそも人を介在しないサービスは今後社会にどんどん増えていきます。私達はそのことを認め、どこかで、何らかの形でこの感覚を克服しなければなりません。

そのために、デメリットの内容をしっかり知っておく必要があります。メリット同様、ここでも管理者学習者、それぞれの視点で確認してみましょう。

管理者のデメリット、課題

学習者同士の交流機会が減る

集合研修は、社員間のネットワーキングにも役立ちます。残念ながら個人で学習するeラーニングにはこうした副次効果がありません
ただし、元より全ての研修をeラーニングにするのは難しいため、集合研修の場をより貴重な機会としてとらえ、活用していく姿勢が必要です。また、LMS(学習管理システム)の「社内SNS機能」などを利用して、社員間のコミュニケーション促進したり、グループワークを行うなどの工夫も可能です。

質疑応答やディスカッションができない

eラーニングは自己学習なので、学習中に不明点や疑問があってもその場で解決することができません。
教育内容にもよりますが、「集合研修と組み合わせて実施する」、「LMSの『社内SNS機能』等を活用してオンラインで質問やディスカッションができるようにする」、などの工夫が考えられます。研修の企画に際しては、eラーニングだけで完結できる教育なのかどうか、よく検討する必要があります。

モチベーションのコントロールが難しい

一所に集まって行われる集合研修には、強制力があります。eラーニングは個人の自由度が高い分、「忘れてしまった」「やる気が出ない」「忙しい」などの理由でなおざりにされてしまうことがあります。
施策の重要性に鑑みて、事務局から受講を促す働きかけを行う必要があります。例えばLMSから受講促進メールを一斉配信する、上長から声かけをしてもらう、社内キャンペーンを実施する、などが考えられます。

受講環境の整備が必要

これは導入の大前提となりますが、eラーニングの利用には、インターネット環境端末が必要です。自社のインフラの状況を確認し、必要に応じて投資が必要になります。なお、個人端末が支給されていなくても、受講サイト自体は個人ごとのログインアカウントで切り替えができるので、共用パソコンタブレットを利用している例もみられます。

学習者のデメリット、課題

いつでもどこでも「できてしまう」

いつでもどこでも」というeラーニングのメリットは、裏を返すと「逃げられない」ことを意味します。逃げるという表現も本来的ではないのですが、学習者がそのように感じてしまうと、無理に無理を重ねる形になりかねません。
事務局の側では、学習者が精神的な圧迫感やストレスを感じないよう、教材の数実施期間救済措置などについて検討しておく必要があります。また、特に時間給の従業員の場合、業務時間との関係を事前に明確にしておく必要があるでしょう。

モチベーションの維持が難しい

個人の性質にもよりますが、集合研修のワイワイガヤガヤ感が楽しみ、という方は多くいらっしゃいます。どんなに忙しくても、とにかくその日は業務を離れ、皆と一緒に学習をする。このメリハリを研修のモチベーションにしている場合、eラーニングでは物足りず、やる気が起きない、という事態が想定されます。
管理者にとってのデメリットにも挙げましたが、これについては事務局の適度なフォローが必要でしょう。

受講するための環境、端末が必要

集合研修は身一つあれば受講できますが、eラーニングにはインターネット環境端末が必要です。昔はこのことが問題になりがちでしたが、今では企業における個人用パソコン支給一般化していますし、eラーニング受講に個人のタブレットやスマートフォンの利用を許可している企業も多くみられます。風化しつつあるデメリットと言えるでしょう。

eラーニングの導入に必要なもの

B to Bで提供されている一般的なeラーニングは、「教材コンテンツ」と「配信システム=LMS(学習管理システム)」で構成されています。この2つがeラーニングの導入に必要なものとなります。

eラーニング配信に用いられるシステムであるLMSはサーバ上にあり、ここから学習者の端末に教材コンテンツを配信します。学習者がこれを受講すると、学習履歴がLMS側のデータベースに記録される仕組みです。

LMS(学習管理システム)

LMS(学習管理システム)は、「学習」を「管理」するという名の通り、もともとeラーニングコンテンツを学習者に配信したり、学習結果をデータとして管理したりすることを目的として開発されました。しかし近年では、単なる「eラーニング配信システム」ではなく、企業の人材育成に必要な機能を総合的に備えたプラットフォームとしての開発が進んでいます。

関連記事:LMS(学習管理システム)とは?(弊社コーポレートサイトへ遷移します)

【eラーニングの運用イメージ】

管理者の主な役割は、LMSユーザー情報教材コンテンツ登録して必要な設定を行うことと、学習履歴の確認です。どの教材をいつ誰に配信するかは、自由に決められます。大規模な企業の場合、部門やチーム単位で管理者を置き、教育施策の管理分担することも可能です。

eラーニングはクラウドへ

かつて、企業の基幹システムや業務システムは、サーバーなどを自社内に設置する「オンプレミス」が主流でしたが、今では「クラウドサービス利用」が一般的です。2018年には内閣府が「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」を発表し、官公庁でもクラウド導入・移行が進められています。eラーニングも同様で、ベンダーのサーバからサービスの提供を受け、ライセンス費用を支払うという形が一般的になっています。

(※詳細は「eラーニングにかかる費用」をご参照ください)

教材コンテンツ(eラーニング教材)

教材コンテンツとは、学習者の端末で学べる形式で作られたeラーニング用教材です。

スライド形式や動画形式、ゲーム形式など、さまざまなスタイルのものがあります。

コンプライアンス研修向けのものやハラスメント研修向けのもの、ビジネスマナーを学べるものなど、学習内容もさまざまなものが用意されています。

社内教育の実施者は、実施したい研修内容に応じて教材コンテンツを調達し、LMSに搭載、学習者へ配信します。

教材コンテンツ(eラーニング教材)を調達するにはいくつか方法があります。

eラーニング教材の調達方法」で詳しく説明しています。

豆知識 標準規格の存在

eラーニングには「SCORM」という規格があり、これに準拠している限り、ある教材コンテンツを別のLMSに登録して運用することができます。教材コンテンツとLMSのベンダーはセットだと思われがちですが、実は現在使っている教材コンテンツはそのままに、LMSだけをもっと性能のよい製品にリプレイスすることができるのです。

eラーニング教材の調達方法

eラーニングを実施するには、配信システムである「LMS(学習管理システム)」と、「教材コンテンツ」を用意する必要があります。この章では、必要な教材を調達する方法について解説します。

eラーニング教材を調達する方法は、次の4つのパターンに分けられます。

既製のeラーニング教材を購入する

ベンダーが制作した既存のコンテンツ購入する方法です。自社オリジナルの要素は入れられませんが、プロが作った教材なので品質の点で安心できます。コンプライアンス関係の基礎教育一般的なビジネス知識PC操作語学など、普遍的なテーマであれば、パッケージ商品で十分にまかなえます。

学習テーマごとのeラーニング教材を購入する方法の他、さまざまなコンテンツから学習者が学びたい内容を受講できる受け放題サービス(サブスク型)を導入する方法もあります。

eラーニング受け放題サービス「まなびプレミアム」について詳しく見る

既製のeラーニング教材をカスタマイズする

既製品の一部を自社向けの内容にカスタマイズする方法です。多くの場合、教材コンテンツのベンダーは自社内に制作部隊を持っていますので、そこに発注します。

eラーニング教材をオーダーメイドする

ベンダーに発注し、教材コンテンツをオーダーメードする方法です。コストはそれなりにかかりますが、教材設計コンテンツ制作について、プロのノウハウを活用しながら自社オリジナルの教材を制作できる点は大きなメリットといえます。

ライトワークスのeラーニング教材制作サービスを詳しく見る

eラーニング教材を自社で制作する

教材作成ツール」を使って教材コンテンツを内製する方法です。近年、eラーニングを導入している企業の多くが実施しています。

ライトワークスのeラーニング教材作成ツールを詳しく見る

eラーニング教材調達時の注意

教材調達する際、上記いずれの方法を選択するにしても、以下の2つの考え方があります。

  • コンテンツ(教育テーマ)を起点に探す
  • LMS(学習管理システム)を起点に探す

企業の人材教育は、経営目標に添って定義された人材モデルを元に、段階的な育成計画を立て、必要な研修を企画・実施していくのが一般的です。この考え方で行くと、eラーニングの導入を教育テーマありきで進めていくのは妥当と言えます。
例えばコンプライアンスを強化すべきなので、良質なコンプライアンスのコンテンツを提供しているベンダーを探す、という進め方です。

ところが、長期的な視点で考えた場合、特定のeラーニングコンテンツだけでベンダーを決めてしまうのは得策ではありません。なぜなら、eラーニングの真価はLMSで決まるからです。

LMSには従業員がeラーニングコンテンツを受講した履歴保管されます。例えば、社内で実施した全てのeラーニング施策の受講履歴が10年分、一つのシステムに蓄積されているとしたらどうでしょう。個人の受講履歴はもちろんのこと、部門階層職種などを軸に、様々な傾向分析が可能になります。

弱点領域はどこか、強化のためにどんな教育が必要か、どんな工夫ができるのか。LMSを使いこなせば、目標に対する現状との差分を洗い出し、必要な対策を打ち出していく、戦略的な人材開発を推進することが可能になるのです。

教材は学習者に知識や技術をもたらすものですが、eラーニングはこれに加えて教育を実施する側にデータをもたらす、ということができます。これからの時代、データの収集はあらゆるプロジェクトの質や価値左右します。なぜなら、競合も同じことをするからです。昔と同じ感覚で同じレベルをキープしても、競合に抜かされては意味がありません。データを活用した戦略は、相対的レベルアップしていくと考えた方がよいでしょう。

ではコンテンツは二の次でよいのかというと、そうではありません。実はeラーニングには「SCORM(スコーム)」という標準規格があり、これに準拠している限り、あるLMSで運用したeラーニングコンテンツその履歴を別のLMSに移すことが可能です。よって、eラーニングを本格的に導入する際は、本当は以下のようなやり方を採用すべきなのです。

・まずLMSを選び、そのベンダーのeラーニングコンテンツのラインナップを確認する。
・希望のものがない場合は、他ベンダーのeラーニングコンテンツを探す。

これを実践することで、LMSもeラーニングコンテンツも、自社に最適なものを選ぶことができます。

eラーニング業界では様々なLMSベンダーがしのぎを削っていますが、大規模運用の可能なLMS豊富なコンテンツのラインナップ双方備えているところとなると数が限られてきます。一方で、専門分野に特化したeラーニングコンテンツを提供しているベンダーもあるので、必要に応じてチェックしておくとよいでしょう。

eラーニングを活用した教育施策例

企業には実にたくさんの「属性」が存在します。業種、職種、年齢、階層、性別、国籍、など。人材育成では、課題や目標を明らかにしたうえで、これらの属性をピックアップしたり掛け合わせたりして対象を定め、それぞれに最適な施策をぶつけていくわけですが、eラーニングは具体的にどのようなシーンで活用できるでしょう。

ここではその代表的な例をご紹介します。

全社教育

大規模施策はeラーニングの得意分野です。例えばコンプライアンス教育情報セキュリティの基礎教育ハラスメント教育など、全社員に同じ教育内容を届けたい場合、eラーニングなら1つのコンテンツで何千人、何万人にも対応することができます。世界規模の展開可能です。
中国についてはネット規制の問題から現地サーバを手配する必要があります。(ライトワークスでは、中国に現地法人を備えております。)

「コンプライアンス」のeラーニング教材を詳しく見る
「情報セキュリティ」のeラーニング教材を詳しく見る
「ハラスメント」のeラーニング教材を詳しく見る
中国でのLMS/ eラーニング展開を詳しく見る

部門別教育

営業部開発チーム大阪支社など、組織は様々なレイヤーで区切ることができ、それぞれに習得すべき固有のスキルがあることが普通です。部門での教育はOJT一辺倒になりがちですが、OJTは教育担当者の負担が大きく、かつその指導力に大きく左右される側面があります。これらの問題を、eラーニングを活用することで改善することができます。

「営業向け」のeラーニング教材を詳しく見る

階層別教育

内定者研修新入社員研修4-5年目研修新任管理職研修中間管理職研修などです。ビジネス基礎など、科目によってはeラーニングのみで実施することも可能です。
発展的なテーマの場合、基礎学習や予習・復習、テストeラーニングで実施し、講義やグループワーク集合型で実施することで(ブレンディッド・ラーニング)、研修期間の短縮リソースの削減可能になります。

店舗教育

店舗スタッフに対して、商品教育接客教育をする際にも、eラーニングを活用できます。従来店舗スタッフの教育はOJTが主流でしたが、新商品に関する情報共有や接客マナー、セールストークなどをeラーニングで配信すれば、全国津々浦々の店舗に同じ内容を簡単に届けることができます。
関係者全員が紙を利用する煩雑さから解放されますし、トレーナーの負担軽減にもつながるでしょう。教材作成ツールを使えば、新商品の仕様が確定した段階で教材を作り、配信することができるので、リリース時点で質の高い接客サービスを行うことが可能になります。

「全店舗スタッフ向け」のeラーニング教材を詳しく見る
「小売店スタッフ向け」のeラーニング教材を詳しく見る

専門教育

専門的な知識や技術の伝達マニュアルの共有等活用します。オペレーション教育や熟練スタッフの技術伝達、社内資格教育など、自社固有の確定した情報大勢の従業員正確に伝えたい場合に効果的です。
動画を使えば機械の操作方法目線・手先の動きなども具体的に伝えることができるので、文字情報では伝えにくい内容も分かりやすく届けられますし、日本語が分からない外国人労働者向けの教材としても使えます。

マニュアル等を教材化できる「eラーニング教材作成ツール」を詳しく見る

語学教育

eラーニングの教材コンテンツでは、文法単語の学習、センテンスの習得ヒアリング確認テストなど、実践会話以外の要素を学ぶことができます。これにオンライン会話組み合わせることで、より効果的な学習が可能になるでしょう。
なお、現場で求められる外国語力は業種や職種によって異なるので、教材を調達する場合はオーダーメイドカスタマイズも検討すると良いでしょう。例えば接客スタッフの場合、取り急ぎ自社の商品やサービスに関するセンテンスだけを丸覚えするという施策も考えられます。

「ビジネス英語」のeラーニング教材を詳しく見る
「TOEIC®」のeラーニング教材を詳しく見る

eラーニング大百科

教育担当がこっそり開くパーフェクトガイド

eラーニングの運用を成功させる方法・簡単に魅力的な教材を作る方法・失敗しないベンダーの選び方など、eラーニングを成功させるための具体的な方法や知識を全70ページに渡って詳細に解説しています。

eラーニングの歴史

今普及しているeラーニングの原型は1990年代にアメリカで生まれ、日本では2000年に政府が打ち出したe-Japan構想をきっかけに普及し始めました。2001年には特定非営利活動法人「日本イーラーニングコンソシアム」が発足し、eラーニングの普及促進事業を開始します。その歴史は、近い未来も含めて大きく4つのステージに分けることができます。

CBT(Computer-Based Training)時代(1990年代)

1995年にWindows95が発売され、家庭にパソコンが普及し始めました。Windows95にはCD-ROMが標準装備されていたため、これを活用し、動画や音声を駆使した教材パソコンで受講するという形態が広まりました。CBT(Computer-Based Training)と呼ばれるこの手法には、大容量のデータを収録できるCD-ROMの特性を生かし、動画や音声などのマルチメディアを活用したインタラクティブなコンテンツ効果的に利用できるというメリットがありました。

一方で、教材の作成コストがかかることや、配布後の内容の修正が難しいこと、また、学習の進捗度を管理者側で一括管理することが困難などの課題もあり、一般的に普及するほどには拡がらず、導入したのは一部の大企業に留まりました。

WBT(Web-Based Training)時代:2000年代

2000年に、当時の森内閣が日本型IT社会の実現を目指す「e-Japan構想」を打ち出しました。ここで、5年以内に超高速ネットワークインフラを整備し、低価格で利用できるようにすることなどが重点政策として掲げられ、日本社会は急速にWeb化していきます。インターネットのブロードバンド化が進み、一般家庭や企業でも、FTTH・CATV・ADSLなどの高速・大容量のインターネット接続サービス利用できるようになりました。

教育現場でも、2001年には日本イーラーニングコンソシアムが設立され、eラーニングの普及促進事業が本格的に始まりました。そして、パソコンで受講する教材CD-ROMからWeb配信型のコンテンツシフトしていきました。LMSベンダーやeラーニングコンテンツ作成をはじめとする周辺サービスも多く生まれ、CBT時代よりも安価に教材を作成し、受講者に届けることが可能になりました。

インターネットにつながったパソコンさえあれば好きな時間好きな場所で学習でき、実施報告も不要という点で、WBTは受講者たるビジネスパーソンにとっても革新的だったと言えます。

モバイル時代:2000年代後半~

2007年にiPhoneが、翌2008年にAndroid搭載のスマートフォンが発売され、個人がモバイル型のデバイス(端末)を所有する時代となりました。2010年にはタブレットが登場し、インターネットを使って動画音楽を楽しむ文化が広く普及しました。「個人が自分の端末コンテンツを見るのが当たり前」になったことで、eラーニングは従来以上に自然に、自由な形で企業に導入されるようになります。

教材を配信する仕組み自体はWBT時代と同じですが、スマホさえあればパソコンがなくても学習できるので、社員教育の裾野が広がり、正社員だけでなくパートタイマーアルバイトスタッフにも必要な教育サービスを届けられるようになりました。

また、動画配信技術の発達により、動きを伴う学習も教材として配信できるようになりました。機器操作や手先を使う技術の伝達、体の動きなどを視覚的に伝えられるので、これまで以上に幅広い職種でeラーニングを活用できるようになったのです。

こういった動きに伴って、TwitterやFacebookなどのSNSや、ブログ、YouTube、Q&Aサイトといったソーシャルメディアを学びのツールとして活用する「ソーシャルラーニング」や、1回の学習時間が1~5分程度に収まるよう学習範囲を細かく区切り、学習の手軽さとそれによる効果の向上を狙う「マイクロラーニング」といった新たな手法が出現しました。 

AI/BI時代:2020年以降

AI(人工知能)とBI(ビジネス・インテリジェンス)は分けて考える必要がありますが、ビッグデータの活用という点では共通性があります。

BIツールを用いて、LMS(学習管理システム)に記録される学習履歴を人事データベースやタレントマネジメントシステムなどのデータと連携して分析し、経営判断に活用する施策は、一部の企業ですでに行われています。

AIについては、人事情報や学習履歴などの情報から個々人の学習プランを自動作成したり、学習方法を提案したりといった構想があり、学校教育の領域では実現に向けた具体的な取り組みが進められています。ただ、ビジネスの領域ではまだまだ模索の段階といえます。それは、全国規模(場合によっては世界規模)で教育体系が整備されている学校教育と違い、社会人教育は職種や企業、業界によって教育体系が異なり、ビッグデータを収集しにくいことに起因していると考えられます。

AIを活用した学習については、学校教育におけるアダプティブラーニング(適応学習:履歴などのデータを元に個々人の傾向を判断して個別の学習プログラムを策定する教育手法)の分野が先行し、その後、社会人教育への適用が検討されるものと思われます。

一方で、eラーニングコンテンツの作成や運用にAIを活用する動きはすでに見られます。代表的なのは文字認識機能活用するもので、教材用に作成した原稿をAIに読ませて音声を作らせたり、語学の添削に活用したり、といった技術はすでに実用化されています。

eラーニングのトレンド

eラーニングは時代とともに変わってきました。影響を及ぼしてきた主な要素を思い返して見ると、代表的なものとして(1)IT技術の発達、(2)戦略人事の広まり、(3)予算問題(景気)が挙げられます。ここではこうしたイベントを経ながら今に至る、eラーニングの最新事情をお伝えします。

動画利用が当たり前に

動画配信ビジネスの発達に伴い、eラーニングの世界でも動画の利用が当たり前になっています。企業のインフラは投資規模の問題などから一般に比べてアップデートが遅いことが多いので、初期の頃は「通信が遅くなる」「回線がパンクする」といった懸念から、動画教材の導入に慎重になる企業がほとんどでした。

しかし、2014年以降にストリーミングサービスが急速に普及すると、これが徐々に企業にも広まり、最近ではこうしたトラブルもほとんど聞かなくなりました。

eラーニングの教材に使われる動画は、講師による講義を撮影したもの、経営トップのメッセージ作業マニュアル新商品サービス共有動画など、様々です。業界や職種を問わず、「動きと音を使ってリアリティを持って伝えられること」が動画教材の最大のメリットと言えるでしょう。

ブレンディッド・ラーニングが主流に

ブレンディッド・ラーニングは”blended”すなわち「ブレンドした」 学習という意味です。ブレンド学習とも言い、集合研修eラーニング組み合わせて使う手法として知られています。

元々eラーニングは集合研修と競合する形で進化して来ましたが、大企業を中心に一通り浸透し、今では集合研修の代替手段という形ではなく独立した一個の手法として広く認識されています。

そこで、2つの手法を組み合わせ、それぞれの長所を活かしつつ欠点を補い合うことで教育効果を最大限に高めていこうという考え方が、ブレンディッド・ラーニングを生み出しました。

ディスカッション質疑応答実技指導などが必要な学習は集合研修で、予習や復習テストの実施eラーニングで、というのが基本の役割分担です。事前にeラーニングによる予習を入れることで、集合研修の当日までに受講者の知識レベルを揃えることができます。これは同時に目的の共有意識強化にもつながり、モチベーションのアップ期待できます。

こうすることにより、集合研修では対面でしかできないワーク集中することができます。さらに、集合研修の後にeラーニングによる復習を入れることで、記憶の定着レベル上げ集合研修だけでは実現できない学習効果を得ることができるのです。

この他にも、SNSを使ったグループワークやオンライン研修を組み合わせるなど、自由な設計可能です。ブレンディッド・ラーニングは、人材育成の重要性が高まる中、企業各社が目的思考で効果の高い教育施策を模索する動きの現われと言えるでしょう。

なお、最近では集合研修の管理機能を持つLMS(学習管理システム)も増えてきたので、eラーニング集合研修一括して運用・管理することが可能になってきています。これにより、ブレンディッド・ラーニングよりいっそう企業の教育シーンに定着していくことと思われます。

eラーニングにもミニマリズムが浸透

完成度を追求するために装飾的な要素を極限までそぎ落とすミニマリズム個人のライフスタイルを表す言葉として社会に浸透しましたが、eラーニングにも似たようなことが起きています。

かつて、eラーニングの想定再生時間は30分から60分が当たり前で、学習画面にはイラストや音声、アニメーションがふんだんに使われていました。一本のeラーニングの開発に、何百万円もの予算が投じられることもしばしばありました。

しかし、リーマンショックをきっかけに多くの企業で教育予算が削減され、こうしたリッチなeラーニングの開発は下火になります。とはいえ、不況だからと言って教育の重要性が下がるわけではありません。人材不足グローバル化が進む中、むしろ教育に力を入れる企業が増えて行きました。

一方で、ちょうどこの時期、スマートフォンやタブレットなどの普及により再生環境が多様化したことで、技術的な観点から、複雑な仕組み(仕様)のコンテンツが敬遠されるようになります。同時に、人々がちょっとした隙間時間スマートフォンで情報を得る、という文化が社会に根付いていきました。

こうした傾向を受けて、eラーニングは学習目的に向かってよりシンプルに、より安価に、より短く作られるようになっていき、1~5分、長い場合でも10分程度のコンテンツを、スマホやタブレットで学習する「マイクロラーニング」の形式が多くみられるようになりました。動画の利用が普及し、動きのある学習はそちらでカバーできるになったという背景もあるでしょう。

最近の(動画を除く)一般的なeラーニングコンテンツでは、要点をまとめたスライド解説文という構成が主流になっています。作りに凝るよりも、学習内容を端的に伝えるミニマルなeラーニングが評価されているのです。

eラーニング教材の内製が増加

リーマンショックによる教育予算の削減は、企業に「研修の内製化」という流れをもたらしました。高い予算をかけてeラーニングを外注したり、外部講師を呼んで集合研修をするよりも、社内のリソースで必要な教育を作って提供できないか、というものです。

ここにeラーニングのミニマル化の動きが重なり、内製化へのニーズ高まりました。パワーポイントで資料を作成する要領で、「これなら自社でも作れるんじゃないか?」と考えられるようになったのです。既存の集合研修テキスト活用すれば、大変合理的ですね。

これを受け、LMS(学習管理システム)ベンダー各社が教材作成ツールをリリース。今では多くの企業が、自社簡易なeラーニングコンテンツ作り、従業員に配信しています。

ライトワークスのeラーニング教材作成ツールを詳しく見る

マイクロラーニングとゲーミフィケーション

eラーニングのミニマル化について述べましたが、「マイクロラーニング」は特に時間単元(つまり学習目標)に注目して開発された手法です。一回の学習時間を1~5分、長くても10分程度とし、単元を細かく区切って大量のeラーニングコンテンツを作成します。

学習者は隙間時間を利用してこれを一つ一つ受講し、学習目標達成します。イメージしやすいのは英単語や文法専門分野の用語解説などですが、連続性のある学習内容分割して提供することも可能です。

このマイクロラーニングと相性がよいのが、ゲーミフィケーションです。

ゲーミフィケーションは「ゲームとは関係のない分野に、ゲームの仕組みや手法を活用していく」という取り組み全般を指します。教育の分野もその一つとして、eラーニング、特にマイクロラーニングにゲーミフィケーションを掛け合わせる動きが活発化しているのです。

例えば単元をクリアするごとにポイントが加算されてアイテムをゲットするとか、クイズのUI(ユーザーインターフェイス)を利用して反復学習を促すとともに、学習者同士を競わせて学習効果を高めるといった使い方が考えられます。

特に、頻繁にスマートフォンを使い、オンラインゲームに慣れ親しんでいる若い世代に対し、効果的な手法と言えるでしょう。

豆知識 テレワーク・オンライン研修の強い味方

2019年12月に中国武漢市から発生して全世界に広まった新型コロナウイルス(COVID-19)。これをきっかけに、各国でテレワークオンライン授業の環境整備が急ピッチで進められました。Web会議オンライン授業社員の健康チェック動画の無料配信といったサービスへのニーズが急上昇したためです。

中国では、アリババやテンセント、ファーウェイなどIT各社が新機能の急ピッチ開発サービスの増強に追われました。2020年の春節が明けた初日の2月10日、組織向けのコミュニケーションツールDingTalkの1日当たりアクティブユーザー数は、春節期間の7倍に相当する1億2200万人に昇ったそうです。

日本でも、新型コロナウイルス対策の中でテレワークの推進と研修のオンライン化の動きが加速しました。同2月27日~3月4日にマーサージャパンが行った調査によると、回答579社のうち82%が「在宅勤務・テレワーク」を全社または一部の部門で実施52%が社内会議をオンライン会議に切り替えました。また、71%の企業で「集合型社内研修の中止・延期」があり、27%がそうした研修をオンライン研修に切り替える対策を取りました。

日本では2020年のオリンピックを契機にテレワークが一気に推進されるとの予測でしたが、新型コロナウイルスによって前倒しとなり、緊急度・重要度ともに最高レベルの環境下で半ば無理矢理推し進められることになった格好です。当然一過性の面もありますが、在宅でできることは在宅で、という考え方は今後も続いていくでしょう。eラーニングはますますビジネスパーソンに身近になっていくものと思われます。

参考
“新型コロナで勃発した中国IT市場の異変(上)”. 日経ビジネス.(参照 2020-03-25) https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00117/032400008/?n_cid=nbpnb_mled_mre
“新型コロナウイルスで出張を中止・延期した企業が9割超、会議・研修もオンライン化へ”. トラベルボイス.(参照 2020-3-10) https://www.travelvoice.jp/20200310-145632

eラーニング大百科

教育担当がこっそり開くパーフェクトガイド

eラーニングの運用を成功させる方法・簡単に魅力的な教材を作る方法・失敗しないベンダーの選び方など、eラーニングを成功させるための具体的な方法や知識を全70ページに渡って詳細に解説しています。

eラーニングの導入にかかる費用

eラーニングの費用は、大きく以下の2種類に分けられます。

LMS(学習管理システム)の費用

eラーニングの配信システムであるLMSの費用は「初期費用」と「月次費用」で構成されるのが一般的です。

・初期費用

LMS導入時のセットアップ費用に当たります。こちらは数十万円といったところでしょう。ただし、カスタマイズや特殊な設定を行う場合は、別途で費用が必要になります。

・月次費用

システムのライセンス料と、利用条件によってサーバのディスク使用料がかかってきます。
ライセンス料は月次で決められていることが多く、利用するメニューにもよりますが1ユーザー(アカウント)当たり数百円程度です。多くの場合、ボリュームディスカウントがあり、登録ユーザー数が多いほど単価は安くなります。
ディスク使用料は、自社で用意したeラーニングコンテンツや動画ファイルをベンダーのサーバ上に保管する場合にかかってきます。
この他に、オプションとして導入時研修問い合わせ対応などの代行といった運用支援に関する費用が考えられます。

eラーニングコンテンツの費用

eラーニングコンテンツの費用としては、内製やオーダーメイドの場合の「制作費」と、ベンダーが提供するコンテンツを利用する場合の「ライセンス料」が考えられます。

・制作費

内製用教材作成ツールライセンス料と、オーダーメイドする場合外注費が考えられます。
教材作成ツールについては、インストールパッケージやWebツール、LMSのメニューとして組み込まれているものなど、提供形態が様々なので例示が困難ですが、ライセンス料形式年間に数万円から数十万円といったところが目安と思われます。
オーダーメイド費用は、eラーニングコンテンツの仕様によって大きく変動します。シンプルなものなら数十万、仕様が複雑な場合は数百万円かかることもあるでしょう。

・ライセンス料

1ユーザーあたりの月次ライセンスという考え方をベースに、1ヶ月あたり、3ヶ月あたり、6ヶ月あたり、年間など様々な契約期間が設定されています。ここでも、ユーザー数やeラーニングコンテンツの数が増えるほど単価が下がるボリュームディスカウントが適用されるのが一般的です。
月次ライセンスの単価は教材の内容や長さによって異なるため一概には言えませんが、一ヶ月あたり数百円~数千円といったところが標準的でしょうか。LMSのライセンス料と同様、こちらについても利用人数次第でボリュームディスカウントがあり得ます。

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【eラーニングに係る費用の概観】

eラーニングの導入成功事例

どんなシステムを検討するにしても、導入事例大変参考になるものです。どの企業がどんな風にそのシステムを活用して成功を収めたのか。事実ベースのこうした情報には、それだけで大いに説得力があります。自社がベンチマークとする事例を見定め、社内の提案上申活用するのもよいでしょう。ぜひ参考にしてください。

TDK株式会社

TDK株式会社では元々eラーニングを利用していましたが、効率化が利点のはずのeラーニングで思うような効果が得られず、さまざまな課題を抱えていました。

eラーニング教材の制作にも工数と費用がかかってしまい、学習機会の増加を阻んでいたといいます。

そこで、使い勝手の良いLMS(学習管理システム)へのリプレイスを実施することでユーザー管理などを大幅に効率化することに成功。

eラーニング内製ツールを活用することで、教材の開発にかかる手間や費用も大きく軽減する結果に繋がりました。

株式会社タカラトミー

株式会社タカラトミーでは、積極的なコンプライアンス活動を実施しています。その一環として、eラーニングを利用した社員への法令遵守教育も行っています。

すべての社員にタカラトミーとしてのコンプライアンスへの考え方を伝えるためにLMS(学習管理システム)を活用。海外拠点を含む全グループ・全社員が受講できる環境を導入しました。

eラーニングやアンケートなどの機能を活用し、わずか3名で11カ国・8言語での教育や情報発信を実施しています。

さらに詳しく:11カ国・8言語での配信をわずか3人で運用 LMSをコンプライアンスの“インフラ”に

物語(上海)企業管理有限公司

株式会社物語コーポレーションでは、中国進出を進めていくにあたって現地採用の従業員教育にeラーニングを活用しました。

店舗数が増えてスタッフが増えてもサービスレベルを維持できるよう、eラーニングを導入。「見たらすぐに業務に活かせる」動画形式のeラーニング教材でのスタッフ教育を行いました。

モバイル端末でも視聴しやすいよう、長くて3分程度の動画教材にし、技術考課の見直しを設けて学習が給与に繋がる状態を作り出すことでeラーニング受講率80%以上という状態を実現しました。

さらに詳しく:中国進出企業のスタッフ教育 eラーニング受講率80%を実現するまでの取り組み

eラーニング大百科

教育担当がこっそり開くパーフェクトガイド

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