【製造業向け】スキルマップで技術継承を効率化!作成手順や事例を解説

「ベテランの定年退職が迫っているが、下の世代への技術継承がうまくいっていない」

このようなお悩みからスキルマップを中心とした改革で現状を打開したいと考えているものの、何から手を付けたらよいのかお困りではないでしょうか。

製造業の就業者構成は大きく変化しています。経済産業省などが公表した「2025年版 ものづくり白書 概要」1で2002年と2024年の就業動向を比較すると、若年層(34歳以下)の就業者数は減少、高齢層(65歳以上)の就業者数は増加しています。

若手不足が進む中、製造業の現場では技能継承や人材確保が深刻な課題となっています。

この状況を打破するには、生産年齢人口の減少という社会構造の変化も踏まえ、従業員一人一人のスキルを正確に把握し、戦略的に人材を育成・活用していく体制づくりが欠かせません。

スキルマップは従業員のスキルや習熟度を可視化し、人材の配置や育成計画の最適化、安定した生産体制の構築をサポートするツールとして、多くの製造業企業で導入が進められています。

この記事では、スキルマップの基本から、製造業における具体的な活用メリット、作成手順、運用時の課題とその解決策、さらに企業の導入事例まで詳しくご紹介します。組織と人材の力を最大限に引き出すためのロードマップとして、お役立ていただければ幸いです。

「スキル管理、何から始めれば…?」を解決! ⇒ 「スキルマップの基礎ブック」を無料でダウンロード

関連記事

「スキルマップをうまく使えば、従業員が自ら学んで成長できるらしい」今、従業員のスキルや能力を組織力の向上につなげたいと考える多くの企業が「スキルマップ」に注目しています。企業は自律的に行動する従業員を求め、従業員は自分に合[…]

スキルマップとは?導入のコツと作成手順、企業事例を紹介

AIで要約

  • スキルマップは、国際規格ISO9001で必須となる力量管理や監査時の記録提示において、対応工数の削減と業務効率化を同時に実現します。
  • スキルマップ導入時は、全社一斉ではなく対象範囲を絞ったスモールスタートでテスト運用を行い、現場の負荷や課題を解消してから展開範囲を広げると成功しやすいです。
  • LMSと連携して不足スキルと教育をひも付ける仕組みを整えれば、導入初期には見えにくい人材育成の成果を定量的に測定可能になります。

スキルマップの基本と製造業で注目される理由

スキルマップとは、従業員が保有するスキルや知識、資格、経験などを可視化した一覧表です。職種や業務ごとに求められるスキルと、そのレベルを「見える化」することで、人材配置や教育方針、評価制度の最適化に役立ちます。

製造業においては、業務やその遂行に必要な技能が多岐にわたるため、技能やノウハウの属人化が生じやすく、その継承が大きな課題となっています。特にベテラン従業員が退職・異動する際に本人が有するノウハウが共有されていないと、生産現場全体の品質や安定性の低下につながりかねません。

こうしたリスクを回避する手段として、スキルマップは極めて有効です。スキルマップを活用すれば、従業員一人一人の「できること」「できていないこと」が明確になり、業務に必要なスキルの保有状況を組織全体で把握できます。

誰がどの工程を担えるのか、誰にどの教育が必要かといった情報が一目で分かるようになるため、属人化の解消と同時に人材の育成や配置の精度向上にもつながります。

また、製造業では人手不足への対応も急務です。限られた人材で最大限の成果を出すには、まず組織の現状と必要なスキルとのギャップを可視化して、人材を戦略的に育成・活用することが欠かせません。スキルマップはそうした人材戦略の基盤としての役割も果たします。

関連記事

「新入社員を早く戦力化したいが、現場や教育担当の負担は増やしたくない」建設業や製造業は現在、新人教育において大きな課題を抱えています。現場は人手不足で、早急な人員の補充が望まれている反面、未経験の新入社員を配属されると教育に手が取[…]

【建設業・製造業向け】新入社員研修のカリキュラム内容例とポイント

製造業でスキルマップを活用する6つのメリット

製造業でスキルマップを活用することで得られる6つのメリットを、具体的に見ていきましょう。

メリット1:ISO9001の力量管理への対応

製造業において、品質マネジメントシステムの国際規格である「ISO9001」への対応は、多くの企業にとって不可欠となっています。その中でも特に重要な要素が「力量管理」です。

ISO9001では、組織に対して「業務を適切に遂行するために必要な力量を特定し、教育訓練や適切な処置を通じて、従業員に必要な力量を備えさせること」を求めています。従業員一人一人のスキルの現状を明らかにし、不足しているスキルを補えるよう教育計画の立案と定期的な見直し、フォローアップ体制の構築が必要です。

このようなISO要件をクリアするために、スキルマップは非常に効果的なツールとなります。スキルマップを活用すれば、各従業員の保有スキルや達成度を一覧で把握でき、対応可能な業務と任せるには追加教育が必要な業務が明確に判断できます。

ISO9001は特に建設業・製造業で積極的に取得されており、すでにスキルマップが広く活用されていることがうかがえます。

メリット2:実効性のある人材育成の実現

スキルマップを活用すると、個々のスキル保有状況が一覧で把握できるようになります。現在どのスキルが不足しているかとともに、組織として将来的に強化していくべきスキルも明確になります。

例えば、チーム内でスキル分布の偏りが生じ、特定の工程に必要なスキルの保有者が少ない場合、「偏りを解消するためには誰にどの教育が必要か」を可視化でき、計画的な人材育成が実施できます。

また、スキルマップを基にした人材育成計画は、経営戦略や人材配置と連動させやすく、無駄のない人材育成を可能にします。タレントマネジメントの視点からも有効で、個々の強み・課題に応じた最適な成長支援が行えるため、人材育成における効果の最大化とコストの削減が期待できます。

メリット3:効率的な品質管理と生産性向上(QCD改善)

製造業では業務の多様化や人材のスキルレベルのばらつきにより、現場の生産性や品質の安定性に差が生じやすい場合があります。スキルマップを用いて適材適所の人材配置を徹底すれば、生産性向上や安定した品質の確保が可能です。

例えば、緊急度の高い業務や有資格者が求められる工程に対して、即戦力となる人材を迅速に割り当てることができるため、納期の遵守や稼働率の向上に直結します。

また、スキルレベルが不足している従業員が重要な業務を担当するリスクを回避できるため、品質の低下を防ぎ、安定した生産体制の構築にもつながります。

結果として、Q(品質)・C(コスト)・D(納期)の各面での改善が期待でき、組織全体の生産性と業務効率の底上げを実現します。

メリット4:公平な人事評価

人事評価においては、評価者の主観や認識の違いによって評価結果にばらつきが生じるリスクがあります。スキルマップを導入すれば、業務ごとに必要なスキルとそのレベルを明確に定義でき、評価基準を可視化することが可能です。

例えば、1〜4の段階評価を用いることで、「どのレベルに達していれば何ができるか」が共通認識となり、評価の軸が統一されます。これにより、評価者による判断のブレを抑え、被評価者にとっても納得感の高い評価が実現します。

また、スキルの向上が評価に反映される仕組みを整えることで、従業員の自律的なキャリア形成やスキルアップの促進にもつながります。

メリット5:従業員の成長促進・モチベーション向上

スキルマップを活用すると、従業員は自分に求められているスキルや現在のレベルを客観的に把握できるようになります。何を目標にどのようなスキルを伸ばせばよいかが明確になり、学習意欲の向上が期待できます。

また、他のメンバーのスキル状況を共有することでロールモデルの発見にもつながり、成長への意識が高まります。加えて個別面談の場で上司がスキルマップを活用すれば、目標設定やフィードバックがより具体的・建設的になり、有用性の高い指導が実現します。

スキルマップは従業員の主体的な学びを支え、モチベーションの維持・向上に貢献する仕組みとして効果的です。

メリット6:業務効率化

スキルマップは、人材育成だけでなく、人事全般の業務効率化にも効果を発揮します。スキル情報の一元管理によって、人材の採用・配置・教育・評価といった各業務の連携がスムーズになり、重複作業や情報の行き違いを防ぐことができます。

例えば、ISO9001の監査対応では、従業員の力量や教育・訓練の記録などの提示が求められます。スキルマップがあれば必要な情報を迅速に提示可能です。

また、新入社員や異動者のスキル把握・育成計画立案などにおいても作業を効率化し、現場と連携して必要な研修(OJT、Off-JT、eラーニングなど)をスムーズに開始できます。

関連記事

製造業で使えるeラーニングには、「特化型・汎用型(製造業に限らず幅広いテーマのコンテンツを扱うタイプ)」の2種類があります。両者には、特化型であれば「製造業の深い知識まで学習できる」、汎用型なら「一般的なスキルと組みわせて幅広いコンテンツ[…]

製造業向けのオススメeラーニング10選!メリットや製造業ならではの選び方のポイントなども解説

製造業のスキルマップ作成4ステップ

次に製造業におけるスキルマップの作成を4ステップで解説していきます。

ステップ1:目的の明確化と対象範囲の設定

スキルマップの作成においては、「なぜ作成するのか」という目的を最初に明確にすることが欠かせません。目的が曖昧なままでは、評価項目や対象範囲が広がり過ぎて管理が煩雑になり、スキルマップの運用が継続できず形骸化する恐れがあります。

例えば、「生産性を3%向上させる人材配置を実現する」「教育期間を20%短縮する」といった具体的な数値目標を設定すると、関係者の認識もそろいやすくなります。

併せて、どの部署や職種を対象にするのか、どのようなスキルを評価するのか(例:業務遂行能力・専門知識・ヒューマンスキル)など、カバーする範囲も整理しましょう。

ステップ2:必要なスキル項目の洗い出しと体系化

目的と対象範囲を定めたら、次はスキル項目の洗い出しです。これはスキルマップの「中身」をつくる重要な工程です。対象業務を遂行する上で必要な知識・技能・行動を具体的にリストアップしていきます。

スキルの洗い出しには厚生労働省の「職業能力評価基準」2が参考にできます。「職業能力評価基準」とは、業種別、職種・職務別にどのような知識・スキルが必要かを、体系的に整理したスキル評価の枠組みです。

以下は、「職業能力評価基準」を参考に作成した、加工業務についてのスキル項目例です。

【製造業のスキル項目例:ねじ製造業(ヘッダー加工)の場合】

スキル項目内容
(1)加工の理解と段取り・基本的知識を習得している
・作業手順書・マニュアルを確認し段取りできる
・金型の確認
・取付けができる
(2)加工の作業の実施  ・機械の条件設定ができる
・適切な加工作業ができる
・作業効率を意識した取り組みができる
(3)加工の作業の評価  ・加工品の外観・寸法をチェックし良否判定ができる
・不良やトラブルの報告・処置ができる
・金型の調整・保守を適切に実施できる

参考:厚生労働省「職業能力評価基準 ねじ製造業」(閲覧日:2025年8月19日)

洗い出したスキルは職種・工程・目的別に分類し、必要に応じて階層化することで、管理しやすくなります。あまり細かくし過ぎると形骸化の原因にもなるため、現場での運用を意識した粒度で整理することがポイントです。

関連記事

「従業員のスキルを可視化し、戦略的な人材育成に生かしたい。」そう考えてスキルマップの導入を検討するも、「具体的にどんな項目を設定すればいいのか?」「自社に合った項目はどうやって洗い出せば…?」と、最初のステップで手が止まってしまう[…]

【職種別】スキルマップ項目例と5つの作成ステップ、運用ポイントを解説

ステップ3:スキルの評価基準・評価段階の設定

スキル項目を整理したら、それぞれの項目に対して「どの程度できているか」を評価するための基準を設定します。評価の仕方が曖昧になると、スキルマップの信頼性や活用効果が損なわれるため、具体的かつ統一された基準を設けることが重要です。

評価は3〜6段階で設定するのが一般的です。ここでは、厚生労働省の「職業能力評価基準」を簡略化した「職業能力評価シート」3の3段階評価を参考に基準例を紹介します。

【評価基準の例】

1人でできている (下位者に教えることができるレベルを含む)
ほぼ1人でできている (一部、上位者・周囲の助けが必要なレベル)
できていない (常に上位者・周囲の助けが必要なレベル)

参考:厚生労働省「職業能力評価シート(ねじ製造業)のダウンロード」(閲覧日:2025年8月19日)

このように段階的な評価を取り入れることで従業員の成長過程をより正確に捉え、適切なフィードバックや人材育成計画につなげやすくなります。

ステップ4:スキルマップの作成と定期的な見直し

評価基準まで整ったら、いよいよスキルマップの作成に入ります。ExcelやLMS(Learning Management System:学習管理システム)などの管理ツールに、従業員名・スキル項目・レベル・評価結果などを入力し、一覧で確認できるフォーマットに落とし込みましょう。

スキルマップは運用開始後も定期的に見直しを行います。一度作って終わりではなく、継続的に改善することで、初めて有効な人材マネジメントツールとして機能します。

製造業は自動化やDXが進展しており、業務の進め方や求められるスキルが常に変化しています。変化に応じて、スキル項目や評価基準を柔軟に更新していきましょう。

作って終わりじゃない。定着まで伴走するスキルマップ支援 ⇒ スキルマップ構築支援サービスについて詳しく見る

スキルマップ導入・運用における5つの課題と解決策

スキルマップは人材の育成や配置に効果的なツールですが、導入にはいくつかの注意点があります。ここではスキルマップ導入・運用における5つの課題とその解決策を紹介します。

課題1:作成・管理に時間がかかる

スキルマップの作成には、スキル項目の洗い出しや評価基準の策定、データ入力など、多くの工数がかかります。さらに、導入後も定期的な更新が必要なため、人事部門や教育担当者にとって大きな負担となる場合があります。

この課題に対しては、まず具体的な作成スケジュールを設け、関係者に共有することが有効です。また、人事部門だけではなく、現場のマネージャーやリーダー層を巻き込むことで、実態に即したスキル項目を効率的に設定できます。

加えて、既存の業務マニュアルや研修資料、厚生労働省が公開している「職業能力評価基準」4のテンプレートなどを活用すれば、ゼロから項目を設計する必要がなく、作業時間の大幅な短縮が可能です。

「職業能力評価基準」をベースにしたスキルテンプレートで効率化! ⇒ ライトワークスの「スキルテンプレート」を無料ダウンロードする

課題2:最初から全社導入するとスムーズな運用が難しい

スキルマップ導入は人事部門や教育担当者にとって業務負荷となる場合があります。そのため、いきなり全社に導入すると、現場で混乱が起きた際に対象範囲が広過ぎて対応しきれず、運用でつまずいてしまう可能性があります。

これを避けるには、スキルマップ作成後にすぐに全社展開するのではなく、重点部署や主要工程など対象をある程度絞り、スモールスタートで運用する方法が有効です。

一部部署など限られた範囲でテスト運用を行い、運用上の課題や現場の意見を収集して、対応を改善していきます。

そうして十分にスキルマップの運用体制をブラッシュアップしてから少しずつ全社に展開していくようにすれば、担当者の運用負担を軽減しつつ、スムーズな運用ができるでしょう。

課題3:従業員の不満増大やモチベーション低下のリスク

スキルマップは人材の評価や管理の透明性を高める一方で、従業員によっては「監視されているようで不安」「今の業務を外されるのでは」といった懸念を抱く可能性があります。

これは自身のスキルレベルや不足しているスキルが可視化されれば、より厳しい評価を下される可能性があるというプレッシャーを感じるためです。こうした心理的な抵抗感が、スキルマップ導入後のモチベーション低下につながる恐れもあります。

この課題に対しては、スキルマップ導入の目的が「管理」ではなく「従業員の成長支援」であると、全社的に丁寧に説明して従業員の理解を得ることが重要です。

運用においても、従業員が納得感を持ってスキルマップを活用できるよう工夫が求められます。例えば、評価基準や活用方針を公開し、個別面談などで評価結果のフィードバックをするなどが挙げられます。

また、フィードバックでは「スキルマップに沿ったスキル習得がキャリア形成にどう生きるか」といった視点で対話を重ねるとよいでしょう。スキルマップを自己成長のためのツールとして捉えてもらいやすくなり、主体的な活用の促進につながります。

課題4:導入直後の効果が見えにくい

スキルマップは中長期的な人材育成や組織力強化に効果を発揮するツールですが、導入直後は成果が見えにくく、現場から「手間の割に効果が分からない」といった声が上がることもあります。

この課題に対しては、「各現場でのスキル分布の偏りを是正する」など、スキルマップの活用に対する測定可能な目標設定が重要です。目標を設定し、それに対する進捗や成果を確認し評価することで、スキルマップ導入による効果を測定可能です。

また、スキルマップの本領を発揮するには、LMSとの連携が非常に有効です。スキル管理機能を備えたLMSは、スキルギャップを把握できるだけでなく、それに応じたeラーニングや研修コンテンツのひも付けが可能なものもあり、従業員は自分に必要な内容を効率的に学習できます。

さらに、LMS上で学習・研修の進捗や内容の理解度、受講履歴を一元管理すれば、「どの教育施策がどのスキル向上につながったか」といった教育の効果を可視化できます。これにより、教育内容とスキルの評価・管理の連動が進み、現場や経営層に対して説得力のある成果報告が可能になります。

スキルと教材をひも付けて効果を可視化! ⇒ ライトワークスのLMS「CAREERSHIP」のスキル管理機能を詳しく見る

課題5:運用ノウハウやリソース不足

スキルマップの運用はまだ多くの現場で標準化されておらず、特に管理職や現場のマネージャーにとっては、スキルマップを用いた評価やスキル項目の更新といった作業が大きな負担となることがあります。また、リソース不足により、せっかく導入しても活用が進まないというケースも見られます。

この課題を解決するには、Excelなどの手作業による運用から脱却し、LMSを活用して運用の効率化を図ることが有効です。システム上でスキルマップの項目や各従業員のスキルデータを一元管理でき、情報の更新やフィードバックもスムーズに行えるため、担当者の負担軽減につながります。

また、運用ノウハウの蓄積には、評価者向け研修の実施やスキル管理のコンサルティングサービスの利用などが効果的です。

スキルマップの設計・構築から活用まで伴走支援! ⇒ ライトワークスのスキルマップ構築支援サービスを詳しく見る

スキルマップを導入した製造業の企業事例

最後に、実際にスキルマップを導入して、人材育成や生産性向上に役立てている企業の事例を紹介します。

株式会社樋口製作所

岐阜県に本社を構える株式会社樋口製作所は、金属プレス加工技術を用いて自動車部品や精密金型の製造などを手がける企業です。同社では現場とITをつなぐためのプロジェクトチーム「ブリッジエンジニア」を発足し、DXを推進しています。

同社の大きな課題は、部署間の情報連携ミスによる工程の不具合の解消でした。そこで、製造設備をシステムで制御し、必要な条件がそろわなければ設備が作動しない仕組みを構築しました。

具体的には、生産指示書に対して正しい材料や金型が使われているか、作業者に必要な知識・スキルがあるかなど、各項目をシステムが照合、正しければ設備の運転許可が出されます。

システム制御により、作業に必要とされた知識・スキルを持たない作業者は設備を操作できません。このような仕様は、従業員にスキルアップを促すある種の動機付けになります。

同社では150本以上のeラーニング教材をそろえ、スキルマップと連携して従業員の計画的なスキルアップを強力に後押ししました。結果、人的要因での工程の不具合・間違いの防止生産性向上、効果的な人材育成を同時に実現したのです。

さらに社内プラットフォーム「Higuchi Data Integration Platform」を開発し、スキルマップやeラーニング教材を含む全データを部門間で共有するなど、DXを進め現場の課題解決に取り組んでいます。

アサヒグループジャパン株式会社

国内の酒類・飲料・食品事業を統括するアサヒグループジャパン株式会社では、従業員に提供していたeラーニングの月間平均アクセス数がわずか500PV程度と低く、十分に活用されていないという問題を抱えていました。

この状況を打開するため、同社はライトワークスのLMS「CAREERSHIP」をベースにした独自ポータルサイト「Career Palette(キャリアパレット)」を導入。従来の「必要な教材を自分で探しにいくビュッフェ型」から、「個々の従業員に最適な教材を届けるデリバリー型」へと大きく方針転換しました。

この仕組みの中核となったツールが「ジョブディビジョンスキル表」です。これは、独自のスキルマップで、社内の約20職種を3ステージに分類し、それぞれに必要なスキルを体系化したものです。

「ジョブディビジョンスキル表」に合わせて具体的な教材を当て込み、従業員の現状に応じたeラーニングや研修メニューを提供する仕組みを構築しました。

自身のスキルだけではなく他の従業員が保有するスキルも確認できるため、社内のロールモデルを提示する役割も果たしています。

こうしたスキルマップとLMSの連動により、キャリア形成と学びが密接に結び付き、従業員の学習意欲向上や自律的な学習の促進につながりました。eラーニングの月間平均アクセス数は導入前の約12倍に当たる6000PVほどに増加し、積極的かつ継続的な利用を実現しています。

株式会社ライトワークス | 人材開発ソリューションパートナー

2018年にeラーニングシステムを一新すると、月平均PVは12倍に拡大。なぜ、そのような利用率の拡大が実現できたのでしょ…

「スキル管理、何から始めれば…?」を解決! ⇒「スキルマップの基礎ブック」を無料でダウンロード

まとめ

製造業では、スキルの属人化や人材不足への対応、品質・生産性の向上といった多くの課題を抱える中、従業員一人一人のスキルを「見える化」するスキルマップの重要性が高まっています。

製造業でスキルマップを活用するメリットは以下の6つです。

  • ISO9001の力量管理への対応
  • 実効性のある人材育成の実現
  • 効率的な品質管理と生産性向上(QCD改善)
  • 公平な人事評価
  • 従業員の成長促進・モチベーション向上
  • 業務効率化

製造業のスキルマップは、以下の4つのステップで作成します。

  • 目的の明確化と対象範囲の設定
  • 必要なスキル項目の洗い出しと体系化
  • スキルの評価基準・評価段階の設定
  • スキルマップの作成と定期的な見直し

なお、スキルマップ作成には厚生労働省の「職業能力評価基準」「職業能力評価シート」も活用できます。

スキルマップの導入・運用における、以下の5つの課題と解決策をご紹介しました。

  • 作成・管理に時間がかかる
  • 最初から全社導入するとスムーズな運用が難しい
  • 従業員の不満増大やモチベーション低下のリスク
  • 導入直後の効果が見えにくい
  • 運用ノウハウやリソース不足

導入効果を最大化するためには、LMSなどのシステムとスキルマップを連携させて、教育・スキル評価を一元管理し、組織全体でPDCAサイクルを回すこともポイントです。

実際にスキルマップを活用して成果を上げている企業事例として、以下の2社を紹介しました。

  • 株式会社樋口製作所
  • アサヒグループジャパン株式会社

製造業におけるスキルマップは、現場の課題を整理し、戦略的な人材育成を推進する「基盤」として機能します。

属人化の解消、品質の安定、次世代への技術継承など、製造業が抱える課題解決に向け、スキルマップの整備と継続的な運用は欠かせない取り組みとなっていくでしょう。この記事をロードマップとして、貴社に最適なスキルマップづくりを始めてみてはいかがでしょうか。

  1. 経済産業省・厚生労働省・文部科学省「2025年版 ものづくり白書 概要」,2025年5月公表,P21(閲覧日:2025年8月19日) ↩︎
  2. 厚生労働省「職業能力評価基準」(閲覧日:2025年9月16日) ↩︎
  3. 厚生労働省「職業能力評価シートについて」(閲覧日:2025年9月16日) ↩︎
  4. 厚生労働省「職業能力評価基準」(閲覧日:2025年9月12日) ↩︎

参考)
経済産業省「中堅・中小企業等におけるDX取組事例集」,https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-chushoguidebook/tebiki2.0archives.pdf(閲覧日:2025年9月5日)

企業向けLMS徹底比較

>会社案内パンフレット、各種事例、eラーニング教材サンプル、調査資料をダウンロードいただけます。

会社案内パンフレット、各種事例、eラーニング教材サンプル、調査資料をダウンロードいただけます。

会社案内パンフレット、各種事例、eラーニング教材サンプル、調査資料をダウンロードいただけます。

CTR IMG