「ジョブ型雇用への移行に伴い、職務に必要なスキルを定義したい」
「人的資本経営の開示に向け、従業員のスキルデータを可視化したい」
今、多くの企業が「スキルマップ」の構築を急いでいます。スキルマップとは、業務の遂行に必要なスキル項目と、その習熟度レベルを一覧化した表のことです。
労働人口の減少やビジネス環境の変化を受け、従業員一人ひとりの能力を可視化し、戦略的に育成・配置する「タレントマネジメント」の中核ツールとして、その重要性が再認識されています。
しかし、いざ作成しようとすると「評価項目の粒度は?」「レベル定義はどうする?」「Excelでの管理が限界…」といった壁にぶつかる担当者が少なくありません。
本記事では、スキルマップが現代のタレントマネジメントに不可欠な3つの理由から、実務に即した作成手順(6ステップ)、職種別の項目例、そして形骸化させない運用のコツまでを網羅的に解説します。
すぐに使えるExcelテンプレートや、作成と運用の手間を劇的に削減するLMS(学習管理システム)の活用法も紹介しますので、ぜひ自社の人材戦略にお役立てください。

「従業員を適材適所で配置するには、スキル管理(スキルマネジメント)が有効らしい」多くの従業員を抱える企業において、一人一人のスキルや能力、その潜在性を把握することは簡単ではありません。また、各人材を社内で求められている仕事にマッチ[…]
AIで要約
- スキルマップとは、従業員のスキルとレベルを可視化し、個人の成長と組織の最適配置を両立させるタレントマネジメントの核となるツールです。
- 「人的資本経営」の開示対応や「ジョブ型雇用」への移行、不足スキルを補う「リスキリング」の推進など、現代の経営課題を解決するために不可欠です。
- 6ステップで実務に即した項目を定義し、LMS(学習管理システム)を活用して「スキル評価」を「具体的な教育・配置」へ自動連携させることが、形骸化を防ぐ鍵となります。
スキルマップとは?人材開発・評価の「地図」となるツール

スキルマップとは、業務の遂行に必要なスキル項目と、その習熟度レベルを一覧化した表のことです。従業員一人ひとりが「どのスキルを」「どのレベルで」保有しているかを可視化します。
スキルマップを作成することで、企業の視点では、組織全体のスキル保有状況を把握することで、戦略的な配置や採用、不足スキルの特定といったタレントマネジメントが可能になります。
また、個人の視点では「現在の自分」と「将来の自分(あるべき姿)」のギャップが明確になり、キャリア自律や学習意欲の向上につながります。

スキルマップの基本構造
スキルマップの具体的なイメージを掴むために、まずは全体像を見てみましょう。 以下の図のように、横軸に「職種(ジョブ)」、縦軸に「レベル」を設定し、それぞれの交点に必要な要件を定義していくのが基本形です。
【職種別スキルマップのイメージ図】

このように構造化した上で、各セル(職種×レベル)に具体的なスキル項目を落とし込んでいきます。スキルだけでなく、マインドや知識(ナレッジ)も組み込むことがポイントです。
スキルの評価基準の設定
スキルを評価するためには、基準となる「ものさし」を作る必要があります。「レベル1:指導を受けながら実施できる」「レベル3:一人で応用業務も実施できる」といったように、具体的な行動基準で定義することで、評価のばらつきを防ぎます。
例として、以下の図は、マーケティング部門の「宣伝・デジタルマーケティング」職の「レベル1」のスキル要件を整理したものです。

「従業員のスキルを可視化したいが、スキルマップの評価基準をどう設定すればいいか分からない」 「評価者の主観が入らない、公平なレベル定義を作りたい」人的資本経営の推進や雇用の流動化に伴い、従業員のスキルを客観的に把握する「スキル評価[…]
なぜ今、タレントマネジメントにスキルマップが不可欠なのか?
近年、スキルマップへの注目が高まっている背景には、企業を取り巻く環境の大きな変化があります。特に以下の3つの要因から、戦略的に育成・配置する“タレントマネジメント”においてスキルマップの重要性が増しています。
1.「人的資本経営」への対応
人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出す「人的資本経営」において、スキルの可視化は欠かせません。投資家やステークホルダーに対し、自社がどのような人材資産(スキル)を保有し、どう育成しているかを定量的に示すための基礎データとして、スキルマップが活用されています。
2.「ジョブ型雇用」とキャリア自律
職務内容を明確にする「ジョブ型雇用」では、その職務に必要なスキルの定義が不可欠です。スキルマップによって職務要件を明確にすることで、従業員のキャリア自律を促し、納得感のある評価や配置を実現します。
3.「人手不足」とリスキリング
労働人口の減少に伴い、内部人材のリスキリング(再教育)による配置転換が急務となっています。スキルマップがあれば、「どのスキルを、誰に教育すれば適応できるか」をデータに基づいて判断し、効率的な人材育成が可能になります。
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【6ステップ】失敗しないスキルマップの作り方
スキルマップの作成から運用までの手順を、6つのステップで解説します。
ステップ1:目的・対象の明確化
まずは「何のために、誰のスキルマップを作るのか」を定義します。例えば「若手の早期戦力化」「DX人材の選抜」「評価基準の統一」など、目的によって必要な精度や項目は異なります。
最初から全社一斉に導入するのではなく、特定の部門や職種に絞ってスモールスタートし、運用モデルを作ってから展開するのが成功の秘訣です 。評価を目的とする場合も、運用を進める中でルールを作りながら、段階的に検討していく方が良いでしょう。
ステップ2:対象職種ごとの業務プロセスを明確化
目的・対象を決定したら、対象となる職種の業務プロセス(仕事の流れ)を洗い出します。例えば営業職であれば、「リスト作成→アポ取り→ヒアリング→提案→クロージング」といったフローを整理します。この段階では詳細なスキルまで踏み込まず、業務の大枠を把握することが目的です 。
ステップ3:インタビュー・観察調査
業務プロセスの解像度を高めるために、スキルマップの対象となるスキルを保有している従業員に対し、インタビューや観察による現地調査を行います。
必要な知識・技能のようなマニュアルなどの形式知だけでなく、成果を出している人が無意識に行っている「コツ」や「行動特性(コンピテンシー)」といった暗黙知まで掘り下げて情報収集します。
ステップ4:業務ごとのスキルの洗い出し
調査結果を参考に、各業務プロセスで必要なスキルを「スキル項目」として言語化し、体系的に整理します。スキル項目は、以下のような分類を参考にして整理し、進めていく中で自社に合う区分に修正していきましょう。

成長意欲を維持継続させるためにも、一つの項目は具体的な資格取得などを除いて修得まで2年程度の期間を想定し、設計すると良いでしょう。
「従業員のスキルを可視化し、戦略的な人材育成に生かしたい。」そう考えてスキルマップの導入を検討するも、「具体的にどんな項目を設定すればいいのか?」「自社に合った項目はどうやって洗い出せば…?」と、最初のステップで手が止まってしまう[…]
ステップ5:スキルと学習の整理
スキルマップは作って終わりではありません。不足しているスキルを埋めるための「学習手段」とセットにすることが重要です。
「このスキルが不足している場合は、このeラーニングを受講する」「このレベルを目指すなら、この研修に参加する」といったように、スキルと教育プログラム(OJT、eラーニングなど)を紐づけることで、従業員は迷いなく自律的な学習に取り組めるようになります。

ステップ6:スキルマップを作成・システムに落とし込む
決定したスキル項目や評価フローを、実際の運用ツールに落とし込みます。エクセルなどを使って手動で運用することもできますが、情報共有や学習手段へのひも付けなどさまざまな側面において、LMS(学習管理システム)などの専用システムを活用する方が、圧倒的に利便性が高くなります。
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【無料で使える】スキルマップ作成に使えるテンプレート
自社でゼロから項目を作る手間を削減するため、以下のテンプレートの活用をおすすめします。厚生労働省のものと、当社ライトワークス製のもの、いずれも無料でご利用いただけます。
厚生労働省の「職業能力評価基準」と「職業能力評価シート」
厚生労働省「職業能力評価基準」1では、職業分析によって必要なスキルが体系的に整理されています。業種横断的な経理・人事等の事務系9職種のほか、建設業関係、製造業関係、運輸業関係、卸売・小売業関係、金融・保険業関係、サービス業関係など56業種が用意されています。(2026年1月現在)
参考:厚生労働省「職業能力評価基準の策定業種一覧」(外部サイトへ遷移します)
さらに、職業能力評価基準を簡略化し、チェック形式にした職業能力評価シート2も提供されています。それぞれの仕事をこなすために必要な「知識」と「技術・技能」、「成果につながる職務行動例(職務遂行能力)」が整理されており、各企業でカスタマイズすることが可能です。
表:スーパーマーケット業の職業能力評価シート

出典:厚生労働省「職業能力評価シートについて」(閲覧日:2024年3月25日)
参考:厚生労働省「職業能力評価シートについて」(外部サイトへ遷移します)
ライトワークス製「スキルテンプレート」
当社では、厚生労働省の職業能力評価基準をベースにした、職種別・階層別の標準的なスキル項目テンプレート(Excel)を無料で提供しています。事務系から技術系まで900件以上のスキル項目を網羅しており、作成時間を大幅に削減できます。⇒ 「スキルテンプレート」を無料でダウンロードする
▼スキルテンプレートの項目サンプル(クリックでダウンロードページに遷移します)

スキルマップを「ただの施策で終わらせない」戦略的活用法
スキルマップを作成しても、Excelでの管理には限界があります。「ファイルが散在して最新版がわからない」「更新作業が煩雑で形骸化する」といった課題です。 こうした限界を突破し、スキルマップを組織の戦略に結びつけるためには、以下の活用法で「可視化」の先の「アクション(教育・配置)」につなげることが必要です。
1. 「評価」と「教育」を直結させる(LMSの活用)
スキル管理機能を備えたLMS(学習管理システム)を活用すれば、スキルの積み上げなどの評価形式や、本人、上司、その他の評価者、評価期間など、方針が決まればすぐに設定でき、運用プロセスで変更することもできます。
また、スキル評価の結果に基づき、不足スキルを補うための研修(eラーニングや集合研修)をシステムが自動でレコメンドすることが可能です。 「評価」から「教育」へのサイクルをシステム上で自動化することで、人事が介在せずとも、従業員の自律的なスキルアップが回る仕組みを作れます。
当社のLMS「CAREERSHIP」は、スキル評価機能と学習機能が一体化しており、評価結果に応じた教育の割り当てや、キャリアマップの可視化も可能です。⇒ CARRIERSHIPの「スキル管理機能」を見てみる

2. 「適材適所の人材配置」に使う
全社員のスキルデータがシステム上に集約されていれば、新規プロジェクト発足時に「〇〇のスキルを持つレベル3以上の人材」を即座に検索・抜擢できます。また、異動検討時にも、客観的なスキルデータに基づいた配置が可能になり、ミスマッチを防げます。これは人的資本経営における「動的な人材ポートフォリオ」の実現に直結します。
3. 面談などで対話の「共通言語」にする
スキルマップは上司と部下の共通言語になります。「次の期までに、このスキルのレベルを1つ上げよう」といった具体的な目標設定や、「このスキルが高いから、この業務を任せたい」といったフィードバックの根拠として活用することで、納得感のある評価と育成が実現します。
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スキルマップを有効活用する企業事例
最後に、LMSを使ってスキルマップを有効活用している企業事例を紹介します。
アサヒビール株式会社
アサヒビールは、2018年にLMSをベースとしたポータルサイト「Career Palette」をオープン。月平均PVをそれまでの500PVから12倍の6,000PVに拡大しました。
この新たなシステムの核にあるのが「ジョブディビジョンスキル表」と呼ばれるスキルマップであり、学びの道しるべとなっています。体系化されたスキルに合わせて具体的な教材が当て込まれ、メニュー化されたものです。
ジョブディビジョンスキル表の作成においては、人事担当者と各部門の管理者が協力しながら、職種共通の項目や職種専門の項目などを詳細に吟味し、従業員に納得感のある学習手段へとつなげる工夫がなされています。
2018年にeラーニングシステムを一新すると、月平均PVは12倍に拡大。なぜ、そのような利用率の拡大が実現できたのでしょ…
株式会社サザビーリーグ
Afternoon Teaなどのライフスタイルブランドを展開するサザビーリーグは、2018年にスタッフへの教育拡充とキャリア開発のためのプラットフォーム「S-Career Academy」を構築。「店舗の慢性的な人材不足」という経営課題に取り組むべく、LMSをベースとしたeラーニングやキャリア相談窓口、研修を通じたスタッフ同士の交流の場を提供しています。
「S-Career Academy」の啓蒙活動のために制作したパンフレットでは、The SAZABY LEAGUEとして全ブランド共通のキャリアマップが紹介されています。階層別のスキルに応じたお勧めの学習内容の紹介やサイトの活用方法なども掲載されており、人事担当者の思いやキャリア形成に向けたメッセージも盛り込まれています。
人事担当者は「S-Career Academy」がそれぞれの成長やキャリア開発に役立つことを発信し続け、今では70%近くの従業員に活用されるまでになっています。
コロナ禍は、生活者の価値観や消費行動を大きく変えたと言われています。緊急事態宣言によって休業を余儀なくされた小…
SMBC日興証券株式会社
SMBC日興証券は2020年、LMSをベースとした「Nikko Palette」をリリース。スキル管理機能を有効活用しています。
同社のスキルマップには150以上もの部署名が並んでおり、それぞれ管理職向け、若手向けなどに必要スキルが提示されています。各スキルをクリックすると内容に見合った学習コンテンツへと移行し、こうした動線が従業員にとって重要な学びのきっかけとなっています。
スキルマップ上では各部署についても紹介されており、それぞれ所属する従業員のロールモデルに関するコンテンツも視聴が可能となっています。その部署で働くイメージや必要なスキルが鮮明に伝えられており、一人一人が目標をもって学ぶことを促す有効なコンテンツです。
LMS「CAREERSHIP」の活用事例が満載!「第2回User Meet Up」レポートをお届けします。本イベントでは…
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まとめ
本記事では、スキルマップの作り方から、タレントマネジメントにおける戦略的な活用法までを解説しました。
改めて、スキルマップ作成と運用の要点を振り返ります。
1. タレントマネジメントにおける重要性
スキルマップは単なる業務一覧表ではなく、以下の経営課題に対応するための基盤データです。
- 人的資本経営: 従業員のスキル資産を可視化し、対外的に証明する。
- ジョブ型雇用: 職務に必要な要件を定義し、自律的なキャリア形成を促す。
- 人手不足とリスキリング: 不足スキルを特定し、効率的な育成・配置転換を行う。
2. 失敗しない作成の6ステップ
いきなり詳細を作り込まず、以下の手順で進めることが成功の鍵です。
- STEP1 目的・対象の明確化: 特定の部門から小さく始め、運用モデルを作る。
- STEP2 業務プロセスの棚卸し: 仕事の大枠の流れを整理する。
- STEP3 インタビュー・観察調査: ハイパフォーマーの暗黙知やコツを掘り下げる。
- STEP4 スキルの洗い出しとレベル定義: 「テクニカル・ヒューマン・コンセプチュアル」に分類し、評価基準は具体的な「行動」で定義する。
- STEP5 学習との紐づけ: スキル不足を補うための研修やeラーニングとセットにする。
- STEP6 システム化: LMS等を活用し、運用負荷を下げてサイクルを回す。
3. 「ただの施策で終わらせない」ために
作成したマップを形骸化させないためには、Excel管理の限界を見極め、LMS(学習管理システム)を活用することが有効です。評価結果に基づいた「教育の自動レコメンド」や、データに基づいた「適材適所の配置」へつなげることで、組織全体のパフォーマンスを最大化できます。
まずは、無料のテンプレートなどを活用して、主要な職種のスキル洗い出しから始めてみてはいかがでしょうか。
- 厚生労働省「職業能力評価基準の策定業種一覧」(閲覧日:2026年1月9日) ↩︎
- 厚生労働省「職業能力評価シートについて」 (閲覧日:2024年3月25日) ↩︎







