スキル管理とは?適材適所の人材配置を成功させる方法

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スキル管理とは?適材適所の人材配置を成功させる方法

「従業員を適材適所で配置するには、スキル管理が有効らしい」

多くの従業員を抱える企業において、一人一人のスキルや能力、その潜在性を把握することは簡単ではありません。また、各人材を社内で求められている仕事にマッチさせるとなれば、ハードルはさらに上がります。

もし従業員のスキル管理によって人材配置を最適化できれば、企業の生産性は上がり、従業員のエンゲージメントを高めることにもつながるでしょう。

近年ではジョブ型雇用など、より専門性を重視した人材配置を考える企業も増えてきました。スキル管理は今、企業の人事戦略において必要不可欠な要素になりつつあります。

本稿では、スキル管理とは何かその目的と効果管理方法としての社内共有システムの活用について解説し、企業事例も紹介します。スキル管理に興味を持つ企業の人事担当者やマネージャークラスの方は、ぜひ参考にしてみてください。

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1.スキル管理とは?

スキル管理とは、従業員のスキルをデータとして可視化し、一元的に管理することをいいます。スキル管理をうまく行えば人材情報の価値が高まり、従業員の適切な評価や配置に役立てることができます。

1-1. スキル管理の必要性

近年では組織の成果を高める重要な要素として、人的資本がますます注目を浴びています。その一方で、人材配置や異動などのマネジメントに課題を抱えている企業は少なくありません。

リクルートが実施した企業調査[1]によれば、人材配置・異動に関し、制度の変更や従来のやり方を見直す必要性を感じている企業は51.2%と半数以上でした。その理由として、「スキル・経験と任せている仕事内容のミスマッチ」46.7%)が最も多く挙げられており、従業員を適材適所に配置することの重要性がより強く認識されていることが分かります。

また人的資本経営を実践する上での具体的な問題意識として、株式会社リクルートによる別の調査[2]では54.5%の企業が「従業員のスキル・能力の情報把握とデータ化」を課題に挙げています。こうした結果からも、機能的なスキル管理の必要性が示されているといえるでしょう。

 

1-2.スキル管理にはデータ化が有効

スキル管理を成功に導く鍵は、従業員が保持しているスキルと自社が求めている仕事をいかに適合させるか、ということにあります。従ってスキル管理では、明確な視点を持ってこの両者をデータ化していくことが必要です。

人材情報の適切なデータ化は、既存従業員の適切な評価や配置だけでなく、新規雇用においても役立ちます。一般的な募集要項より詳しい情報を提供できるジョブディスクリプションの作成を可能とし、求職者とのマッチングの精度を高めることができるからです。

関連記事:ジョブディスクリプションとは?課題から作成方法まで網羅的に解説(弊社ブログサイトに遷移します)

 

1-3. スキル管理はタレントマネジメントの重要な要素

近年では、組織ビジョンの実現や従業員のエンゲージメントを高めるための人事戦略として、タレントマネジメントに力を入れる傾向が強まっています。

タレントマネジメントは、企業風土に沿って従業員の能力を生かす施策をつかさどるものです。ゼネラリストよりスペシャリストを志向するジョブ型雇用は、こうした施策の1つに挙げられます。

スキル管理はタレントマネジメントの重要な要素です。個々の従業員のスキルや企業が求めているスキルをデータとして可視化することによって、具体的な施策に落とし込んでいくことができます。

組織と個人双方の現在の能力を把握し、将来の可能性を切り開くタレントマネジメントを実現する第一歩として、企業がスキル管理に着手することには大きな意味があるといえるでしょう。

 

1-4. スキル管理による課題解決

スキル管理によって従業員のスキルデータが可視化されれば、企業が人事マネジメントにおいて手つかずになっている課題に新たな方向性を示すことができます。

例えば、大手企業を対象とした株式会社パーソル総合研究所の調査[3]では、非管理職層の異動配置方針について「あると言い切れない」企業が76%と大半を占めています。適材適所の人材配置の重要性を認識していながらも、非管理者層などの従業員のスキルは注目されにくいのが現状です。

こうした従業員のスキル管理が機能すれば、組織の中で埋もれている人材が発掘され、戦略的な異動配置が可能となります。また従業員も自分のスキルに合った業務に就くことができ、仕事に対するモチベーションを高めることができるでしょう。

2.スキル管理の目的と効果

スキル管理は、企業と個人の双方の視点を持って考えていくことが大切です。以下では、それぞれの視点からスキル管理の目的と効果について解説します。

2-1. 企業の視点

スキル管理の目的と効果 企業の視点

企業が抱える人材配置の問題として、例えば先述の株式会社パーソル総合研究所の調査[4]において、40代半ば以降の「専任職人材」の配置に課題を抱えている企業が多いことが示されています。専任職人材とは、管理職でも専門職でもない、もっぱら同じ仕事を長く担当してきた、いわゆるベテラン人材です。

もはや管理職登用が難しく、かといって本格的な専門職としても通用しない、こうしたベテラン人材の価値はこれまでの人事評価では見えにくいものでした。スキル管理は、このような人材のスキルを開発し、企業を新たな発展に導きます

従業員のスキルを可視化し、企業活動の方向性と合わせて人材配置の戦略を立てることは、今問題を抱えている多くの企業にとって大きな意味があるものです。

 

2-2. 個人の視点

スキル管理の目的と効果 個人の視点

働く人々にとって、将来自分が企業でどのような存在になりたいのか、どのような夢を持てるのかといった目標があることは、大きなやりがいとなるものです。目標に向けて身に付けるべきスキルや能力が分かれば、「今何をすべきか」ということも見えてきます。

人生で最も多くの時間を過ごす企業で自分の成長を感じられることは、個人にとって大きなメリットです。スキル管理を機能させることは、組織の中での個人のキャリアデザインの幅を広げることにもつながっていくでしょう。

関連記事:キャリアデザインとは?重要性や設計方法、企業による支援を事例付きで解説(弊社ブログサイトに遷移します)

3.スキル管理の方法

ここからは、具体的にどのような方法でスキル管理を行うかについて解説していきます。

3-1. 企業におけるスキル管理の現状

ここまでに記してきたように、スキル管理は従業員のスキルを体系化し、目に見えるデータにする必要があります。しかし、新卒社員を総合職として受け入れる日本企業の多くは、そもそも職務内容を規定しておらず、スキル体系の設計がなされていません。

また独自の方法でこうした管理を行っていたとしても、各部門でエクセルなどを使い「一部の間でしか共有されていない」といった運用上の問題も少なくないでしょう。

企業と個人の双方にとって有益なスキル管理を行うためには、スキルの体系化や設計がしやすく、全ての従業員が共有できる社内システムの活用がおすすめです。

 

3-2. 学習管理システム(LMS)のスキル管理機能とは

スキルの体系化や設計には、企業内の部署や業務、従業員の能力を加味した詳細な項目設定が必要となるため、情報収集や精査に時間を要します。そこで、すぐに始められる従業員の学習管理からスタートし、そのデータを活用すれば、効率的にスキル管理を進めることができます。

学習管理システム(Learning Management SystemLMSは、学習の状況や履歴を管理できる社内共有システムです。eラーニングなどの個々の学習を実施するプラットフォームとなり、受講者は多数の学習アイテムから希望に合う講座の選択が可能です。また、人事部の運営管理や上長の承認評価なども機能的に行うことができます。

当社のLMSCAREERSHIP」のように、人事データを連動させてスキル管理を行う機能を備えたLMSもあります。LMSのデータを使いながら社内で求められるスキルや知識を言語化し、能力やキャリアを可視化することが可能です。それによって、企業と個人双方にメリットのあるスキル管理システムのスムーズな構築につながります。

従業員のスキルを可視化して管理し、タレントマネジメントを実現するLMS「CAREERSHIP」→詳しくはこちら

 

3-3. スキルマップの活用

スキル管理では、個人の目標に対する現在地を一目で確認できる「スキルマップ」が有効です。

スキルマップは、職種やポジションごとに必要とされる知識、経験、資格などのスキルを洗い出し個々の従業員のレベルがどの程度であるかを位置付けられるように図表化したものです。個々の成長度合いはもちろん、他者との比較によって自身の強みや弱みを明確にすることができます。

LMSによっては、スキル管理機能と併せてスキルマップ機能を有するものもあるので、LMSでスキル管理を行う場合はその機能があるか、確認しておくとよいでしょう。

スキル項目の設定にはある程度の時間が必要です。業種の枠を越えて汎用的に使えるスキル項目を示すスキルテンプレートを導入段階で使えれば、自社のスキル定義を検討するきっかけにもなるでしょう。

当社のLMSCAREERSHIP」では、スキル管理機能をご導入いただいたすべてのお客さまに、職種別・レベル別に必要なスキル項目を設定できるスキルテンプレートを無償で提供しています。

>>詳しくはこちらからご確認ください。

4.効果的なスキル管理を行っている企業事例

ここで、当社のLMSCAREERSHIPのスキル管理機能を活用する企業の事例を三つご紹介します。

4-1. アサヒビール株式会社

アサヒビール株式会社は、eラーニングを中心とした既存のLMSを改善し、従業員の今とこれからを見据えたシステムの再設計によって従業員のLMS利用率を12倍に上げました。

研修メニューの開発は、同社の「ジョブディビジョンスキル表」を活用しています。ジョブディビジョンスキル表は、20数種類の職種にそれぞれ3つのステージを掛け合わせ、職種、ステージごとに必要なスキルを体系化したものです。

ジョブディビジョンスキル表に基づいて横軸(職種)と縦軸(ステージ)という形でスキルマップを整理し、対応する教材を設定したことで、従業員が自分の目標に向かって何を準備すればよいか、具体的な指針を示すことが可能となりました。

新たなシステムにより、企業側が一方的に管理したりルールに当てはめたりするのではなく、自由な発想を伸ばして従業員のキャリアアップを支援できることが実感されています。 

 

4-2. 綿半ホールディングス株式会社

綿半ホールディングス株式会社では、LMSを導入して店舗スタッフの教育基盤を築いています。高い水準でサービスレベルを均一化し、スタッフの早期戦力化を実現させました。

スキル管理においては、店舗の状況や個々のスタッフのスキルに合う柔軟な教育計画を立てられるよう、「入社〇日目までに〇〇ができるようになる」といった時間軸ではなく、「基本編」「スキルアップ編」という大枠の分類に見直しています。

同社では「一店舗一経営」という考えの下、画一的なサービスとは異なる地域やお客さまに寄り添った店舗づくりが進められています。そのためスタッフ教育も本部が指定するのではなく、店舗主導で独自に活用しやすい枠組みにすることが目的です。

さらなる成長を目指し、MAを進める同社では、LMSを利用して企業の価値観を共有し、同じ方向性を見据えたグループシナジーの創出を目指しています。

 

4-3. 株式会社ポーラ

株式会社ポーラでは、従業員の経験を通した成長、自立的な人生デザインのサポートのために研修・教育を重視しています。コロナ禍を機にリニューアルしたLMSの活用により、スタッフの学習環境を大きく改善させました。

LMSを活用した「P-Study」では、スタッフの受講管理と実績が確認できる実績管理機能があります。昨日までの自分の売り上げやお客さまの数などが表示され、スタッフは自身の現状の確認が可能です。

研修・教育により、スタッフはそれぞれ「美容のプロを極める」「自分の店舗を持つために経営知識を身に付ける」など、個々の将来像に向けた知識や技術を習得することができます。

今後の展望としては、スタッフがより楽しく成長できるような工夫の実装が考えられています。例えば毎月の目標を自分で設定し、ログインするごとにパーセンテージが上がっていくような仕掛け、目標に合致する教材がおすすめとして出てくるといったアイデアが検討されています。

5.まとめ

スキル管理とは、従業員のスキルをデータとして可視化して一元的に管理することです。

人材配置や異動などのマネジメントに課題を抱えている企業は多く、「スキル・経験と任せている仕事内容のミスマッチ」「従業員のスキル・能力の情報把握とデータ化」などが課題に挙げられています。機能的なスキル管理は、これらの課題に対して効果的な施策です。

スキル管理では、明確な視点を持って従業員のスキルと企業が求めるスキルをデータ化します。結果として戦略的な人材配置や異動が可能となり、またジョブディスクリプションを作成しやすくなることで新規雇用におけるマッチング精度の向上にもつながります。

一方、従業員にとっても自分のスキルに合った業務に就くことができ、仕事に対するモチベーションが高まることが期待されます。

近年、人事戦略として取り入れられる傾向が強まっているタレントマネジメントにおいても、スキル管理は重要な要素です。スキルをデータとして可視化することで、具体的な施策に落とし込んでいくことができます。

スキル管理の企業側の目的は、必要となる人材の確保や育成の方針を決めることです。スキル管理によって必要な人材と現状とのギャップを明確にすることで、新たに確保すべき人材の特定、また保有する人材の成長のための施策につなげることができます。

スキル管理の個人の目的は、個々のキャリアアップやスキルアップに向けてモチベーションを向上させることです。スキルの可視化によって現在の自分と目標とする自分のギャップを浮き彫りにし、今後のキャリアパスを見据えた学習方法や職務内容を明確にすることでキャリアデザインの幅を広げます。

企業と個人の双方にとって有益なスキル管理を行うためには、スキルの体系化や設計がしやすく、全ての従業員が共有できる社内システムの活用がおすすめです。

スキル管理機能を持ったLMSを使うことで、すぐに始められる従業員の学習管理からスタートしてそのデータを活用し、効率的にスキル管理を進めることができます。

スキル管理では、個人の目標に対する現在地を一目で確認できるスキルマップが有効です。スキルマップは職種やポジションごとに必要とされる知識、経験、資格などのスキルを洗い出し、その中で個々の従業員のレベルがどの程度であるのかを位置付けることができるよう図表化したものです。

スキルマップの作成には、業種の枠を超えて汎用的に使えるスキル項目を示すスキルテンプレートが有効なツールとなるでしょう。

最後に、効果的なスキル管理を行っている企業事例として、以下の三社を紹介しました。

  • アサヒビール株式会社
  • 綿半ホールディングス株式会社
  • 株式会社ポーラ

スキル管理は、人材活用に悩みを抱える企業にとって、大きな力となるものです。本稿がこうした企業の皆さまに役立つことを願っています。

 

[1] 株式会社リクルート「企業の人材マネジメントに関する調査2023 人材配置・異動編」,2023年9月26日公表,P2,https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/assets/20230926_hr_02.pdf(閲覧日:2024年1月5日)
[2] 株式会社リクルート「人的資本経営と人材マネジメントに関する人事担当者調査(2021)第2弾:「人的資本経営」の実践に向けた課題」,2022年1月27日公表,https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/2022/0127_9865.html(閲覧日:2024年1月5日)
[3] 株式会社パーソル総合研究所「非管理職層の異動配置に関する実態調査(2021)」,2022年4月1日公表,https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/talent-management-of-major-companies2.html(閲覧日:2024年1月5日)
[4] 株式会社パーソル総合研究所「非管理職層の異動配置に関する実態調査(2021)」,2022年4月1日公表,https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/talent-management-of-major-companies2.html(閲覧日:2024年1月5日)

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