「既存のeラーニングシステムやLMSでは、当社の組織構成に対応できないのでは?」
人材育成にeラーニングが広く活用されるようになる中、自社の組織や業務にフィットするシステムを求めて自社開発を検討する動きも見られます。ゼロから独自システムを構築するフルスクラッチ開発は、複雑な要件をかなえる魅力的な手段に思えるかもしれません。
しかしながら、フルスクラッチ開発にはコストや開発期間、人的リソース、継続的な運用保守負担といった多くのリスクが伴います。投資に見合う効果を得られないケースも少なくありません。
この記事では、フルスクラッチ開発の課題やリスクを解説し、より現実的な選択肢を提示します。自社に最適なeラーニングシステムを導入し、人材育成の成果を最大化したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
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eラーニングシステムは、インターネットを通じてオンライン上で教材を配信するためのシステムです。社内研修のコストを抑えられるだけでなく、DX推進やリスキリング、自律学習にも欠かせない手段となりつつあります。この記事では、企業向けeラ[…]
AIで要約
- eラーニングの自社開発は、コスト・時間・運用の負担が大きく、プロジェクト失敗のリスクを伴います。
- 初期費用に加え、サーバー維持費や改修費などの運用コストが膨らみ、費用対効果が見合わない恐れがあります。
- 開発自体が目的化するリスクも。高機能なパッケージ製品の活用が、人材育成を成功させる現実的な選択肢です。
eラーニングシステム活用の基本と課題
企業が従業員教育にeラーニングシステムを活用するメリット・デメリットを簡単に振り返っておきましょう。
eラーニングのメリット
企業側が教育にeラーニングを取り入れるメリットとしては、会場や講師などの研修コスト、運用にかかる手間の削減が挙げられます。大勢に対して一定の質の教育を届けられるという点も大きな強みです。
従業員側にとっては、場所や時間に拘束されず自分の都合や理解度に合わせたペースで学べる、受講予定や履歴を簡単に確認できるなどのメリットがあります。
eラーニングのデメリット
反面、デメリットと言えるのが、導入・運用のコストです。また、研修と比べると強制力が弱く、従業員個人の自由度が高い分、モチベーションにも個人差が出やすい面があります。加えて、実技の習得や人的ネットワークの構築といった面では、やはり集合研修が適している部分もあるでしょう。
eラーニングシステムの基本構成
eラーニングは一般的に学習コンテンツとLMS(学習管理システム)で構成されます。LMSは教材の登録・配信、受講者やコースの管理、進捗や成績などの受講管理、テストやアンケートの採点・集計など、さまざまな管理機能を担うシステムです。通常、eラーニングシステムというとLMSを指すことが多いでしょう。
現在では多くのLMSが提供されており、クラウド型など導入が比較的容易なものも多くなっています。一方で、組織体系が複雑、業務プロセスや教育体制の独自性が高い企業などでは、「既存のシステムでは自社のニーズを満たせない」という壁を感じている方も多いのではないでしょうか。
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eラーニングシステムの自社開発の注意点:フルスクラッチ開発の理想と現実
既製品では満たせないニーズをかなえる手段として、eラーニングシステムの自社開発は選択肢の一つではあります。特にゼロからオリジナルで作り上げるフルスクラッチ開発は、完全に自社に最適化されたシステムの構築を目指せる手段に思えます。
事実、金融や医療業界のように極めて厳しいセキュリティ要件が求められる場合などは、フルスクラッチ開発が妥当なケースもあるでしょう。
しかしフルスクラッチ型、いわゆる「ゼロイチ開発」には、リスクや制約が想定以上に多いもの。システム開発で考えられるリスクについて具体的に確認しておきましょう。
開発コストの落とし穴
まず、初期費用が膨大なものになることは覚悟しておかなければなりません。システム規模にもよりますが開発費用は数百万から数千万円、場合によっては億単位にも及びます。
加えて、落とし穴になりがちなのが、TCO(Total Cost of Ownership:総所有コスト)の観点です。初期費用だけでなく、以下のような運用保守費が想定以上にかかり、トータルコストが大きく膨らんでしまうことは往々にして見られます。
- サーバーの維持管理費・データセンター利用料・電気代
- ドメイン名やSSL証明書などの年間費用
- システム管理、ユーザーサポートなどの運用保守体制にかかる人件費
- 機能追加や改修にかかる費用
膨大なコストをかけて作り込んだ高機能のシステムも、現場で使いにくく利用率が低迷、期待した学習効果が得られないといった結果では、残念ながら無駄と言わざるを得ないでしょう。費用対効果については十分に検討し、企画段階からリリース後まで常に測定と評価が必要です。
システム開発における時間とリソースの制約
金銭だけでなく、時間や人的リソースもまたシステム開発の大きな壁です。
システム開発では、要件定義から設計・開発・テスト・導入まで、半年から年単位にも及ぶ開発期間を要します。開発期間の設定に無理があると、手戻りや作り込み不足などが発生し品質に影響するだけでなく、プロジェクトの頓挫にもつながりかねません。
開発の独自性が高いほど、初期段階では想定できなかった技術的課題や仕様の検討不足の顕在化など、不確実性が上がります。開発計画には十分なバッファを見込む必要があるでしょう。早期リリースを重視する場合、ゼロイチ開発は賢明な選択肢とは言えません。
人的リソースの面でもクリアすべき課題は多くあります。システム開発には広範かつ高度な専門知識と技術力、優れたプロジェクトマネジメントが不可欠です。フルスクラッチ開発となると、なおさら求められるレベルは高度になります。
高度な専門人材を社内だけで確保することは現実的ではなく、外部ベンダーを選定することになるでしょう。しかし、自社の課題や意図を正確にくみ取ってシステムに落とし込んでくれるベンダーを選ぶことは簡単ではありません。その上、発注側である自社も、要件定義や社内調整などプロジェクトに深く参画する必要があります。
さらに、リリース後の運用フェーズに入った後も、専門的な体制が不可欠です。事業のニーズや技術トレンドへの対応、ユーザーのフィードバックを受けての改善など、継続的な開発に対応できるスキルが求められるためです。
セキュリティと拡張性への対応
加えて、eラーニングシステムならではの課題が、システム開発の難易度をより厳しいものにするかもしれません。
eラーニングシステムは、受講者情報や成績といった個人情報、製品開発情報や業務ノウハウなどの機密性の高い情報を扱うため、徹底したセキュリティ対策が求められます。高度なセキュリティの実現には、設計の初期段階から対策を組み込み、常に変動するセキュリティリスクに対し多角的な対策を施す必要があります。
将来的な拡張性(スケーラビリティ)もまた、eラーニングシステムに欠かせないものです。事業ニーズの変化や技術トレンドへの対応、ユーザーのフィードバックを受けての改善など、継続的な開発に対応できるシステムの拡張性と運用体制が必要です。
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ゼロイチ開発に踏み切るべきか?導入方法の比較
こうした特徴やリスクを理解し、コストやスケジュール・体制について備えてもなお、プロジェクト失敗のリスクはゼロにはできないことは念頭に置く必要があるでしょう。それほど、ゼロイチ開発は不確定要素が多いものなのです。
結論を出す前にいま一度、eラーニングシステム導入の選択肢について整理しておきましょう。導入方法別に、一般的な特徴を表にまとめました。
運用場所 | クラウド上で利用 | 自社サーバー(オンプレミス)で利用 | ||
導入方法 | パッケージ型 | パッケージ型 | オープンソース/ハーフスクラッチ開発 | フルスクラッチ開発 |
概要 | インターネット上で既製品を利用する | 既製品を自社サーバーにインストールして利用する | オープンソースや既製品をベースにシステムを構築する | ゼロからシステムを構築する |
初期費用 | 低 (~数十万円) | 中 (数十万円~数百万円) | 中~高 (数十万円~数百万) | 最高 (数百万円~数千万円以上) |
運用費用 | 中~高 (数万円~/月) | 低~中 (保守・ライセンス) | 低~中 (保守・人件費) | 中~高 (保守・人件費・改修) |
開発・導入期間 | 短 (即日~数週間) | 中 (数週間~数カ月) | 長 (数カ月~1年以上) | 最長 (半年~数年) |
カスタマイズ性・拡張性 | 低(ベンダーによる) | 中(製品による) | 高(自社設計次第) | 最高(自社設計次第) |
専門知識の必要性 | 低 | 中(導入・一部運用) | 高(サーバー・DB管理等) | 最高(全般) |
セキュリティ管理 | ベンダーが対応 | 中(製品に依存) | 高(自社管理) | 最高(自社設計・管理) |
主なメリット | ・迅速な導入 ・初期費用を抑えられる ・運用負荷が軽い | ・バランスの良さ ・比較的安定品質 | ・カスタマイズ性が高い ・高度なセキュリティ管理 ・既存システムとの連携 | ・完全な自由設計が可能 ・他社との差別化による競争優位性 |
主なデメリット | ・カスタマイズ性が低い ・ランニングコストがかかる | ・カスタマイズに限界 ・機能過不足の可能性 | ・初期費用が高額 ・長期の導入期間 ・システムの専門人材が必要 | ・最もコストがかかる ・最長の導入期間 ・プロジェクト失敗のリスク ・システムの専門人材が必須 |
最善の代替案:高性能パッケージ型LMS「CAREERSHIP」とは
上述したようなリスクを回避するため、ゼロイチ開発に代わる選択肢としてご提案したいのが、ライトワークスのLMS「CAREERSHIP」の導入です。
強み1:ゼロイチ開発に匹敵する「圧倒的な標準機能と柔軟性」
CAREERSHIPは、クラウド上で使うパッケージ型でありながら、大企業の複雑な要件にも対応できる点が大きな強みです。
柔軟な配信・権限管理機能により、複雑な組織構造にも対応。さらに、eラーニングに限らず多様な研修の管理、アンケートやスキル評価など、人材開発の基盤となるさまざまな機能を備えています。人事システム連携やSSO連携にも追加開発なしで対応が可能です。
実際に、CAREERSHIPは数々の上場企業に選定され、また導入後も高い定着率を誇っています。大規模運用を含む幅広い規模・業種で豊富な実績を積み上げ、確かな信頼を築いてきました。
独自開発システムからリプレイスした東京ガス株式会社様の事例では、本社だけでなく協力企業や子会社、他のガス事業者を含めた8万IDの多様なユーザーへの対応力が評価されました。
安定した運用のために、カスタマイズ前提ではなく標準機能で十分な機能が備わっている点と、トライアルで具体的な運用イメージを確認できたことが決め手となり、CAREERSHIPが選定されました。
東京ガスのLMS導入事例。自社・協力会社が混在する8万IDの管理とeラーニングの課題を『CAMPUS』で解決!研修DX、…
強み2:システム運用から解放され、コア業務に集中できる
自社開発では得られない大きなメリットの一つが、インフラ・アプリの管理やセキュリティ対策をベンダーに任せられることです。
日々の監視やパッチ適用、バージョンアップ対応、ユーザーサポートなど、システムの運用保守は少なくないリソースを要します。自社開発では、担当者がこうした煩雑な作業に追われ、本来注力すべき企画や効果測定に手が回らないケースが見られます。
戦略に関わるコア業務に担当者が注力するためにも、ベンダーの専門性を利用することは賢明な選択肢と言えるのではないでしょうか。ライトワークスは豊富なノウハウで、システムの安定運用をサポートします。
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強み3:学習を「成果」につなげるタレントマネジメント連携
CAREERSHIPは単なる受講管理だけでなく、タレントマネジメントに役立つ機能も備えています。
スキル管理機能では、自社で求められるスキルや知識を言語化し、必要な教材や資料とひも付け、学習と連動させることができます。学習履歴はスキルデータとして蓄積され、人材配置や育成計画に活用が可能です。
必要なスキルと保有スキルを可視化することで、従業員の自発学習の促進、評価基準の明確化にも役立ちます。戦略人事を支える基盤として活用できる点はCAREERSHIPならではの強みです。
ローソンのLMS導入事例。「CAREERSHIP」を10年以上活用し「自律型人財」の育成を推進。eラーニングと研修を組み…
まとめ:目的は「システム構築」ではなく「人材育成の成功」
自社開発を検討する上で、重要な観点があります。それは、「システム構築が目的化していないか?」ということです。要件に合うシステムはあくまで手段であり、真の目的は「人材育成の成功」のはずです。
前述した東京ガス様の事例では、業務に合わせて徹底的にカスタマイズされていた旧システムから、業務プロセスをシステムの標準機能に合わせるという思い切った変革がなされました。
運用管理の劇的な効率化、サプライチェーン全体の人材育成体制強化と、単なるシステム導入にとどまらない成果につながっています。
必ずしもゼロイチ開発にとらわれるのではなく、人材育成の成功に向け、費用対効果を最大化する賢明な選択肢として、ぜひCAREERSHIPをご検討ください。
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