テクニカルスキルとは 戦略的な人材育成で組織の生産性をアップする

人材不足やコロナ禍の影響で、現場での知識やスキルの伝達が以前のようにうまくいかない。どうすればよいだろうか?」

働き方改革や新型コロナウイルスの流行を機に、従業員同士が長時間顔を突き合わせて仕事をする機会が減っていく中、このような悩みを持つマネジャー、教育管理者の方は多いのではないでしょうか。

2020年8月に株式会社ラーニングエージェンシー(旧トーマツ イノベーション株式会社)が行った調査1によると、新型コロナウイルスの影響で変更・新たに対応が必要になった人事業務として、中堅・大企業の64.5%が「社員育成」を挙げています。

また、「新型コロナが企業に与えた影響」として、全体の約40%の企業が「社員の成長速度」が下がったと回答しています。

働き方が変わっても、仕事の質は維持・向上させていかなければなりません。個人のワークスタイルが重視されるようになり、またテレワークが増加した今、現場でのOJTや口頭伝承に頼っていた企業は、人材育成に関して抜本的な見直しを迫られているといえます。

本稿では、ビジネスを進行させる上で基本となる「テクニカルスキル」に注目します。テクニカルスキルは業務遂行能力ともいわれ、個々の従業員が自分の仕事を進めるための基礎部分に当たります。

対象層が広いだけに、企業の人材育成が鈍化すると影響が大きいといえるでしょう。なぜなら、テクニカルスキルが不足していると基礎部分の仕事の質が下がり、この事象が組織レベルで起きると企業全体のビジネスの質に関わってくるからです。

これを機に、改めてテクニカルスキルとは何か、種類や具体例、効果的な研修方法などを確認し、自社の人材育成に生かしましょう。オンラインで実施する方法や科目などについてもご紹介します。ぜひ参考にしてください。

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AIで要約

  • 特定の仕事を進めるのに必要な専門知識や技術のことです。 担当する仕事によって内容は異なります。
  • 部下の育成責任を負うロワーからミドルマネジメント層に特に重要です。
  • 個々のスキルを可視化することで、組織として必要な育成が効率的に行えます。

テクニカルスキルとは

まず、本章ではテクニカルスキルとは何か、具体的に見ていきましょう。

ハーバード大学教授が提唱した管理者スキルの一つ

テクニカルスキルとは、ある特定の職務を遂行するために必要な能力のことです。専門的な知識や技術を指し、職務によってその内容は異なります。例えば、人事職であれば、採用面接や人材育成、給与計算、入退社手続きなどの知識・技術がテクニカルスキルとなります。

テクニカルスキルは、1955年、ハーバード大学のロバート・カッツ教授によって提唱されました。ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルと並んで管理者に必要なビジネススキル(カッツモデル)の一つとして紹介され、世界的に大きな注目を浴びました。

テクニカルスキルは特にロワー~ミドルマネジメントに求められる

カッツモデルによると、テクニカルスキルは全階層で必要なスキルとされています。しかし、テクニカルスキルが特に重要となるのは、ロワーマネジメントからミドルマネジメントです。

なぜなら、部下の育成責任を負うのがロワー~ミドルマネジメントであることが多いためです。チームを効果的に指導・評価するには、まずマネジャー自身が業務を完遂するための知識・スキルを持っていることが求められます。

テクニカルスキルの見える化で人材育成の効率アップ

テクニカルスキルは、抽象度の高いヒューマンスキルとは異なり、アセスメントなどを通じて個々のスキルレベルを可視化することができます。従業員一人一人のテクニカルスキルの保有状況を把握できれば、組織レベルで不足しているスキルが分かるようになります。

市場環境が変わったときや、新しい事業を始めるときなどに、強化すべきスキルを洗い出し、重点的な教育を展開することが可能になるでしょう。

また、こうした施策は従業員のスキルを底上げし、自信を付け、レジリエンス(逆境から素早く立ち直り、成長する能力)を強化することにつながります。

テクニカルスキルの種類

テクニカルスキルには、以下3つの種類があります。

(1) 汎用スキル
(2) 専門スキル
(3) 特化スキル

(1) 汎用スキル

汎用スキルとは、部署や職種、組織に限らずさまざまな環境で活用することのできる汎用性の高いテクニカルスキルです。一般的には学生時代または社会人初期の頃に身に付けておくべきスキルとされています。

例えば、ビジネスマナーやタイムマネジメント、ロジカルシンキング、ビジネスライティング、パソコンスキルなどが挙げられます。

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(2) 専門スキル(専門的スキル)

専門スキルは、その部署や現場で働く全員が必ず身に付けているテクニカルスキルです。社会人になってから磨くスキルであり、実務を遂行する上で重要な役割を果たします。例えば、営業部であれば、提案力や交渉力、プレゼンテーションスキルなどが挙げられます。

(3) 特化スキル(特化型スキル)

特化スキルとは、その部署や現場の中でもより高度な業務を担当する際に求められるテクニカルスキルです。特化スキルは非常に専門度が深いために習得が難しく、希少性が高いスキルといえます。

テクニカルスキルを習得する際のポイントは、これら3つのスキルをバランス良く身に付けることです。なぜなら、特定のスキルに偏ると、活躍の幅が狭まってしまう可能性があるためです。

例えば、特化スキルは高いが汎用スキルが低い人の場合、対応できる業務は限定的であり、他部署への異動や他の業務へのアサインが難しくなります。

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テクニカルスキル研修を提供するメリット・デメリット

ここでは、従業員にテクニカルスキルを身に付けさせるための研修を行うメリット・デメリットを解説します。

テクニカルスキル研修を提供するメリット

まず、テクニカルスキル研修を提供するメリットとしては、以下の4つが挙げられます。

  • 顧客満足度の向上
  • 従業員の自信創出
  • 組織目標のスピーディな達成
  • ワークエンゲージメントの向上

顧客満足度の向上

組織としてテクニカルスキル向上に努めていくことは、顧客満足度の向上につながります。なぜなら、継続的に学習・研さんすることで、従業員のテクニカルスキルが常にフレッシュな状態に保たれるからです。これにより、企業は常に変化する市場のニーズに応える商品・サービスを提供することができます。

 従業員の自信創出

研修によってテクニカルスキルを身に付けることは、従業員にとって自信になるでしょう。

なぜなら、業務に関する知識・技術を習得することは、従業員のできることを増やし、企業の成長に貢献しているという実感につながるからです。自分には目標を達成するための能力が十分に備わっているという、自己効力感を高めることができます。

組織目標のスピーディな達成

従業員一人一人が確かなテクニカルスキルを身に付けることは、組織としての目標達成を後押しします。

なぜなら、個々がしっかりと機能し役割を果たすことで、意思決定の質やスピードが高まり、組織全体のパフォーマンスが上がるからです。先に挙げた顧客満足度の向上が実現していれば、さらに業績への影響は大きくなるでしょう。

ワークエンゲージメントの向上

テクニカルスキル研修を提供することは、従業員のワークエンゲージメントの向上につながります。

なぜなら、テクニカルスキルを習得する機会とそれを発揮する経験を通じ、従業員が組織における自分の役割や重要性を認識しやすくなるためです。企業と従業員の双方が「人材は企業の財産である」という認識を共有することは、働くことの幸福感を高め、人材の定着率向上につながります。

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テクニカルスキル研修を提供するデメリット

テクニカルスキル研修を提供するデメリットとしては、以下の2つが挙げられます。

  • コストがかかる
  • 知識・スキル偏重になる可能性がある

 コストがかかる

研修を実施するには、参加者のスケジュール調整や会場の確保、講師の選定、研修内容や段取りの決定など、さまざまな手間やコストがかかります。また、スケジュールによっては、研修時間を確保するために通常の業務にしわ寄せがいく場合もあります。

 知識・スキル偏重になる可能性がある

テクニカルスキルは業務に直結する能力であるため、従業員本人も周囲も効果を実感しやすく、研修成果は比較的目に見えやすい形で現れます。しかし、テクニカルスキルばかりに注意がいくと、能力偏重となってしまう可能性があります。

1章で述べた通り、テクニカルスキルは全階層で求められるスキルですが、階層が上がるほどその重要性は低くなり、代わってヒューマンスキルやコンセプチュアルスキルといった人間力がより求められるようになります。テクニカルスキル以外の部分がおろそかにならないよう、注意が必要です。

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テクニカルスキルの具体例

業務遂行能力であるテクニカルスキルは、職種ごとに内容が異なります。各職種で求められるテクニカルスキルの例としては、以下のようなものが挙げられます。

表1. 職種別テクニカルスキルの例

テクニカルスキル
製造商品知識、機械知識、機械操作技術、製造技術、加工技術 など
販売商品知識、接客技術、販売技術、接遇力、観察力、説明力 など
営業商品知識、市場理解、マーケティング力、コミュニケーション力、営業技術、提案力、交渉力、プレゼンテーション力 など
経理仕訳、原価計算、月次決算、売り上げ管理 など
人事採用面接、人材育成、給与計算、入退社手続き など
事務事務処理能力、文書作成能力、パソコンスキル(Oスキル)、接客技術、接遇力、資料作成力 など
教育担当領域に関する深い知識、指導力、メンタリング技術、コーチング技術 など
研究研究分野に特化した専門知識、情報収集力、忍耐力、分析力 など
医療医療知識、薬品知識、患者知識、医療技術、看護技術、介護技術、指導力、メンタリング技術、コーチング技術 など
福祉医療知識、介護知識、介護保険制度への理解、介護技術、マネジメントスキル など

以上のように、一口にテクニカルスキルと言っても、その中身は業種や職種によって大きく異なります。

組織として従業員に求めるテクニカルスキルが不明瞭な場合は、まず、業種・職種を書き出し、それぞれの業務の遂行に必要な能力を丁寧に洗い出し、明確にすることが大切です。

これにより、教育計画が立てやすくなるばかりか、採用基準もより明確になり、人材のマッチング度が高まります。伸ばしたいスキルを年次の評価基準に組み込めば、その時々でビジネスに必要となる能力を、組織として強化していくこともできるでしょう。

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テクニカルスキルの効果的な学習方法

本章では、OJT以外で企業が提供できるテクニカルスキル教育をご紹介します。 テクニカルスキルを効率的に身に付ける方法としては、以下が挙げられます。

eラーニング

受講対象者が多い場合や、知識中心の平坦な内容の場合は、eラーニングを選択するとよいでしょう。コストを抑えつつ同じ内容をいつでもどこでも受講することができるため、各組織で求められる知識・スキルのベースラインを一定に保つことができます。

代表的なものとしては、以下のような科目が挙げられます。

表2. eラーニングでの階層別テクニカルスキル学習科目

科  目
新入社員ビジネス文書、ビジネスマナー、MS Office、業務マネジメントサイクル、報連相、情報セキュリティ基礎、個人情報保護基礎 など
若手タイムマネジメント、自社サービス・商品の知識、市場理解、数値分析、ビジネス英語 など
中堅プロジェクトマネジメント、市場分析・予測、業務改善 など
管理職財務諸表の見方、フィードバック、ダイバーシティ、デレゲーション、労務管理、人事考課、生産性向上、ラインケア、目標管理 など
役員企業倫理、経営分析、経営戦略、事業計画策定、リスクマネジメント、財務分析、ファイナンス など

なお、弊社では以下のようなラインナップもご用意しています。

ライトワークス提供 ⇒ テクニカルスキル科目例一覧をダウンロードする

集合研修

既に一定の知識があり、応用を学ぶ場合や、ロールプレイなど相手の必要な実技については、集合研修を選択するとよいでしょう。ディスカッションや実践練習をすることができ、現場ですぐに使うための応用力を養うことができます。代表的なものとしては、以下のような科目が挙げられます2

  • プレゼンテーションスキル
  • ヒアリングスキル
  • 交渉スキル
  • 接遇スキル
  • コミュニケーションスキル
  • コーチングスキル
  • ヒアリングスキル
  • プレゼンテーションスキル など

もっとも、新型コロナウイルスの発生以降、集合研修は急速にオンライン化が進んでいるので、実地でなくてもかなりのプログラムをWeb経由で実現することができます。Web会議システムを活用して集合研修をライブ配信したり、録画した講義をオンデマンド形式で受講できるようにすることも可能です。

また、Web会議システムによっては、参加者をグルーピングしてグループ・ディスカッションをしたり、その場でアンケートを取って集計結果を表示したりといった双方向的なコミュニケーションが可能なものもあります。

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集合研修の管理・運営にはeラーニングと抱き合わせの形でLMS(学習管理システム:Learning Management System)を活用すると便利です。ライトワークス製のLMS「CAREERSHIP」では、集合研修の参加申請・出欠記録・成績管理などが可能です。ウェビナー連携も可能なので、さまざまなスタイルの研修を一括で管理することができます。

eラーニング、研修管理、スキル評価…人材育成の全てを、これひとつで管理できる! ⇒ ライトワークスのLMS「CAREERSHIP」について詳しく見る

ブレンディッド・ラーニング

eラーニングと集合研修を組み合わせて戦略性の高い研修を実現する「ブレンディッド・ラーニング」も、今や珍しくありません。マイペースに知識を習得できるeラーニングと、ワーク中心の集合研修(オンラインも含む)の「良いところどり」をするイメージです。

それぞれの学習方法の長所を生かし、うまくプログラムを組むことで、費用を抑えつつより効率的に学習効果を高めることができます。

例えばネゴシエーション研修なら、予習としてeラーニングで基礎知識を学んだ後、集合研修で技能実習を行う、といった具合です。

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まとめ

本稿では、テクニカルスキルとは何か、種類や具体例、効果的な研修方法などをご紹介しました。

テクニカルスキルとは、ある特定の職務を遂行するのに必要な能力のことです。専門的な知識や技術を指し、職務によってその内容は異なります。

テクニカルスキルは、1955年、ハーバード大学のロバート・カッツ教授によって、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルと並んで管理者に必要なビジネススキル(カッツモデル)の一つとして紹介され、世界的に大きな注目を浴びました。

テクニカルスキルが特に重要となるのは、ロワーマネジメントからミドルマネジメントです。なぜなら、部下の育成責任を負うのがロワー~ミドルマネジメントであることが多いためです。

テクニカルスキルは可視化することで、自社全体を通して不足しているスキルが一目で分かるようになります。例えば、市場環境が変わったときなど、それを乗り越えるのに必要な強化すべきスキルに注力し、より効果的な人材育成が可能になります。

テクニカルスキルには、以下3つの種類があります。

  1. 汎用スキル
  2. 専門スキル
  3. 特化スキル

テクニカルスキルを習得する際のポイントは、これら3つのスキルをバランス良く身に付けることです。なぜなら、ある特定のスキルばかりに偏ってしまうと、活躍の幅が狭まってしまう可能性があるためです。

テクニカルスキル研修を提供するメリットとしては、以下の4つが挙げられます。

  • 顧客満足度の向上
  • 従業員の自信創出
  • 組織目標のスピーディな達成
  • ワークエンゲージメントの向上

テクニカルスキル研修を提供するデメリットとしては、以下の2つが挙げられます。

  • コストがかかる
  • 知識・スキル偏重になる可能性がある

業務遂行能力であるテクニカルスキルは、職種ごとにその内容が異なります。組織として従業員に求めるテクニカルスキルが不明瞭な場合は、まずは、業種・職種を踏まえた上で、丁寧に洗い出し明確化することが大切です。

OJT以外で企業が提供できるテクニカルスキル教育としては、以下の3つがあります。

  1. eラーニング
  2. 集合研修
  3. ブレンディッド・ラーニング

好況不況にかかわらず、テクニカルスキルは組織にとって必要不可欠な能力です。人手不足や働き方の変化によって、これまでと同じような人材育成はしづらいのが現状ですが、ぜひ、本稿を参考に、継続的なテクニカルスキル教育を実施してみてはいかがでしょうか。

  1. ラーニングエージェンシー 「人事業務の変化から見る新型コロナの影響調査 中小企業は「就労環境・規則整備」、中堅・大企業は「社員育成」で変化対応が必要に」『人材育成・社員研修のラーニングエージェンシー』 (閲覧日:2020年12月24日) ↩︎
  2. このうち何をテクニカルスキルと位置付けるかは職種等によって異なります。詳しくは「表1.職種別テクニカルスキルの例」をご参照ください。 ↩︎

参考)
ラーニングエージェンシー 「人事業務の変化から見る新型コロナの影響調査 中小企業は「就労環境・規則整備」、中堅・大企業は「社員育成」で変化対応が必要に」『人材育成・社員研修のラーニングエージェンシー』https://www.learningagency.co.jp/topics/20200918
(閲覧日:2020年12月24日)

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