LMSのカスタマイズは必要?判断基準と成功事例を解説

  • 2025年7月1日
  • 2025年7月1日
  • LMS
LMS LMSのカスタマイズは必要?判断基準と成功事例を解説

「LMSを導入して研修を効率化したいが、自社のやり方に合わせるには、どこまでカスタマイズすべきだろうか?」

「カスタマイズで費用がかさむのも、セキュリティに穴が空くのも避けたい…」

LMS(学習管理システム)の選定において、多くの人材育成担当者や情報システム担当者がこのようなジレンマに直面します。

この記事では、その普遍的なお悩みを解決するため、LMSのカスタマイズ要否を判断する明確な基準を提示します。

さらに、カスタマイズせずに成功した企業、効果的なカスタマイズで成果を上げた企業それぞれの具体的な事例を交えながら、自社に最適なLMSの形を見つけるための実践的なヒントを解説します。

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LEARNING SHIP

LMS(学習管理システム)の新規導入/リプレイスを検討したいけれど、情報の取りまとめがなかなか大変、という方のために、大…

AIで要約

  • LMSのカスタマイズは、業務適合性・システム連携・費用対効果の3点から総合的に判断することが重要です。
  • ポーラの事例のように、UI/UXや機能を効果的にカスタマイズすることで、学習効果と管理業務の生産性向上を両立できます。
  • カスタマイズしない場合でも、まずは標準機能で業務を代替できないか検討し、東京ガスのように運用効率化を実現した事例があります。

LMSのカスタマイズ要否は?判断ポイントは「目的」

LMSのカスタマイズを検討する際、最も重要なのはカスタマイズありきで考えないこと。LMS導入・リプレイスで成功するためには、まず「このシステムで何を実現したいのか」という目的、すなわち要件を明確に定義することが不可欠です。

まずはLMSベンダーが提供する「標準機能」で何が実現できるのかを徹底的に把握し、その上で、カスタマイズの要否を以下の3つのポイントから総合的に判断することをお勧めします。

  • 業務適合性:どうしても譲れない、自社独自の研修フローや組織構造があるか?
  • システム連携・セキュリティ:シングルサインオンSSO連携や基幹システムとの連携、独自のセキュリティ要件は必須か?
  • 費用対効果:カスタマイズにかけるコストと、それによって得られる業務効率化や学習効果向上のインパクトは見合っているか?

実際に、効果的なLMS活用を実現している企業は、明確な目的設定からスタートしています。例えば、株式会社ポーラでは、「従業員の自己成長につながる『学びのプラットフォーム』として認識してもらう」という明確なゴールを掲げ、「この機能を追加するメリット・デメリットは何か。実装の目的は?」と一つひとつ吟味しながらカスタマイズを進めました。

また、東京ガス株式会社は、「老朽化した独自開発システムの刷新」と「多様な受講者をカバーできるキャパシティの確保」という目的のもと、「SaaSの標準機能に、業務プロセスを合わせる」という方針を固め、大規模運用の実現とコスト抑制を両立させました。これは、目的を明確にしたからこそできた合理的な選択といえるでしょう。

要件定義が曖昧なままでは、導入後に「思っていた機能と違う」「使いづらい」といった事態を招きかねません。そして、その目的が定まって初めて、「標準機能で十分か、カスタマイズが必要か」という判断が可能になります。

標準機能かカスタマイズか?それぞれの成功事例

LMS活用の選択肢は、大きく2つに分けられます。それぞれのメリット・デメリットを、実際の企業事例から見ていきましょう。

効果的なカスタマイズで成果を出す

自社の状況に合わせてLMSに手を加えることで、ユーザーの利便性を高め、管理者側の業務を大幅に効率化できる可能性があります。

メリットは、自社業務への完全な最適化や、従業員の学習体験向上、ブランディング強化が挙げられます。

一方のデメリットは、追加コストと開発期間、独自のメンテナンス負荷、ベンダーによるサポート範囲の制約などです。

カスタマイズで成果を上げた企業事例:株式会社ポーラ

全国のビューティーディレクター(BD)の教育に力を入れるポーラでは、10代から80代まで非常に幅広い年代のユーザーがLMSを利用するため、誰でも直感的に使えることが重要な課題でした。

そこで、ライトワークスのLMS「CAREERSHIP」導入から3年後にトップページを大幅にリニューアルし、タイトルを見るだけで内容がわかるよう情報をカテゴライズ。これにより、目的の教材にたどり着きやすくなりました。

また、従来はエリア担当者が研修登録後、本部が公開設定を行うという二度手間が生じていましたが、エリア担当者の権限で集合研修を完結できるよう機能を改修。これらのカスタマイズの結果、BD一人あたりの教材修了数が1.8倍に増加したほか、管理者側の工数削減にも成功しました。

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 標準機能への業務適合で効率化を実現

標準機能の範囲で運用することで、コストを抑え、迅速かつ安定した導入が可能になります。

メリットは、導入コスト・期間の圧縮、システムの安定稼働、ベンダーの標準サポートを受けられる点です。

デメリットとしては、既存の業務プロセスや運用ルールの一部変更が求められる場合があることです。

標準機能で効率化を果たした企業事例:東京ガス株式会社

東京ガスは、20年間利用しブラックボックス化していた独自開発の研修管理システムからのリプレイスを決定しました。約8万IDもの多様な受講者を安定して管理できるキャパシティを重視し、複数のベンダーを比較検討する中で、「標準機能に、業務プロセスを合わせる」という方針を固めます。

過度なカスタマイズを前提とせず、「標準機能でのトライアル」で導入後の運用イメージを具体的に持つことができたライトワークスの提案を採用しました。

結果として、eラーニング運用が劇的に効率化され、研修申し込みからテスト、履歴管理までを一つのシステムに集約。今では人事部なども活用する全社的な「知見共有プラットフォーム」へと発展しています。

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【人材育成担当者向け】学習効果を高めるカスタマイズ

一般的なLMSには、eラーニングの受講や研修履歴の管理といった標準的な機能がひととおり備えられています。では、標準機能では対応が難しい場合、どのようなカスタマイズが考えられるのでしょうか。

UI/UXのカスタマイズで学習意欲を引き出す

毎日アクセスする場所だからこそ、見た目のわかりやすさや操作性は重要です。自社のロゴやコーポレートカラーを反映させることで、従業員の帰属意識を高める効果も期待できます。

ポーラの事例のように、ユーザー層に合わせて情報の見せ方を工夫することは、学習へのハードルを下げ、サイト内の回遊率向上につながります。

機能のカスタマイズで独自の研修・人事制度に対応する

日本企業は、個社ごとの独自制度が多く、LMSの標準機能だけでは、自社の人事制度に対応できないケースも散見されます。

複雑な組織・承認フローへの対応

大企業の組織は、複数の階層、兼任者、組織を横断するタスクチームなど、複雑な構造を持つことが少なくありません。LMSによっては、複雑な組織登録に対応し、一人のユーザーを複数の組織に所属させることが可能です。

また、研修の申し込みにおいて、上長だけでなく人事部など複数の承認者が必要な場合や、メールアドレスを付与されていないパート・アルバイトなどの研修で代理承認者を立てるケースもあります。ユーザー自身に承認者を設定させる機能など、独自の承認フローに柔軟に対応できるカスタマイズも有効です。

スキル管理・人材データベースとの連携

LMSを単なる学習管理に留めず、戦略的な人材育成に活用する動きが活発になっています。従業員に求めるスキルを可視化し、学習コンテンツと紐づける「スキル管理機能」や、職歴・学習履歴などを一元管理する「人材データベース機能」を備えたLMSもあります。

これらを人事システムやタレントマネジメントシステムとAPI連携させることで、人材データの把握や活用がさらに容易になります。

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【情報システム担当者向け】安全なLMSカスタマイズの要件

カスタマイズは、情報システム担当者にとって懸念事項となりがちです。LMSには従業員の個人情報や、時には社外秘の経営情報や技術情報といった機密性の高い情報が含まれます。

標準機能から外れたカスタマイズを行うことで、未知の脆弱性が生まれるリスクや、システムの安定性が損なわれる可能性を危惧するのは当然でしょう。しかし、要点を押さえれば、安全性を高めることも可能です。

安全なカスタマイズを実現する3つのポイント

LMSのカスタマイズを行う場合、以下のポイントを考慮したカスタマイズにすることで、LMSの安全性を損なうことなく、ユーザーの使い勝手を向上させることも可能です。

ポイント1:SSO連携と認証強化

多くの企業で必須要件となるのがシングルサインオン(SSO)です。社内ポータルなどから一度ログインするだけでLMSにもアクセスできれば、ユーザーの利便性は格段に向上します。

Active Directoryとの連携や、文字数・有効期間・使用文字種などを柔軟に設定できるパスワードポリシー機能があるかを確認しましょう。

ポイント2:柔軟なアクセス制御

「経営に関するこの教材は、アクセスを社内ネットワークだけに限定したい」といったニーズは少なくありません。

アクセス可能なIPアドレスを制限できる機能は、こうした情報漏洩リスクを低減する上で非常に有効です。役職や所属部署に応じて、閲覧・操作できる権限を細かく設定できるかも重要な選定基準となります。

ポイント3:データ保護と国際基準への準拠

グローバルに事業を展開する企業の場合、GDPR(EU一般データ保護規則)のような各国の個人情報保護法制への対応が不可欠です。

また、ベンダーがISO 27001やPマークといった第三者認証を取得しているかは、そのLMSのセキュリティ管理体制の信頼性を測る客観的な指標となります。

ベンダー選定で確認すべきセキュリティ質問リスト

LMSベンダーに以下の点を確認することで、セキュリティリスクを最小限に抑えることができます。

  • 退職者や休職者のアカウントと学習履歴は、どのように管理されますか?(IDを無効化し、履歴を保持したままライセンス課金対象から外せるかなど)
  • 秘匿性の高い教材を、特定の条件下(例:社内IPからのみ)で配信することは可能ですか?
  • パスワードポリシー(文字数、有効期限、利用禁止文字列など)は、どの程度柔軟に設定できますか?
  • クラウドサービスの稼働安定性や、データセンターのセキュリティ対策について具体的に教えてください。

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まとめ

LMSのカスタマイズは、目的ではなく、あくまで「自社の課題を解決するための手段」です。

成功の鍵は、いきなりカスタマイズを検討するのではなく、まず自社の課題と目的を明確にすることです。そして、標準機能で解決できないかを徹底的に検討し、信頼できるベンダーと具体的な運用イメージをすり合わせることにあります。

東京ガスのように業務プロセスをLMSに合わせることで大きな効率化を実現する道もあれば、ポーラのように戦略的なカスタマイズによって従業員の学習意欲と管理者の生産性を同時に高める道もあります。

この記事を参考に、自社に最適なLMS活用の形を見つけてください。

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