新入社員研修のオンライン化はこうやる!eラーニング導入の手順と成功事例

「新入社員研修をオンラインに移行したいが、研修の効果に影響はないだろうか?」

新入社員研修のオンライン化は、多くの企業にとって重要なテーマとなっています。しかし、その効果について不安に感じる担当者様も多いのではないでしょうか。

新入社員研修をオンライン化した結果、その成果が従来の集合研修を上回った企業もあります。オンライン化による効果減少を心配する方もいるかと思いますが、うまく取り入れれば十分な効果が見込めるのです。

この記事では新入社員研修のオンライン化の手順や、実施の注意点を解説します。また新入社員研修にeラーニングを取り入れることでどのようなメリットが得られるのか、実際の企業の成功事例を交えて紹介します。ぜひ参考にしてください。

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AIで要約

  • オンライン研修にはリアルタイム型とオンデマンド型があり、eラーニングは自分のペースで学ぶオンデマンド型です。
  • eラーニングは、新入社員が効率的に学べるほか、企業のコスト削減や進捗把握に有効です。
  • eラーニングでの知識インプットと、集合研修でのロールプレイング(実践)を組み合わせる手法が研修効果を高めます。

過半数の企業が新入社員研修をオンラインで実施

新入社員研修のオンライン化には、「オンライン形式のみで実施する」方法と、「対面形式とオンライン形式のハイブリッドで実施する」2つの方法があります。

ライトワークスが企業に対して行った調査では、2025年度の新入社員研修の実施形式について「オンライン形式のみ実施」が25.3%、「対面形式とオンライン形式のハイブリッド」が28.8%という回答でした。これらを合計すると54.1%の企業が研修にオンライン形式を導入していることになります。

また、2026年度は「オンライン形式のみ実施」「対面形式とオンライン形式のハイブリッド」の両方が、「対面形式(集合型)のみ実施」よりも多く予定されています。もはやオンラインでの実施は特別な選択肢ではなく、新入社員研修の設計におけるスタンダードな要素になったといえるでしょう。

【今年度(2025年度)と来年度(2026年度)の新入社員研修・実施形式(単一回答)】

今年度(2025年度)と来年度(2026年度)の 新入社員研修・実施形式(単一回答)

株式会社ライトワークス「新入社員研修と新入社員のホンネ調査レポート 2025」,2025年10月公表,p16.(閲覧日:2025年11月7日)

オンライン研修の種類

オンライン研修は、インターネットを介して実施される研修のことです。大きく分けて以下の2種類があります。

リアルタイム型(双方向型)講師や他の受講者とリアルタイムにコミュニケーションを
取りながら受講する形式
オンデマンド型学習コンテンツや講義・実技(接客例など)の動画を
自分のペースで視聴する形式

このうちリアルタイム型(双方向型)は、講師による講義をリアルタイムで配信し、受講者が自宅などで聴講するという、集合研修に比較的近い形式のオンライン研修です。

オンデマンド型は、学習コンテンツや講義の録画などを視聴して個人で学習を進めていく方法です。eラーニングもオンデマンド型に分類されます

新入社員研修にオンライン研修(eラーニング)を取り入れるメリット

新入社員研修にオンライン研修(eラーニング)を取り入れると、具体的にどのようなメリットが得られるでしょうか。ここでは新入社員側と企業側、2つの視点で解説していきます。

新入社員側のメリット

幅広い内容を効率的に学習できる

新入社員研修では、企業理念やビジネスマナー、業務に必要なスキル、コンプライアンスなど、多岐にわたる内容を限られた期間で学習しなければなりません。

新入社員研修の全てが集合研修で実施されるのではなく、適度にオンライン研修が取り入れられていれば、新入社員個々が都合の良い時間・場所で学習を進めることができ、効率的な学びが期待できます。

学びのハードルを下げられる

社会に出たばかりの新入社員は、働く上で必要な知識やスキルを学ぶことに慣れていません。まずは学びに対する心理的なハードルを下げる必要があります。

eラーニングで動画やクイズなどのコンテンツに楽しみながら触れることで、新入社員でも学習に取り組みやすくなるでしょう。

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自分のペースで学習できる

eラーニングでは、一度学習した内容を繰り返し学習することができます。一度で理解できなくても、自分のペースで繰り返し学習し、理解を深めることができるのです。それにより、学習効果の向上が期待できます。

また、大勢で一斉に受講する集合研修では緊張してしまったり、周りのペースについていけなかったりする新入社員もいるかもしれません。しかし、オンライン研修(eラーニング)であれば、リラックスした状態で、自分のペースで学習を進めることができます。

学習習慣が身に付く

社会人になると学生時代と比べて自由時間が減り、学習時間の確保が難しくなります。しかし、eラーニングという手軽な学習手段があれば、隙間時間などを活用して継続的な学習が可能です。

特に新入社員の頃からeラーニングに慣れ親しむと、学習が習慣化され、仕事の合間に学ぶことへの抵抗感も薄まるでしょう。

企業側のメリット

学習の進捗状況を把握できる

従来の集合研修では個々の学習の進捗や履歴を把握することが難しく、研修修了後に十分な知識やスキルが身に付いていない新入社員がいても見落とされる場合もありました。その点、eラーニングは従業員一人一人の学習の進捗や履歴を容易に確認できます。

研修のコストと工数が削減できる

eラーニングを導入することで、従来の集合研修に比べて、会場費や講師の交通費、宿泊費、研修資料の印刷費などのコストを大幅に削減できます。また、研修の実施にかかる時間や労力も軽減できるため、新入社員育成を担う人事担当者の負担を減らすことが可能です。

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新入社員研修のオンライン化手順

次に、実際に新入社員研修をオンライン化するための手順を見ていきましょう。

目的・目標の設定

新入社員研修のオンライン化成功は、目的と目標の明確な設定にかかっています。

目標の例としては、ビジネスマナーの習得を目的とする場合、「電話対応などのビジネスマナーについてのeラーニング講座を受講し、ロールプレイングテストで全員が80点以上を取れるようになる」などが挙げられます。

目的や目標が明確でなければ実施後の効果測定が難しくなり、システムやカリキュラムの適切な改善につなげられず、オンライン化する効果が薄れてしまいます。

研修内容設計

次は研修内容を具体的に設計していきます。目標を達成するために、どのような内容を、どのような順番で学ばせるのかを検討しましょう。

例えば、新入社員研修で「ビジネスマナー習得」を目的とする場合、以下のような内容・流れが考えられます。

(1)社会人としての心構えeラーニングで座学
(2)電話対応eラーニングで動画視聴後、集合研修でロールプレイング
(3)名刺交換eラーニングで動画視聴後、集合研修で新入社員同士で実践

上記のように、電話対応や名刺交換といった実践することで身に付きやすい内容は、eラーニングと集合研修を組み合わせるとより効果的です。このように2種類の方法を組み合わせる学習をブレンディッド・ラーニングといいます。

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システムの選定

オンライン研修やeラーニングを実施するには、プラットフォームとなる「eラーニングシステム」が必要です。eラーニングシステムの選定は、自社のニーズや予算などを考慮しなくてはなりません。どのようなシステムを採用するかが、新入社員研修の効率や学習効果に大きく影響します。

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教材の選定・作成

eラーニング教材を準備するには、大きく分けて「既製品の購入」と「内製(自社で作成)」の2つの方法があります。

1. 既製教材の購入

ビジネスマナーやコンプライアンスといった汎用的なテーマは、既製のeラーニング教材を購入するのが最も効率的です。

既製教材は「買い切り型」で必要な教材だけを購入する方法と、「受け放題(サブスクリプション)型」で多様な教材を幅広く提供する方法があります。自社の研修計画や予算に応じて選びましょう。

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2. 内製(自社での作成・制作委託)

自社の企業理念や独自ルール、現場のノウハウといった内容をオンライン化したい場合、オリジナル教材を内製する必要があります。

その場合、自社で作成ツール(オーサリングツール)を使って作成する方法と、専門の制作会社に委託する方法があります。

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運用体制の構築

新入社員研修をオンライン化するには、各々の役割を明確にして、スムーズな運用体制を構築する必要があります。

例えば、システムの運用管理や問い合わせ対応を行う「システム担当者」、研修計画の作成や教材選定、進捗管理を行う「研修担当者」、実際に新入社員と接して質疑応答や学習サポートを担う「指導者」といった役割が挙げられます。

新入社員の学習状況や課題を早期に把握し、必要なサポートを提供できるように、定期的なミーティングを行うなど、メンバー同士の連携を密にするようにしましょう。

効果測定・改善

研修修了後には効果測定を行い、結果に基づいて改善策を検討しましょう。効果測定では、事前に設定した研修の目的や目標の達成度合いを評価します。

eラーニングシステムの学習ログ・データなどを分析すれば、受講者の学習進捗状況や、つまずきやすいポイントなどを可視化することもできます。

このような効果測定の結果を基に、研修計画や教材の見直し、受講者へのサポート体制の強化など、具体的な改善策の立案が可能です。毎年新入社員研修を実施するたびに改善策を打ち出し、内容をブラッシュアップすることで、より効果的で質の高い研修の実現を目指します。

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新入社員研修のオンライン化で注意すべき点

オンライン研修やeラーニングを導入すると高い学習効果が見込めますが、導入に際しては注意点もあります。ここでは、気を付けるべき4つのポイントを紹介します。

受講環境の整備

オンライン研修やeラーニングでは、インターネットに接続できる通信環境と、パソコンやタブレットなどのデバイスが必須です。新入社員の中には、eラーニングの受講が初めての人や、通信環境が不十分であったり、デバイスを所持していなかったりする人もいるでしょう。

新入社員の受講環境によって学習効果に差が出ないように、全ての受講者に対して環境を整える必要があります。具体的には、社内で学習できるスペースを設けたり、デバイスを貸与したりするなどの対策が考えられます。

企業側で事前に新入社員それぞれの受講環境を把握し、必要に応じてサポートを提供しましょう。

学びを実践する場の設置

eラーニングは、場所や時間に縛られずに学習できて便利な反面、受け身になりやすく、学習した内容が実践レベルまで定着しにくいという面も持っています。

そのため、eラーニングを導入する際には、新入社員が学んだことを実践できる場を設けるとよいでしょう。例えば、名刺交換や来客対応を動画などで学んだ後に、グループワーク、ロールプレイング、OJTなどを積極的に取り入れると、知識が定着しやすくなります。

実践の場を通して、新入社員は学んだ内容がスキルとして身に付いていることを実感でき、自信を持てるようになるでしょう。

受講者のモチベーション維持

eラーニングでは、集合研修のように講師・他の受講者と共に研修する緊張感や講師の判断によるペース配分の調整などはありません。そのため、学習が滞りなく進むように受講者のモチベーション維持が課題になります。

 例えば、ゲーム要素を組み込んだり、達成度を可視化したりするなどの工夫を取り入れ、受講者の学習意欲をかき立てましょう。

 学習にゲーム要素を組み込む方法として、成績に応じてポイントが付与される制度や、受講者同士の競争心を刺激するランキング表示などが挙げられます。

また達成度の可視化には、学習の進捗状況をグラフ化したり、目標達成に必要な学習時間や講義を表示したりするといった方法が効果的です。

質疑応答やコミュニケーションの機会確保

 eラーニングは自宅などで一人で取り組む学習スタイルなので、新入社員が疑問点をすぐに聞けない、不安を感じやすいという課題もあります。定期的に面談やグループワークの機会を設け、講師や先輩従業員に気軽に質問や相談ができるようにすることが大切です。

また集合研修と違い、eラーニングでは新入社員同士の交流の機会が少なく、同期入社としての連帯感が育まれにくいというデメリットもあります。オンラインコミュニティやグループチャットなどを活用し、新入社員同士が気軽に交流できる場を提供しましょう。

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新入社員研修をオンライン研修/eラーニングで行う企業の事例

 最後に、新入社員研修にオンライン研修やeラーニングを取り入れ、成果を上げている企業事例を2つ紹介します。

TOPPANホールディングス株式会社(旧:凸版印刷株式会社)

総合印刷会社のTOPPANホールディングス株式会社は、新型コロナウイルス感染対策として2020年度からオンラインでの新入社員研修を開始しました。

独自のプラットフォームで、従来の集合研修で蓄積された研修資料を活用した動画やライブ配信などを視聴して学ぶ仕組みになっています。

研修最終日に実施される総括アセスメント(総合テスト)においては、オンライン研修を実施した2020年度の最終スコア(平均)が95.9点となり、集合研修での数値を上回りました。この要因の1つとして、約76%の受講者がコンテンツを見直し、復習や反復学習を行っていたことが挙げられます1

その他、終日座学が続くことによるパフォーマンス低下を防ぐために、コンディション管理に活用できる独自のアプリを導入したり、新入社員をネットワークでつなぎ、トレーナー役の先輩従業員を配置してコミュニケーションの促進を図ったりする施策も実施しました。

同社は2020年度以降も完全オンラインの新入社員研修を続けており、VRのオンライン研修センターやメタバース上での交流など、研修の充実と学習効果向上に取り組んでいます。

株式会社ルネサンス(旧:株式会社東急スポーツオアシス)

会員制フィットネスクラブなどを運営する株式会社ルネサンスでは、eラーニングを導入して効率的な教育体制の確立に成功しました。

以前の同社での新人教育は、大部分を各店舗でのOJTに委ねていました。しかしOJT担当の従業員は、指導の途中であっても必要があれば顧客応対に回ります。その間、指導は中断されてしまうため、新人スタッフのモチベーション低下につながるという状況が見られました。

そこで本社が中心となって、全店舗で共通して必要となる業務知識を体系的に学べるeラーニングシステムを導入し、eラーニングとOJTの2本柱で新人教育を進めることにしました。

すると、OJT担当の従業員が顧客対応のために指導を中断しても、新人スタッフはeラーニングに取り組んで学習を進められるようになりました。

OJT担当の従業員にとっても、eラーニングによってベースを作りOJTでしっかりと身に付けるという流れができたことで、新人スタッフの指導にかける時間や労力の削減につながりました。

その他eラーニング導入の効果として、新人教育の内容を整理し体系化することができた、学習の進捗や習熟度が可視化されて指導しやすくなったなどが挙げられています。

こちらの事例は、以下の記事で詳しくご覧いただけます。

株式会社ライトワークス | 人材開発ソリューションパートナー

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まとめ

オンライン研修とはインターネットを介して実施される研修を指し、大きく分けてリアルタイム型(双方向型)とオンデマンド型があります。eラーニングはオンデマンド型に含まれる学習方法で、学習コンテンツや講義の録画などを視聴して個人で学習を進めます。

新入社員研修をオンライン化すると、新入社員側と企業側どちらにもメリットがあります。新入社員側のメリットは以下の通りです。

  • 幅広い内容を効率的に学習できる
  • 学びのハードルを下げられる
  • 自分のペースで学習できる
  • 学習習慣が身に付く

また、企業側には以下のようなメリットがあります。

  • 学習の進捗状況を把握できる
  • 研修のコストと工数が削減できる

新入社員研修のオンライン化は、以下のような手順で実施します。

  1. 目的・目標の設定
  2. 研修内容設計
  3. システムの選定
  4. 教材の選定・作成
  5. 運用体制の構築
  6. 効果測定・改善

新入社員研修にオンライン研修やeラーニングを取り入れるに当たって、注意すべき点は以下の4つです。

  • 受講環境の整備
  • 学びを実践する場の設置
  • 受講者のモチベーション維持
  • 質疑応答やコミュニケーションの機会確保

新入社員研修にオンライン研修やeラーニングを取り入れた企業の事例として、以下の2社を紹介しました。

  • TOPPANホールディングス株式会社(旧:凸版印刷株式会社)
  • 株式会社ルネサンス(旧:株式会社東急スポーツオアシス)

企業は自社の課題やニーズに合わせて、オンライン研修と集合研修を組み合わせるなど効果的な研修プログラムを構築していくことが重要です。

新入社員研修のコスト削減や学習効果の向上に興味をお持ちの企業の方は、ぜひオンライン化を検討してみてください。

  1. TOPPANホールディングス株式会社「凸版印刷、新入社員在宅オンライン研修の成果について」,『TOPPAN』,(閲覧日:2024年10月23日) ↩︎

参考)
日本アイ・ビー・エム株式会社「「ニューノーマルな働き方を考える」在宅ワークでの新入社員とのコミュニケーション」,『IBM』,https://www.ibm.com/blogs/think/jp-ja/newnormal-telework-communication-newemployee/(閲覧日:2024年10月23日)
TOPPANホールディングス株式会社「凸版印刷、2021年度新入社員在宅オンライン研修の成果について」,『TOPPAN』,https://www.holdings.toppan.com/ja/news/2021/07/newsrelease210730_1.html(閲覧日:2024年10月23日)
TOPPANホールディングス株式会社「凸版印刷、メタバースでの交流を取り入れた新入社員研修をフルオンラインで実施」,『TOPPAN』,https://www.holdings.toppan.com/ja/news/2022/03/newsrelease220330_1.html(閲覧日:2024年10月23日)

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