「研修の成果が見えにくい」「受講管理に手間がかかる」そんな課題を感じていませんか?
従業員教育の手法としてeラーニングは広く普及していますが、その運用や効果測定に限界を感じている企業も多くあります。そこで注目されているのが、LMS(学習管理システム)の活用です。
LMSを導入することで、受講進捗の可視化、研修内容の標準化、運用の効率化が可能となり、教育施策の効果を高めることができます。一方で、導入・運用にあたっての注意点や適した活用方法も理解しておく必要があります。
本記事では、LMS導入によって得られる下記のメリット・デメリットを解説します。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
管理側 | ・研修の管理にかかる工数を抑えられる ・研修の費用を抑えられる ・研修をより効果的に実施できる ・研修を人事施策と連動できる | ・導入にコストがかかる ・人材育成の指針がないと活用し切れない可能性がある |
受講側 | ・学習状況が把握しやすい ・学習すべき内容が明確に分かる ・時間や場所に関係なく学習できる | ・学習意欲が上がりにくい場合がある |
また、導入を成功させるためのポイントも紹介します。研修の効率化や社内教育の質向上を目指す方は、ぜひご覧ください。
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LMSの主要な機能は「eラーニングの配信」ですが、それは様々ある機能の一つに過ぎません。それ以外の機能をフル活用すること…
LMSとは?eラーニングとの違いは?
LMSはLearning Management System、つまり学習管理システムを表します。
「LMS」と「eラーニング」はセットで語られることも多く混同されがちですが、両者が指すものは異なります。端的に言えば、LMSはシステム、eラーニングは学習方法を表す言葉です。
LMSは学習のプラットフォームになるシステム
LMSはeラーニングやオンライン研修などのプラットフォームとして、次のような機能を提供するものです。
- 受講者管理
- 研修の案内
- 教材配信
- 学習履歴管理
LMSで管理できる研修はeラーニングに限りません。中にはオフラインの現場研修や外部研修まで含めた、あらゆる研修の受講管理に利用できる製品もあります。さらにはスキルマップやタレントマネジメントといった、人材開発を総合的に後押しする機能を備えたものもあり、多様化・高機能化しています。
LMS(学習管理システム:Learning Management System) とは、主に企業や教育機関において、eラ…
eラーニングはインターネットと電子端末を使用する学習方法
一方、eラーニングはインターネットを通じて教材コンテンツにアクセスする学習方法を指します。
eラーニングの実施方法として、LMSを使用せず、教材コンテンツだけを利用する形もあります。LMSなしに学習状況や成績の管理機能を備えたeラーニングシステムもありますが、複雑な設定やeラーニング以外の研修の管理はできません。
eラーニングシステムの導入は、企業の人材育成において重要な要素です。貴社の機能要件に合致するシステム選びのために、性能・…
LMSの管理者側のメリット
LMSの導入によって、管理者側には以下のようなメリットがあると考えられます。
- 研修の管理にかかる工数を抑えられる
- 研修の費用を抑えられる
- 研修をより効果的に実施できる
- 研修を人事施策と連動できる
研修の管理にかかる工数を抑えられる
前章で述べたように、LMSは教材管理や進捗管理など受講管理にかかる多くの作業を自動化します。現状で管理業務に手作業を多く要している場合は、LMSによって管理担当者の負担軽減が図れるはずです。
研修の費用を抑えられる
LMS導入により、集合研修をeラーニングに置き換えることで、研修費用、交通費・宿泊費、講師費用などを削減できます。
例えば、株式会社ポーラではLMSを活用し、従来2日〜5日かかっていた対面での実技研修を1日に短縮することに成功しました。このように研修日数を短縮できれば、会場費、交通費、講師費用など、研修にかかる費用を大幅に抑制できます。
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研修をより効果的に実施できる
LMSはeラーニングに限らずさまざまな研修を一元管理できます。eラーニングと対面研修を組み合わせたブレンディッド・ラーニングのように、総合的な視点での研修体制を後押しするでしょう。また受講履歴を活用したフォローや研修内容の改善も、研修の効果を高めるのに有用です。
研修を人事施策と連動できる
LMSは研修を一元管理できるだけでなく、製品によっては職種や階層ごとに必要なスキルを示すスキルマップなどの機能を備えたものもあります。人材育成計画に沿った体系的な研修を行うのに、こうしたLMSは強力な武器になるでしょう。またLMSに蓄積される受講履歴情報は、人事評価や人員配置の客観的な材料として役立ちます。
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LMSの受講者側のメリット
続いて、受講者側のメリットです。
- 学習状況が把握しやすい
- 学習すべき内容が明確に分かる
- 時間や場所に関係なく学習できる
学習状況が把握しやすい
受講者が自身の受講履歴や成績などを簡単に参照できるのもLMSの利点です。目標に対する学習進捗や自身の得手・不得手を把握したり、成長を実感したりすることで、従業員が主体的に学ぶ姿勢につながります。
学習すべき内容が明確に分かる
LMSを活用すると、テーマやキャリアプランに沿った学習内容が提示されるので、何を学習すべきか迷わずに取り組むことができます。学習のステップが見えることで目標を立てやすく、従業員の自律的なキャリア形成の意識にもつながるでしょう。
時間や場所に関係なく学習できる
LMSがあれば、時間や場所を問わず、それぞれのペースで学習できます。通勤時間や隙間時間を有効活用できるため、業務を妨げることなくスキルアップが可能です。多拠点やリモート環境下においても、学習機会を均等に利用できることは大きな利点と言えるでしょう。
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LMS導入のデメリット
LMSには多くのメリットがありますが、注意点についても知っておきましょう。
- 導入にコストがかかる
- 人材育成の指針がないと活用し切れない可能性がある
導入にコストがかかる
LMSの導入には、初期費用+ランニングコストがかかります。LMSにはさまざまなタイプがありますが、特に機能が充実した製品だと費用は安いとはいえず、費用対効果を考慮することは必須といえます。
加えて、LMSや教材をカスタマイズする場合などは、稼働開始まで手間と時間を要することがあります。使い方のガイダンスやトラブル対応など、新しいシステムの導入に伴う管理作業が発生することも留意しておきましょう。
受講対象者や研修の種類が少ない場合などは、現状のeラーニングと比較して必ずしも「費用対効果が優れている」とはいえないケースもあるかもしれません。
人材育成の指針がないと活用し切れない可能性がある
LMSは大変有用ではありますが、目的が曖昧なまま導入しても効果を十分に発揮できないかもしれません。人材育成の指針に沿って導入しないと、機能や教材コンテンツの過不足が出てきたり、受講者の学習意欲が上がりにくかったりする恐れがあります。
目的を絞り過ぎず「eラーニングで幅広い学びの機会を提供したい」という場合、福利厚生としてeラーニング受け放題サービスを導入する手もあります。
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効果を高めるLMSの選定ポイント
LMSの効果を高めるには、自社に合ったLMSを選定することが重要です。ここではLMSの選定ポイントを、大まかに三つの観点に分けて解説します。
性能・機能について
LMSの機能は多様化しています。差別化ポイントの一つとなるのが、集合研修管理やスキル管理・人事データベースとの連携といった、eラーニング配信以外の機能です。
マルチデバイスや多言語に対応しているかなども、自社の要件によっては欠かせない要素になります。自社の人材育成・人事施策に適した機能があるかチェックしましょう。
他にも、以下のような点が検討材料になります。
- 想定する運用規模と製品の想定利用人数が合っているか
- サーバー構築不要なクラウド型か、イントラネットでの利用を想定したオンプレミス型か
- eラーニングの標準規格であるSCORMに準拠しているか
いずれにせよ、自社がLMSにどのような要件を求めるのかを明らかにすることが何より重要です。
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運用について
LMSは導入して終わりではなく、運用フェーズを見越して検討する必要があります。導入後のサポート、例えばヘルプデスクや運用のアウトソーシングの有無や必要性についても確認しましょう。
加えて、重要なポイントの一つが、教材コンテンツの調達方法です。LMSベンダーが提供する教材コンテンツを利用する予定であれば、教材ラインナップの確認は必須といえます。
自社オリジナルの教材を作りたい場合は、教材作成ツールが充実した製品や、教材作成のサポートが得られるベンダーが選択肢に入ります。
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価格について
多くのLMSは初期費用だけでなく月額料金が発生する料金体系であり、運用規模をはじめもろもろの要件で金額が変動するため、価格を同じ条件で比較することは困難です。実際、ベンダー各社の公開している情報を見ても、詳細な価格は個別の問い合わせを要する製品がほとんどです。
価格は分かりやすい指標であるように思えますが、絞り込みに用いるのは検討の最終段階になってからをお勧めします。まずはこれまでに挙げたような性能・機能面、運用面といった要件でしっかりと候補を検討するとよいでしょう。
より詳しくLMSの選定ポイントについて知り、製品を比較検討するには、こちらの資料もお役立てください。
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LMS導入でeラーニングの課題を改善した企業事例
最後に、eラーニングにLMSを導入したことで、それまで抱えていた課題を改善した企業事例を紹介します。
住友ファーマ株式会社
住友ファーマ株式会社では、部門ごとに個別でeラーニングを運用しており、各部門の教育担当者に大きな負荷がかかっていました。象徴的なのが、人事異動や組織変更のたびに発生する、異動先のシステムへのユーザー登録・ID発行といった対応です。それまでの受講履歴を引き継ぐこともできません。
そこで同社はライトワークスのLMS「CAREERSHIP」を導入し、全社での教育基盤の統合を図ります。
その結果、煩雑だった異動時の対応は完全に自動化され、10人ほどを要していた管理担当者の工数はゼロになりました。未受講者への催促メール自動配信など、こまごまとした管理業務が軽減され、受講完了までの期間も短縮されたといいます。
管理にかかる工数が減ることで、教育担当者は良質な教育提供のための企画・開発などの業務に集中できるようになります。さらに、子会社の多くがLMSを統合したことで、グループ全体のコスト削減にも効果が見られました。
社内の人財教育において、細かい業務に時間と労力を取られている担当者の方、実は多いのではないでしょうか?併用していた3社の…
アサヒビール株式会社
アサヒビール株式会社は、社内のeラーニングの利用率の低迷を課題としていました。そこでライトワークスのLMS「CAREERSHIP」をベースにeラーニングシステムを刷新し、利用率を12倍にも伸ばすことに成功します。
従来の教材作り込みのクローズド型から、ベンダーを問わずよりよい教材を取りそろえられるオープン型へ。そして、従業員一人一人へキャリア形成に必要な教材を届けるデリバリー型のシステムへと、明確なコンセプトに基づいた新システムの開発で同社のeラーニングは大きく変わりました。
集合研修の前提条件として事前テストの得点基準を設けたり、新入社員の学習進捗をシステム上で把握してOJTでの指導に生かしたりと、リアルと連携した活用も広がっています。キャリア形成を支援するシステムへと進化しただけでなく、部門ごとに異なっていたシステムを集約することでコスト削減にもつながりました。
2018年にeラーニングシステムを一新すると、月平均PVは12倍に拡大。なぜ、そのような利用率の拡大が実現できたのでしょ…
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まとめ
従業員教育の手法としてeラーニングは広く普及していますが、LMS(学習管理システム)を導入することで、教育施策の効果を高めることができます。
LMSとeラーニングは混同されがちですが、LMSは学習のプラットフォームになるシステムで、受講者管理や教材配信、学習履歴の管理といった機能を提供するものです。eラーニングに限らず集合研修や外部研修まで含めた管理、人事データとの連携など、多様化・高機能化しています。
一方、eラーニングはインターネットを通じて教材コンテンツにアクセスする学習方法を指します。LMSなしに教材コンテンツだけを利用する形もありますが、複雑な受講管理やeラーニング以外の管理はできません。
LMSによる管理者側のメリットを整理すると、以下のようになります。
- 研修の管理にかかる工数を抑えられる
- 研修の費用を抑えられる
- 研修をより効果的に実施できる
- 研修を人事施策と連動できる
また、受講者側にとってのメリットには次のようなものがあります。
- 学習状況が把握しやすい
- 学習すべき内容が明確に分かる
- 時間や場所に関係なく学習できる
一方、LMS導入のデメリットとしては、次の2点が挙げられます。
- 導入にコストがかかる
- 人材育成の指針がないと活用し切れない可能性がある
LMSの導入を成功させるには、導入目的を明確にし、費用対効果を検討することは必須といえるでしょう。目的や運用規模によっては、LMSを導入しない形でのeラーニング、例えばeラーニング受け放題のようなサービスが適している場合もあるかもしれません。
自社に合ったLMSの選定には、以下の観点から検討するとよいでしょう。
- 性能・機能について
- 運用について
- 価格について
最後に、LMS導入でeラーニングの課題を改善した企業事例を2社紹介しました。
住友ファーマ株式会社は、全社でLMSを統合したことで、組織変更・人事異動時の管理担当者の工数が10人からゼロになるなど管理業務の大幅な軽減に成功しました。グループ全体のコスト削減も果たしています。
アサヒビール株式会社の事例は、LMS導入によって、利用率の低かった従来のeラーニングから従業員のキャリア形成を後押しするシステムへと刷新したものです。eラーニング利用率は12倍に拡大し、システムの集約によってコスト削減にもつながりました。
LMSはeラーニングをはじめさまざまな研修管理の課題を改善し、人事施策を後押しする心強いツールです。一方で、求める要件によって企業ごとに最適な製品や導入方法は異なってくるでしょう。自社に最適な研修管理の方法の検討に、本記事をお役立ていただけると幸いです。