「今年も新人が配属されたが、現場から『忙しくて教える時間がない』と悲鳴が上がっている」「せっかく採用した新人が、成長を感じられずに早期離職してしまった」
このような悩みを抱える人事・人材開発担当の方は少なくありません。実際に、ライトワークスが実施した「新入社員研修と新入社員のホンネ調査レポート2025」によると、人事担当者の約3割が「新入社員の早期離職」を新入社員研修における課題として挙げています。
一方で、新人社員の約4割が新入社員研修の効果を明確に実感できておらず、企業側の提供する教育と、受け手である新人の間に大きなギャップが生まれていることが浮き彫りになりました。
ビジネス環境の変化や「Z世代」と呼ばれる若手社員の価値観の多様化により、従来の「背中を見て覚えろ」式の教育はもはや通用しません。現代の新人教育に求められるのは、単なるスキル習得だけでなく、「定着(リテンション)」を促すエンゲージメントの向上と、現場の負担を減らす「効率化」です。
本記事では、新人教育の基本的な目的や手法に加え、イマドキ世代の育成で直面する「3つの壁」と、それを乗り越えて教育を「仕組み化」するための具体的なポイントを解説します。
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「新入社員研修」は、企業に入社した新入社員を対象に行う研修です。企業の安定的な成長には、従業員のスキルが欠かせません。新入社員研修を実施することで、新入社員が「活躍人材」として成長しやすくなります。しかし、新入社員研修の効果をより[…]
AIで要約
- 新人教育の目的は、業務スキル習得と組織への適応促進、早期離職の防止です。
- 現代の新人教育では、「リモートワークの壁」「教育担当者の負担増の壁」「世代間ギャップの壁」の3つの壁を乗り越える必要があります。
- 新人教育を成功させるには、ブレンディッドラーニングの導入やLMSによる進捗の可視化、教育担当者の質の担保など教育の仕組み化が重要です。
新人教育を行う4つの目的
「新人教育」とは、自社に入社した新人社員に対して、必要な知識を伝えるための取り組みを指します。まずは新人教育の意味や目的について、以下の4つのポイントから解説します。
- 業務に必要なスキルを身につけてもらう
- 企業理念や事業内容などを浸透させる
- 組織における人間関係の構築を促す
- 早期離職を防止する
企業に入社した新入社員を対象に行う「新入社員研修」。研修の効果を高めるためには、目的を明確化してカリキュラムを作ることが大切です。しかし、具体的にどう目的を決めるべきか分からない方もいらっしゃるでしょう。そこで本記事では、新入社員[…]
業務に必要なスキルを身につけてもらう
新人教育の重要な目的は、業務遂行に欠かせない知識・スキルを新人社員に身につけてもらうことです。新人教育では、自社の業務の目的やフローについて教育を行い、実務を通じて定着させていきます。これにより新人社員は自身で業務をこなし、社内で主体的に活躍できるようになります。
企業理念や事業内容などを浸透させる
実務的なスキルだけではなく、企業理念や事業内容を新人社員に理解してもらうことも、新人教育の大切な目的です。企業が経営目的を達成するためには、経営陣と従業員が同じ方向を目指して成長することが欠かせません。組織の一員として団結力を発揮してもらうために、新人教育で企業のビジョンやミッションを浸透させます。
組織における人間関係の構築を促す
組織内での人間関係の構築を促すことも、新人教育の目的のひとつです。企業の人間関係は、業務効率や成果に直結します。新人教育では、先輩社員が新人社員に実務を通じて仕事を教えたり、同期との交流を深めたりします。その過程で人間関係が育まれ、チームで協力して業務をこなせるようになるでしょう。
早期離職を防止する
新人社員の早期離職の原因は、「業務についていけない」「人間関係に問題がある」など、主に新人教育に起因するものが多いです。適切な新人教育を行うことで、新人社員が必要なスキルを身につけて自信を高め、同僚や上司との人間関係も構築できます。これにより、新人社員は組織内で「居場所」を見つけて、安心して業務に取り組めるようになるでしょう。
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新人教育で活用されている効果的な手法
新人教育で活用されている効果的な手法として、以下の3つが挙げられます。
- OJT
- OFF-JT
- eラーニング
OJT
「OJT(On the Job Training)」は、現場での実務を通じてスキルを伝える手法です。現場で役立つ知識が身につくため即戦力になりやすいことや、社員同士のコミュニケーションが深まりやすいことが魅力です。一方で、教育担当者によって教育内容にバラつきが出やすい傾向があります。
OFF-JT
「OFF-JT(Off the Job Training)」は、現場から離れた場所で研修やセミナーを受ける手法です。定期的に行うことで、仲間意識やモチベーションの向上が見込めます。また、大人数で同じ内容の教育ができるため、新人社員のスキルを均質化しやすくなります。ただし、時間や場所、講師などの確保が必要となります。
eラーニング
「eラーニング」とは、パソコンやスマートフォンなどの端末から、オンライン上で受けられる教育プログラムを指します。時間や場所にとらわれずに学べることや、新人社員が自分のペースで何度でも復習できることが魅力です。ただし、新人社員がその場で疑問を解決しづらいことに注意が必要です。
eラーニングシステムは、インターネットを通じてオンライン上で教材を配信するためのシステムです。社内研修のコストを抑えられるだけでなく、DX推進やリスキリング、自律学習にも欠かせない手段となりつつあります。この記事では、企業向けeラ[…]
新人教育(OJT)の基本的な5つの指導ステップ
新人教育の効果を高めるために、以下の5つのステップを意識しましょう。
- ステップ1:業務の全体像を説明する
- ステップ2:実際に業務を実演して見せる
- ステップ3:業務の内容を詳しく説明する
- ステップ4:本人に実践させて理解を深める
- ステップ5:実践に対してフィードバックを行う
ステップ1:業務の全体像を説明する
まずは業務の全体像について、新人社員に説明しましょう。最初から細かな部分について説明しすぎると、新人社員は内容を十分に理解できません。その結果、「難しそう」だと感じてモチベーションが低下したり、大きなミスやトラブルにつながったりする恐れがあります。そのため、最初に業務の大まかな内容を理解してもらうことが大切です。
ステップ2:実際に業務を実演して見せる
新人社員に業務の概要を説明したあとは、実際に業務に取り組んでいる姿を見せます。「百聞は一見に如かず」というように、どれだけ分かりやすい説明も「実演」には及びません。新人社員に業務内容を具体的にイメージできるように、新人教育の早い段階で業務を実演して見せましょう。
ステップ3:業務の内容を詳しく説明する
業務を実演したあとは、詳細の説明に移ります。このとき口頭だけで伝えようとすると、正確な情報が伝わらないことや、教育担当者のスキルによって教育内容が変化することがあります。事前に作成したマニュアルなどを使用して、情報を均質に分かりやすい形で伝えましょう。
ステップ4:本人に実践させて理解を深める
詳細を説明したあとは、新人社員に実践してもらいます。実際にやってもらうことで、理解できていない部分や不足している知識が明らかになります。説明から実践まで時間を置かずに進めて、担当者が必要に応じてサポートすることで、新人社員の理解がさらに深まりやすくなるでしょう。
ステップ5:実践に対してフィードバックを行う
新人社員が業務を実践したあとは、必ず丁寧なフィードバックを行います。何事も最初は上手くいかないものです。よくできた部分について褒めたうえで、何をどうすれば良くなるか具体的に説明しましょう。新人社員の自信やモチベーションを高めるために、ネガティブよりポジティブな指摘を増やすことが理想です。
終身雇用型から転職が当たり前の社会となり、新入社員がすぐに辞めてしまうという企業も少なくありません。さらに、ただでさえ新人教育のハードルが上がったと感じているなか、経営からは「戦略人事だ!」といった言葉が飛び出し、より高いレベルの[…]
現代の新人教育で直面する「3つの壁」
従来通りに新人教育をしているつもりでもなぜかうまくいかない場合、背景に働き方の変化や世代間の価値観の相違によって生じた3つの壁が存在する可能性があります。ここでは、新人教育で直面する3つの壁についてみていきます。
リモートワークの壁
リモートで新人教育を行う場合は、遠隔ゆえに生じやすい不安要素があるので配慮しなければなりません。オフィスであれば、新人の「困ったような表情」や「手の止まり具合」を見て先輩が声をかけることができますが、リモート環境ではその非言語的なSOSを拾うことが極めて困難です。
例えば、新人にとってはリモートの場合、「分からないことを聞きづらい」「相談がしづらい」「偶発的なコミュニケーションが発生しづらい」といった不満足感を抱いてしまう可能性があります。上司を前に萎縮してしまえば業務知識を十分に習得できませんし、通りすがりの会話のような偶発的なコミュニケーションがなければ、社内風土や業務の裏情報、マニュアル化されていない知識などを習得しにくくなります。
教育担当側にとっても、「伝えたいことが細かいニュアンスまで伝わりにくい」「新人が不安を感じていることが分かりにくい」といった課題が生じやすいでしょう。
このような事態を防ぐためには、「ディスカッションやロールプレイングなど対面で交流できる機会を設ける」「上司や先輩に質問・雑談できる時間を定例的に設ける」といった、能動的なコミュニケーション設計が不可欠です。
教育担当者の負担増の壁
現場で教育を担当するOJTトレーナーや上司の多くは、自身の個人目標とチーム目標の両方を追う「プレイングマネージャー」です。彼らは自身の業務で手一杯であり、新人教育に割ける時間は物理的に限られています。
ライトワークスの調査によると、人事担当者が「新入社員研修において課題に感じること」として「実施や準備が煩雑で時間や工数がかかる」(31.8%)「配属部署より研修内容を改善してほしいと意⾒が出ている」(31.8%)が同率1位でした。
Q. 新入社員研修において課題に感じること(複数回答)

これは、現場が「教育に時間を割けない」という課題を抱えている一方で、「今の研修内容では現場で通用しない(もっとちゃんと育ててから配属してほしい)」という不満も感じているという、板挟みの状態を示唆しています。
その結果、現場では「とりあえず背中を見て覚えて」といった新人の主体性に委ねる指導や、業務の合間に行う場当たり的なフィードバックになりがちで、教育の質が指導員の多忙さやスキルに左右される傾向にあります。
世代間ギャップの壁
いわゆる「Z世代」の新人社員は、タイムパフォーマンス(タイパ)や「失敗したくない」という心理を強く持つ傾向があります。
ライトワークスの調査で、新人社員に「現場で働き始めてから『新入社員研修でもっと学びたかった』と感じた知識・スキル・研修内容」を聞いたところ、「傾聴力」が2023年の8位から、2025年には3位(14.7%)へと急上昇しました。
Q. 現場で働き始めてから「新入社員研修でもっと学びたかった」と感じた知識・スキル・研修内容(複数回答)

これは「先輩の指示を一度で正しく理解したい」「聞き返して怒られたくない」という、失敗への恐れの表れといえます。
また、同調査で新人社員が最も満足度を感じる研修形式は「グループワーク・ディスカッションなど参加型研修」(77.5%が満足)でした。
Q. 実施形式別比較研修の満足度(単一回答)

しかし、企業側が実施しているのは「対面での講義型研修(70.7%)」がメインで、「グループワーク・ディスカッションなど参加型研修」は36.9%にとどまっています。
Q. 新入社員研修の実施形式(複数回答)

一方的に聞くだけの座学では、タイパや意味を重視するZ世代のモチベーションは低下します。「なぜこの作業が必要なのか?」を腹落ちさせ、能動的に参加できる環境を用意することが重要です。
新人教育を成功させる「仕組み化」のポイント
前述の「壁」を乗り越え、限られたリソースで最大の効果を出すためには、教育を個人の頑張りに依存させず、ツールを活用して「仕組み化」することが不可欠です。ここでは、新人教育を成功させる仕組み化のポイントについて解説します。
インプットは「動画」、実践は「対面」でメリハリをつける
会社概要やビジネスマナー、製品知識といった定型的な基礎知識の習得は、eラーニングへの置き換えが効果的です。毎年変わらない内容をデジタル化することで、指導員による説明内容のバラつきを防げる他、新人も自分のペースで繰り返し復習できるため、理解不足による不安を解消しやすくなります。
重要なのは、eラーニング活用で生まれた時間を「対面でしかできない指導」に充てることです。知識は動画で予習し、浮いた時間でロールプレイングや質疑応答など、密なコミュニケーションを行いましょう。
このようにデジタルと対面を組み合わせる「ブレンディッドラーニング」の手法を取り入れることで、効率化と同時に、新人社員が安心して相談できる環境(心理的安全性)をつくることができます。
進捗とスキルを「可視化」して不安を取り除く
「研修はやった、あとは現場で」というやりっぱなしの状態は、新人の不安を招くリスク要因です。
ライトワークスの調査によると、「入社当時足りないと感じていたスキルについて、新入社員研修を通して獲得することはできたか」という質問に対し、「十分に獲得できた」と回答した新人はわずか15.3%でした。「やや獲得できた」(47.7%)と合わせても約6割で、残りの4割は成長を実感できていないのが実態です。
Q. 入社当時足りないと感じていたスキルについて、新入社員研修を通して獲得することはできたか(単一回答)

成長の実感が持てないと、新人は「自分はこの会社でやっていけるのか」という深刻な不安に陥り、早期離職へとつながりかねません。
このような事態を防ぐためには、LMS(学習管理システム)を活用して学習の進捗状況やスキルの習得度を可視化するのが有効です。「このスキルマップが埋まれば一人前」というゴールを明確に提示することで、新人の成長意欲を高めることができます。
また、教育担当者も進捗をデータで把握できるため、適切なタイミングでフォローを入れることが可能です。
「どうすれば新入社員の育成を効率化して、いち早く現場の戦力にできるのか」これは多くの企業の人材育成・研修担当者にとって、毎年直面する重要課題といえるのではないでしょうか。厚生労働省による「労働政策審議会労働条件分科会」の資[…]
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教育担当者の質を担保する
新人教育がうまくいかない原因の一つとして、「教える側」のスキル不足が考えられます。名選手が名監督とは限らないように、業務ができる社員が教え上手とは限りません。
教育担当者に対しても、OJTの進め方やフィードバックの方法、コーチング、ハラスメント防止教育、Z世代とのコミュニケーション術といった研修を実施しましょう。これらもeラーニング化しておくことで、教育担当者の負担を最小限に抑えつつ、教育の質を底上げできます。
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まとめ
新人教育を行う目的は下記4つです。
- 業務に必要なスキルを習得してもらう
- 企業理念や事業内容などを浸透させる
- 組織における人間関係の構築を促す
- 早期離職を防止する
新人教育で活用されている効果的な手法として、下記3つが挙げられます。
- OJT
- OFF-JT
- eラーニング
効果的な新人教育を行うためには、下記5つの指導ステップを意識しましょう。
- ステップ1:業務の全体像を説明する
- ステップ2:実際に業務を実演して見せる
- ステップ3:業務の内容を詳しく説明する
- ステップ4:本人に実践させて理解を深める
- ステップ5:実践に対してフィードバックを行う
新人教育に行き詰まる場合、現代ならではの「新人教育3つの壁」に当たっている可能性があります。3つの壁は下記の通りです。
- リモートワークの壁:相談のしづらさによる新人社員の孤立化
- 教育担当者の負担増の壁:教育担当者の多忙さにより教育の質にバラつき
- 世代間ギャップの壁:研修内容が新入社員のニーズに合っていない
これらの壁を乗り越え新人教育を成功させるには、教育の仕組み化が有効です。仕組み化のポイントとして、下記が挙げられます。
- 基礎知識の習得はeラーニング、実践は対面の「ブレンディッドラーニング」の実施
- 進捗とスキルをLMSで可視化し、成長意欲を高める
- 教育担当者に研修を実施し、教育の質を底上げ
教育を仕組み化し、テクノロジーに任せられる部分は任せることで、現場の教育担当者は対話やフィードバックといった、人との対面でしかできない本質的な育成に注力できるようになります。これにより新人社員の孤立化を防ぎ、早期離職を防ぐことも期待できます。
効率的かつ効果的な教育体制を構築することは、新人の早期戦力化だけでなく、現場社員の負担軽減と組織全体のエンゲージメント向上にも直結します。まずは自社の新人教育における課題がどこにあるのか、現状を把握することから始めてみてはいかがでしょうか。






