反転授業とは オンライン型の企業研修でアウトプット力を高める秘策

「個人で知識のインプットを行い、集団でアウトプットや実践を学ぶ反転授業。学校教育では成果が出ているらしいが、企業研修にも応用できるだろうか?」

もとより日本の教育は知識偏重型だといわれて久しく、さらに儒教的な価値観に根ざした日本人の気質から、インプットは充分でもそれをうまくアウトプットできない人材が社会に多いといわれています。

実際に、精神科医の樺沢紫苑氏の調査によると「約9割のビジネスマンは、インプット中心の学び方や働き方をしている」とされています。

同氏の著書では「インプット過剰/アウトプット不足」こそが、勉強しているのに成長しない最大の原因であり、「自己成長」はアウトプットの量に比例すると考察されています1

学校教育は変わってきていますが、すでに社会で働いている人々がアウトプットの量を増やし、そのスキルを強化するにはどうしたらよいのでしょうか。その答えの1つが反転授業です。

反転授業とは、学習内容をインプットする方法とアウトプットする方法を従来と逆転させた教育手法です。

ディスカッションやグループワークといったアウトプット中心の授業構成によって、持てる知識を使いこなす能力(応用力)を育てることができます。

最近では、新型コロナウイルス対策に伴うオンライン学習の強化といった面での需要もあるようです2。「Withコロナ/Afterコロナ」と呼ばれるようになりましたが、企業の集合研修は、しばらく機会が少なくなると予想されます。

貴重な集合研修=アウトプットの機会の効果を最大化し、有意義なものにするためにも、反転授業は有効な教育手法といえます。

本稿では、反転授業とは何か、そのメリット、また企業の人材育成にどのように生かすことができるかを丁寧に解説します。ぜひ参考にしてください。

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AIで要約

  • 反転授業は、事前に個人で知識を習得し、授業で実践や討論を行う学習法です。
  • この手法は、持てる知識を使いこなす能力、特にアウトプット力や応用力を強化することを目的としています。
  • eラーニングなどのオンライン学習を活用して行われることが多く、企業では導入の下地が整っています。

反転授業とは

反転授業は、インプットとアウトプットの場を逆転させた学習方法です。

従来の学習方法は、講義形式の「授業」で知識を習得し、授業後の「宿題」でその知識を使って各自が演習を行うものでした。授業でインプットし、宿題でアウトプットするという方法です。

反転授業は、その名の通り授業と宿題との役割を「反転」させたもので、授業に先立って講義動画を見て知識を習得し、習得した知識を授業で使います。宿題でインプットし、授業でアウトプットするわけです。

例えば、ある事柄について、事前学習でその内容や背景、問題点について学び、対面授業でそれらを使って討論やプレゼンテーションを行います。あるいは、教師が提示したテーマについて事前に学習しレポートを作成、授業で討論、その後に最終レポートを提出するというケースなども考えられます。

反転授業が成立した背景

反転授業は、どのように成立し、普及してきたのでしょうか。

反転授業の考え方は2000年ごろに提案され、2010年ごろから欧米を中心に注目をされるようになりました。

この普及を後押ししたのがデジタル教材の普及と教室外のICT環境の整備です。具体的にはオープン教材がインターネット上で広く提供されるようになったこと、家庭でインターネット回線が整備され安価な情報端末が普及したことです。

反転授業の歴史

出典)eduview「『反転授業』と『MOOC』の根本的な違いとは~加藤大氏に聞く」

このように、インターネットの発達とともにオンライン学習の土壌が整い、そこに反転授業の実績が伴ったことで効果が認められ、普及していったと考えられます。

反転授業が再注目される理由

1-1.の通り、反転授業は、オンライン学習の発展とともに、効果の高い教育手法として広まり、取り入れられてきました。加えて、最近ではコロナ禍での授業方法としても再注目されました。

全国の小中学校においては、新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年3月2日から春休みまで、一斉休校が要請されました3。同年6月1日には、全国のほとんどの小学校と中学校・高校が再開されましたが、約半数が短縮授業や分散登校といった対応を取りました4

「コロナ後」の社会では、対面授業が思うようにできなくても、十分な学習効果を得られる教育手法が必要です。さらには、オンラインとオフラインを柔軟に切り替えられる学習環境が整備されてることが理想です。

反転授業を導入すれば、対面授業の時間が減っても学習効果を維持できます。

また、Web会議システムを使えば対面授業をオンライン化することも可能です。反転授業での対面授業はディスカッションやグループワークが中心となりますが、Web会議システムの機能を駆使すればこれもオンラインでの実施が可能です。

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しかし、企業に関してはそうでもなさそうです。2016年時点の調査で、国内企業のeラーニングの導入率は80.0%となっており、従業員が3千人以上の企業では95.8%となっています6。企業は学校教育の現場よりも反転授業をスムーズに導入する下地が整っているといえるでしょう。

次章では、オンライン学習システムを活用した反転授業のメリットを確認していきましょう。

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反転授業のメリット

ITの発展が普及を後押ししたとはいえ、新興の反転授業が広く知られていったのはなぜでしょうか。ここでは、反転授業の教育手法としてのメリットをご紹介します。

対面授業による効果が高い

先に述べたように、反転授業では、事前学習で習得した知識を対面授業で使う形を取ります。つまり、協同学習形式の演習、例えばディスカッション、プレゼンテーション、グループワークなどです。

これにより、教室にいる受講者同士、あるいは受講者と講師が意見を交わしたり、事前学習で得た知識を教え合ったりすることができます。こうした関わりが学習意欲や学習効果の向上を促し、また、コミュニケーション能力の向上にもつながります。

繰り返し学習できる

LMSやeラーニングのシステムを活用すれば、事前学習で視聴した講義動画を、対面授業後に再度視聴して復習したり、分からない箇所を重点的に視聴したりと、繰り返し利用することができます。

受講者の習得度に合わせた対応が可能

対面授業がアウトプットの場になるため、講師は演習を通じて受講者の知識の習得度合いを確認することができます。それにより、受講者一人一人に合わせたきめ細やかな対応ができ、受講者の知識の定着と理解を深めることができます。

システム上で学習行動の把握ができる

事前学習をLMSやeラーニングのシステムで管理することにより、どのくらいの時間を講義動画の視聴に費やしたか、対面授業外の学習行動を把握できます。それにより、一般的な講義形式のみの授業より、圧倒的に学習行動の量と質を判断する材料が増えます。

集合研修の回数・コスト削減

反転授業では、知識のインプットを事前学習として各自で済ませておきます。そのため、集合研修の実施はグループワークやディスカッションなどアウトプットを伴う場合に限ることができ、回数やコストを削減することができます。

このように、オンライン学習システムを活用した反転授業では、受講者それぞれのペースで効率良く事前学習を進めやすくなり、対面授業ではアウトプットに集中できます。また、企業側事前学習の履歴を確認できることで、アドバイスや評価をしやすくなります。

反転授業の実施に当たっては、オンライン学習やそのシステムを活用することをおすすめします。具体的には、Web会議システムとの連携も可能な学習管理システム(LMS:Learning Management System)を導入するのがよいでしょう。

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反転授業の課題・デメリット

高い効果が望める反転授業ですが、いくつか課題やデメリットもあります。ここでは、導入に当たって注意すべきポイントを確認しましょう。

環境の整備

講義動画を見るための端末と、インターネット回線が必要です。

事前学習の時間の確保

反転授業は、事前に受講者が知識を習得していることを前提にしています。そのため、受講者に対して対面授業外での学習環境を整える、学習意欲を持たせるなどのフォローが必要です。

学習意欲のない受講者への対応

反転授業は事前学習が前提です。対面授業の際、事前学習をしていない受講者がいると、結局、事前学習の部分から説明をせざるを得ず、「反転」という形が成り立ちません。受講者に事前学習を強く促す、何らかの対策が必要です。

例えば、eラーニングの進度を評価に反映することが考えられます。また、授業開始時にテストを行って成績順で席を決める、事前学習をしていないと参加しづらいグループワークを実施するなど、事前学習をしないことの不利を自覚させる状況をつくることも有効です。

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講師に必要とされるスキルが通常と異なる

反転授業の講師には、講義を行う「講師」ではなく、対面授業で効果的な演習を円滑に行うための「ファシリテーター」としての役割が求められます。また受講者の習得度を理解し、学習支援を行うコーチングの能力も重要です。

以上のような課題やデメリットをクリアするには、受講者と講師の双方が「一方的に知識を授かる/与える今までの授業とは違う」という意識を持ち、しっかり準備をしておくことが必要といえるでしょう。

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企業の人材育成における活用

企業の研修で反転授業を行うには、どのような方法があるのでしょうか。

例えば、ある研修において、事前に各自が講義動画を視聴しておくことにより、集合研修の場をディスカッションや事前課題のプレゼンテーションなどに当てることができます。これは、eラーニングと集合研修を組み合わせたブレンディッドラーニングといえます。

事前に個人で学んだ知識を、実務を想定したアウトプット型の演習を通じて、実際に業務で使えるスキルに発展させるイメージです。

ビジネスパーソンは時間がないのが常ですから、事前学習の期間を長めに設定しておき、自由な時間に学習してもらえば、業務への影響が少なく済みます。また、長い講義を聴くよりも、参加型・体験型の研修の方が、実践的である点はもちろん、刺激的でエッセンスの詰まった学習体験となるはずです。

反転授業を実際に導入した研修では、普段できないような演習が多く活動的で良い、時間が過ぎるのが早かった、動画で何度も振り返りができるので理解が進む、といった評価の声が上がっています7

講師陣には、ファシリテーターという従来と異なる役割が求められますが、同じ内容を繰り返し講義する負担がなくなり、より実践的な指導が行えるというメリットがあります。

アウトプット型の演習には、ブレンディッドラーニング、アクティブラーニング、アクションラーニングなどの手法があります。どれも反転授業と関連が深く、理解しておくとより質の高い指導が可能になります。

詳細は、以下の関連記事をご参照ください。

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まとめ

反転授業は、インプットとアウトプットの場を逆転させた学習方法です。

従来は授業で行っていた知識の習得(インプット)を事前に個人で行い、個人で行っていた演習(アウトプット)を授業で行います。個人による事前学習は、eラーニングなどのオンライン学習で行われるのが一般的です。

反転授業では、個人で習得した知識を授業で「使って学ぶ」ことに重点が置かれているため、人材のアウトプット力・応用力を強化したい企業にとって有効です。

また最近は、新型コロナウイルスの影響で、対面授業や集合研修の機会が少なくなっています。このような状況では特に、反転授業によって効率良く学習を進めることが大切になります。

多くの企業ではeラーニングがすでに導入されているため、反転授業を導入する下地が整っているといえるでしょう。

反転授業のメリットと課題・デメリットは、以下のようにまとめることができます。

【メリット】

  • 対面授業による効果が高い
  • 繰り返し学習できる
  • 受講者の習得度に合わせた対応が可能
  • システム上で学習行動の把握ができる
  • 集合研修の回数・コスト削減

【課題・デメリット】

  • 環境の整備
  • 事前学習の時間の確保
  • 学習意欲のない受講者への対応
  • 講師に必要とされるスキルが通常と異なる

企業にとって、自社の従業員が自分の持っている知識をいかに効率的かつ効果的に実務に生かせるかは、ビジネスを左右する重要なテーマです。

そして、集合研修は、時間のないビジネスパーソンに同じ目的のために集まってもらう数少ない機会です。その効果をどのように最大化するかは人事担当者にとって悩ましい課題ですが、「反転授業」形式の研修を導入することは1つの解決方法といえるでしょう。

これを機に、研修の方法を見直してみるのはいかがでしょうか。

  1. 樺沢紫苑『学びを結果に変える アウトプット大全』p.5、20、21、29 ↩︎
  2. 【第一薬科大学】ネット配信の講義開始‐新型コロナ感染防止で ↩︎
  3. 全国の小中高、3月2日から臨時休校要請 首相 ↩︎
  4. 【コロナと学校】再開の44% 短縮授業や分散登校を実施 ↩︎
  5. 新型コロナ休校で「教育格差」6割、慣れないオンライン授業には戸惑い ↩︎
  6. 国内企業360社対象 e ラーニングに関する実施状況調査 ↩︎
  7. 管理職研修における「反転授業」とアクティブラーニングの可能性を探る 研修受講者の感想 ↩︎

参考)
休校あと1カ月…家庭学習どうする? プロのおすすめは「教科書を読む」 親は”やる気を奪う声掛け”に注意
https://sukusuku.tokyo-np.co.jp/education/29560/
新型コロナで注目される「オンライン講義」…学習への影響は?
https://gentosha-go.com/articles/-/25372
(理論)反転授業とは
http://smizok.net/education/subpages/a00029(flipped).html

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