エンパワーメントとは 権限委譲で部下の潜在能力を引き出す教育手法

エンパワーメントとは、業務権限を委譲し裁量を与えることで、従業員の潜在能力を最大限に発揮させることです

思いきって、これまで自分が行っていた業務を部下に任せ、その裁量権も与えたら予想外の成長があった。

このような経験はありませんか?
「現状のままでは少し達成が難しいかも」というような目標を設定し、達成までのプロセスも任せることで、従業員の自主的な行動を促し、本来持っている能力を最大限に引き出すこと、それがエンパワーメントです。

本稿では、エンパワーメントの具体的な実践手順、そしてエンパワーメントを導入することによるメリット・デメリットについて解説します。

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AIで要約

  • 権限と裁量を与え、部下の潜在能力を最大限に引き出す手法です。
  • 目標を共有し、裁量を与え、失敗を恐れない風土作りが重要です。
  • 潜在能力の発揮や人材育成に繋がりますが、対象者の見極めが必要です。

エンパワーメントとは

エンパワーメントとは、企業や人材教育において、現場の自主性を高めることで従業員一人ひとりの能力を最大限に引き出すことです。一般的には「能力開花」や「権限委譲」と訳されています。

人材教育におけるエンパワーメント

エンパワーメントの大まかな流れは、次のとおりです。

  1. 上司は、部下が「頑張れば達成できるかも」と思えるような、少し高めのレベルの目標を設定する
  2. 部下に一定の裁量権を与える
  3. 部下は目標達成に向け、創意工夫しながら実践する

集団という制約を外し、権限を委譲することで、従業員の潜在能力を最大限に発揮させることがこの取り組みの最大の目的です。

「エンパワーメント」と「権限委譲」

エンパワーメントは「権限委譲」と訳されると書きましたが、両者が意味する内容は微妙に異なります。部下に仕事に関する権限を与えることで、判断能力と仕事に対する自信を身に付けてもらうという共通点がある一方で、両者には以下のような違いがあります。

エンパワーメント

仕事の達成度や目標については伝えるが、仕事の方法自体は部下に自由に考察させる。仕事に対する自由な裁量を与えることで現場の自主性を高め、部下のモチベーションが発揮されやすい環境を整える。

権限委譲

はじめに仕事の方法や手順、仕事に対する考え方について部下に教える。このように上司のコントロール下で実務経験をこなしていく中で、徐々に仕事全体を任せていく。

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エンパワーメントの方が権限委譲と比べて、部下に与えられる裁量の幅が広い試みだと言えます。単なる権限の委譲にとどまらず、権限を与えることで部下の潜在能力を最大限に発揮させるという点がエンパワーメントの特長です。

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エンパワーメントの実践手順

エンパワーメントの「潜在能力を発揮させる仕組み」とは一体どういったものなのでしょうか。具体的な実践手順について見てみましょう。

(1) 目標設定に対する合意と共感を得る

初めに必要となるのが、エンパワーメントに対する共通認識の形成です。

  • 今回設定する目標が、潜在能力の発揮を前提とした、現状のままでは達成困難なものであること。
  • 目標の達成基準を上司と部下の間で共有していること。
  • 目標を達成することに対する価値を当人が自覚していること。

これらの点をしっかりと確認することが、エンパワーメントを成功させる第一歩です。

(2)情報の公開と権限の委譲

共通認識を確認した後に、上司は情報の公開と権限の委譲をします。

ここでいう、情報の公開とは、企業方針や経営戦略など組織としての方向性を示す情報を指します。これらの重要な情報を公開することは部下を信頼している態度を示すとともに、権限の委譲に伴い部下が企業の方針と異なるベクトルの行動を取ることを防止する役割があります。

また、権限を委譲する際にはその裁量範囲を明確に規定しておく必要があります。権限委譲を曖昧な線引きで行ってしまうと、後々のトラブルの元になりかねません。部下が自らに与えられた裁量の範囲について理解しているか、入念に確認します。

しかしその一方で、目標達成に向けて自由な手段を取ることを認めるのも必要です。予算や経費を割り当てれば、自由度の高い手段や柔軟な発想を思いつく可能性がさらに上がるケースも考えられます。

(3)失敗を恐れないチャレンジ精神に溢れた風土の構築

エンパワーメントを推奨するということは、従業員の自己判断を尊重するということでもあります。当然、目標達成ができず、失敗するケースが出てくることが予想されます。

ここで重要なのが、失敗を許容する職場環境を整えることです。
部下が失敗をした場合には上司がしっかりとカバーする体制を整え、組織全体で新たな目標に挑む手助けをすることが、その企業にエンパワーメントを定着させる上で重要なことです。

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エンパワーメントのメリット・デメリット

エンパワーメントを導入することでどのような効果が期待できるのでしょうか。一方でデメリットとしてどのようなことに注意すべきでしょうか。

導入のメリット

エンパワーメントを導入するメリットは次のとおりです。

従業員の持つ本来の能力を発揮させる


従業員に仕事に対する裁量を与え、リーダーシップを発揮できるように支援することでその人の潜在能力を引き出します。
また、このような考え方を組織全体に広めることで個人の能力が発揮されやすい職場環境を整えることにもつながります。

自分で考え行動する人材を育成できる

エンパワーメントを通して、従業員は少し高めに設定した目標に向けて創意工夫をしながら仕事に取り組むことになります。従業員一人ひとりがこの試行錯誤のプロセスを経験することで、高い問題解決能力を養うことができるのです。

加えて、リーダーシップを執る側の立場を経験することで、それまで受けてきた指示の意図を汲み取れるようになります。こうした経験により、上司に対する不満が解消され、仕事そのものに対する理解が深まるといった効果も期待できるでしょう。

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意思決定の迅速化

エンパワーメントは、従業員一人ひとりの判断力の向上に直結する取り組みです。上司の指示を待たずとも部下自らが意思決定を行い、不測の事態にも対応できるようになることは、意思決定にかかる時間を短縮しスピード感のある企業運営を可能とします。

デメリット

企業全体としてのパフォーマンスにズレが生じる

エンパワーメントは、個々の意思決定による行動を推奨する仕組みです。当然、提供するサービスのレベルが従業員の潜在能力に依存することになるので、安定したサービスを提供できなかった場合には顧客からクレームが生じる、というケースも起こりえます。加えて、企業の目指す方向性と従業員の行動のベクトルにズレが生じる可能性もあります。

このような事態を防ぐためには、従業員同士で仕事に対する考え方やノウハウを共有する仕組み作り、あるいはどこまでなら個人の裁量で行動して良いかという基準の設定が必要となるでしょう。

エンパワーメントに向かない部下も存在する

一定の裁量を与えられ自由な行動が許される状況で、誰もが成果を出せるとは限りません。よいパフォーマンスを発揮できるのは、主体性が強くリーダー気質のある人材です。
逆に、積極性には欠けるが与えられた仕事を着実にこなす、いわゆる「職人型の人材」にはエンパワーメントは適しません。このようなタイプの従業員に権限を与えても、必要以上のプレッシャーを感じてしまい逆に業務効率を低下させてしまいます。

エンパワーメントを効果的なものにするには、育成対象となる従業員の性質を見極める過程が必須と言えます。

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まとめ

エンパワーメントとは、従業員に対して業務に関する権限を委譲しその裁量を認めることで、その従業員の潜在能力を最大限に引き出すことを目的とした教育方法です。

エンパワーメントの実践手順は次の通りです。

  1. 目標設定に対する合意と共感を得る
  2. 情報の公開と権限の委譲
  3. 失敗を恐れないチャレンジ精神に溢れた風土の構築

エンパワーメントは上司と部下との関係のみで完結できるものではありません。組織として従業員の挑戦を奨励し、失敗してもそれを受け止める体制を整えることが重要です。

エンパワーメントを導入するにあたっては、そのメリットやデメリットとして以下のことに留意するとよいでしょう。

メリット

  • 従業員の持つ本来の能力を発揮させる
  • 自分で考え行動する人材を育成できる
  • 意思決定の迅速化

デメリット

  • 企業全体としてのパフォーマンスにズレが生じる
  • エンパワーメントに向かない部下も存在する

エンパワーメントには個々の潜在能力を最大限に発揮させ、企業を活性化させるという点においてはメリットがありますが、誰にでも適用できるものではありません。エンパワーメントに適しているかどうか従業員一人ひとりの特性や能力を見極める必要があります

エンパワーメントによって従業員一人ひとりが自分で考え、行動できれば組織全体を押し上げる力となるでしょう。しかし、エンパワーメントは万能ではありません。失敗を恐れず新しいことに挑戦できる風土があってこそ、エンパワーメントを企業に定着させることができます。


参考)
アンレポート 「権限委譲とエンパワーメントとは?」 人材育成ベーシック 松田尚文
https://weban.jp/contents/an_report/repo_cont/pro/20100816.html
カオナビ人事用語集 「エンパワーメントとは? 意味、重要性、能力発揮への影響、メリット、組織への導入について」
https://www.kaonavi.jp/dictionary/empowerment/
BIZHINT 「エンパワーメント」 https://bizhint.jp/keyword/99654

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