デザイン思考とは 実践・導入方法もわかりやすく解説(事例付)

「良いデザインは良いビジネスになる。」

これは、IBMの名CEO、トーマス・J・ワトソン・ジュニア氏の言葉です。IBMでは、50年以上にわたり、全社を挙げてデザインにこだわってきました。そして、2010年代からは、「カスタマー・エクスペリエンス(顧客体験)」を最重要課題として掲げ、IBM独自のデザイン思考を確立し、大規模なプロジェクトにも取り入れ、成果を挙げてきました。

変化が激しく、先の見通しが立ちづらいVUCA時代。ロジカルシンキングに代表されるようなオーソドックスな思考法を身に付けるだけでは、イノベーティブな発想を生み出しづらくなっています。

こんなときに役立つのが、デザイン思考です。デザイン思考とは、デザイナー特有の優れた感性や思考のプロセスを活用した「ユーザーの視点に立ち、潜在的なニーズを発見し、解決策を探る思考法」です。

「デザイナーのような、クリエイティブ職しか使えないのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、デザイン思考は一般のビジネスパーソンにこそ活用してほしい思考法です。デザイン思考を活用できれば、従来とは異なるアプローチビジネス課題に迫り、これまでにないプロセスを経て新しい価値を生み出すことができます。

本稿では、デザイン思考の概要や5つのプロセス、企業がデザイン思考を取り入れることのメリットと注意しておきたい点を解説します。そして、デザイン思考の学び方やフレームワークについて分かりやすくご紹介します。

本稿が、明日からの業務や教育研修に、デザイン思考のエッセンス1つでも取り入れていただくきっかけになれば幸いです。

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AIで要約

  • ユーザーの潜在ニーズを見つける思考法です。
  • 「共感」「定義」「発想」「試作」「テスト」の5段階です。
  • 試作と改善を繰り返し、完成度を高めます。

デザイン思考とは?他の思考法との違いと今必要とされる理由

まずは他の思考法とデザイン思考の違い、そしてデザイン思考が今必要とされている理由について説明します。

デザイン思考とは

デザイン思考とは、ユーザーの視点に立ち潜在的なニーズを発見し解決策を探る思考法です。

多くの企業では、ユーザーが求めるものを調査し、それに応える商品を生み出す「お客様第一主義」が浸透しており、「ユーザーの視点に立つ」ことは真新しいことに感じないかもしれません。

しかし、デザイン思考では、ユーザーが求めるものを調査するだけにとどまりません。ユーザーが、それを求めるに至った背景までも探る点が違います。つまり、「顕在化しているニーズを探るだけでなく、潜在的なニーズを見つけること」を目的としているのです。

さらにかみ砕くと、お客様第一主義ではユーザーにとって「良いもの」「便利なもの」が何かを追求するのに対し、デザイン思考では「ユーザーが自分でも気が付かなかった本当の願望が満たされるもの」を追求する点で違いがあります。

デザイン思考とロジカル思考の違い

デザイン思考とロジカル思考の違いは、「デザイン思考」には主観が入り、「ロジカル思考」は客観性を重視する点です。

「ロジカル思考」は、物事が起こった原因結果の筋道を明確にしながら論理的に解決策を探る考え方です。

誰もが納得できるような客観的な答えを追求するため、斬新なアイデアを生むというよりは、ユーザーの問題を物理的に解決するものといえます。

一方デザイン思考は、物事の原因結果を探るとともにユーザーの感情にも注目し、「本当に願っていることは何か」という潜在的なニーズにまで踏み込み「ユーザーの主観・感情が向上すること」を目的とします。

そのため、現在顕在化している問題だけでなく、今後起こり得る問題に対してもアプローチできる可能性を秘めています。

デザイン思考とアート思考の違い

デザイン思考とアート思考の違いは、「デザイン思考」は課題解決を目指すのに対して、「アート思考」は課題解決を目指す点です。

ロジカル思考デザイン思考は、どちらも「ユーザーの課題を解決する」という目的がありますが、アート思考「個人の感性や情熱を作品として形にすること」を重視するため、実現性や問題解決を目標としていません。

芸術家の自由な発想創造力を起点とし、サービスや商品をゼロから創出するときに活用できます。

どの思考法にもそれぞれの良さがあるので、状況に応じて使い分けたり、組み合わせたりして活用するとよいでしょう。

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デザイン思考が広まった背景

デザイン思考が最初に提唱されたのは1965年ごろとされています。そしてビジネス領域へ応用されるようになったのは1991年世界的デザインコンサルティング会社IDEOの提唱がきっかけといわれています。同社は、アップル社の初代マッキントッシュで使用されたマウスのデザインも担当していました。

アップル社では、その他にもさまざまな商品にデザイン思考が活用されています。総勢35人が共創してアイデアを出し合い11カ月で開発したiPodは、デザイン思考の代表的な活用事例といえます。

なぜ今、デザイン思考が必要なのか

DX推進との関わり市場ニーズの変化によって、デザイン思考の活用が推進されています。

  • DX推進にデザイン思考が必要である
  • 仮説検証型「マーケティングリサーチ」の限界

DX推進にデザイン思考が必要である

2018年に経済産業省が発表した「DXレポート」や独立行政法人情報処理推進機構の「DX白書2021」には、「企業がDXを推進競争力を強化するためにはデザイン思考が有効である」として、デザイン思考を活用できる人材の必要性が示されています。

DXは、デジタル技術を駆使して商品やサービスを生産し、改善を重ねていくビジネススタイルによって、人々の生活に沿ったサービスを生み出すことを目的としています。そして、それにはデザイン思考の考え方が活用できると定義付けたのです。

仮説検証型「マーケティングリサーチ」の限界

「モノ消費」時代では、企業がマーケティングリサーチによってユーザーのニーズを把握し、それに応える商品を売り出すことで、ユーザーにとって「良いもの」「便利なもの」と判断され売買が成立していました。

しかし、物やサービスが溢れて飽和状態になった今、ユーザーにとって良いものや便利なものは「当たり前」になってしまい、プラスαが求められる時代となっています。

そんな時代だからこそ、デザイン思考によってユーザーの潜在的なニーズを把握し、「こんなものを待っていた!」と思ってもらえるようなサービスを生み出す必要があるのです。

デザイン思考の5つのプロセス

デザイン思考の考え方をビジネスに生かすには、「観察・共感」「定義」「概念化」「試作」「テスト」という5つのプロセスを正しく把握しておく必要があります。なお、各ステップの順番を意識する必要はなく、相互に関係し合うものとしています。

【Process1】観察・共感

ユーザーの潜在的ニーズを明らかにするには、ユーザーが置かれている環境や状況を観察することから始めます。

さまざまな専門家が集まり、ユーザーリサーチを基に「なぜ人々はそのように行動するのか」「サービスを手に入れた先に何を求めているのか」というユーザーの本音を想像します。

徹底的にユーザーに感情移入し、「ユーザーはどのような感情を抱いているのか」を想像することで、ユーザーが自分でも気付いていない心の底に抱えている課題やニーズを見つけることを目的としています。

【Process2】定義

観察・共感で出てきたユーザーの潜在的なニーズを基に、ユーザーがそれを問題だと感じている理由と、なぜその問題が生じているのかを突き詰め、問題の本質を見定めます。

ユーザーのどのような課題を解決するべきかという具体的な方向性やコンセプトを確立することがこのフェーズの目的です。

【Process3】概念化(アイデア発想)

定義で立てた仮説を基に、その課題を解決するためのアイデアを出す工程です。ここでは、可能な限り多くのアイデアを出していきます。

当たり前と感じることや無関係と感じるアイデアでも否定せず、全ての意見を肯定してアイデア出しを行います。そして、その大量のアイデアの中から、達成したい目的に沿っているものを絞り込んでいきます。

【Process4】試作

概念化で絞り込まれたものを実際に形にして可視化します。「アイデアを分かりやすく具現化する」ことが重要なため、色画用紙やのり、ハサミなど身近にある物を使用して短期間で作ります。

完成度は重視せずとにかく可視化し、プロトタイプを作ることによって、今まで見えていなかった改善点を浮き彫りにしていきます。

【Process5】テスト

試作で完成したプロトタイプを実際にユーザーに試してもらい、フィードバックを得ます。仮説がユーザーのニーズに沿ったものになっているかを検証するとともに、それまでの過程で見えていなかった課題を明確化します。

このように、デザイン思考では何度もユーザーのニーズを振り返り、短いサイクル試作・改善を重ねながら完成させていくことを重視します。

デザイン思考を導入することで得られるメリット

デザイン思考を導入することで、ビジネスに役立つスキルが鍛えられ、従業員同士の関係性にも良い変化が期待できます。

3つのスキルが高まる 

デザイン思考の「ユーザーの潜在的なニーズを見つけ、解決策を探る」という工程によって、以下のようなスキルの向上が期待できます。

  • 質問力
  • 思考力
  • 提案力

質問力

観察の工程では、ユーザーリサーチのため消費者にインタビューを行う機会があります。そこで「ユーザーの本音を引き出すためにはどのような質問をするべきか」を追求するので、質問力向上につながります。

思考力

共感の工程においてユーザーの潜在的なニーズを探るには、「ユーザーの状況を想像して感情を理解する」ために思考する力が必要です。このスキルは、正解のない問題に取り組み、解決策を探る問題解決力にもつながります。

提案力

概念化の工程では多くのアイデアを出すことが望まれるため、周りの意見を気にせず「とりあえず提案してみる」という積極性が重要です。これを習慣付けることで、提案力も向上します。

従業員間のコミュニケーションが活発になる

概念化の工程では、「互いの意見を否定せずに肯定する」というスタンスが大事です。その風潮がチームに浸透することで、自然とコミュニケーションが増え、信頼関係の構築につながります。従業員同士の結び付きも強くなることで、組織力の強化を図ることもできます。

このように、デザイン思考を取り入れることにはさまざまなメリットがあります。

デザイン思考を導入するときの注意点 

デザイン思考を効果的に活用するためには、以下の点を認識する必要があります。

デザイン思考の定義と重要性を正しく認識していないと成功しにくい

従業員の間で「デザイン思考はクリエイティブな人の思考」という固定観念が強い場合、社内で導入への賛同が得られず、頓挫してしまうことがあります。

本稿7章の「大手企業のデザイン思考活用の事例」では、デザイン思考を活用して成功した事例を紹介しています。なかなか理解が得られない場合は、そういった成功事例を紹介すると説得力が増すでしょう。

また、完璧主義から抜け出せない場合も、試作の工程が進まず挫折してしまうことがあります。完成度の高さを目指すよりも、試作修正の工程を何度も繰り返し、完成度を高めていくことが望まれます。

すぐに結果が出るわけではない

デザイン思考は「マインドセット」であり、成果を生み出す「メソッド」ともいえますが、万能ではありません。

結果を期待するあまり、工程の途中で中断してしまうと、効果を感じられないまま終わってしまうため、長期的な視野で取り組む必要があります。

「ユーザーの潜在的なニーズや課題を発見する」という目的に向かって何度もトライアンドエラーを繰り返す習慣を付けることで、イノベーティブなアイデアが生まれる土壌が育つと認識しておきましょう。

ゼロから新しいプロダクトを生むのは向いていない

デザイン思考ではユーザーの潜在的なニーズを主軸に開発を行っていくため、既存のプロダクトを刷新する際には有効です。しかし、ユーザーや課題が決まっていない中で、新しいものをゼロから開発することにはあまり向いていません。

ゼロからイチを生み出すには、アート思考が適しているといえます。

デザイン思考を導入することでさまざまなメリットが期待できますが、効果を実感するためにはプロセスを正しく理解し、習慣化することが大切です。

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デザイン思考の導入に役立つ教材

昨今、企業の人材育成においても、「デザイン思考」についての教育が注目されています。

研修やワークショップはもちろん、eラーニング、動画教材や書籍などさまざまなものを活用して、デザイン思考を学ぶことができます。以下を参考に、ぜひ、「デザイン思考を全て取り入れるのは難しくても、何か一つでも自社に取り入れることができないか?」という視点で学んでみてください。

デザイン思考を学べるeラーニング・動画教材

まずはデザイン思考の概略をつかめるeラーニング動画教材を紹介します。

おすすめのeラーニング教材

デザイン思考の基本

デザイン思考とは何かについて知識を深める教材です。定義のほか、ビジネスにおいて求められる背景、イノベーションとの関係性、実践方法などについて学びます。

デザイン思考のステップ1

ユーザーの隠れたニーズを発見するために不可欠な、「行動観察」および「共感」の方法について理解を深めます。

デザイン思考のステップ2

ユーザーの本音(インサイト)を見つけ出し、問題を定義するための手法について理解を深めます。

デザイン思考のステップ3

発想の幅を広げ、多様な解決策を創出するための方法について理解を深めます。

デザイン思考のステップ4

デザイン思考の特徴的な開発手法である「ラピッド・プロトタイピング」について理解を深めます。

組織におけるデザイン思考

デザイン思考を組織に導入するにあたって直面する問題とその対処方法について理解を深めます。

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代表的な動画教材

運営主体内容・特徴
アイリーニ・マネジメント・スクール前身は慶應義塾大学「SFCデザイン思考研究会」。
サイトには、デザイン思考に関する無料のガイドブックや動画が多数そろう。「とりあえずデザイン思考の概要を学びたい」という方にお勧め。

※2022年4月18日時点の情報を基に、ライトワークスにて作成

動画教材やeラーニング教材であれば、手軽にまた分かりやすく概略をつかむことができます。また、多くの従業員に同じ内容の教育をすることが可能です。

デザイン思考を学べる書籍

つづいて、デザイン思考を学べる3冊ご紹介します。

佐宗邦威「21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由」クロスメディア・パブリッシング(インプレス) 2015

佐宗邦威「21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由」クロスメディア・パブリッシング(インプレス) 2015

著者が、今後は「変革と創造の時代」に入っていき、価値を作り出すスキル(Creation)が必要とされる時代が来ると予想し、デザイン思考の分野で世界屈指の大学であるイリノイ工科大学デザイン大学院に留学した経験から得た知識をまとめた書籍です。

本書では、スタンフォードやハーバードといった米国MBAトップスクールで人気が高まっているデザイン思考を、ビジネス領域において全く新しい事業や商品を創る「創造的問題解決の方法」であるとしています。

デザイナーではないビジネスパーソンデザイン思考を実践するためのヒントが分かりやすく記載されています。

佐々木 康裕「感性思考 デザインスクールで学ぶ MBAより論理思考より大切なスキル」SBクリエイティブ 2020

佐々木 康裕「感性思考 デザインスクールで学ぶ MBAより論理思考より大切なスキル」SBクリエイティブ 2020

著者が「ビジネス×デザイン」最適ミックスを探求するべくイリノイ工科大学デザイン大学院に留学し、創造的アウトプットを生む法則方法について学んだ内容が書かれています。

本書には、デザインスクールで学んだ「感性」を大切にするデザイン思考の基本マインド15のフレームワークが紹介されています。
ロジカル思考戦略思考との違いを理解する上でも役立つ書籍です。

山口周「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?~経営における「アート」と「サイエンス」」~光文社新書 2017

山口周「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?~経営における「アート」と「サイエンス」」~光文社新書 2017

デザイン思考について解説したものではありませんが、従来とは異なる考え方をビジネスに取り入れようとする世界の潮流を理解するときに役立つ書籍です。

従来の「分析・論理・理性」に軸足を置いた経営ではなく、「直観と感性」を重視した美意識を鍛えることで画期的な思考が生まれることを示しています。哲学と美術史を学んだ経歴を生かし、組織開発・人材育成を得意とする著者ならではの視点で描かれています。

デザイン思考を学べるワークショップ

次に、デザイン思考を実践できるワークショップ3つ紹介します。
 
表)デザイン思考の研修・ワークショップの例

運営主体内容・特徴
DXL DESIGN ACADEMYデザイン・イノベーション教育プログラム
東京大学生産技術研究所(IIS)と王立美術大学院大学ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)が連携して提供。
最先端のデザイン手法やイノベーションの方法論を体系的に学べるので、イノベーティブなアイデアを求められる全てのビジネスパーソンに役立つ。
株式会社グッドパッチデザインプロセスワークショップ
実際に現場で行われているUXリサーチやデザイン思考に必要なマインドセット・プロセス・ツールを体験できる。
ワークショップでは、実際のユーザーをペルソナとし、使ってもらえるサービスを生むためにプロトタイプを作成。その工程を通して、ビジネスとユーザー両方の視点を備えたアウトプットの習得を目指す。
実施企業:株式会社朝日新聞社、ソフトバンク株式会社、NEC(日本電気株式会社)など

※2022年4月18日時点の情報を基に、ライトワークスにて作成

デザイン思考を深く理解し、社内に定着させるには、ワークショップ参加後も継続的に実践していくことが重要です。継続的なフォローアップをしてくれるコンサルティング会社専門機関も活用してみてください。

デザイン思考の実践に活用できるフレームワーク

デザイン思考を実践する際には、以下のフレームワークが活用できます。

共感マップ(エンパシーマップ)

マーケティング手法の一つとして活用されることが多い共感マップは、ユーザーの状況感じていることを理解する際に役立ちます。

ユーザーが「見ているもの・聞いていること・考えていること・発言や行動・感じているストレス・望んでいること」6つの視点をもとにユーザーの思考や行動を整理し、ユーザーの本当のニーズを探ることができます。

事業環境マップ

事業環境マップとは、事業を取り巻くビジネス環境を「市場・業界・トレンド・マクロ経済」4カテゴリーに分けて分析するフレームワークです。この4つを明確に認識することで、時代に合ったビジネスモデルを定義することができます。

ジョブマップ

ターゲットとするユーザーの定義をし、そのユーザーが求める機能現状、そして感情トレンドといったジョブを定義していく「ジョブ理論」を用います。

ユーザーのニーズを導き出し、既に満たされているもの充実させるべきものが可視化されるため、自社の事業内容をブラッシュアップさせる際にも活用できます。

状況に応じて、それぞれのフレームワークの活用を検討してみてください。

大手企業のデザイン思考活用の事例

最後に、国内のデザイン思考活用例2つ紹介します。

ソニー株式会社

同社の映画制作用撮影カメラ「VENICE」は、デザインリサーチの考え方をベースに開発され、映画業界で高く評価されています。

従来の開発現場では、「最新技術を搭載していること」に重きを置いていましたが、「映画制作者が本当に求める商品を開発すること」を重視することに変更しました。

カメラマンがより撮影に集中できる仕様にすべく、開発者はデザイナーや映画制作者とともに撮影のワークフローを確認しながら何度も現場を訪れ、撮影時のカメラマンのさりげない動作から本人も気付かない課題を見つけることに成功しました。

その結果、少ないボタン操作で基本設定を完結できるシンプルな仕様が完成し、カメラマンが撮影に集中できるUIを実現しています。

さらに、商品名商品カタログの構成に至るまでデザイン思考の考え方が活用されており、デザイン思考の成功事例として参考にできます。

富士通株式会社

時田社長の就任以降、同社はデザイン経営に取り組んできました。金融業界に従事し、世界ではデザイン思考が多く取り入れられている状況を目の当たりにした時田社長の勤務経験を基に、2016年からデザイン思考の体系化に取り組んでいます。

2021年10月には、デザイン思考についてまとめたPDFのテキストブック「Transformation by Design デジタルトランスフォーメーションに挑戦するデザイン戦略とサービスプランニング」を一般公開しました。

これはグローバルな人材を育成するために、富士通デザインセンターとミラノ工科大学が共同で企画・編集し、作り上げた教材です。富士通のノウハウと、ミラノ工科大学の哲学をまとめたものとして話題になりました。

このように、ユーザーの心をつかむサービスを展開するために、デザイン思考を積極的に活用する企業が増加しています。

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まとめ

デザイン思考とは、ユーザーが自分でも気が付いていない潜在的なニーズを追求し、その課題や願望を解決・実現に導く思考法です。

従来のビジネスで多く活用されてきたロジカル思考や、クリエイティブでユニークな発想を生み出すアート思考とは重視する点やゴールが異なります。

物やサービスが飽和状態の今、ユーザーの心を捉えるサービスを生み出すためには、デザイン思考を活用し、イノベーティブなアイデアを創出することが重要です。

デザイン思考には以下の5つのプロセスがあり、何度もプロトタイプを作ってブラッシュアップしていくことでより良いものを目指します。

  • 観察・共感
  • 定義
  • 概念化(アイデア発想)
  • 試作
  • テスト

このようなデザイン思考の考え方が浸透することで、従業員の「質問力」「思考力」「提案力」といった3つのスキルを高められるメリットがあります。

また、積極的に提案し合うことで従業員同士のコミュニケーションも活発になると、信頼関係が構築されるため、社内の雰囲気も良くなるでしょう。

デザイン思考を導入する際は、従業員に以下のことを周知し、長期的な視野で取り組む必要があります。

  • デザイン思考の定義や重要性
  • すぐに結果が出ない場合があること
  • ゼロからイチを生み出すより、既存プロダクトの刷新に向いていること

それでも、国内外問わず多くの企業デザイン思考の導入が成功しており、これからのビジネスには必要不可欠なアプローチとして効果が期待されています。

ぜひデザイン思考の基本導入プロセスを理解して、従業員の業務革新に役立てていただければ幸いです。

参考)
経済産業省「D Xレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」,2018年9月7日公表,56ページ,
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_03.pdf(閲覧日:2022年3月16日)
一般社団法人 日本経済団体連合会「人 材 育 成 に 関 す る ア ン ケ ー ト 調 査 結」,2020年1月21日公表,14ページ,
https://www.keidanren.or.jp/policy/2020/008.pdf(閲覧日:2022年3月16日)
SONY「VENICE クリエイターと共創し、シネマの未来を創造する」,
https://www.sony.com/ja/SonyInfo/design/stories/venice/(閲覧日:2022年3月16日)
富士通「富士通の実践知が詰まった デザイン思考のテキストブック公開」,
https://www.fujitsu.com/jp/about/businesspolicy/tech/design/activities/designbook/
ReDesigner Magazine「13万人にデザイン思考を広める。富士通デザインセンターのミッションと未来」,https://magazine.redesigner.jp/post/fujitsu(閲覧日:2022年3月16日)

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