【導入事例あり】ナレッジマネジメントツールとは? 目的・種類別に解説!
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「ナレッジマネジメントツール」とは、従業員が持つ知識やスキルをデータ化して社内で共有し、業務に活用することを目的としたツールです。
ナレッジマネジメントツールは、単に知識やスキルの情報を共有・蓄積するだけでなく、さまざまなレイヤーの情報を分析・活用することを可能にします。
とはいえ、「ナレッジマネジメント」と一口にいっても多くのツールがあり、どれをどのように活用すべきか判断に迷うでしょう。企業や部署によって、ナレッジマネジメントで解決したい課題は以下のようにさまざまだからです。
- 最新情報を素早く共有したい
- 顧客管理を効率化したい
- 過去の売り上げデータを商品開発に生かしたい
- 共有した情報を従業員のスキル強化に役立てたい
そこでこの記事では、ナレッジマネジメントツールの導入メリット、種類別の代表的なナレッジマネジメントツール、LMSを活用したナレッジマネジメント導入事例などを紹介します。
ナレッジマネジメントツールの導入を検討している企業は、ぜひ参考にしてください。
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目次
1. ナレッジマネジメントツールの概要
自社に合うナレッジマネジメントツールを見極める前に、まずはナレッジマネジメントやナレッジマネジメントツールの概要、導入するメリットを確認しましょう。
1-1. 「ナレッジマネジメント」と「ナレッジマネジメントツール」の基礎解説
ナレッジマネジメント(knowledge management)とは、個人が蓄積した知識やノウハウ(=ナレッジ)をデータ化して企業内で共有し、企業の有益情報として有効活用することで企業全体の生産性向上を図る経営手法です。
ここでいう「ナレッジ」には、以下の2種類があります。
- 形式知:明確な数値や文書などで示すことができ、客観的に捉えられる知識
- 暗黙知:「カン」や「コツ」といった経験によって培われたノウハウ
データ化しやすい「形式知」とは異なり、「暗黙知」は感覚的な知識であり、データ化することが非常に難しいものです。ナレッジマネジメントでは、暗黙知をいかにデータ化して共有するかが重要になります。
関連 ▶ ナレッジマネジメントとは 働き方改革にも役立つ知識の共有手法を紹介(弊社ブログサイトへ移動します)
ナレッジマネジメントツールとは、ナレッジマネジメントの効率化をサポートするツールです。ナレッジマネジメントツールの活用によって、膨大なナレッジの蓄積、分類、分析などがスムーズになり、社内で効率的にナレッジを共有することができます。
最近よく耳にする「ナレッジ共有ツール」とは、業務で得られた知識やノウハウを他の従業員に共有するためのツールのことです。ナレッジマネジメントツールとほぼ同じ意味で使われています。
1-2. ナレッジマネジメントツールを導入するメリット
ナレッジマネジメントツールを使ってナレッジマネジメントを行うメリットは、主に以下の4つが挙げられます。
- 生産性向上
- 企業競争力の強化
- 業務の属人化を防止
- 人材教育の労力削減
生産性向上
個人が持つノウハウを他の従業員に共有することで、スムーズに業務をこなせるようになります。例えば、機械操作のコツを知らないために時間がかかり過ぎていた、ということがなくなり、業務効率化、生産性向上につながります。
企業競争力の強化
ナレッジの共有により、ベテラン従業員のノウハウを若手従業員も取り入れられるため、個人のスキルアップはもちろん、企業全体のスキルが底上げされます。
さらに、例えば営業部員が技術部の情報を入手できるようになるなど、部署間の情報共有・交換も活発になります。これによって新しいアイデアも生まれやすくなり、企業競争力の向上が期待できます。
業務の属人化を防止
担当者しか分からない業務内容やベテランだけが持つノウハウなどのデータ化(形式知化)と社内共有により、業務が属人化するリスクを低下させることができます。
人材教育の労力削減
知識やノウハウが共有化されれば、従業員が必要な情報をいつでも簡単に得られるため、教育担当者にとっては人材教育の時間・労力の面で業務の効率化につながります。
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2. 種類別ナレッジマネジメントツール10選
ナレッジマネジメントと一口にいっても、実践するためのツールには多くの種類があり、その分類方法もさまざまです。本記事ではナレッジマネジメントツールを5つに分類して解説します。また、それぞれの代表的なナレッジマネジメントツールも紹介します。
業種や従業員数などの企業形態、導入目的によって最適なツールは異なります。自社に合うナレッジマネジメントツールはどのようなものか、以下で確認してみましょう。
2-1. 従業員間のナレッジ共有(グループウェア)
グループウェアは、文書やスケジュールなどの作成や共有、チャットなどの機能を備えており、従業員同士の情報を共有するツールです。
オンライン上で情報や状況を確認できることで、従業員同士が個別にやりとりする必要がなくなり業務の効率化につながります。
そのため、従業員が十数人の小規模企業から大企業まで、業種を問わず多くの企業が導入しています。
特に、テレワークやフレックスタイム制を導入している、営業部員の外出が多いなど、対面でのコミュニケーション機会が減っている企業では、導入によってより大きなメリットを感じられるでしょう。
2-1-1. Garoon
Garoonは、文書管理だけでなく、スケジュール、掲示板、アドレス帳など、組織の情報共有に必要な機能がそろっています。幅広い世代のユーザーにとって使いやすく設計されている点で高い評価を得ています。
Garoonにはクラウド版とパッケージ版があり、クラウド版は10人から、パッケージ版は50人から1ユーザー単位で契約が可能です。製造・サービス・ITなど、さまざまな業種で利用されています。
Garoon/サイボウズ株式会社
無料トライアルあり
費用:税抜き800円~/1ユーザー/月(クラウド版)
https://garoon.cybozu.co.jp/
2-1-2. NotePM
NotePMは文書の作成・検索・管理、動画共有、掲示板などの機能を備えており、社内のマニュアルやwiki、FAQの作成、ノウハウや取引先情報の共有などに活用されています。
Word・Excel・PowerPoint・PDFなどのファイルは中身も全文検索ができ、必要な情報の検索が簡単に行えます。
スマホなどで撮影した動画マニュアルを共有することもできるので、文書や画像だけでは伝わりにくいナレッジの共有にも最適です。
NotePM/株式会社プロジェクト・モード
無料トライアルあり
費用:税込み4800円/月~
https://notepm.jp/
2-2. 顧客管理(CRMツール)
CRMツールは、顧客管理(CRM:Customer Relationship Management)を目的としたツールです。顧客の企業情報や連絡先、取引実績、商談状況、やりとりの履歴など、従業員と顧客との関係(コミュニケーション記録)を一元管理することができます。
CRMツールを導入することで、業務の効率化につながるだけでなく、担当の従業員が異動や退職をした際のナレッジ共有がスムーズになり、引き継ぎの効率もアップします。
そのため、BtoCでもBtoBでも一定数の顧客が存在する企業であれば、業種を問わず有効なシステムです。
例えば、日産自動車株式会社や株式会社ナノ・ユニバース(現:株式会社TSI)は、CRMを導入することで顧客管理の効率化や顧客満足度の向上、顧客のニーズに合わせた製品開発などを実現しています。
2-2-1. Zoho CRM
Zoho CRMは、世界25万社が利用しており、グローバル環境下での実績も豊富なCRMツールです。顧客管理、営業支援、案件管理、データインポート、見積書・請求書作成、営業分析の自動作成などの主要機能はもちろん、分析ツールが充実しています。自社のビジネスに合わせてカスタマイズも可能です。
さらに、追加料金なしのAIを駆使して、精度の高い予測や適切なアクションを導き出し、営業業務をサポートします。
1ユーザーから利用でき、月単位での利用も可能なため、まずは低コストで導入したいという方に特におすすめです。
Zoho CRM/ゾーホージャパン株式会社
無料トライアルあり
費用:税抜き1680円/1ユーザー/月~
https://www.zoho.com/jp/crm/
2-2-2. Sales Cloud
Sales Cloudは、世界のCRM市場で最大シェアを占めている米国セールスフォース(Salesforce, Inc.)が提供するツールです。
顧客情報を管理するCRMはもちろん、営業活動のプロセスや進捗状況を可視化できるSFA(Sales Force Automation:営業支援システム)の機能を有しています。営業部員の営業活動を細かく分析できるため、それらを営業部員同士で共有することで営業成績の向上や業務の属人化防止にもつながります。
また、見込み客の管理や取引先との商談の管理、売り上げ予測管理など、営業活動を効率化するための機能を備えています。
Sales Cloud/株式会社セールスフォース・ジャパン
無料トライアルあり
費用:税抜き3000円/ユーザー/月~
https://www.salesforce.com/jp/sales/cloud/
2-3. 分析基盤構築(データウェアハウス)
データウェアハウスは、さまざまなソースからのデータを一元的に保管し、分析に適した形へ変換して蓄積していくためのツールです。データ分析の基盤を構築する役割があり、ナレッジとなるデータを保存する「倉庫=ウェアハウス」のような場として活用できます。
データウェアハウスは、数年分のデータを時系列に並べ替えたり、グルーピングなどにより整理したりして保存することができます。蓄積された膨大なデータを分析することで、経営に重要な意思決定をサポートします。
例えば、ある商品・サービスが「いつ・どのようなペースで・どれだけ売れたか」などの情報を分析することで、その結果を商品開発やプロモーションに活用することができます。
データウェアハウスは「メガカンパニー」と呼ばれる大手企業に多く導入されているという特徴があります。
企業の規模が大きくなるほど、企業内の情報が部門ごとに分散する傾向があるため、統合管理のメリットは大きくなります。同時に、データが大量にある分、ビッグデータとしての活用可能性も広がります。
2-3-1. Amazon Redshift
Amazon Redshiftは、Amazon Web Services上で提供されている、大規模データ対応のデータウェアハウスです。データを構造化して蓄積し、高速に分析する能力に優れており、さまざまな業界で広く使用されています。
例えば携帯通信キャリア大手の株式会社NTTドコモは、全社共通の統合データ分析基盤をAmazon Redshiftで構築し、事業部の分析担当者2600人以上が各種分析用途で利用しています。総データ量6PB、1日50TBのデータを高速に処理し、デジタルマーケティングの高度化や通信品質の向上に活用しています。
Amazon Redshift/Amazon Web Services, Inc.(AWS)
無料トライアルあり
費用:3USドル/時間(従量課金制サーバーレスの場合)
https://aws.amazon.com/jp/redshift/
2-3-2. b→dash
b→dashは、ノーコードでデータの取り込み・加工・統合・抽出・活用ができるツールです。
データの加工から活用まで、アイコンをクリックするなどの画面上での直感的な操作で完結できるので、プログラミングスキルがない担当者も使いこなすことができます。
データウェアハウスやBI[1]ツール、web接客、フォーム作成など、マーケティングに必要な全16種類の機能を搭載しています。テンプレートを選ぶといった簡単な操作で、自社に合わせたデータベースを構築できます。
直感的な操作で工数を大幅に削減できるので、データウェアハウス初心者も手軽に利用できるタイプです。
b→dash/株式会社データX
費用:要問い合わせ
https://bdash-marketing.com/
2-4. 社内FAQ(エンタープライズサーチ)
社内FAQ は企業内のデータやファイルをキーワードで検索できるツールです。Google検索のような検索サーチの企業内版で、マニュアルとは異なり「逆引き辞典」のように利用されナレッジが共有・蓄積されます。エンタープライズサーチとも呼ばれるツールです。
この種類のツールは、ECサイト内における商品検索やコールセンターでの活用も可能です。顧客からの問い合わせ内容のログを保存し、類似した内容を随時確認するといったヘルプデスク業務にも活用されています。
情報の確認や提供がサービス効率に直結するビジネスを展開している企業では、特に利用価値が高いツールといえます。
検索の速度や精度が各ツールのアピールポイントになっているので、自社の課題や目的に合ったものを選ぶとよいでしょう。
2-4-1. Neuronエンタープライズサーチ(Neuron ES)
Neuronエンタープライズサーチ(Neuron ES)は、企業内にあるさまざまな情報・資料を、保管場所を問わず高速かつ横断的に一括検索できる企業内検索システムです。
300TBを超える文書群からでも高速検索できるため、数十人から数万人まで幅広い規模の企業に利用されています。
クラウドのBox、SharePoint Online、Dropbox、Google Driveも一括で横断的に高速検索できるため、資料がどこに保存されているかを考えずに検索できます。
また、選択した文書と関連性、類似度が高い文書をおすすめリンクとして表示する機能「関連文書検索」を備えており、思わぬ資料の発見など、業務に付加価値を創出するといった成果も期待できます。
Neuronエンタープライズサーチ/ブレインズテクノロジー株式会社
無料トライアルあり
費用:要問い合わせ
https://www.brains-tech.co.jp/neuron/
2-4-2. Quick Solution
全文検索・情報活用に特化したQuick Solutionは、AIを利用して非常に高い検索精度を誇るエンタープライズサーチです。
検索に対応するデータは、OfficeファイルやPDFをはじめメールや画像ファイルなど多岐にわたり、今まで蓄積してきたデータを余すことなく活用できます
スキャンした画像PDFの文字情報を読み取る「画像OCR検索」や、検索文の意味をくみ取る「セマンティック検索」など、高度な検索が可能です。
Quick Solution/住友電工情報システム株式会社
費用:税抜き250万円(サーバーライセンス)~
詳細は要問い合わせ
https://www.sei-info.co.jp/quicksolution/
2-5. 社内SNS
社内SNSは、主に従業員間でのコミュニケーションの活性化を図るためのツールです。社内チャットのように使って、メッセージのやりとりだけでなく業務に関する情報共有にも利用できます。
社内SNSは情報を簡単な操作で発信できるため、労力的にも心理的にも手軽に情報を投稿できます。
また、スマホで使用できるものも多く、時間・場所の制約を受けにくく簡単に投稿の送受信ができることから、ナレッジ共有の促進や効率化につながります。
2-5-1. TUNAG(ツナグ)
TUNAG(ツナグ)は情報共有や業務効率、人材育成、社内交流などの組織課題を、スマホ1つで解決するアプリサービスです。
スマホで全機能を使えるため、社用PCを持たない従業員も組織全体の情報共有や社内交流のツールとして活用できます。
チャット機能はもちろん、タスク依頼、マニュアル作成・格納、社内テスト、アンケート
など、豊富な機能がそろっています。
従業員10人ほどから千人以上まで幅広い規模の企業に対応可能で、一部署での導入や、正社員のみ・アルバイトのみ・内定者のみなど、特定の範囲で利用することも可能です。
TUNAG/株式会社スタメン
費用:要問い合わせ
https://biz.tunag.jp/
2-5-2. ナレカン
ナレカンは、「記事形式」「質問形式」でナレッジを集約・蓄積し、「フォルダ形式」で情報を整理するだけといった、シンプルな作業でナレッジの管理や活用ができるツールです。
ITに詳しくなくても簡単に操作でき、導入までの面倒な作業をサポートする「初期導入支援サポート」もあるため、初めてナレッジ管理ツールを導入する企業にもおすすめです。
「質問機能」では、業務上で発生した疑問を社内メンバーに質問することができます。優れた回答を「ベストアンサー」として固定して見つけやすくすることも可能です。
利用可能容量とセキュリティに関する追加機能の有無が異なる2プラン、「ビジネスプラン」と「エンタープライズプラン」があります。
ナレカン/株式会社Stock
無料トライアルあり
費用:要問い合わせ
https://www.narekan.info/
3. ナレッジマネジメントにはLMS(学習管理システム)の活用がおすすめ
前章でご紹介したサービスは、業務効率の向上、データの活用などを目的としています。いずれも企業が組織全体の運営を円滑化するために大変重要といえるでしょう。
一方で、従業員一人一人にとってのナレッジマネジメントの意味を考えてみると、そこには「スキルアップ」や「知識の増強」、すなわち「ビジネスパーソンとしての成長」という要素が見えてきます。
しかし、前章でご紹介したそれぞれのサービス単体では、そこまではなかなか行き届きません。
そこで、特に人材育成に注目したナレッジマネジメントを行いたい場合におすすめしたいのが、LMS(Learning Management System:学習管理システム)の活用です。
3-1. LMSがナレッジマネジメントツールとして有効な理由
LMSは、eラーニングなどの学習教材を配信し、受講した人の進捗や成績を管理するためのシステムです。最近ではSNS機能を備えたものもあり、ナレッジマネジメントツールとして活用することもできます。
一般的なナレッジマネジメントの場合、単に「知識やスキルを共有する」ことが目的となりがちです。もちろん、目の前の業務の遂行にはそれで十分かもしれません。
しかし、そのナレッジを従業員の能力として定着させ、組織全体の成長につなげるには、共有だけでなく「育成」という視点が必要です。
冒頭でもお伝えしたように、ナレッジマネジメントにおいて特に重要なのは、カンやコツといった経験によって培われた暗黙知をデータ化して共有し、活用することです。
従って、共有されたナレッジを人材育成に活用するのも、ナレッジマネジメントといえます。
LMS上でナレッジマネジメントを実現し、集められた暗黙知を形式知化してeラーニングや集合研修に反映させて学習者に提供すれば、組織のパフォーマンス向上に役立ちます。
つまり、形式知と暗黙知の両方を一括して管理し、学習者に提供することができるのです。
では、具体的にどのように活用できるか、当社が提供するLMS「CAREERSHIP」を例に見ていきましょう。
3-2. ナレッジマネジメントツールとして活用できるLMS「CAREERSHIP」の機能
LMS「CAREERSHIP」には学習管理に加えて以下の機能があり、ナレッジマネジメントツールとして活用することができます。
- 社内SNS「ルーム」機能
- 個々のスキルをスキルマップで可視化「スキル管理」機能
- 教材を内製できる「教材作成ツール」機能
社内SNS「ルーム」機能
当社のLMS「CAREERSHIP」には、社内SNSの機能を持つ「ルーム」というシステムがあり、ナレッジマネジメントツールとして活用することができます。
特定のテーマのルームを作成後、そのルームに参加した対象者たちがテーマに沿った情報や動画・画像・ファイルなどを共有し、コメントし合う機能です。
コミュニケーションツールとしてはもちろん、チームや部署をまたいだノウハウの共有などに活用できます。
活用シーンの一例を挙げると、接客や営業トークの動画を共有し、良い接客方法や営業手法などのナレッジを可視化・共有化するなどがあります。⇒ 「ルーム」機能について詳しく見る
図)「ルーム」(社内SNS)のイメージ
個々のスキルをスキルマップで可視化「スキル管理」機能
「CAREERSHIP」には、「スキル管理」という機能があり、自社内で求められるスキルや知識を言語化し管理することができます。
そして「スキルマップ」という機能では、職種やポジションごとに必要とされるスキルをマトリクス表(行と列で構成された図表)で表示することができます。
これにより、自分のレベルはもちろん、目標とする先輩・上司が持っているスキル、また、それを習得するために必要な学習内容が分かるので、より自発的な学習へとつながります。⇒ 「スキル管理」機能について詳しく見る
図)スキルマップのイメージ
教材を内製できる「教材作成ツール」機能
「CAREERSHIP」には、教材を内製できる「教材作成ツール」機能を搭載することができます。簡単にオンライン教材が作れる機能です。
PowerPointや動画などさまざまな資料を、簡単かつスピーディにeラーニング教材にすることができます。
特別な知識は不要で、例えばスマホなどで撮影した集合研修やイベントの動画を、教材作成ツールを使って教材コンテンツ化することもできます。加えて、テストやアンケートも簡単に作成可能です。
企業独自のナレッジを共有する上で効率化と高度化を図ることができ、さらにはナレッジを従業員の能力として定着させ、組織全体の成長につなげることに活用できます。⇒ 「教材作成ツール」機能について詳しく見る
図)オンライン教材の内製化イメージ
CAREERSHIPの実際の画面を見てみたい方へ ⇒ 無料ウェビナー「30分でわかるCAREERSHIP」を見てみる
3-3. LMSをナレッジマネジメントツールとして活用する企業事例
実際にライトワークスのLMS「CAREERSHIP」をナレッジマネジメントツールとして活用している企業事例を2つ紹介します。
3-3-1. 株式会社ヤマハミュージックジャパン
楽器・音響機器製品をはじめ、「音・音楽」に関わるサービスを提供する株式会社ヤマハミュージックジャパンは、LMS「CAREERSHIP」を導入し、従業員約1800⼈を対象とした企業内⼤学「ヤマハミュージックアカデミー」を開校しました。
導入の背景として、各従業員が現場で身に付けた知識やスキルを伝達する機会が限られていて、ナレッジが属人化しているという課題がありました。
そこで、各人が培ってきたカン・コツ・ツボといった全国の現場に散らばるナレッジを集約して共有できる仕組みを構築し、従業員約1800⼈を対象とした企業内大学をスタートさせました。
図)ヤマハミュージックアカデミーのトップ画面。鍵盤や管楽器などのアイコンが入ったヤマハらしいビジュアル
これにより、口頭や資料ではなかなか伝えにくいカンやコツといった暗黙知を従業員同士がお互いに教え合う学びの機会を創出することに成功しました。社内の教えてほしい従業員と教えられる従業員をマッチングすることも実現しています。
また、アンケート機能を活用し、受講者に受講前の課題や受講後の気付きなどを問いかけることで、受講者の学習効果や講座の制作者へのフィードバックも促進されています。
さらに、従業員が講師となって企業内大学の講座や教材を内製できるシステムを導入したことにより、従業員が自走する組織風土づくりにもつながり、組織の成長を促すことができました。
3-3-2. 綿半ホールディングス株式会社
綿半ホールディングス株式会社は、小売事業・建設事業・貿易事業を主な事業分野としている企業です。小売事業では、スーパーマーケットとホームセンターを融合した「スーパーセンター」という業態を中軸に展開しています。
同社では以前、1店舗200人規模のスタッフ教育が社内で体系化されておらず、店舗やOJT担当者によって教育内容がまちまちでした。そのため、店舗間のサービスレベルにばらつきが存在していたり、担当者が変わった際に現場に混乱が生じたりするという課題がありました。
そこで、LMS「CAREERSHIP」を採用し、1店舗当たり150~200人ものスタッフが働く巨大店舗のスタッフ教育のプラットフォーム「eWAT」を立ち上げました。
店舗スタッフに必要なスキル(=ナレッジ)を洗い出して体系化し、100以上のスキルと、それに連動する学習コンテンツを「eWAT」上に格納し、個々のスタッフが今の自分に必要なスキルについて学ぶことができるようにしました。
その結果、教育が体系化され、店舗間のサービスレベルを均一化することができただけでなく、基準として「eWAT」が中軸にあることで、OJT担当者が変わっても現場がスムーズに動き続けられる環境ができました。また、スタッフの早期戦力化も実現できました。
図)綿半ホールディングス株式会社「eWAT」画面。100以上のスキルと、それに連動する学習コンテンツを格納
教育に優先的に時間をかけることが難しい小売の現場において、同社はLMSを導入しマニュアルやノウハウを共有化しました。これにより、従業員が必要なナレッジを均一のレベルで習得できるようになり、人材教育の効率化や高い水準でのサービスレベルの均一化に成功しています。
4. まとめ
ナレッジマネジメント(knowledge management)とは、個人が蓄積した知識や経験を企業組織内で共有し、有効的に活用することで企業全体の生産性を向上する経営手法です。個人が持つノウハウの共有化により、イノベーションの創出を促すことができます。
ここでいうナレッジには、明確な数値や文書などで示すことができる知識を指す形式知と、カンやコツといった経験によって培われたノウハウを指す暗黙知があります。ナレッジマネジメントで重要なのは、暗黙知をいかに共有するかです。
ナレッジマネジメントの効率化をサポートするツールが、ナレッジマネジメントツールです。ナレッジマネジメントツールを使うことにより、膨大なナレッジの蓄積や分類、分析などがスムーズになり、社内で効率的にナレッジを共有することができます。
ナレッジマネジメントツールとほぼ同じ意味で、ナレッジ共有ツールという言葉も使われています。
ナレッジマネジメントツールを導入するメリットは、主に以下の4つが挙げられます。
- 生産性向上
- 企業競争力の強化
- 業務の属人化を防止
- 人材教育の労力削減
ナレッジマネジメントにはさまざまな手法や用途があり、またナレッジマネジメントツールにも多くの種類があるため、企業によって効果的なツールは異なります。
本記事ではナレッジマネジメントツールを以下の5つに分類し、それぞれの概要と代表的なツールを紹介しました。
- 従業員間のナレッジ共有(グループウェア)
- 顧客管理(CRM)
- 分析基盤構築(データウェアハウス)
- 社内FAQ(エンタープライズサーチ)
- 社内SNS
また、LMS(学習管理システム)もナレッジマネジメントのツールとして活用できます。
LMSの以下のような機能により、ナレッジの共有だけでなく、ナレッジを従業員の能力として定着させ成長につながるよう育成することが可能です。
- 社内SNS「ルーム」機能
- 個々のスキルをスキルマップで可視化「スキル管理」機能
- 教材を内製できる「教材作成ツール」機能
こうした機能により、共有した知識を実践的なスキルとして従業員に習得してもらうことができます。
実際にLMSをナレッジマネジメントのツールとして活用した企業事例を2つ紹介しました。
- 株式会社ヤマハミュージックジャパン
- 綿半ホールディングス株式会社
「ナレッジマネジメントの実施を検討している」「すでに行っているが共有だけにとどまっていると感じている」といったご担当者の方は、ぜひLMSの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
[1] ビジネス インテリジェンス。データを集計・分析し可視化する技術や手法のこと。
株式会社データX「BIツールとは?」,『b→dash』,https://bdash-marketing.com/marketics/marketing/5315/(閲覧日:2024年5月21日)
参考
Advanlink株式会社「CRMとデータウェアハウス(DWH)との関係」,『CRMコラム』,https://www.advanlink.co.jp/crmconsultation/crm_dwh.html(閲覧日:2024年5月27日)
リスモン・ビジネス・ポータル株式会社「グループウェアとは?今さら聞けない基本から導入メリットまでを詳しく解説」,『がんばる企業応援コラム』,https://www.j-motto.co.jp/00000000/column/2019/20190807.html(閲覧日:2024年5月27日)
株式会社セールスフォース・ジャパン「CRMとは?導入検討時に知っておきたい基礎知識と活用方法」,『リソースセンター』,https://www.salesforce.com/jp/hub/crm/what-is-crm/(閲覧日:2024年5月27日)
山﨑慎一「データウェアハウスのモデリング」,『ユニシス技報』,https://www.biprogy.com/pdf/6815.pdf(閲覧日:2024年5月27日)
野中 郁次郎,梅本 勝博「知識管理から知識経営へ -ナレッジマネジメントの最新動向-」,『人工知能学会誌 16巻1号(2001年1月)』,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsai/16/1/16_4/_pdf(閲覧日:2024年5月27日)
株式会社ジーニー「大手企業のCRM活用事例とシステムを選ぶ時のポイントとは」,『GENIEE’s library』,https://geniee.co.jp/media/crm/crm_majorcompany/(閲覧日:2024年5月21日)