キャリアデザインとは?重要性や設計方法、企業による支援を事例付きで解説

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キャリアデザインとは?重要性や設計方法、企業による支援を事例付きで解説

「従業員が主体的にキャリアを設計するには、どう支援すればよいだろうか?」

個人の将来像や理想の働き方を考え、達成に向けて計画・実行していくことを「キャリアデザイン」といいます。しかし、一人一人が能動的に理想のキャリアを描き、実行するのは簡単なことではありません。キャリアデザインが漠然としたイメージで止まってしまう、企業主導のキャリア施策に「やらされている感」をぬぐえないといったケースも少なくないのではないでしょうか。

本稿では、キャリアデザインの背景企業にとってのメリット、またキャリアデザインの設計方法企業ができるサポートについて解説します。併せてキャリアデザイン支援に取り組む企業事例を紹介します。

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1.キャリアデザインとは

キャリアデザインとは、自分のなりたい姿や理想の働き方について、主体的に設計し行動に移していくことです。

厚生労働省委託事業「キャリア形成・学び直し支援センター」においても、キャリアデザインは労働者が自発的に取り組むべきものであることが示されています。

平成28年4月1日に施行された改正「職業能力開発促進法」では、労働者は自ら職業生活設計(キャリアデザイン)を行い、これに即して自発的に職業能力開発に努める立場にあることが規定されました。

引用元:キャリア形成・学び直し支援センター(厚生労働省委託事業)「企業・団体、在職者、学校のためのジョブ・カードを活用したキャリアコンサルティングについて」(閲覧日:2023年11月28日)

一般的にキャリアデザインが対象とする「キャリア」は、職歴を表す「ワークキャリア」に留まらず、プライベートも含む「ライフキャリア」を想定します。

このため、キャリアデザイン=人生設計と捉えてもよいでしょう。理想の将来像を実現するためのガイドと言ってもよいかもしれません。

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1-1.キャリアデザインの目的

キャリアデザインの目的は、キャリア自律の実現です。

社会人となってから、誰もが初めに思い描いた人生設計の通りにキャリアをたどるとは考えにくいものです。加えて企業側でも、事業の統廃合やMAといった組織の変動、コロナ禍で起きたようなさまざまな社会的転換があり、個人のキャリアに影響を与えます。

そうした予想外の出来事や変化を乗り越えるには、その都度、キャリアの再設計が必要になります。状況に対処しながら自らのキャリアを自身でマネジメントしていくためには、キャリアデザインが重要となるのです。

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1-2.キャリアパス・キャリア形成・キャリアプランとの違い

キャリアデザインに似た言葉として、キャリアパスやキャリア形成、キャリアプランなどが挙げられます。下記の表でそれぞれの違いを確認し、整理しておきましょう。

用語 意味
キャリアデザイン 職業人としての理想と、そこに至る計画を描くこと。より広く「人生設計」との捉え方も
キャリアパス 企業において従業員が特定の職位や職務に就くために必要な業務経験、順序などを示したもの
キャリア形成 経験を通じてキャリアを積み上げること
キャリアプラン 個人が将来の職業や仕事の目標を設定し、実現するためのプロセスを考えること

2.キャリアデザインが必要とされる背景

次に、キャリアデザインが必要とされる背景を考えてみましょう。

2-1.働き方をめぐる社会的変動

終身雇用や年功序列といった旧来のシステムが崩れ、今や従業員のキャリア形成を企業が保証することはできない時代です。VUCAの時代、従業員はキャリアを自分で舵取りする必要に迫られていると言えるでしょう。

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同時に、ワークライフバランスの考え方が普及し、一人一人の働き方の選択肢が多様化しています。厚生労働省「令和4年労働経済の分析」では、転職者は転職先を選ぶにあたり、ワークライフバランスに関する条件を重視するという傾向が示されました。[1]

同調査ではさらに、「キャリアの見通し」ができていることや「自己啓発」によるスキル向上が、仕事の満足度や賃金増加につながることが示唆されています。従業員にとって、働く上で主体的なキャリアデザインが重要であることがうかがえる結果と言えるでしょう。

2-2.キャリア教育の広がり

2011年から大学でキャリア教育が義務化されたことにより、若手社員の「キャリア」に対する意識はシニア世代に比べ格段に高くなっています。厚生労働省の資料によると、2013年度の調査でキャリア教育を実施していると答えた大学は99.1に上りました。[2]

同資料ではキャリア教育推進のポイントが下記のように述べられており、キャリアデザインの意識啓発が企図されていることがうかがえます。

“単に卒業時点の就職を目指すものではなく、生涯を通じた持続的な就業力の育成を目指し、豊かな人間形成と人生設計に資することを目的として行われるものである”
“産業構造などの変化に対応できる柔軟な専門性と創造性の高い人材を育成することが強く要請されている”

参考:厚生労働省「大学等におけるキャリア教育テキスト」,p40, (閲覧日:2023年11月28日)

このようなキャリア教育に触れてきた若年層は、新卒入社の時点で自らキャリアデザインに取り組む姿勢になじみがあると考えられます。終身雇用制度のもと、キャリア形成を企業任せにする慣習が長かった中高年世代とは認識のギャップがあることに注意したいところです。

3.企業がキャリアデザインを支援するメリット

キャリアデザインは従業員が主体的に取り組むべきものですが、企業としてもキャリアデザインを従業員任せにせず適切な支援を行うことによって、さまざまなメリットが期待できます。

まず、企業が従業員のキャリアデザインを支援することは、従業員のエンゲージメントを向上させ企業の魅力を高めます。つまり、多様で優秀な人材の定着に寄与する可能性があるのです。

それだけでなく、キャリアデザイン支援は強い組織作りにつながります。キャリア自律の意識を持つ従業員は、自身の目標やキャリアのステップを見据えて業務に取り組むため、高い生産性が期待できるからです。

また、自律的に多方面から学ぶ人材は、自社や業界を超えた知見や発想を得る機会に恵まれます。新規事業など、イノベーションの創出にも力を発揮するでしょう。

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4.キャリアデザインの考え方と設計方法、ツール

キャリアデザインの基本的な考え方と設計方法、キャリアデザインを設計する際に便利なツールをご紹介します。

4-1.キャリアデザインの考え方

キャリアデザインを設計する方法にはさまざまなフレームワークがありますが、基本的な考え方の一例として、3つの視点を紹介します。

  • Can:現状のスキルや経験
  • Will:将来ありたい姿・やりたいこと
  • Must:やるべきこと

これらを整理して設計していくことで、キャリアデザインを行うことができます。マネージャーが面談などで部下のキャリアデザインについてアドバイスする際も、この3つの視点を意識するとよいでしょう。

キャリアデザイン設計に必要な3つの視点
キャリアデザイン設計に必要な3つの視点

4-2.キャリアデザインの設計方法

上記の「3つの視点」をもとにしたキャリアデザインの設計方法を紹介します。

  1. 現状のスキルや経験を洗い出す
  2. 将来ありたい姿・やりたい事について考える
  3. やるべきことを具体的にし、行動に移す

1.現状のスキルや経験を洗い出す

まずは、現状持っているスキルや資格、今までに経験したことを洗い出してみます。

「得意なこと」「成功した体験」だけではなく、「苦手なこと」「嫌だったこと」「困難な時にどう対応したか」なども含めて振り返ってみましょう。そうすることでキャリアデザインの軸となる価値観や考え方、行動特性が明確になります。

2.将来ありたい姿・やりたい事について考える

自分の得意なことや興味のあることを基に、将来ありたい姿や目標について考えます。

「語学力を活かした仕事がしたい」「趣味に使える時間と収入を確保しながら働きたい」「将来は海外に移住したい」など、仕事に限らず、生活も含めて考えましょう。

3.やるべきことを具体的にし、行動に移す

現状と理想を比べて、目標を達成するために何が必要なのか、やるべきことを洗い出してみましょう。

例えば海外に移住したいのであれば、「語学力」や「移住のための費用」が必要になります。「海外でも使える仕事のスキルを身に着ける」「海外と関わることの多い部署への異動を目指す」なども選択肢になるかもしれません。

このとき、モチベーションを維持できるように、スモールステップを意識しながら達成できそうな目標を組み込んでいくことが大切です。目標のためにやるべきことを細かく洗い出したら、実際に行動に移していきます。

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4-3.キャリアデザインに活用できるツール

キャリアデザインを設計する際に活用できるツールを3つご紹介します。

ジョブ・カード

ジョブ・カードは厚生労働省が様式を定めたもので、キャリアコンサルティングなど相談支援や個人の求職活動の他、企業に向けてキャリア研修やキャリア面談への活用が想定されています。

ジョブ・カードは大きく分けて3つの様式で構成されます。

  • キャリア・プランシート(+キャリア・プラン作成補助シート)
  • 職務経歴シート
  • 職業能力証明シート

このうちキャリア・プランシートには主に以下の項目があり、シートを埋めることで、キャリアデザインに必要なCan・Will・Mustを整理できます。

  • 価値観・興味・関心事項等
  • 強み等
  • 将来取り組みたい仕事や働き方等
  • これから取り組むこと等

企業でのジョブ・カードの活用方法についても、事例等を交えてわかりやすく解説されています。詳しくは下記のサイトをご覧ください。

参考:厚生労働省 | マイジョブ・カード
   厚生労働省 ジョブ・カード活用ガイド(企業関係者向け)

キャリアマップ・職業能力評価シート

厚生労働省は、さまざまな業種・職種について職務の遂行能力を整理した「職業能力評価基準」を策定し、活用のためのツールをいくつか公開しています。なかでも、キャリアの道筋や職務経験を整理する下記2つのツールは、キャリアデザインの可視化に役立つでしょう。

キャリアマップ

職業能力評価基準で設定されたレベルをもとに、キャリアの道筋と、習熟の目安となる年数必要な経験や実績・資格などをまとめたものです。キャリアの目標意識を高め、具体的な行動に落とし込むのに役立ちます。

参考厚生労働省|キャリアマップについて

 職業能力評価シート

各レベルに求められる職務遂行のための基準を把握し、習熟度を確認するチェック形式の評価シートです。現在のレベルがどの程度なのか、次のレベルに上がるには何が不足しているかを客観的に把握できます。

参考厚生労働省|職業能力評価シートについて

ライトワークスが提供するLMS「CAREERSHIP」はスキル管理機能を備えており、厚生労働省の職業評価基準を基にしたスキルテンプレートを提供しています ⇒ 「CAREERSHIP」のスキル管理機能を詳しく見る

ライフキャリアレインボー

ライフキャリアレインボーは、仕事以外も包括したライフキャリアの視点でキャリアデザインを描く方法です。アメリカの研究者DE・スーパーが提唱したキャリア理論で、行政や教育機関などでキャリア教育に取り入れられてきました。

人は人生の各場面(ライフステージ)において、「学習する者」「労働者」「親」など、さまざまな役割(ライフロール)を担います。その役割が、生活に占めるバランスを変えながら、生涯を通じて重なっていく様子を虹になぞらえて表現するものです。

ライフキャリアレインボーを描く際は、現在・過去・将来に分けて、各ライフロールが生活全体に占める配分を考えます。理想のライフロールバランスやその達成時期キャリアに影響するライフイベントなどを想定することで、変化に備えながらキャリアの道筋を計画できる手法です。

下記の記事から、ライフキャリアレインボーのワークシートを無料でダウンロードしていただけます。

関連 ▶ ライフキャリアレインボーとは? 企業視点での意義、書き方を解説

5.企業によるキャリアデザイン支援の方法

企業側は、従業員のキャリアデザインをどのようにサポートすればよいでしょうか。設計段階と実現段階のそれぞれにおいて、いくつか施策が考えられます。

5-1. キャリアデザイン設計の支援

従業員のキャリアデザイン設計を支援するには、以下のような方法が挙げられます。

  • キャリアデザイン研修
  • キャリア面談・キャリアコンサルティング
  • 従業員同士のキャリアビジョンの公開/共有
  • タレントマネジメントシステム

キャリアデザイン研修

キャリアデザインは従業員が主体となるべきものですが、必ずしも全ての従業員が自律的に取り組めるとは限らないのが実情です。そのような場合、まずは従業員がキャリア自律の意識を持ち積極的にキャリアデザインを描けるようなサポートが欠かせません。

キャリアデザインの重要性や設計方法などについての研修を実施することで、従業員の意識醸成を図ることができます。

キャリア面談・キャリアコンサルティング

上司や人事部門との面談、専門家のキャリアコンサルティングなど、キャリアについて個別に相談できる場を定期的に設けましょう。従業員は、自身の強みやキャリアの見通しについて、客観的な意見を聞きながら整理し、課題や不安を解消できます。

継続的なフォローにより、目標達成のステップを見据えて業務にモチベーション高く取り組むことで、生産性向上も期待できるでしょう。企業側が従業員のキャリアデザインを把握し、組織の戦略と連動しながら人事施策に反映していくためにも、定期的な面談とフィードバックは必須です。

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従業員同士のキャリアビジョンの公開/共有

社内に向けて従業員にキャリアビジョンを公開してもらうことも、キャリアデザイン設計に役立つ施策です。第三者に向けて宣言することは、自身のキャリアと真剣に向き合う機会になります。また若手など他の従業員に対しては、身近なロールモデルとして参考になるでしょう。

社内FAや社内公募といった人材マッチングにおいて、部門と従業員の相互のアプローチにも活用できます。

タレントマネジメントシステム

従業員のタレント(才能)や業務経験・スキルなどを一元管理するタレントマネジメントシステムは、人事施策だけでなく、各々のキャリアデザインにも有用です。自身の目標に必要な経験やスキルを可視化でき、キャリアパスを見通す材料になるでしょう。

またタレントマネジメントによる適材適所の人材配置や適正な評価は、従業員のエンゲージメントを向上します。

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5-2. キャリアデザイン実現の支援

キャリアデザインは本人が描いて終わりではありません。キャリアデザインの実現をサポート従業員のキャリア自律を後押しするキャリア開発が企業には求められます。

理想は、評価や人事制度に一人一人のキャリアデザインが反映されることです。例えば、社内公募制など本人のキャリアの希望に基づく人材配置や、目標管理制度で目標設定や評価項目にキャリアデザインの内容を取り入れるといった方法が考えられます。

また、画一的なキャリアパスではなく、個々のキャリアデザインに応える多様な選択肢があることが望ましいでしょう。

加えて、従業員が自身のキャリアを見据えて学べる環境を提供することも重要です。社内研修を手挙げ制にする、社外研修や自己啓発の費用補助など、従業員が自分に必要な内容を選んで学べる仕組みを設ける企業も多く見られます。

関連 ▶ キャリア開発とは?企業のメリットや取り組み方法、企業事例を紹介

ライトワークスが提供するeラーニング受け放題サービス「まなびプレミアム」は、従業員の自律的な学びを後押ししますeラーニング受け放題サービス「まなびプレミアム」について詳しく見る

6.キャリアデザイン支援の企業事例

最後に、キャリアデザイン支援に取り組む企業事例を紹介します。

6-1. 雪印メグミルク株式会社

雪印メグミルク株式会社は、全世代、非正規社員を含む全社員を対象としたキャリア形成支援に取り組んでいます。女性管理職の比率や男性従業員の育児休業取得率が向上、直近3年間で49人の非正規社員が正社員に転換するなど、成果を上げてきました。[3]

同社ではキャリアデザイン冊子の配布をはじめ、従業員一人一人がキャリアデザインに向き合う施策を行っています。

年齢別のワークショップは、キャリアの振り返り、今後のキャリアビジョンとアクションプラン、実現に向けた⾏動習慣などが主な内容です。導入済みの30歳、38歳、45歳、50歳に加え、定年退職後のセカンドキャリアに向け57歳向けも企画されています。

上司とのキャリア面談社内キャリアコンサルタントによるカウンセリングは、新たな気づきや視野の拡大につながります。また女性活躍推進を中核とし、主体的な行動の意識付けを目的とした女性社員研修、アンコンシャスバイアスに関するオンラインセミナーなどを実施しています。

さまざまな取り組みの結果、従業員へのアンケートでは、従業員の6割が「会社はキャリアについて考える機会を提供している」に対し肯定的に捉えています。また7割が⾃らのキャリアの将来像を描いているという結果でした。[4]企業の支援のもとキャリアデザインに主体的に取り組む風土が、着実に醸成されていると言えるでしょう。

6-2. 三井化学株式会社

三井化学株式会社は、2022年度から「自律的キャリア開発促進」を開始しました。希望参加型の社内研修や、公募制副業など従来からの施策に加えて、自分らしいキャリア形成など「内的キャリア」に重点をおいた施策を進めています。

同社ではキャリア開発のツールとして、「Will Can Needシート」を全社員に展開しています。「自分がなにをしたいか(=Will)、自分ができることはなにか(=Can)、求められていることはなにか(=Need」を書き込むものです。

加えて、キャリアについての潜在的な思いを言語化するユニークなツールが、単語帳型カード「キャリアのトリセツ グッドキャリア教授の赤ペン講座」です。株式会社カヤックと共同開発したもので、ゆるいイラストで「Will Can Need」の書き方のコツを学び、目標や夢が詰まった自分だけの単語帳を作っていきます。楽しく気軽に内的キャリアに向き合うツールです。

また同社では、社会人経験年数別のキャリアワークショップ、匿名で傍聴だけできる「耳だけ参加キャリアセミナー」など、目的や階層に応じたキャリア研修が充実しています。従業員一人一人が自分らしいキャリアを実現できるよう、さまざまな仕掛けでキャリア自律を支援しています。

6-3. 富士通株式会社

富士通株式会社は、従業員と企業が「自律と信頼」の関係のもと、ともに成長しながらパーパスの実現を目指せるように、キャリアオーナーシップを支援しています。

従業員は3年後のありたい姿を描き、どのようにチャレンジしたいかという成長ビジョンを設定します。一人一人のキャリアの目標を組織のビジョンと連動しながら実現するため、以下のようなさまざまな施策が行われています。

  • キャリアオーナーシップ診断や年代別ワークショップ
  • キャリアカウンセラーや上司との1on1
  • 社内外の多様な学習コンテンツをいつでもどこでも受講できるプラットフォーム
  • グローバルでの社内ポスティング制度

同社のキャリアオーナーシップ支援プログラム「FUJITSU Career Ownership Program」は、厚生労働省「グッドキャリア企業アワード2022」でイノベーション賞を受賞しました。一気通貫のキャリア支援で、従業員がキャリアオーナーシップを発揮し、目標に向けてチャレンジしながら成長できる体制がうかがえます。

6-4. 株式会社サザビーリーグ

株式会社サザビーリーグでは、従業員のキャリアデザインを支援するため、以下のような充実した支援制度を設けています。

  • 奨学金支援制度や万が一病気やケガで働けなくなった時の給与を保証する保険制度
  • グループ会社の社員割引情報などの福利厚生制度
  • 育児・介護休暇などライフステージにまつわる様々な不安に対するサポート制度
  • グループ会社間で異動ができる社内公募制度やビジネスプラン提案制度
  • 直属上司や所属会社ではない立場のキャリアコンサルタント(国家資格保有)と話せる個別相談制度 など

同社はこうした支援制度の拡充だけでなく普及・利用促進にも注力しており、ライトワークスのLMS「CAREERSHIP」を導入し、「S-Career Design」として展開しています。「S-Career Design」では教育コンテンツの受講や申込み、支援制度の利用を一括で行うことができ、年間を通して社員全員がいつでも自由に学べる環境が用意されています。

「S-Career Design」画面サンプル
「S-Career Design」画面サンプル

また、自己啓発支援においては、通信講座(約200種類)や資格取得(約100種類)の支援に加え、オンライン英会話も会社負担で受講できるようになっています。さらに、2024年にはライトワークスが提供するeラーニング受け放題サービス「まなびプレミアム」を導入し、1,000本以上のeラーニングを自由に受講できる環境を整えるなど、キャリアデザインへの包括的な支援が行われています。

関連 ▶ライトワークスのeラーニング受け放題サービス「まなびプレミアム」をサザビーリーグが導入 ~学習管理システム「CAREERSHIP」と「まなびプレミアム」で従業員のキャリア自律をサポート~

 

▼株式会社サザビーリーグの詳しい事例はこちらからお読みいただけます。

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7.まとめ

キャリアデザインは、なりたい姿や理想の働き方について主体的に考え行動に移していく、いわば人生設計です。厚生労働省によれば、キャリアデザインとは「職業生活設計」であり、労働者が自発的に取り組むべきものとされます。

キャリアデザインは理想の将来像を実現するためのガイドであり、状況に応じてキャリアを再設計しながらマネジメントしていくツールとも言えるでしょう。キャリアデザインを通じて自らキャリアの舵取りをしていくことで、キャリア自律の実現につながります。

キャリアデザインが重要とされる背景には、VUCAの時代に自分のキャリアは自分で作る必要があること、ワークライフバランスの浸透で働き方が多様化していることなどが挙げられます。大学などの教育現場でもキャリアデザインについて学ぶ機会が広がっており、若い世代にはキャリアデザインの意識醸成が進んでいると考えられます。

また、キャリアデザインに取り組むことは従業員のキャリア自律を促し、エンゲージメントや生産性の向上イノベーションの創出といったメリットを企業にもたらします。

キャリアデザインを設計するには、以下の三つの要素を整理することが基本となるでしょう。

  • Can:現状のスキルや経験
  • Will:将来ありたい姿・やりたいこと
  • Must:やるべきこと

併せて、キャリアデザインに活用できるツールの具体例として以下を紹介しました。

  • 厚生労働省「ジョブ・カード」
  • 厚生労働省「キャリアマップ」「職業能力評価シート」
  • ライフキャリアレインボー

企業には従業員のキャリアデザインの実現に向けた支援が求められます。例えば以下のような方法で、キャリアデザインの設計や実現をサポートしましょう。

  • キャリアデザイン研修
  • キャリア面談・キャリアコンサルティング
  • 従業員同士のキャリアビジョンの公開/共有
  • タレントマネジメントシステム
  • 評価や人事制度にキャリアデザインを反映
  • 主体的な学びの機会提供

最後に、キャリアデザイン支援に取り組む企業事例として以下の4社を紹介しました。

  • 雪印メグミルク株式会社
  • 三井化学株式会社
  • 富士通株式会社
  • 株式会社サザビーリーグ

キャリアデザインは一人一人が主体的に自分のキャリアに向き合う取り組みです。従業員のキャリア自律推進の第一歩に、本稿が役立つと幸いです。

 

[1] 厚生労働省「令和4年版労働経済の分析-労働者の主体的なキャリア形成への支援を通じた労働移動の促進に向けた課題-第3章 主体的な転職やキャリアチェンジの促進において重要な要因」,2022年9月16日公表, (閲覧日:2023年11月28日)
[2] 厚生労働省「大学等におけるキャリア教育テキスト」,p40,(閲覧日:2023年11月28日)
[3] 厚生労働省「グッドキャリア企業アワード2022大賞[厚生労働大臣表彰]雪印メグミルク株式会社」,p23,(閲覧日:2023年11月28日)
[4] 同上(閲覧日:2023年11月28日)

参考)
株式会社リクルート「【Will-Can-Mustシート】リクルートの活用事例~メンバーの本当に実現したいことを対話する方法」,https://www.recruit.co.jp/blog/culture/20230921_4189.html(閲覧日:2024年7月30日)
厚生労働省「ジョブ・カード活用ガイド(企業関係者向け)」, https://www.mhlw.go.jp/content/001003193.pdf (閲覧日:2023年11月28日)

厚生労働省「職業能力評価基準」, https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/ability_skill/syokunou/index.html(閲覧日:2023年11月28日)
厚生労働省「キャリアマップについて」, https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_07792.html(閲覧日:2023年11月28日)
厚生労働省「職業能力評価シートについて」, https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08021.html(閲覧日:2023年11月28日)
厚生労働省「グッドキャリア企業アワード2022大賞[厚生労働大臣表彰]雪印メグミルク株式会社」,https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001052177.pdf (閲覧日:2023年11月28日)
厚生労働省「実践事例 変化する時代のキャリア開発の取組み(内部労働市場を活用した人材育成の変化と今後の在り方に関する調査研究事業報告書 (令和4年度厚生労働省委託事業))」, https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001085730.pdf(閲覧日:2023年11月28日)
三井化学株式会社「人材マネジメント」,『Mitsui Chemicals』, https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/society/employee/development/index.htm(閲覧日:2023年11月28日)
PR TIMES「【人事制度を面白く】三井化学とカヤックが共同企画!全社員に配布する“自分らしいキャリアの作り方”を学べる単語帳型カードを制作」, https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000633.000014685.html(閲覧日:2023年11月28日)
富士通株式会社「Career & Growth Well-being」,『FUJITSU』, https://www.fujitsu.com/jp/about/csr/education/(閲覧日:2023年11月28日)
厚生労働省「グッドキャリア企業アワード2022イノベーション賞[厚生労働省人材開発統括官表彰]富士通株式会社」, https://www.mhlw.go.jp/career-award/pdf/2022/fujitsu.pdf (閲覧日:2023年11月28日)
富士通株式会社「富士通の「キャリアオーナーシップ支援施策」が、「グッドキャリア企業アワード2022」イノベーション賞を受賞」, 『FUJITSU』, https://pr.fujitsu.com/jp/news/updatesfj/2023/01/10.html(閲覧日:2023年11月28日)

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