人材育成フレームワーク・理論10選!成果を出す育成計画の構築ステップも解説

「人材育成で成果を出すために、もっと体系的な進め方はないだろうか」

OJTは現場の担当者に任せている、研修後の効果測定にまで手が回らないなど、なかなか計画的な人材育成に取り組めないという焦りを感じてはいないでしょうか。

厚生労働省の「令和6年度 能力開発基本調査」1によると、時間や人的リソースの不足など人材育成に関して何らかの問題があるとする事業所は79.9%にも上ります。

また35.1%の事業所は「計画的なOJTを実施していない」と回答しており、一定数の企業では人材育成が場当たり的になってしまっていることが分かります。こうした企業ではOJTや研修を実施しても「効果測定が難しく、成果を実感できない」といった状況に陥りがちです。

そこで活用したいのが、人材育成の「フレームワーク」や「理論」です。これらを理解して活用することで、成功パターンに基づいた人材育成計画を効率的に設計できます。

この記事では、企業の人事・研修担当者向けに、主要な人材育成フレームワーク・理論10選を紹介します。実際の人材育成計画の構築ステップや成功のポイントも解説しているので、計画立案の参考にしてみてください。

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AIで要約

  • フレームワーク・理論の導入により、誰が指導しても一定水準の成果を再現できる、標準化された人材育成体制を構築できます。
  • 目標設定にはSMARTの法則、実践には経験学習モデルというように、目的に合わせて複数の理論を組み合わせることで最適な育成計画を策定できます。
  • 施策を定着させるには指導役のスキルが不可欠なため、OJTトレーナーへの研修など教える側を支援する体制を構築する必要があります。
目次

主要な人材育成フレームワーク・理論10選

人材育成のフレームワーク・理論とは、育成施策の設計・実施・評価を体系的に整理するための「思考の枠組み」です。

こうしたフレームワークは人材育成の成功パターンや理論を基に体系化されており、人材育成施策の効率的な運用と、その属人化防止に役立ちます。

「新入社員を早期戦力化したい」「研修の効果測定をしっかり行いたい」などの目的に合わせてフレームワーク・理論を選定し、必要に応じて複数を組み合わせることで、自社に最適な人材育成計画の策定につながります。

この章では、人材育成を体系的に進めるために知っておきたい主要な10のフレームワーク・理論について、目的・概要・特長・向いている状況・活用例をそれぞれ詳しく見ていきます。

人材育成フレームワーク・理論

HPI(Human Performance Improvement)

目的:
教育の体系化・戦略立案

概要:
HPI(Human Performance Improvement)は、組織全体のパフォーマンス向上を、体系的に進めることを目的としたフレームワークです。目指す結果(ゴール)を起点に現状とのギャップを把握し、それを埋めるための具体的な施策を考えます。単なる研修設計にとどまらず、経営目標と人材育成を連動させることを特徴としています。

特長:
パフォーマンスにおける課題の根本原因にアプローチするため、本質的な課題解決や個人の状況に応じた成長を促すことができます。

向いている状況:
HPIは、人材育成を経営課題と結び付けて考える包括的なフレームワークであるため、自社の教育体系の大枠を再構築したい企業に向いています。

活用例:
「新規顧客の20%増加」、「DXによる顧客対応の効率化」といった経営目標に対して、どのようなスキルを持った人材が必要かを定義し、必要な研修や評価制度、組織としての支援体制といった具体的施策に落とし込んでいきます。

SMARTの法則

目的:
目標設定・計画立案

概要:
SMARTの法則は、アメリカの経営コンサルタントであるジョージ・T・ドラン(George T. Doran)が1981年に提唱した、目標設定のためのフレームワークです。

SMARTとは、以下の目標設定に関する5つの要素の頭文字を取った言葉です。

  • 具体的(Specific):「人事面談を年2回行う」など具体的な目標であること
  • 測定可能(Measurable):「売り上げ10%増」など確実に結果検証ができる目標であること
  • 達成可能性(Achievable):現実的に達成できる目標であること
  • 関連性(Relevant):事業や経営目標と関連していること
  • 期限(Time-bound):「半年以内」や「来期までに」といった期限を設けること

これら5つのポイントを押さえて人材育成計画の目標を設定すれば、各種施策が形骸化することなく、従業員の行動変容や経営課題の達成につながります。

特長:
SMARTの法則によって誰が見ても理解できる形で目標が言語化されるため、上司・部下・チーム間の認識を統一できます。これにより、達成すべき目標の範囲が明確になり、進捗把握や評価がしやすくなる点が特長です。

また、HPI(1-1.)やカークパトリックモデル(1-10.)と組み合わせ、人材育成施策のPDCAサイクルの設計にも活用できます。

向いている状況:
研修、キャリア開発など、明確かつ適正な目標設定が求められるシーンに適しています。特に、行動目標やKPIを定めて結果を可視化したい場合や、人材育成施策の効果測定を体系化したい組織に有効です。

活用例:
「営業力を高める」といった抽象的な目標を、「3カ月以内に商談化率を10%向上させる」とSMARTの法則を基に再定義すると、達成に必要な行動や支援施策が明確になり、研修設計から評価まで一貫性を保つことができます。

氷山モデル

目的:
問題解決・組織開発

概要:
氷山モデルは、問題の全体像を捉えるためのフレームワークです。行動や成果といった問題とされる表面的な要素だけを見るのではなく、そこに影響を与える潜在的な要素(価値観・信念・動機など)を探ります。

人の行動や組織の課題など、物事は氷山のように一部しか見えておらず、その大部分は水面下に隠れているという考えに基づき、「見えない部分」に着目した分析手法です。人材育成や組織開発の現場で、問題の背景を理解するために広く用いられています。

特長:
スキルや知識の不足だけでなく、価値観やモチベーションといった内面的な要素も含めてアプローチできる点が特長です。表面的な指導にとどまらず、根本的な行動変容を促します。

向いている状況:
チームの関係性改善、マネジメント層の育成、組織文化の改革など、個人の内面や組織文化が影響する課題の解決に適しています。特に、行動や成果の変化が見えにくい状況において、問題の本質を明らかにするために有効です。

活用例:
部下が報連相を怠るという問題がある場合、その行動につながる水面下の要素を分析します。「上司への信頼不足」「心理的安全性の低下」といった要素が把握できれば、コミュニケーション研修やマネジメント層へのコーチングにより組織文化の改善を推進するなど、根本的な解決策を実施できます。

経験学習モデル(経験学習サイクル)

目的:
行動変容・実践を通した学び

概要:
経験学習モデルは、アメリカの組織行動学者デイビッド・A・コルブ(David A. Kolb)が提唱した理論です。

経験学習モデルは「人は経験を通して学ぶ」という考え方に基づき、学習のプロセスを以下4つのステップの循環と捉える点が特徴です。

  1. 経験:仕事に取り組む
  2. 内省:結果を振り返る
  3. 教訓化:振り返りで得た学びを教訓にする
  4. 試行:教訓を実際の業務で生かす

特長:
このモデルの最大の特長は、「経験」を起点に学びを循環させる点です。実践での失敗や成功を振り返り教訓を得て、次の行動へ反映、新たな経験を得るというサイクルが明確化されています。これにより、実践を通して知識を深め自分のものにすることを促進します。

向いている状況:
OJTや実践を中心とした学習の効果向上に適しています。新人・若手の早期成長はもちろん、リーダー層の「経験から学ぶ力」を養うためのリフレクション研修(振り返り研修)にも効果的です。

活用例:
営業担当者が「顧客対応での失敗」を経験した場合、それをチーム内で共有し(内省)、改善策を考え(教訓化)、次回の商談で試してみる(試行)という形で学びのサイクルを回します。

行動変容ステージモデル

目的:
行動変容・育成支援

概要:
行動変容ステージモデルは、アメリカの心理学者ジェームズ・O・プロチャスカ(James O. Prochaska)らが提唱した理論です。

行動変容を促すには、それに対する関心や意識のレベルを認識し、そのレベルに合わせて適切なアプローチをすることが必要です。人が行動を変える際には、以下の5つのステージを段階的に進むと考えられています。

  1. 無関心期:行動を変えようという意識がまったくない段階
  2. 関心期:行動を変える必要性を感じ始めるが、具体的な行動には移らない段階
  3. 準備期:1カ月以内に行動を開始しようと計画し始める段階
  4. 実行期:実際に新しい行動を開始している段階​
  5. 維持期:新しい行動が定着し、6カ月以上持続できている段階

特長:
「人はすぐには変わらない」という現実を前提に、ステージに応じた支援ができます。

無関心期の従業員に行動を求めても効果は出にくいでしょう。まずは気付きを促す研修や上司との対話(1on1)を行って関心期へのステージアップを目指すといった、個々の状況に最も効果的なアプローチができます。

向いている状況:
行動変容ステージモデルは、モチベーションが課題となる人材育成施策に有効です。特に、自律的な学習を促したい場合や、管理職・リーダーが部下の成長をサポートする際に、相手の状況を理解し適切な支援ができます。

活用例:
業務改善の意識が低いなど無関心期または関心期にある従業員に対して、いきなり指導をするのではなく、まず「変化の必要性」に気付かせるための情報提供やディスカッションを実施します。

その後、準備期に入った段階で具体的な行動計画を立て、実行期では上司が1on1でフォローアップ、維持期には成果共有の場を設けることで、行動変容を段階的に進め定着させる人材育成プログラムを設計できます。

70:20:10フレームワーク(ロミンガーの法則)

目的:
実践重視・学習定着

概要:
70:20:10フレームワークは、ロミンガー社(Lominger)が経営者を対象に「リーダーとしての成長に役立ったこと」を調査し、その結果を基に公表した理論です。

効果的な学習体験の比率は「経験からの学習(70%)」「他者からの学習(20%)」「研修や自己学習(10%)」で構成されるという考え方を示しています。

特長:
従業員にどのような学習経験の機会をどのくらい与えれば効果的かという視点で、教育を体系化できます。3つの学習経験の比率が示されているため、人材育成計画を設計する際の指標として役立ちます。

向いている状況:
現場主導の人材育成を強化したい、あるいはOJT中心の教育体制を体系化したい組織に適しています。限られた研修予算で最大の効果を出したい場合にも効果的です。

活用例:
新任マネージャー研修における学びを、以下のように実践重視で設計します。

  • eラーニング(10%):基礎理論を学ぶ
  • 先輩とのメンタリング(20%):課題を共有
  • 実際のチーム運営(70%):リーダーシップを実践

また経験学習モデル(1-4.)と組み合わせると、より効果的な実践メインの研修プログラムを設計可能です。

Lightworks BLOG(ライトワークスブログ)

ロミンガーの法則とは、学習効果を最大化するための比率「経験(70):薫陶(20):研修(10)」を示したものです。割合の…

思考の6段階モデル

目的:
思考力向上・教育設計

概要:
思考の6段階モデルは、アメリカの教育心理学者ベンジャミン・S・ブルーム(Benjamin S. Bloom)が1956年に提唱した、学習の深まりを体系的に分類するフレームワークです。2001年には、ロリン・W・アンダーソン(Lorin・W・Anderson)らが改訂版を提唱しました。

現在、教育現場で広く用いられている改訂版では、思考の段階を以下の6つに分け、それぞれに沿ったアプローチで能力を開発していく必要があると考えられています。

  1. 記憶:事実・用語・方法などを知識として覚えているか
  2. 理解:内容を理解し、説明・言い換えができるか
  3. 応用:習得した知識を新しい状況や課題で使えるか
  4. 分析:情報全体を分解し、関係性や構造を理解できるか
  5. 評価:情報の価値を基準に沿って判断・評価できるか
  6. 創造:(1)から(5)までの要素を組み合わせて新しいものを作り出せるか

特長:
学習成果を「どのレベルに到達したか」で評価できます。このモデルを人材育成計画に取り入れれば、着実に一段階ずつ学習レベルを引き上げていく設計が可能になります。

向いている状況:
教育におけるカリキュラム設計の基本理論として、Off-JTやeラーニング教材の企画・開発などへの活用に適しています。

また、LMS(学習管理システム)などで学習データを分析する際に、受講者がどの段階に到達しているかを可視化する指標として使用できます。

活用例:
営業研修で「製品知識を覚える(記憶)→顧客に説明できる(理解)→提案書を作成する(応用)→商談を分析し失注・受注要因を特定する(分析)→提案の妥当性を判断する(評価)→新しい解決策や営業戦略を立案する(創造)」という流れを設定することで、学習が成果創出につながる研修設計が可能になります。

社会人基礎力

目的:
基礎力強化・行動変容支援

概要:
社会人基礎力は、経済産業省が2006年に提唱した「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」を定義したフレームワークです2

「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」という3つの能力と、それらにひも付く12の能力要素で構成され、業種・職種を問わず通用する汎用スキルの体系として位置付けられています。

特長:
企業や社会の中で活躍し続けるための土台となる能力に焦点を当てている点が特長です。

人材マネジメント領域での共通言語として使用でき、組織内の人材育成方針を統一しやすくなります。また、従業員の自己理解を深め、自ら考え行動する「自律型人材」の育成にも役立ちます。

向いている状況:
社会人基礎力は、特に新入社員・若手層の育成といった成果創出の土台となる能力の習得・向上を促したい場合に参考になります。また、OJT担当者や管理職が指導する際の評価基準としても活用でき、組織全体で「どのような行動・能力が期待されているか」を明確にすることができます。

活用例:
新入社員研修において、「考え抜く力」を伸ばすためのケーススタディ、「チームで働く力」を育むグループワークなど、社会人に必要な基本能力とそれを習得するための内容を結び付けて設計します。

カッツモデル(カッツ理論)

目的:
管理職育成・階層別スキル開発

概要:
カッツモデルは、アメリカの経営学者ロバート・L・カッツ(Robert L. Katz)が提唱した、管理職の職務遂行に必要な3つのスキルを体系化したフレームワークです。

その3つのスキルとは、テクニカルスキル(業務遂行能力)、ヒューマンスキル(対人関係能力)、コンセプチュアルスキル(概念化能力)です。

現場に近い階層ではテクニカルスキルが重視されますが、役職が上がるにつれて、よりコンセプチュアルスキルの比重が大きくなるとされています。

特長:
このモデルの特長は、階層ごとに重要となるスキルが示されている点にあります。

これにより、階層別研修で、チームリーダー向けはテクニカルスキル、経営層向けはヒューマンスキルやコンセプチュアルスキルについての内容を充実させるといったように、階層に合わせて研修を設計できます。

向いている状況:
管理職・リーダー層の育成体系を整備したい企業や、階層別研修を設計・再構築したい組織に適しています。役職別にスキル要件を定義し、評価制度やキャリアパスとの整合性を持たせることで、一貫性のある人事施策を実現できます。

活用例:
スキル管理機能やアンケート・テスト機能を備えたLMSを用いて、カッツモデルに基づくスキル測定階層別に推奨eラーニングコンテンツの配信を行えば、役職に応じた学習機会を提供できます。

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カークパトリックモデル

目的:
研修効果測定・育成成果の可視化

概要:
カークパトリックモデルは、アメリカの経営学者ドナルド・L・カークパトリック(Donald L. Kirkpatrick)が提唱した、研修の効果を4段階で評価するフレームワークです。

レベル1:反応 … 受講者の満足度を測定

レベル2:学習 … 知識・スキルの習得度や理解度を評価

レベル3:行動 … 研修後の職場での行動変容を確認

レベル4:結果 … 組織の業績(売り上げ、品質、生産性など)への影響を分析

特長:
このフレームワークの特長は、人材育成の効果を「実際に業績が向上したのか」という観点で評価する点です。それにより人材育成施策の費用対効果を分析できるようになります。

向いている状況:
人材育成の効果を数値で示したい企業や、研修の改善を推進したい組織に適しています。また人的資本経営の実践において、人材育成施策の成果をデータで説明したい場合にも有効です。

活用例:
営業部員向けに実施した研修の効果測定を、以下のように行います。

レベル1(反応):研修満足度についてアンケートを実施・集計

レベル2(学習):テストやレポート提出で理解度を測定

レベル3(行動):上司からのフィードバックや行動評価を記録

レベル4(結果):研修前後の業績(売り上げ・生産性)の変化を分析

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人材育成にフレームワークや理論を活用するメリット

ここでは、人材育成にフレームワークや理論を取り入れることで得られる主な4つのメリットを解説します。

メリット1:人材育成方法の確立

多くの企業では、「どのように人を育てるか」という方法論が担当者や部署ごとに異なり、再現性のない施策になりがちです。フレームワークを活用すれば、成功パターンを共通のモデルとして体系化できるため、人材育成の仕組みが確立されます。

属人化から脱却し、常に人材育成施策の効果を最大化できる点が大きなメリットです。

メリット2:効率的な人材育成

フレームワークは、人材育成における「思考のテンプレート」として機能します。人材育成計画をゼロから考える手間を省き、施策の推進や効果測定に時間を割けるようになります。

例えば、人材育成施策におけるOJT・上司との面談・Off-JTの比率を決定する際に、70:20:10フレームワーク(1-6.)を基にすることで、効果の高い育成プログラムを短時間で設計できます。

さらに、経験学習モデル(1-4.)を組み合わせることで、従業員が研修後の振り返りや実践を通して学びを深め成長するための適切なサポートを効率的に実施できます。

このように、企画・設計・実行・評価といった一連の工程を効率化できる点は大きな魅力です。

メリット3:目標までのステップの明確化

フレームワークを用いることで、目標までの育成プロセスが可視化され、関係者間で共有できます。

例えば、行動変容ステージモデル(1-5.)で従業員の状態を段階に分けて可視化し、SMARTの法則(1-2.)で各段階の行動目標を設定して教育施策を実施。カークパトリックモデル(1-10.)で効果測定し、成果を定量的に評価します。

それにより、育成プロセス全体が「意識→行動→成果」の流れとして一目で把握でき、関係者間での共有が容易になります。

到達すべきゴールだけでなく、そこに至る中間目標が段階ごとに定義されるため、現場では「何を・どの順で・どの水準まで」実行すればよいかが行動レベルで認識しやすくなります。そのため、上司・OJT担当者など複数の指導者がいても一貫した指導が可能です。

メリット4:再現性の担保と標準化

フレームワークを導入する最大の利点は、誰が人材育成を担当しても一定水準の成果を再現できる点です。担当者の経験や感覚に左右されず、組織として人材育成方法を標準化できます。

さらに、LMSを組み合わせれば、全社の学習・研修、成績などのデータを一元管理し、人材育成のノウハウをシステムに落とし込むことができます。育成フローや研修企画ノウハウのマニュアル化、社内事例・成功体験の動画教材化などさまざまな活用が可能です。

人材育成における標準化は、企業の持続的な成長に欠かせません。フレームワークを用いた施策とLMSを組み合わせることで、より計画的かつ効果的な人材育成の実現につながります。

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フレームワーク・理論を活用した人材育成計画の構築ステップ

人材育成のフレームワーク・理論を最大限に生かすには、自社の課題や経営戦略と結び付けて運用することが重要です。ここでは、現場で実践できる人材育成計画の構築プロセスを6つのステップで解説します。

ステップ1:経営目標と現場課題の徹底的な擦り合わせ

人材育成の出発点は、経営方針や事業戦略と人材育成施策を結び付けることです。経営層が掲げる目標を踏まえ、それを達成するためにどのような人材が組織に必要なのかを明確に定義します。

次に、現場の課題を詳細に把握します。例えば、管理職層では「部下育成の手法が属人化している」、中堅層では「多忙で専門的知識・スキルの習得が追いつかない」、若手層では「主体性や基礎力の不足」といったように、階層ごとに課題を整理します。

従業員へのヒアリングやアンケートを実施し、どの層で、どのスキル・行動が不足しているのかを把握することが重要です。

ステップ2:理想の人材像と育成目的の明確化

課題の洗い出しが終わったら、次に「誰に、いつまでに、どのような行動をとってもらいたいか」、理想の状態(ゴール)を明確にします。ゴールが決まれば、現状把握のために個々のスキル測定や上司へのヒアリングなどを行い、育成のスタート地点を特定します。

こうして理想(ゴール)とスタート地点のギャップを可視化することで、今後の施策設計の指針が明確になります。

この段階を丁寧に設計することで、従業員の具体的な行動変容という成果を伴う人材育成が実現します。

ステップ3:最適なフレームワークの選定と組み合わせの検討

自社の人材の現状や育成の目的に応じて、最適なフレームワークを選定します。

このとき、1つのフレームワークで完結させるのではなく、複数を掛け合わせ、多角的なアプローチを行うと効果的です。例えば以下のように、工程ごとに最適なフレームワークを選択していきます。

目標設定:企業の経営目標と連動した個人の目標をSMARTの法則(1-2.)で設定

育成の実践:70:20:10フレームワーク(1-6.)を基に育成プログラムを策定・実施

効果測定:カークパトリックモデル(1-10.)で効果を測定

ステップ4:行動変容を促す具体的な人材育成施策と計画の策定

フレームワークを選定したら、具体的な育成施策を設計します。

フレームワークとOJT・Off-JT・自己啓発支援といった施策を、目的別に組み合わせながら人材育成計画を立てます。このときフレームワークを「思考のテンプレート」として使えば、体系立った計画を効率的に立案できます。

例えば、カッツモデル(1-9.)に基づいた階層別研修を、eラーニングと集合研修を組み合わせたブレンディッドラーニングで行い、LMSを用いて管理・運用する方法があります。これにより、対象者に合わせた学習機会の提供と、進捗・成果の一元管理が可能になります。

また、育成計画表を作成する際は研修計画のテンプレートを利用すると、見やすく管理も簡単です。テンプレートは、ExcelやGoogleスプレッドシートなどの表計算ソフトで作成できます。

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ステップ5:施策の実行と「育成担当者」の育成・サポート体制構築

人材育成計画の実行段階では、現場の上司やOJTトレーナーなど「人を育てる人」を育成するという視点が欠かせません。育成担当者が人材育成に関するスキルを十分に備えていなければ、現場で研修内容を定着させることは難しいからです。

このため、育成担当者を対象にしたコーチング研修フィードバックスキルトレーニングの実施が有効です。

また、育成担当者のスキルアップと並行して、受講者同士が学びを共有する「ピアラーニング」を取り入れ、教え合える環境を整えることもおすすめです。

例えば、OJTの内容を定着させるために経験学習モデル(1-4.)を活用する場合、受講者が実践報告や振り返りの内容を投稿できる社内SNSやLMSの掲示板機能などを活用し、他者の意見を参考に学びを深められる環境をつくります。それによって学習の定着率向上が期待できます。

さらに、育成担当者がこれらのやりとりを確認しながら必要に応じて助言やサポートを行えば、個別の状況に合ったフォローアップが可能です。こうした取り組みは組織的な学びの促進にもつながります。

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ステップ6:効果測定・振り返りによるPDCAサイクルと継続的改善

最後のステップは、人材育成施策の効果を定期的に測定して改善につなげるプロセスです。

HR総研が発表した「人材育成『中堅社員研修・管理職研修』に関するアンケート調査」3によると、中堅社員研修の運営課題として最も多く挙げられた回答は「実施効果の測定ができていない」で、回答全体の約4割を占めていました。

せっかく研修を実施しても、その効果の測定にまで手が回らない企業も多く見られますが、効果測定は施策を改善していくために欠かせないステップです。フレームワークを活用して効率的に取り組んでいきましょう。

ここでは、カークパトリックモデル(1-10.)を用いて、多角的に効果を評価します。併せて以下のような機能を持つLMSなどのシステムを活用すれば、評価の作業をより効率化できます。

  • レベル1(反応)アンケート機能を活用し、研修後に受講者の満足度を自動集計
  • レベル2(学習):eラーニングのテストレポート機能で理解度を測定
  • レベル3(行動):個々の学習履歴や取得した資格・スキルなどを一元管理する機能で、上司による行動評価を記録・蓄積
  • レベル4(結果):他の人事システムと連携し、システム上で学習データ・人事データと業績との相関を分析。よりデータドリブンな人材育成へ

このようにデータを基にPDCAサイクルを回すことで、単発的な研修による教育から脱却し、継続的に進化する教育体系を構築できます。人材育成を中長期的な視点で捉え、定期的に計画の内容をブラッシュアップしていきましょう。

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フレームワーク・理論の活用における成功のポイント

ここでは、人材育成のフレームワークを効果的に運用し、継続的な成果につなげるための5つの成功ポイントを紹介します。

ポイント1:フレームワークは「手段」であり「目的」ではないことを意識する

最も重要なポイントは、フレームワークの利用自体が目的化しないようにすることです。

人材育成の目的は「従業員の成長を通じて組織の成長・発展を目指す」ことであり、フレームワークはそのための道具に過ぎません。フレームワークを取り入れた時点で満足してしまうと、その後の効果測定や改善のステップがおろそかになりがちで、やがてはせっかくの施策も形骸化してしまいます。

フレームワークは目的を達成するための手段という位置付けであることを意識しましょう。

ポイント2:経営目標と人材育成を連動させる

フレームワークを効果的に機能させるには、企業の経営目標や事業戦略と密接に結び付ける必要があります。

例えば、HPI(1-1.)を活用して「業績に直結するスキルや行動」を明確にし、SMARTの法則(1-2.)で目標を設定すれば、人材育成施策が経営戦略の実現に直結する設計になります。

経営戦略と育成計画に関連性を持たせることが、業績向上につなげる重要なポイントです。

ポイント3:柔軟な対応とカスタマイズを行う

フレームワークはどの組織でも万能に機能するわけではなく、企業文化や組織構造、従業員構成などによって最適な利用の仕方が異なります。

フレームワークに過度に依存したり、教科書通りの運用にこだわり過ぎたりすると、現場との隔たりが生じるケースもあります。例えば、70:20:10フレームワーク(1-6.)を導入する際に「必ずこの比率でなければならない」と考えると、現場の実態に合わなくなることもあるでしょう。

重要な点は、フレームワークを自社の実情に合わせて柔軟にアレンジすることです。また、複数のフレームワークを掛け合わせて活用すると、より多面的で実効性の高い人材育成が可能になります。

ポイント4:従業員の成長は中長期的に見る

人材育成の成果は短期間で表れるものではありません。特に行動やマインドの変化は、数カ月単位では効果が測定しにくいケースもあります。そのため、短期的な結果だけで判断するのではなく、中長期的に成長プロセスを追う視点が重要です。

例えば行動変容ステージモデル(1-5.)を活用し、従業員の行動変容を段階的に捉えることが有効です。行動を変えようと思っていない「無関心期」から新しい行動が定着する「維持期」まで、進んでいく過程を定期的にモニタリングし、それぞれのステージに応じて継続的に支援をします。

従業員の成長を長い目で見ることで、結果的に望む成果が得やすくなります。

ポイント5:PDCAサイクルの徹底

フレームワークを効果的に活用するためには、計画・実行・評価・改善というPDCAサイクルを回し続けることが重要です。

例えば、研修後にカークパトリックモデル(1-10.)を用いて効果を測定し、その結果をHPI(1-1.)の分析に反映させて改善策を検討するという工程を繰り返すことで、組織の教育体系を進化させていきます。

さらに、LMSを活用すれば学習履歴・成果・行動データなどの蓄積した情報を基に、自社の状況に応じた改善を行いやすくなります。

人材育成にフレームワークを活用する価値は、人材育成施策が改善され続ける仕組みを理論的に作り出せることにあります。データと理論を組み合わせて分析・評価し、改善を続けることで、より効果的かつ再現性の高い人材育成施策が出来上がっていくのです。

人材育成計画の方法から効果的な教育手法までこれ1冊で解説! ⇒ 「人材育成大百科」を無料ダウンロードする

まとめ

人材育成におけるフレームワークや理論は、現場の教育を体系的に整理し、再現性のある仕組みへと昇華させるための強力なツールです。

この記事では、人材育成施策を設計・運用・評価する上で押さえておくべきフレームワーク・理論や活用方法を実践的な視点から整理しました。

主要な人材育成のフレームワーク・理論は以下の通りです。

  • HPI(Human Performance Improvement)
  • SMARTの法則
  • 氷山モデル
  • 経験学習モデル(経験学習サイクル)
  • 行動変容ステージモデル
  • 70:20:10フレームワーク(ロミンガーの法則)
  • 思考の6段階モデル
  • 社会人基礎力
  • カッツモデル(カッツ理論)
  • カークパトリックモデル

また人材育成にフレームワークや理論を活用するメリットは以下の通りです。

  • 人材育成方法の確立
  • 効率的な人材育成
  • 目標までのステップの明確化
  • 再現性の担保と標準化

フレームワーク・理論を活用した人材育成計画の構築ステップは、以下の通りです。

ステップ1:経営目標と現場課題の徹底的な擦り合わせ

ステップ2:理想の人材像と育成目的の明確化

ステップ3:最適なフレームワークの選定と組み合わせの検討

ステップ4:行動変容を促す具体的な人材育成施策と計画の策定

ステップ5:施策の実行と「育成担当者」の育成・サポート体制構築

ステップ6:効果測定・振り返りによるPDCAサイクルと継続的改善

フレームワーク・理論の活用における成功のポイントは以下の通りです。

  • フレームワークは「手段」であり「目的」ではないことを意識する
  • 経営目標と人材育成を連動させる
  • 柔軟な対応とカスタマイズを行う
  • 従業員の成長は中長期的に見る
  • PDCAサイクルの徹底

フレームワーク・理論を適切に組み合わせて活用することで、場当たり的になりがちな人材育成は、経営目標と連動した戦略的な仕組みへと進化します。

人材育成は短期的な成果を求める活動ではなく、組織の未来を形づくる長期的な投資です。自社の人材育成体系を見直し、持続的に成果を生み出す施策の立案のために、フレームワーク・理論の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

  1. 厚生労働省「令和6年度 能力開発基本調査 調査結果の概要」,2025年6月27日公表,P17-20(閲覧日:2025年10月7日) ↩︎
  2. 経済産業省「社会人基礎力」(閲覧日:2025年10月27日) ↩︎
  3. ProFuture株式会社「HR総研:人材育成「中堅社員研修・管理職研修」に関するアンケート調査 結果報告」,『HR総研』(閲覧日:2025年10月21日) ↩︎

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