eラーニングを活用した内定者研修とは?メリットや注意点を紹介

適切な内定者フォローで内定者の意欲を高めたい。eラーニングでも効果的な内定者研修を行えるだろうか?

売り手市場の傾向が続く中、優秀な内定者をつなぎ留めて入社に備えてもらうために、内定者フォローは必須と言ってもよいでしょう。新入社員の早期戦力化短期間での離職の防止という面でも、内定者研修は期待されます。

しかし、過剰な接触は内定者の学業をはじめとした生活に負担をかけてしまう可能性があり、やり方によっては他社への就活を妨げる「オワハラ」(就活終われハラスメント)と見なされる恐れも。

内定者研修は、あくまで内定者の主体性を尊重し、入社に向けてエンゲージメントを高めることを主眼にすべきでしょう。

集合研修や現場見学など、内定者研修はさまざまな方法で行うことができますが、規模や形態によっては多くのコストがかかります。企業と内定者双方の負担を抑えながら質の高い内定者研修を行うなら、eラーニングの活用も方法の一つです。

そこで今回は、内定者研修にeラーニングを活用するメリットや企業事例を紹介し、内定者研修がオワハラや違法にならないための注意点についても解説します。

費用対効果の高い内定者研修を実施したい方は、ぜひ参考にしてみてください。

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LEARNING SHIP

企業が発展・成長を続けるためには、自社に必要な能力・スキルを備えた人材の育成が必要不可欠です。「社内研修」は社内リソース…

AIで要約

  • eラーニングは、内定者が学業等と両立しつつ、自身のペースで効率的に学べる方法です。
  • eラーニングで入社への不安を和らげ、社会人としての心構えや必要なスキルを身につける手助けができます。
  • ただし、内定者研修は任意参加が原則です。強制は違法・オワハラになるので注意が必要です。

内定者研修とは

内定者研修は、企業が採用内定を出した人材に対して、入社までの期間に実施する研修です。まず、内定者研修の狙いや内容を改めて確認してみましょう。

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内定者研修の狙い

内定者研修の狙いは、大きく分けて以下の2点です。

  • 内定辞退や早期離職を防ぐ
  • 新入社員の早期戦力化

内定辞退や早期離職を防ぐ

新卒採用における売り手市場は継続すると見られ、複数の企業から内定を獲得する学生も少なくありません。しかし企業としては、採用活動にかけたコスト人員計画の面から、内定者の辞退は可能な限り避けたいものです。

優秀な人材には早々に内定を出すと同時に、自社への関心をつなぎ留め、確実に入社してもらうための工夫も求められるのではないでしょうか。

このためには、定期的に接点を持ち、自社で働くことへのモチベーションを高めるフォローが必須でしょう。内定者フォローにはさまざまなやり方が考えられますが、入社後をある程度見据えた準備として取り組んでもらう内定者研修は、内定者が抱く不安や迷いを具体的に解消する機会になります。

また、新入社員が短期間で「会社と合わない」と感じて離職してしまうことは少なくありません。厚生労働省の発表によれば、2019年3月卒業の新卒就職者の就職後3年以内の離職率は、新規高卒就職者35.9%、新規大卒就職者31.5%でした1。およそ3割が3年以内に離職してしまう状況が継続しています。

入社前に抱いていたイメージや期待と、入社後の現実とのギャップは、早期離職につながる大きな要因の一つです。内定者研修は、入社後に求められるスキルや自身の働く姿の具体的なイメージを提供し、こうしたギャップを埋める機会にもなるでしょう。

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新入社員の早期戦力化

内定者研修のもう一つの狙いは、内定者が入社後に早い段階から活躍しやすくするための準備です。

例えば、社会人としての心構えや基礎能力、OAスキルなどは、入社に備えて身に付けておきたいと内定者自身も考えるものです。そうした知識・スキルの習得を内定者研修でサポートすることで、入社後スムーズに力を発揮する助けになるでしょう。

また、業務に直接関わる知識やスキルだけではなく、企業風土や職場の雰囲気の理解、社内の人間関係の形成なども、内定者がよりよい状態で新入社員のスタートを切るために重要です。こうした環境づくりとして、内定者研修で職場見学や社員とのコミュニケーションなどの機会を提供するのも良い方法です。

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内定者研修の主な内容

内定者研修は、上記に述べたような狙いに基づき、主に以下の内容で行われます。

  • 社員や他の内定者とのコミュニケーションを深める
  • 自社に関する知識を習得する
  • 社会人としてのマナーやスキル、心構えを身に付ける

それぞれの狙いに基づき、以下のような施策が検討されます。

目的施策例
社員や他の内定者との
コミュニケーションを深める
・人事担当者やメンターとの連絡・面談
・社内行事・イベントへの招待
・内定者同士や社員との交流会・懇親会
・集合研修やグループワーク
・内定者SNSなどのコミュニティ
自社に関する知識を習得する・企業理念や経営陣からのメッセージ
・社内報など資料の配布
・職場や自社工場などの現場見学
・内定者インターン
社会人としてのマナーやスキル、
心構えを身に付ける
・課題図書などのレポート
・セミナー・講演会
・ビジネスマナーやOffice系ソフトの研修
・資格取得や語学学習の支援

これらの内容を実践する形態や手段はさまざまです。対面の集合研修やイベントだけでなく、オンラインでの面談や交流、配布教材やeラーニングでの学習機会の提供など、企業によって多岐に渡ります。

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内定者研修にeラーニングを活用している企業の割合

ライトワークスが2023年に実施した「内定者研修の実施状況と内定者のホンネ調査」によると、内定者研修を実施したと回答した企業の4割がeラーニングによる研修を実施しています。

内定者研修の実施形式(複数回答)

内定者研修に関する調査結果

内定者研修に関する調査結果 ー 企業への調査(2023年8~9月、株式会社ライトワークス)

「集合研修」(60.5%)「オンライン研修」(59.7%)と比較するとやや低い割合ではあるものの、eラーニングによる内定者研修が普及していることがわかります。

▽「内定者研修にeラーニングを活用する方法」までジャンプして読む

内定者研修にeラーニングを活用するメリット

内定者研修はさまざまな方法で行われますが、中でも受講者の主体的な学習に向いている方法の一つがeラーニングです。

eラーニングは、紙媒体の資料をデータ化したものから、ストーリー仕立てのアニメーション、講義の録画映像など、多様な教材コンテンツがあり、社内教育に取り入れている企業も多いでしょう。eラーニングを内定者研修に活用することで、以下のようなメリットが期待できます。

  • 受講者が自分のペースで学習しやすい
  • コストを抑えられる
  • 受講状況の管理や分析・評価が容易

関連eラーニング教材 ▶ 内定者研修

受講者が自分のペースで学習しやすい

まず挙げられるeラーニングのメリットは、受講者が自分のペースで学習しやすいことです。インターネットを介して各自のデバイスで受講できるため、内定者は自身の都合のよいタイミングや場所で実施でき、学業やプライベートとの両立がしやすいでしょう。

決まった日時に内定者を拘束する必要がないため、企業側がオワハラを避けるという面でも利点があります。

また、集合研修と比較して、学習の進め方の自由度が高いことも特徴です。教材にもよりますが、必要な内容を選択して学習したり、苦手な内容に繰り返し取り組んだりといった使い方で、習熟度を深められます。

コストを抑えられる

集合研修は大規模であるほど、会場費や人件費といった準備や実施にかかるコストがかさみがちです。eラーニングの場合、こうしたコストを抑えられるだけでなく、人数の制約を受けず一度に研修を実施できることで、講師によって研修の質がばらつくことも防げます

受講状況の管理や分析・評価が容易

受講状況がデータ管理できることもeラーニングの強みです。LMS(学習管理システム)を導入すれば、単に教材を配信するだけでなく、研修の進度や成績などの個々の学習管理も効率的に行えます。後々、分析や評価に活用することも容易です。

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内定者研修にeラーニングを活用する方法

内定者研修にeラーニングを活用する方法として、以下のような例があります。順番にご紹介します。

  • eラーニングで入社前の基礎教育を行う
  • 対面研修と併用してブレンディッド・ラーニングを行う
  • 受け放題サービスを内定者の自律学習に活用する
  • 内定者向けSNSとして使う

eラーニングで入社前の基礎教育を行う

入社前の基礎教育として、内定者に下記のような内容をeラーニングで受講してもらいます。

  • ビジネスマナー
  • Excel、Wordなどのパソコンスキル
  • 業界の基礎知識
  • コンプライアンス教育
  • 情報セキュリティ教育

eラーニングの教材は、下記のようなアニメーション形式のもの、マンガ・クイズ形式など楽しく学べて学習効果の高いコンテンツも多く、内定者は自分のペースで効果的に学習を進めることができます。

オリジナルコンテンツの配信で研修効果アップ

eラーニングシステムによっては、自社で内製した独自コンテンツを配信することもできます。経営者のメッセージや自社用にカスタマイズした教材を配信すれば、内定者はより企業や仕事に対しての解像度を高めることができます。

標準的なeラーニング教材に加えて、企業パーパスや経営者メッセージ、業界の解説といった自社特有のコンテンツを組み合わせて実施することで、より自社に最適な研修を提供できるでしょう。

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対面研修と併用してブレンディッド・ラーニングを行う

対面研修とeラーニングは必ずしも二者択一と考える必要はありません。対面研修とeラーニングを併用するブレンディッド・ラーニングという考え方も広まってきました。

ブレンディッド・ラーニングとは、例えば、基礎的な知識はeラーニングで各自が学んだ上で、実践形式の演習を対面研修で行い、修了テストやアンケートを再びeラーニングで実施するといったやり方です。

集合研修の日数を必要最低限に絞ることでコストが抑えられ、内定者は自分のペースで知識習得に取り組めます。一方で、モチベーション維持やコミュニケーションの機会といった対面研修の良さも損なわれないため、さまざまな面でメリットがあるといえるでしょう。

受け放題サービスを内定者の自律学習に活用する

eラーニングサービスの中には、定額受け放題のプランが用意されているものもあります。こうしたサービスを利用して、内定者が自律学習できる環境を用意するのも一つの方法です。

内定者の中には「アルバイトや卒論で忙しいが、パソコンスキルは苦手なので少しでも克服しておきたい」という学生もいれば、「時間的余裕があるので入社前に少しでも役立つスキルを身に着けたい」と考える学生もいるでしょう。自律学習という方法であれば、ニーズに合わせて効果的な入社前教育が可能になります。

強制するのではなく、「受講者の興味に合わせて自由に学んでもらう」という形は自律型人材の育成にも適しており、個人のスキルや希望に合わせた内定者研修の実施が可能になります。

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内定者向けSNS

eラーニングシステムの中には、SNS機能を持つものがあります。こうした機能を利用すれば、内定者向けに社内情報を発信したり、内定者同士のコミュニケーションを活性化することができます。

先輩社員との懇親会や、内定者向けのイベントに内定者向けSNSを活用してもよいでしょう。

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eラーニングで内定者研修のエンゲージメントを高めるには?

eラーニングを活用して内定者のエンゲージメントを高めるには、内定者の不安や希望に寄り添ったフォローが求められます。これらに応える内容を内定者研修に取り入れることで、内定者のエンゲージメント向上を狙えるでしょう。

内定者が抱える3つの思いを理解する

株式会社マイナビが行った「2023年卒内定者意識調査」によると、内定者は下記のような3つの思いを抱えていることが分かります。

社会人としての適性、企業との相性への不安

「入社予定先企業を決めた後、不安になったことはあるか」という質問に対し、全体の60.1%が「不安になったことがある」と回答しました。不安になった理由として、以下のような回答が上位にきています。

  • 社会人としてやっていけるかどうか(22.2%)
  • この会社できちんと務まるかどうか(18.2%)
  • 自分がこの仕事に向いているかどうか(17.8%)

社会人になること、また内定先企業で働くことに対して、実際に自分が通用するかという不安が見てとれます。また、「なんとなく漠然と(14.7%)」「ネットで良くない評判・口コミを見て(12.0%)」などの回答も見られました。2

こうした不安を解消するためには、eラーニングで社会人としての基礎固めを行ったり、メッセージ動画などで企業の実情への理解を深めることが効果的と考えられるでしょう。

入社に備えた心構えや準備への意欲

同調査では、「内々定フォローを通じて、自分自身がどのような心境や状態になりたいと思うか」を自由回答で集計しています。以下のように、入社に備えて社会人としての自覚を持ち、具体的な準備をしたいという回答も多く見られました。

  • 学生気分を少しでも早くなくし、社会人としての振る舞いを習得したい
  • 入社後の自分が仕事している姿をイメージしやすくしたい
  • 仕事に必要なスキルがどのようなものであるかを知り、準備したい3

社会人として働き始めるための準備をしたいという、内定者の自発的な学習意欲に応える研修が望まれます。eラーニングでは基礎的なプログラムの提供だけでなく、内定者が主体的に学習を進められるような環境の提供も検討するとよいでしょう。

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Web活用を希望する声も

コロナ禍の収束以降、採用活動や内定者フォローを対面での実施に戻している企業が多くなっています。マイナビの同調査でも、内々定者フォローを「対面で実施してほしい」という回答は前年より増加し、特に「社内見学・工場見学・施設見学」については、71.3%が対面での実施を希望しています。

一方で、状況や希望に応じてWeb活用を望む声は、「先輩との面談」「人事との面談」では60%超、「研修(講義やワーク)」でも40%を超えています。4

企業にある程度の時間を拘束される対面研修は、内定者にとって負担になりやすい側面があります。従来対面で行っていた講義やワークの中には、リモート形式で実施するオンライン研修や、eラーニングで各自学習する形に置き換えられる内容があるかもしれません。

職場見学のように体感が肝心な内容は対面研修、講義だけの内容はeラーニング、個別の日程調整を要する面談はオンラインでといったように、使い分けによって効率的な研修を提供するのも良い方法です。

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eラーニングで内定者研修を行う際のポイント

内定者の思いや状況を踏まえると、eラーニングで内定者エンゲージメントを高める研修を実施するには、以下のようなポイントが重要になってくるでしょう。

  • 事前に計画を立てる
  • 研修のゴールを明確にする
  • 自社で働く姿をイメージできる研修にする
  • 現場で求められるスキルに即した内容にする
  • 内定者のスキルや知識を把握する

事前に計画を立てる

どのような形態で行うにしろ、内定者研修は事前にしっかりと計画を立てて実施しましょう。

内定者はあくまでまだ学生という立場であり、入社前は卒業論文など学業が忙しい時期でもあります。内定者の負担にならない時期や回数をよく検討し、スケジューリングする必要があります。

研修のゴールを明確にする

研修でどういった気づきや経験を得てほしいか、何のスキルを習得してほしいかといったゴールを明確にしましょう。

研修の目的が曖昧なまま実施しても、モチベーションを持ちづらく、消化不良になる恐れがあります。内定者が目的意識を持って研修に参加できるような設計・周知が必要です。

自社で働く姿をイメージできる研修にする

前述の内定者意識調査の結果でも触れたように、内定者の中には、内定先企業との相性や自身の適性について、漠然とした不安が見られます。

研修を通じて、内定者が自身の働く姿をイメージできるように支援し、不安の解消につなげましょう。

現場で求められるスキルに即した内容にする

現場業務に即した内容の研修は、早期戦力化のためだけでなく、内定者のエンゲージメント向上の面からも重要です。

現場でどのようなスキルが求められるか具体的に知ることで、入社に備えた心構えができ、自発的に学ぶモチベーションにつながるためです。

内定者のスキルや知識を把握する

内定者のスキルや知識を把握することで、より効果的な研修を行えます。新入社員に期待するスキルの一覧に沿って、習得の度合いや、得意・苦手な分野は何かといった現状を把握しましょう。

苦手意識のある分野を見つけられれば、適切なフォローによって本人の不安を解消できます。研修の進度や成績を一元管理するLMS(学習管理システム)や、タレントマネジメントシステムといったツールが助けになるでしょう。

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eラーニングによる内定者研修の注意点

ここまで見てきたように、内定者研修にeラーニングを活用することでさまざまなメリットが得られますが、注意すべき点もあります。

参加の強制は違法・オワハラになることも

大前提として、内定者研修は希望者が任意で参加するものです。雇用契約を結んでいない内定者に対し、研修への参加を義務づけることは避けましょう。研修に不参加であれば不利益を被ることを示唆するなど、実質的な強制も同様です。オワハラと見なされるだけでなく、違法と判断されかねません。

オワハラ防止や法に則った採用活用については、政府からも経済団体などに要請がありました。採用選考開始時期の遵守や学業への配慮に加えて、「学生の職業選択の自由を妨げる行為や、学生の意思に反して就職活動の終了を強要するようなハラスメント的な行為は厳に慎むこと」と明示されています。5

eラーニングの場合は、日時を指定して出席を求めるものではありませんが、研修の受講完了を義務づけるようなやり方は避けましょう

内容や拘束時間によっては賃金の支払い義務が発生する

受講者本人の同意を得て行う研修であっても、入社前に就労にあたる作業を課してはいけません。労務提供と見なされれば賃金の支払い義務が発生します。eラーニングでも、就労に該当する作業や、長時間の拘束を要する研修にならないように注意しましょう。

対面コミュニケーションの機会を補う必要がある

対面でのコミュニケーションは、内定者同士の連帯感の醸成や社内での人間関係の基礎を作る上で重要な機会になります。すべてをeラーニングだけで完結させるのではなく、社員や他の内定者と直接対面して交流する機会を別途設けた方がよい場合もあるでしょう。

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内定者研修にeラーニングを取り入れた企業事例

内定者研修にeラーニングを活用した事例として、ネスレ日本株式会社の取り組みを見てみましょう。

ネスレ日本は、内定者に対し入社後の主体的なキャリア形成を支援する「ネスレアソシエイト制度」を導入しています。「アソシエイト」とは、入社前であっても自分達の仲間・同僚であるという意味を込めた、同社での内定者の呼称です。

同社は採用選考時の評価から、個々の強み・育成点を整理して本人にフィードバックしており、内定者はそれをもとに自己理解・自己認識を深めるためのサポートを受けられます。

具体的な支援ツールとして、社員が利用するeラーニングをはじめとした自己啓発メニューを内定者に提供することも特徴です。

内定者は学業など自身の生活を優先しながら、必要に応じて支援ツールを利用し、入社後のスムーズなキャリア形成に備えることができます。内定者本人の主体性を尊重しながら、一人一人に合わせた的確な支援を行う姿勢がうかがえます。

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まとめ

売り手市場が続く中、優秀な内定者をつなぎ留めて確実に入社してもらうためには、内定者フォローは必須と言えるでしょう。内定者研修の狙いは主に以下の2点です。

・内定辞退や早期離職を防ぐ
・新入社員の早期戦力化

このためには、内定者と適度に接点を持ち、不安や迷いを解消して入社に向けてモチベーションを高める施策が求められます。内定者研修では、次のような内容をさまざまな形態や方法で実施します。

・社員や他の内定者とのコミュニケーションを深める
自社に関する知識を習得する
社会人としてのマナーやスキル、心構えを身に付ける

内定者の意欲を生かし、主体的に学ぶことを支援するには、eラーニングも有効です。eラーニングを内定者研修に活用することで、内定者・企業双方に以下のようなメリットが考えられます。

・受講者が自分のペースで学習しやすい
コストを抑えられる
独自コンテンツを加え、自社に最適な研修を提供できる

eラーニングを活用した内定者研修としては、以下のような例があります。

  • eラーニングで入社前の基礎教育を行う
  • 対面研修と併用してブレンディッド・ラーニングを行う
  • 受け放題サービスを内定者の自律学習に活用する
  • 内定者向けSNSとして使う

eラーニングでの内定者研修は、内定者の目線に立ってエンゲージメントを高めるように行うことが求められます。最新の内定者意識調査を見ると、以下のような不安や希望がうかがえました。

・社会人としての適性、企業との相性への不安
・入社に備えた心構えや準備への意欲
・Web活用を希望する声

これらに応え、内定者のエンゲージメントを高める研修を実施するには、次のようなポイントが考えられます。

事前に計画を立てる
研修のゴールを明確にする
自社で働く姿をイメージできる研修にする
現場で求められるスキルに即した内容にする
・内定者のスキルや知識を把握する

注意点として、内定者研修はあくまで希望者が任意で参加するものであり、強制はオワハラや違法になりかねません。eラーニングの場合も、受講を義務づけたり、就労にあたる内容を課したりしないよう注意が必要です。また、対面コミュニケーションの機会を別途補うことも考えましょう。

最後に、内定者研修にeラーニングを取り入れている事例として、ネスレ日本の「ネスレアソシエイト制度」を紹介しました。

内定者研修にeラーニングを活用することで、内定者本人の主体的な学びを支援し、研修の費用対効果を高めることができます。決まった日時に拘束しなくても研修が実施できるため、オワハラを避ける観点でも有効です。内定者エンゲージメントを向上して、新入社員によい状態で入社してもらうために、内定者研修について改めて考えてみてはいかがでしょうか。

  1. 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(平成31年3月卒業者)を公表します」,2022年10月28日公表(閲覧日:2023年6月12日) ↩︎
  2. マイナビキャリアリサーチLab「2023年卒内定者意識調査」,2022年7月26日公表,p33(閲覧日:2023年6月12日) ↩︎
  3. 同上,p82 ↩︎
  4. 同上,p80 ↩︎
  5. 内閣官房「2023(令和5)年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請について」,2022年3月28日公表,p3(閲覧日:2023年6月23日) ↩︎

参考)
ネスレ日本「ネスレパスコース」,https://www.nestle.co.jp/jobs/students-graduates/nestle-pass (閲覧日:2023年6月12日)

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