経産省、デジタル人材育成の新指針を発表ースキルベースで企業の競争力強化へ

経済産業省は2025年5月、これからの社会「Society 5.0」を見据えたデジタル人材育成の方向性を示す報告書「『スキルベースの人材育成』を目指して」を公表しました 。

本報告書は、多くの企業が直面するデジタルトランスフォーメーション(DX)の課題に対し、個人の「スキル」を基軸とした人材育成への転換が不可欠であると提言しており、企業の人材開発担当者にとって今後の施策を考える上で重要な指針となりそうです 。

AIで要約

  • 経済産業省は、個人のスキルを軸に育成・評価する「スキルベース」への転換を提言しました。日本の人材投資は低く、4割以上の企業でスキルギャップが顕在化しているのが現状です 。
  • 旭化成やイオンなどの先進企業は、国の「デジタルスキル標準」を活用し成果を上げています。自社の人材像を定義・可視化することで、計画的な人材開発へとつなげています 。
  • 今後はIPAが、個人のスキル情報を蓄積・証明する「デジタル人材育成・DX推進プラットフォーム」の構築を検討しています。個人のキャリア形成を支援し、企業の採用や人材戦略にも活用が期待されます 。

深刻化するスキルギャップと日本の課題

報告書は、日本企業が抱える人材育成の構造的な課題を浮き彫りにしています。4割以上の企業が、技術革新によって必要となるスキルと従業員のスキルとの間にギャップが「既に顕在化」していると認識しています 。また、ITエンジニアの約半数が自身のスキルの陳腐化に不安を感じている状況です 。

こうした中、日本の人材投資(OJT以外)は対GDP比で米国(2.08%)やフランス(1.78%)に遠く及ばない0.10%と、先進国の中で際立って低い水準にあります 。個人に目を向けても、社外学習や自己啓発を行っていない人の割合は46%に上り、「企業は人に投資せず、個人も学ばない」状況が指摘されています 。

さらに、従業員のエンゲージメント(仕事への熱意や貢献意欲)が米国(33%)などと比較して著しく低い(6%)ことや 、人事評価の不透明性も課題として挙げられています 。これらの課題は、個人の学習意欲を妨げ、スキルギャップをさらに拡大させる悪循環を生んでいると考えられます 。

人材開発のヒントとなる企業の取り組み事例

本報告書では、「スキルベースの人材育成」を実践し、成果を上げている企業の事例が紹介されています。そのうちの2例は以下です。

  • 旭化成株式会社

全社で「DXオープンバッジ」を導入しました 。DSS(デジタルスキル標準)を活用し「ロール定義書」を作成することで、従業員のキャリアパスを明確化し、適材適所のアサインを実現しています 。

  • イオン株式会社

DSSを基に人材を「6職種×3レベル」に分類・可視化しました 。公募制の育成プログラムを開講し、アセスメントで潜在人材を発掘して教育機会を提供しています 。

官民一体で育成エコシステム構築へ

報告書は、こうした企業単位の取り組みを社会全体で加速させるため、官民一体となったエコシステムの形成を提唱しています 。その中核として、経済産業省所管の独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が、個人のスキル情報を蓄積・可視化するための「デジタル人材育成・DX推進プラットフォーム」の構築を検討していることが示されました 。

この基盤は、保有スキルをデジタル証明する機能や、学習履歴に基づき次の学習機会を推奨する機能などを通じて、個人の主体的な学びとキャリア形成を支援します 。また、市場のスキルトレンドを可視化することで、企業はより効果的な人材戦略を立てられるようになります 。

報告書には、本記事で紹介した内容のほか、情報処理技術者試験の改革案や、各分野で目指すべき人材像なども詳細に記されており、人材開発担当者にとって一読の価値があるでしょう。

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資料の詳細は、以下をご覧ください。
経済産業省,「『Society5.0時代のデジタル人材育成に関する検討会』報告書:スキルベースの人材育成を目指して」を公表します
https://www.meti.go.jp/press/2025/05/20250523005/20250523005.html

 

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