厚生労働省が2025年6月、「令和6年度能力開発基本調査」の結果を公表しました。この調査は平成13年度から毎年実施されており、企業調査、事業所調査、個人調査の3つに分けて、人材育成・能力開発およびキャリア形成支援の実態、問題、ニーズを調査した結果をまとめています。
調査によると、企業の54.9%がOFF-JT(職場外研修)または自己啓発支援に費用を支出しています。OFF-JTを実施した事業所は73.8%にのぼりますが、そのうち「正社員のみ実施した」が42.6%を占めました。また、計画的なOJT(日常業務を通じた指導)を実施した事業所も64.7%ですが、こちらも「正社員のみ」が37.7%と多く、雇用形態による育成機会の違いがうかがえます。
人材育成に関して事業所が抱える問題として、「指導する人材が不足している」、「人材を育成しても辞めてしまう」「人材育成を行う時間がない」といった点が上位に挙げられています。
また、キャリアコンサルティングは半数(50.0%)の事業所で導入されている一方で、キャリアコンサルティングを行う仕組みがない事業所は49.8%と約半数を占めています 。さらに、導入していても「効果が見えにくい」「労働者からのキャリアに関する相談件数が少ない」といった問題も浮き彫りになりました。
労働者側のニーズに関しては、向上させたいスキルとして、正社員は「マネジメント能力・リーダーシップ」(40.3%)を、正社員以外は「ITを使いこなす一般的な知識・能力」(34.4%)を最も多く挙げています (図1)。自己啓発を行う上での問題は「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」が最も多く、会社に求める支援としては「受講料などの金銭的援助」が最多でした(図2)。
図1 向上させたい能力・スキルの内容(複数回答(3つまで))
出典:厚生労働省「調査結果の概要」,2025年6月27日公表,p45,図65(閲覧日:2025年8月10日)
図2 自己啓発を行う上で会社から受けたい支援(複数回答)
出典:厚生労働省「調査結果の概要」,2025年6月27日公表,p66,図91(閲覧日:2025年8月10日)
本調査は、企業の人材育成における現状の問題と、労働者の多様なニーズを浮き彫りにしており、今後の人材戦略を検討する上で重要なトレンドが示されています。
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資料の詳細は、以下をご覧ください。
厚生労働省、報道発表資料2025.6.27「令和6年度『能力開発基本調査』の結果を公表します」
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00202.html