ピープルアナリティクスでエンゲージメントを向上!活用方法や事例を解説
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「せっかく優秀な人材を採用したのに『配属ガチャ』で辞めてしまう」
「従業員エンゲージメントを高めたい。納得感のある評価方法はないだろうか?」
人事領域において、データを活用して課題解決や意思決定を行うピープルアナリティクスが注目されています。
従来の日本型メンバーシップ雇用では、人事は担当者の3K(勘・経験・記憶)によって人材管理や活用が行われてきました。
ところが、中途採用や多様な働き方の人材が増えた組織では、人事部門において専門性の高い人材の採用や複雑化した組織の把握が困難となり、従来型の人材管理の限界が見え始めてきました。
そこで求められるのが、客観的なデータに基づいて人材管理を行うピープルアナリティクスです。データに基づいた透明性と納得感の高い評価方法や、従業員と部門それぞれが満足できる配属決定など、ピープルアナリティクスは従業員エンゲージメントの向上に役立ちます。
本記事では、ピープルアナリティクスの概要とメリット、活用するデータの種類やその活用方法、そして活用事例を紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
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目次
ピープルアナリティクスとは?
ピープルアナリティクス(People Analytics)とは、従業員の属性や行動に関するデータを収集・分析し、定量的な判断を行うための手法で、データを基にした効率的かつ透明性の高い人事施策を行えることが特徴です。
「HRアナリティクス」や「タレントアナリティクス」とも呼ばれ、採用活動や人事評価、働き方改革といった人事領域のさまざまな施策に活用されています。
PwCコンサルティング合同会社が2022年に行った調査によると、人材データの活用・分析について「取り組みを実施している/実施した」「今後取り組む予定がある」と回答した企業は56%で、年々増加傾向にあります[1]。
ピープルアナリティクスは、Google LLCが2008年に立ち上げた「Project Oxygen」という取り組みをきっかけに広まったとされています。
同社の調査チームは、毎年行われる従業員アンケートと人事考課の成績を調べ、「優れたマネジャーのいるチームは、より幸せで生産性が高い」という調査結果を得ました。さらに長期的な追跡調査によって、優秀なマネジャーに交代した従業員の離職率、満足度、パフォーマンスが向上することを発見したのです。
このように、収集・分析したデータに基づいて組織の課題を解決する手法が、ピープルアナリティクスとして広まっていきました。
ピープルアナリティクスを活用するメリット
人に関するデータを収集・分析して行うピープルアナリティクスは、データドリブンな人事施策ともいえます。企業と従業員にどのようなメリットがあるのでしょうか。
企業側のメリット
従来の採用・人事領域では、担当者の3K(勘・経験・記憶)に頼ることが多く、「採用時の評価と配属現場での評価の差が大きい」というアンマッチや、「管理職のお気に入りや、声の大きい人だけが評価されている」といった不公平感が、従業員のエンゲージメントにも影響を及ぼしていました。
対して、ピープルアナリティクスでは、データに基づいた明確な判断基準があり、客観・傾向・記録の新3Kによって、透明性と納得感のある人事施策を行えます。人事異動が行われた際も、データがあることで後任の判断基準がぶれず現場の混乱を防げるでしょう。
また、従業員のスキルに応じた人材配置や、コミュニケーション能力を考慮したチーム編成を行うことで、生産性の向上にもつながります。
テレワークで「チームや部下の仕事が管理しにくい」と悩む現場でも、従業員の勤務状況や成果をデータで管理できれば、業務をより効率的に進められるでしょう。
関連 ▶ 従業員エンゲージメントとは 定着率の向上と組織の成長をもたらす鍵(弊社ブログサイトへ移動します)
従業員側のメリット
従業員にとっても、データを基に仕事への評価が行われると分かれば、納得感を持って業務に取り組めます。自身が部署を異動したり、上司が変わったりした場合も、自身のスキルや成果に関するデータを基にスムーズな意思疎通ができる点がメリットです。
また、将来的なキャリアパスや目指すポジションに必要なスキルが可視化できれば、仕事へのモチベーションも高まります。
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ピープルアナリティクスの活用領域
ピープルアナリティクスは、採用や人事といった人材部門だけでなく、現場のマネジメントや、事業開発などにも活用できます。具体的にどのようなシーンで活用できるのか、見ていきましょう。
人事部門のピープルアナリティクス活用
まず、ピープルアナリティクスを人材の流出防止に活用するケースを解説します。
蓄積された人材データから、過去の退職者に共通した傾向を分析してみましょう。例えば「この部署は他の部署より退職率が高い」「この数値が急に変化した人が退職するケースが多い」といった定量的なデータが手に入るはずです。
このような人材データと行動データを基に、退職リスクが高い従業員をリストアップすれば、早めに適切なケアが施せるでしょう。
また、採用活動においても、退職者の分析データを基に「退職する可能性が高い人材」をあらかじめ除外することで、精度の高い人材採用が可能になります。
マネジメント担当者のピープルアナリティクス活用
現場のマネジメント担当者がピープルアナリティクスを活用できるシーンは、数多くあります。
分かりやすい例を挙げると、営業部門において各人の営業成績や行動データを分析し、個人の特性を「新規開拓型」と「既存深耕型」などにタイプ分けしてチーム編成を行う方法があります。
ピープルアナリティクスでそれぞれの適性を把握した上で担当を割り振ることで、個人の特性を生かせるシーンが増え、チーム全体の売上アップを図れるでしょう。
事業開発部門のピープルアナリティクス活用
コロナ禍を機に、事業の多角化や再編成を進める企業も少なくありません。ピープルアナリティクスは、人材の発掘・採用・配置にも威力を発揮します。
例えば、あるポジションの適任者を選出する際、従来は前任者や上位の管理職が主観的に「ふさわしい人」を決めていたり、人事部門が経歴や経験年数などからそのポジションに「ちょうど良い人」をマッチングさせたりしていました。
一方、ピープルアナリティクスでは、まず人材データを基にすでに当該ポジションで活躍しているハイパフォーマーを見つけ、どのような能力や傾向が高いパフォーマンスにつながっているのかを分析します。
そして分析結果に基づいて、人材データから「当該ポジションでハイパフォーマンスを発揮できる可能性が高い人物」をピックアップすることで、より精度の高い人材配置が可能になります。
ピープルアナリティクスを導入する方法・流れ
実際に社内でピープルアナリティクスを導入する場合、大まかに以下のような流れで進めていきます。
具体的な手法を確認していきましょう。
ピープルアナリティクスを活用する目的の設定
まず、従業員のデータを収集する大前提として、自社でピープルアナリティクスを活用する目的を設定しましょう。一例として、人事部門における活用目的を解説します。
- 採用活動
- 人員配置・人材育成
- 人事評価
- 離職防止
採用活動
従業員のデータを活用することで、採用活動をする際の意思決定に役立てられます。
例えば、活躍している従業員の専門性や入社までの経歴と応募動機、面接時の印象などの人材データを収集します。候補者に共通するものがあれば、将来的に活躍する可能性が高い人材といえるでしょう。
人員配置・人材育成
従業員の部署異動や、部署内での業務の割り振りを行うとき、メンバーそれぞれに関する明確なデータがあれば行いやすくなります。
従業員の性格や特長、キャリアプランなどに関して定期的にヒアリングを行い、データ化した過去の成果などと照らし合わせて意思決定を行うことで、従業員も意欲的に業務に取り組めるでしょう。
さらに、ピープルアナリティクスを活用して目標を明確に数値化しデータとして残すことで、振り返りもしやすくなり、従業員のスキルや経験値を高めることにつながります。
人事評価
ピープルアナリティクスを活用することで、客観的なデータに基づいた公正な人事評価が行えます。上司と部下の相性の良し悪しで評価が決まることがなく、明確な基準をもって判断ができる点がポイントです。
これら人事評価のピープルアナリティクスで注意したいのは、「最終的に判断を下すのは人であるべき」という点です。
HRテックツールなど、データ分析を行うAIに全ての判断を委ねると、人事評価がブラックボックス化し「透明性に欠けている」としてトラブルに発展したケースがあります。あくまで意思決定の支援ツールとしてAIを活用し、上司は評価に対する説明責任を果たす必要があります。
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離職防止
人事では、常に「いかに優秀な従業員を自社に定着させるか」という課題を感じていることと思います。
そのような課題には、従業員の満足度サーベイを基にした、退職者に共通する傾向やタイミングを予測する「退職予測モデル」が活用できます。併せて、勤怠状況の把握や1 on 1の面談を通して上司と従業員が十分にコミュニケーションを取ることも大切です。
各種データの収集・蓄積
続いて、ピープルアナリティクスを導入するに当たり、自社でどのようなデータが収集・蓄積できるかを整理します。
最初から全てのデータを集める必要はありません。目的に合わせて、比較的収集しやすいデータから収集・蓄積を進めていくのもよいでしょう。
- 人材データ
- デジタルデータ
- オフィスデータ
- 行動データ/ワークスタイルデータ
- パルスサーベイ/センサス
人材データ
ピープルアナリティクスにおいて最も基本となるデータです。年齢や性別、所属部署、職位、給与などの個人情報だけでなく、企業によっては勤怠、評価歴、学習履歴、保有スキル、特性なども分析の対象になります。
人材データの活用には、採用活動で使用される適性検査が挙げられます。履歴書や面接では把握しきれない「知的能力」や「性格・価値観」を測ることで、求職者の分析に役立つでしょう。
また、既存従業員の人事評価に「学習履歴」や「保有スキル」を加味する企業も少なくありません。このような情報を一元管理するには、LMS(学習管理システム)を活用すると効率的です。
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デジタルデータ
「デジタルデータ」とは、従業員のPCの使用状況を収集するものです。例えば、PCの利用状況やネットの閲覧履歴、電子メールの送受信先や時間、通話履歴などが分かります。
このデータによって、従業員が頻繁にやりとりしている相手と、仕事のパフォーマンスとの相関を調べることができます。
オフィスデータ
自社設備の利用状況を分析するものに「オフィスデータ」があります。
例えば、会議室や休憩室、複合機といった設備の利用状況や時間帯を調べることで、従業員の行動やコミュニケーション量を把握することにつながります。
行動データ/ワークスタイルデータ
「行動データ/ワークスタイルデータ」とは、従業員が自席に座っている時間や会議室での滞在時間、外出時間や出先情報などを収集したものです。
カレンダー機能やウェアラブルデバイスから得られるデータを収集します。ウェアラブルデバイスを活用するには、従業員に丁寧な説明を行い、本人の同意を得ることが前提です。
パルスサーベイ/センサス
「パルスサーベイ/センサス」とは、従業員の満足度や心身の健康度を把握するための調査です。企業と従業員個人の関係性の健全度を測ることを目的としています。
短期的に繰り返し行う調査を「パルスサーベイ」といい、年に一度じっくり時間をかけて行う調査を「センサス」といいます。
このように、企業は従業員に関するさまざまなデータを収集・蓄積し、ピープルアナリティクスへ活用が可能です。ただし、いくら自社の従業員であっても、個人情報の利用には最大限の注意が必要で、目的もなくデータを収集することは避けなくてはなりません。
データの分析
収集・蓄積した人材データを分析することで、企業・個人の状況や課題、改善策などを明らかにしていきましょう。データ分析にはさまざまな方法がありますが、ここでは代表的なものを紹介します。
規模分析
データの量や割合を把握することで、現状の状況や傾向を理解します。
相関分析
データ間の関係性を調べることで、影響要因や因果関係を推測します。
因子分析
多数のデータから共通の特徴を持つものをグループ化することで、重要な要素や構造を抽出します。
クラスター分析
データを類似性の高いもの同士でグループ化することで、異なる特徴や傾向を持つセグメントを作成します。
回帰分析
データ間の関係式を求めることで、将来の予測や仮説の検証を行います。
これらの分析方法は単独で使うだけでなく、組み合わせて使うことも効果的です。例えば、「離職率を下げる」という目的に対しては、下記のような分析プロセスが考えられます。
施策の計画・実施
データ分析の結果を基に、具体的な施策を計画・実施します。施策は目的に沿って効果的かつ効率的なものにすることが重要です。また、施策の実施に当たっては、データ保護・コミュニケーション・モニタリングの3点に注意しましょう。
ピープルアナリティクスに欠かせない人事データ活用の9原則
ピープルアナリティクスなどのHRテクノロジーは、個人情報を収集する行為ともいえます。企業が注意したい社会的・倫理的責任におけるガイドラインを紹介します。
以下は、一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会が提唱する、人事領域におけるデータ利活用のための9つの原則[2]を要約したものです。自社でピープルアナリティクスを導入する上で、参考にしてみてください。
1:データ利活用による効用最大化の原則
人事データを活用する目的や動機、利益を明確にしてください。データを活用する者や評価する者だけでなく、被評価者にも利益や価値があることを示しましょう。
2:目的明確化の原則
人事データの利用目的を明確にし、利用目的の範囲内で使用してください。利用目的は、従業員などが合理的に想定できる程度に具体的に特定しましょう。
3:利用制限の原則
利用目的の範囲を超えた利用を行う場合、事前に本人の同意を取得することが必要です。プロファイリング結果の第三者提供や国家機関からの情報提供の要求に対する対応方法も、予め定めておきましょう。
4:適正取得原則
偽りなどの不正な手段で個人情報を取得したり、本人の同意なく、人種、信条、社会的身分などの「要配慮個人情報」を取得したりしてはなりません。
5:正確性、最新性、公平性原則
企業が人事データに対してプロファイリングなどの処理を実施する場合、元データと処理結果の正確性と最新性に注意してください。データセットに偏向が発生していないかをチェックし、可能な限り公平性を保つようにも努めましょう。
6:セキュリティ確保の原則
人事データのプロファイリングを行う際は、処理結果が外部に流出したり、消失や利用不可能な状態になったりすることがないように安全管理措置を講じてください。
特に健康情報(心身の状態に関する情報)などは、推知情報も含めて取り扱い範囲制限や情報の削除・加工などの措置を検討すべきとされています。
7:アカウンタビリティの原則
事業者は、プロファイリングの実施方針を公表し、労働者代表と協議することが望ましいとされています。個人データの開示・訂正・利用停止などの手続きを整備し、高度なプロファイリングを行う場合は、対象者にプロファイリングの種別・内容を明示するようにしましょう。
8:責任所在明確化の原則
人事データを取り扱う際、グローバルな情勢の変化を把握し、個人情報保護とデータ利活用のバランスを取るために、ピープルアナリティクスの専門部署や役職者を設置してください。
9:人間関与原則
採用決定、人事評価、懲戒処分、解雇などにプロファイリングを伴うピープルアナリティクスやHRテクノロジーを使う場合、人間が最終的な責任者として存在していなければなりません。
これら9つの原則は、人事データ利活用のプロセス全体に関わるものです。データの品質や活用効果を高めるとともに、個人情報保護や倫理的な問題への適切な対応にもつながりますので、ぜひ参考にしてください。
ピープルアナリティクスを活用する企業事例
ピープルアナリティクスを自社でどのように活用できるか、参考になる企業の事例を、一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会が主催する「Digital HR Competition 2021」および「Digital HR Competition 2022」から3社紹介します。
日本電気株式会社(NEC)
日本電気株式会社(NEC)は、2025年度までの中期経営計画の中で、HRDX(HR領域のDX)の一環としてピープルアナリティクスに取り組んでいます。
従業員のエンゲージメントスコア向上への取り組みとして、ミドルマネジャーにエンゲージメント向上の具体的ナレッジを提供するために、定量・定性的なデータ分析プロジェクトを立ち上げました。
上司アセスメントやインタビュー、AIによる分析を活用した結果、エンゲージメント向上には部下の心理的安全性や個人裁量権が重要な要素と判明し、優れたマネジャーのナレッジをマニュアル化しました。それにより、2021年度のエンゲージメントスコアは25%から35%へと大幅に向上したそうです。
関連 ▶ 心理的安全性とは Googleが確立した「良いチーム」の土台を作る方法(弊社ブログサイトへ移動します)
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シスメックス株式会社
シスメックス株式会社は、人事面で二つの課題を抱えていました。
- 従業員の多国籍化や価値観の変化に伴う日本型人材マネジメントの見直し
- 従業員エンゲージメントの向上
この課題を解決するため、2020年4月に管理職と専門職へジョブ型の人事制度を適用、2021年10月から一般従業員へ対象を広げています。
さらに東京大学の支援の下で、希望する配属先について、従業員と部門の双方から提出された情報を基に、最適な配属結果を決定するアルゴリズムを開発しました。その結果、マッチング対象の従業員約1300人のうち94%が希望する配置に就くことができました。
新卒採用では、新入社員に「配属ガチャ」と捉えられる事態を避けるべく、配属決定プロセスを可視化し、職種別採用かつジョブマッチングで配属を決めるプロセスに変更しています。その結果、マッチングアルゴリズムを導入する前後でエンゲージメントスコアは67%から71%と5ポイント近く向上しました。
関連 ▶ ジョブ型雇用への道は一本ではない 課題や導入検討のポイントとは?(弊社ブログサイトへ移動します)
株式会社横浜銀行
株式会社横浜銀行は、金融業界の規制緩和や顧客ニーズの多様化による業務領域の拡大という課題を抱えていました。これに対応するため、「人財ポートフォリオ改革」の一環として、新卒者の採用活動にピープルアナリティクスを導入しました。
目指すべき「人財ポートフォリオ」の実現に向け、まずは株式会社浜銀総合研究所と共同開発した「適性タイプ分類モデル」を使い、既存の若手行員約千人をクラスター分析により10タイプに分類して特性を分析しました。
そして、適性タイプに基づく採用計画を策定し、タイプごとのマニュアルを作成して面接を実施した結果、ほぼ計画通りのタイプ構成を実現し、採用者の多様性を確保することに成功しました。
関連 ▶ 人材ポートフォリオで人的資本を見える化する 作り方や事例を解説【ダウンロード資料あり】
まとめ
ピープルアナリティクス(People Analytics)は、従業員の属性や行動などのデータを収集・分析し、定量的な判断を行うための技術です。人事領域では、採用活動や人事評価、働き方改革といったさまざまな施策に活用されています。
ピープルアナリティクスを活用するメリットには、以下のようなものが挙げられます。
・企業側のメリット
データに基づいた明確な判断基準によって、透明性と納得感のある人事施策を行えます。また、従業員のスキルやコミュニケーション能力に応じた人材配置やチーム編成を行うことで、生産性の向上にもつながります。
・従業員側のメリット
データを基に仕事への評価が行われるため、納得感を持って業務に取り組めます。キャリアパスや目指すポジションに必要なスキルがデータで可視化できれば、仕事へのモチベーションも高まります。
ピープルアナリティクスを導入する方法・流れは以下の通りです。
- 各種データの収集・蓄積
- ピープルアナリティクスを活用する目的の設定
- データの分析
- .施策の計画・実施
個人情報を収集する行為となるピープルアナリティクスにおいて、企業が注意したい社会的・倫理的責任におけるガイドラインとなる、データ利活用のための9つの原則を紹介します。
- データ利活用による効用最大化の原則
- 目的明確化の原則
- 利用制限の原則
- 適正取得原則
- 正確性、最新性、公平性原則
- セキュリティ確保の原則
- アカウンタビリティの原則
- 責任所在明確化の原則
- 人間関与原則
ピープルアナリティクスを活用する企業事例として、以下の3社を紹介しました。
- 日本電気株式会社(NEC)
- シスメックス株式会社
- 株式会社横浜銀行
ピープルアナリティクスは、採用や人事といった人材部門だけでなく、現場のマネジメントや事業開発などにも活用できます。「配属ガチャ」をデータで克服し、従業員のエンゲージメントを高める人材管理手法として、ピープルアナリティクスに取り組んでみてはいかがでしょうか。
[1] PwCコンサルティング合同会社「ピープルアナリティクスサーベイ2022調査結果(速報版)」,(閲覧日:2023年5月30日)
[2] 一般社団法人ピープルアナリティクス&HR テクノロジー協会「人事データ利活用原則 」,(閲覧日:2023年5月30日)
参考)
佐々木聡「日本の人的資本経営が危ない」,『bookvinegar』,https://bookvinegar.jp/9830/(閲覧日:2023年5月30日)
日立評論「生産性向上と輝く一人ひとりを両立させるHRテック」,https://www.hitachihyoron.com/jp/archive/2010s/2018/04/activities1/index.html(閲覧日:2023年5月30日)
re:Work「Great managers still matter: the evolution of Google’s Project Oxygen」,https://rework.withgoogle.com/blog/the-evolution-of-project-oxygen/(閲覧日:2023年5月30日)
re:Work「Learn about Google's manager research」,https://rework.withgoogle.com/guides/managers-identify-what-makes-a-great-manager/steps/learn-about-googles-manager-research/(閲覧日:2023年5月30日)
一般社団法人ピープルアナリティクス&HR テクノロジー協会「【開催レポート】Digital HR Competition2021 ピープルアナリティクス部門」,https://peopleanalytics.or.jp/news/3496/(閲覧日:2023年5月30日)
一般社団法人ピープルアナリティクス&HR テクノロジー協会「【開催レポート】ピープルアナリティクス部門 / Digital HR Competition2022」,https://peopleanalytics.or.jp/news/4010/(閲覧日:2023年5月30日)
Human Capital Online「HRDXでエンゲージメントを高める―NEC」,https://project.nikkeibp.co.jp/HumanCapital/atcl/column/00014/081600019/(閲覧日:2023年5月30日)
HRpro「【第7回 HRテクノロジー大賞 特別講演】人的資本経営&開示の実践事例」,https://www.hrpro.co.jp/hrsummit/2022/session.php?smcd=71&scd=4437(閲覧日:2023年5月30日)
Human Capital Online「マッチングアルゴリズムで自律的なキャリア開発を実現―シスメックス」,https://project.nikkeibp.co.jp/HumanCapital/atcl/column/00066/021000001/(閲覧日:2023年5月30日)
Human Capital Online「理想の人財ポートフォリオ実現に向けて採用活動にピープルアナリティクス導入―横浜銀行」,https://project.nikkeibp.co.jp/HumanCapital/atcl/column/00066/011700006/(閲覧日:2023年5月30日)