人材育成の効果を上げる外部講師の選び方と活用のコツ
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集合研修を内製化するか、外部講師に依頼するか、お悩みになったことはありませんか?
近年、企業の集合研修の内製化が進んでいます。これは、コスト削減の意味もありますが、自社の目的に適ったオリジナルの研修プログラムを用意し、運用していく傾向の表れでもあります。
「講師ありき」ではなく、経営課題に即した人材育成計画を立て、真に効果的な社員教育の形を模索していく姿勢は、戦略人事のあるべき姿といえるでしょう。
では、すべてを内製化すべきかというと、必ずしもそうとは限りません。うまく外部講師を活用すれば、質の高い講義や新しい知見を得ることが可能となり、研修の効率化・最適化につながります。
実際に研修の一部を外部講師に任せる企業は多く、特に「新入社員研修」に至っては、約60%の企業が社内講師と外部講師を併用しています[1]。
しかし、せっかく費用をかけて外部講師を呼んでも、求める内容にそぐわなければ意味はありません。自社の状況に適した質の高い研修をしてくれる講師はどのように選べばよいのでしょうか。本稿では、外部講師の選び方や研修効果を高める秘訣について解説します。ぜひ参考にしてください。
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目次
1. 社内講師か、外部講師か…見極めのポイントは?
「この研修を社内講師が実施するべきか、それとも外部講師に任せるべきか」人材育成部門にとって悩みが尽きないこの問題について、基本的には、「リソースがあるのなら、社内講師が実施した方が良い」といえます。
「自社の経営戦略に準じた教育をする」という観点に立つと、プログラム策定や指導のノウハウを社内に蓄積した方が、中長期的には効果を高めるからです。
とはいうものの、時には外部の力を借りる必要も出てきます。外部講師に依頼した方が効果を見込める内容もあるため、状況に応じた使い分けが必要です。それでは、社内講師と外部講師を見極めるポイントはどこにあるのでしょうか。その判断基準は次の通りです。
一般的には、企業ビジョンや業務・業界に関するもの、毎年実施している基本研修などについては、内部講師が実施する割合が高いです。その一方で、社内にノウハウがないものやトレンド情報、体系立てて学ぶ必要のあるものなどについては、外部講師による研修やセミナーを利用する傾向にあります。
特に、管理職クラスの教育については、大企業の約7割が外部の研修会社を利用したと回答しています[2] 。管理職クラスともなれば、どうしても社内講師だけでは学びや刺激が少なくなるため、外部講師を活用する機会が増えるようです。
また、単に知識・スキルの習得に限らず、管理職同士の異業種交流で社内では得られない気付きと刺激を得てもらう狙いから、外部のセミナーを活用するケースもあります。
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2. 外部講師のメリットと依頼する際の注意点
外部講師による研修には、どのようなメリットや注意点があるのでしょうか。それぞれ見ていきましょう。
2-1. 外部講師のメリット
外部講師に委託するメリットは次の通りです。
- さまざまなテーマのプロから質の高い研修を受けられる
- 新しい知見や情報を得る
- 聞く姿勢に入りやすい
- 担当者の負担削減になる
さまざまなテーマのプロから質の高い研修を受けられる
十分なトレーニングを積んだ外部講師は、研修の流れを綿密に組み立てている上に、受講者の関心を引きつける話術にも長けています。このような「教えるプロ」から質の高い研修を受けることができるため、受講者の理解度が高まります。
新しい知見や情報を得る
外部講師から他社での事例を交えた成功例や失敗例を共有してもらえたり、客観的な視点から自社に関する意見をもらえたりするため、受講者は社内では得られない新たな気付きを得ることがあります。
聞く姿勢に入りやすい
講師が社内の人間ばかりでは、どうしても緊張感が失われてしまうことがありますが、「外部の登壇者」という刺激を与えることによって、受講者の集中力や聞く姿勢を維持することができます。このメリットを生かして、あえて「社内でいつも言う内容」を外部講師の口から言ってもらう方法もあります。
例えば、社長が普段から「挨拶の重要性」を説いているとしましょう。何度も同じ話を耳にすると従業員は聞き流してしまいがちですが、それと同じような話を外部講師から客観的な事例を交えて言われると、腑に落ちたり、説得力が増したりします。
担当者の負担削減になる
研修準備には多大な時間と労力を要します。特に新しい研修の場合、企画やスライド作成だけでも相当な手間がかります。そこを外部に依頼することで、準備の負担や時間を削減し、新しいテーマの研修であってもスピーディーに開催することができます。
このように、受講者にとっては、プロから分かりやすく教わることができたり、新しい知見や情報を得たり、緊張感を持って受講することができるという利点が、担当者にとっては運営の負担を軽減できるという利点があります。
2-2. 依頼する際の注意点
多くの人材育成部門が外部講師に依頼する際にやってしまいがちなことは、最低限の情報(研修目的やテーマ、日程など)を伝えた後、全て講師任せにしてしまうことです。講師を信頼し、任せること自体は問題ではありません。
しかし、自社の内情を講師が知らないままでは、単にパッケージ化された研修カリキュラムのまま講義をされてしまい、求める内容にそぐわない場合があるので注意が必要です。講師とは事前に自社の課題や目指すゴールなどを共有し、社内事情に合わせてカスタマイズした内容を提供してもらいましょう。
3. 講師を選ぶポイント
講師を選ぶ際は、研修会社に依頼するか、仲介会社を通じてフリー(あるいは小規模の企業)の研修講師を紹介してもらうことが一般的です。大手の研修会社は研修コンテンツが豊富にそろっているのに対し、中小規模の企業は特定のコンテンツに特化する傾向が見られます。
その研修会社や講師が自社に適したコンテンツを提供しているかどうかを確認し、具体的な選定の際は次の項目に注意しましょう。
□実績は十分か
□トレーナー資格があるか
□直接顔を合わせて詳細な打ち合わせができるか
□面談時に講師が自社のこと・自社業界のことを調べているか
□講師が担当者にヒアリングする際は、自社の立場に立っているか
□担当者からの要望や質問に対して、講師は迅速に対応しているか
□研修プログラムを柔軟にカスタマイズできるか
□研修終了後、現場で活用するためのフォローまでアドバイスするサービスがあるか
その他、講師が使うテキスト、過去に出版した書籍があれば確認しましょう。目次や文章の構成からも、講師の能力を判断することができます。
4. 研修効果を上げる秘訣
全ての研修に共通していることですが、成功の鍵を握るのは事前準備です。研修の効果を上げるために、次の2点を意識しましょう。
- 講師と綿密な打ち合わせを行う
- 「eラーニングによる事前学習」×「演習中心の集合研修」
講師と綿密な打ち合わせを行う
前述の通り、講師にカスタマイズした内容を提供してもらうために、自社の課題や目指すゴールなどを事前に講師と共有する必要があります。多少手間はかかりますが、研修を行う前に受講者の意識調査やアンケートをするなどして、受講者の知識レベルや悩みを確認し、講師と共有することも大切です。
例えばLMS(Learning Management System、学習管理システム)には、アンケートやレポーティング機能を持つものもあります。さらに、個々の集合研修の準備、実施、履歴の管理もシステム上で行えます。eラーニングと統合管理することで、研修プログラム全体の管理の効率化につながるので、検討してみるとよいでしょう。
「eラーニングによる事前学習」×「演習中心の集合研修」
当日の研修を充実したものにするには、受講者がそのテーマに関する知識を事前に得る場を設けることも有効な手段です。
従来型の研修では、講義で受講者が一斉に「知識の習得」をした後でロールプレイのような演習を実施するため、あまり演習にかける時間が取れない傾向があります。その点「知識の習得」をeラーニングによる事前学習に代えれば、当日の研修を演習中心にすることが可能です。
研修の時間を、事前学習で分からなかったことの質疑応答や受講者同士のコミュニケーション、実技面のトレーニング、さらに応用的な討議などに当てることができるため、学習効果の底上げを狙うことができます。
このように、対面式の学習にeラーニングを組み合わせる学習方法を、ブレンディッド・ラーニングと呼びます。
関連 ▶ ブレンディッド・ラーニングとは 研修とeラーニングのうまい組合せ方(弊社コンプライアンス情報サイトへ移動します)
関連 ▶ 反転授業とは オンライン型の企業研修でアウトプット力を高める秘策(弊社ブログサイトへ移動します)
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5. まとめ
社内講師と外部講師を見極めるポイントは次の通りです。
〇社内講師が適切なもの
・企業のビジョンや行動規範に関するもの
・社内業務、ルール、業界に関するもの
・自社にノウハウがある基本研修(例:営業スキル、IT技術)
〇外部講師が適切なもの
・自社にノウハウのないテーマ
・トレンド情報や最新動向に関するもの
・ビジネス知識を体系的に学ぶもの(例:MBA、マーケティング)
外部講師に委託するメリットは次の通りです。
・さまざまなテーマのプロから受ける質の高い研修
・新しい知見や情報を得る
・聞く姿勢に入りやすい
・担当者の負担削減
ただし、単にパッケージ化された研修カリキュラムのまま講義をされては、自社の内情にそぐわない場合があるので注意が必要です。自社のあるべき姿やどのような課題があるのかなどを事前に講師と共有し、研修をカスタマイズしてもらう必要があります。
講師を選定する際は次の項目に注意しましょう。
□実績は十分か
□トレーナー資格があるか
□直接顔を合わせて詳細な打ち合わせができるか
□面談時に講師が自社のこと・自社業界のことを調べているか
□講師が担当者にヒアリングする際は、自社の立場に立っているか
□担当者からの要望や質問に対して、講師は迅速に対応しているか
□研修プログラムを柔軟にカスタマイズできるか
□研修終了後、現場で活用するためのフォローまでアドバイスするサービスがあるか
全ての研修に共通していることですが、研修成果を左右するポイントは事前準備にあります。研修の効果を上げるには、講師との綿密な打ち合わせをしたり、受講者がそのテーマに関する知識を事前に得る場を設けたりするとよいでしょう。
外部講師を活用することで、社内ではノウハウのない研修ができる他、受講者のモチベーションを刺激することも可能となります。必要に応じて活用し、効果的な人材育成を実現しましょう。
[1]フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社 新入社員研修の利用状況と利用意向2013年
[2]HR総研:人材育成「管理職研修」に関するアンケート調査 結果報告(2019年)
参考)
・産労総合研究所:2018年度 教育研修費用の実態調査
https://www.e-sanro.net/research/research_jinji/kyoiku/kyoikukenshu/pr_1810.html
・HR総研 (ProFuture株式会社):人材育成「管理職研修」に関する調査報告 (2017年)
https://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=177
・フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社 新入社員研修の利用状況と利用意向 (2013年)
https://www.franklincovey.co.jp/training/case/report/whitepaper/333.html
・PHP人材開発 研修会社の選び方 10のポイント
https://hrd.php.co.jp/shainkyouiku/cat21/10.php
・幻冬舎ゴールドオンライン 研修への対応は柔軟か? 「優秀な講師」を選ぶポイント②
https://gentosha-go.com/articles/-/11212