ロールモデルとは 「なりたい人」を持つことで自身のスキル向上を図る
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ロールモデルとは、「将来こうありたい」と目標にする存在であり、スキルや具体的な行動を学んだり模倣したりする対象となる人材を意味します。
「あんな風に部下に慕われる人になりたい」「あの上司のように活躍したい」など、皆さんも一度は誰かに憧れた経験があるでしょう。
本来は個人がそれぞれ設定するものですが、従業員の活躍を促す目的で企業がロールモデルとなる人材を設定し、育成するケースも多くあります。その場合、どのようなことに注意すればばよいのでしょうか。
本稿では、ロールモデルとは何か、企業が設定する際のポイントを交えながら解説します。
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目次
1. ロールモデルとは
ロールモデルとは、自分がお手本にしたい存在で、具体的な行動や考え方の規範となる人物です。その対象は必ずしも一人とは限りません。例えば、アイデア豊富な人、コミュニケーション能力の高い人、分析力に長けている人など、自分が得たい知識や身に着けたいスキルに応じて、複数の人をロールモデルに設定することもあります。
ロールモデルは身近な環境にいる方が具体的な行動に移しやすく、モチベーションアップにも有効です。そのため、企業としては、従業員がロールモデルを得て、自身の成長につなげられるように、計画的にロールモデルになり得る人材を育成したり、周知したりしています。
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2. ロールモデルの効果
ロールモデルを持つことで次のような効果を期待できます。
キャリアを描きやすくなる
豊富な仕事経験を持つ管理職や、リーダーシップを発揮して働いている先輩など、身近なロールモデルが職場にいることで、従業員はビジョンやキャリアを描きやすなります。そこに向かうために必要なスキルや経験が「見える化」されるので、どのようなステップを踏めば良いかも分かります。
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組織の活性化
従業員はお手本にしたいと思える存在が身近にいることで、その相手とのコミュニケーションを密にとり、多くを学び取ろうとするでしょう。主体的に業務に取り組むようになり、能力の向上や成長が期待できます。また、自分自身も誰かのロールモデルになりたいと意識することで、仕事への姿勢や後輩へのサポートが積極的になるでしょう。こうして従業員同士のコミュニケーションが活発になり、組織の活性化が期待できます。
女性が活躍する企業風土を作る
女性には妊娠・出産・育児というライフイベントがありますが、仕事との両立が難しいという声も少なくありません。管理職を目指す女性や、出産後も働きたいと考える女性にとっては、それをクリアした経験者が身近にいることは大きな刺激になります。経験者の「生の声」が聞け、何に備えるべきか、どのような工夫をしているかなど有益な情報を得ることもあるでしょう。その結果、女性の離職率が低下し、女性が活躍できる企業風土を醸成することができます。
このように、ロールモデルを持つことで、キャリア形成が描きやすくなる、組織が活性化する、女性活躍の企業風土ができるなどの効果を得られます。
では、どのようにロールモデルを設定し、活用すればよいのでしょうか。次章で見ていきましょう。
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3. ロールモデル活用の手順
ロールモデルを活用する際の手順は次の通りです。
ステップ1:ロールモデルを選定する
ロールモデルには、行動を観察できる範囲にいる、身近な人物が望ましいです。印象的な人、自分よりも優れたリーダーシップを発揮している人、学びとりたい行動ができている人を選定します。
ステップ2:ロールモデルの行動特性を分析する
漠然と「かっこいい」「素敵」と思うのではなく、なぜそう思ったか、その根拠を考えます。ロールモデルの具体的な行動ひとつひとつに目を向けると、その行動の元となる行動特性が見えてくるでしょう。
ステップ3:ロールモデルの行動を模倣
ロールモデルの行動を実際に模倣します。まずは模倣することで、次第にその行動の根拠なども理解し、行動パターンを習得することができます。
このように、ロールモデルを身近な人物から選定し、その人物の行動特性を分析、行動を模倣することで、次第に得たい知識やスキルを習得することができます。
4. 企業がロールモデルを設定する場合
本来、ロールモデルは従業員がそれぞれ設定するものです。しかし、対象となり得る人材が社内にいなければ、企業として、ロールモデルを設定、育成し、周知する必要があります。
厚生労働省が発表した「メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」によれば、ロールモデル設定時に企業として把握すべきポイントは2点です。
・どのようなロールモデルを提示したいと考えているのか
・提示したいと考えているロールモデルが現在社内において年代別などに存在しているか
例えば、以下のように、従業員を年代別に分け、それぞれキャリア面とワーク・ライフ・バランス面から設定をします。
出典)厚生労働省 「メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」p19
https://www.mhlw.go.jp/topics/koyoukintou/2013/03/dl/h27030913-01_3.pdf
キャリア初期の場合、「積極的にさまざまな仕事にチャレンジをしている」「自分なりの判断基準を持ち行動をしている」「仕事と生活の調和をとりながらメリハリをつけて働いている」などの特徴を持つ人材を設定します。
具体的な人材像を設定したら、その対象となる人材を育成し、社内に周知します。
従業員が身近にロールモデルを見つけられるように、企業が支援していくことは、従業員の活躍を促し、離職率低下やモチベーションの向上に繋がります。
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4-1. 女性のロールモデル
一般的に女性のロールモデルは見つかりにくいと言われています。産休・育休制度などの制度面は整っているものの、現実には第一子誕生時に約6割の女性が離職しています。それだけ仕事と出産・育児との両立は難しいものであり、逆を言えばその両立ができている女性はロールモデルになり得る人材です。
そこで、企業としては計画的に女性のロールモデルを育成することが求められます。具体的な方法には、育休後のフォローアップ研修、女性の次世代リーダー育成を目的とした選抜研修、女性管理職と若手女性との交流会・座談会などが挙げられます。
5. まとめ
ロールモデルとは、自分がお手本にしたい存在で、具体的な行動や考え方の規範となる人物です。
ロールモデルを持つことで次のような効果を期待できます。
・キャリアを描きやすくなる
・組織の活性化
・女性が活躍する企業風土を作る
ロールモデルを活用する際の手順は次の通りです。
ステップ1:ロールモデルを選定する
ステップ2:ロールモデルの行動特性を分析する
ステップ3:ロールモデルの行動を模倣
本来、ロールモデルは従業員がそれぞれ設定するものです。しかし、対象となり得る人材が社内にいなければ、企業として、ロールモデルを設定する必要があります。
その際、企業として把握すべきポイントは2点あります。
・どのようなロールモデルを提示したいと考えているのか
・提示したいと考えているロールモデルが現在社内において年代別などに存在しているか
このような点に留意して具体的な人材像を設定したら、その対象となる人材を育成し、社内に周知します。
特に、女性の場合はロールモデルとなる存在が少ないため、企業として計画的にロールモデルになり得る女性の人材を育成することも必要です。
ロールモデルを設定し、ライフステージに合ったキャリア形成をサポートすることは、従業員の離職率低下やモチベーションの向上に繋がります。人材育成のひとつとして、ロールモデルを活用してみてはいかがでしょうか。
参考)
厚生労働省 「メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」
https://www.mhlw.go.jp/topics/koyoukintou/2013/03/07-01.html