ライフキャリアとは 人生100年時代!人生視点で描くキャリアデザイン
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ライフキャリアとは、仕事でのキャリアだけでなく、家庭や趣味、地域活動など多様な関わりの中での経験の積み重ねを表す言葉です。
若手従業員に比べ、40代50代のモチベーション管理は難しいと言われています。
「先が見えているからとモチベーションが低い」
「ポストにつけないことで受け身になっている」
このように、現状維持で満足する従業員も多いようです。
しかし、人生100年時代と言われる昨今、「60歳で定年、その後は悠々自適に余生を送る」という考えは改めなければなりません。長寿化に伴い、70代80代まで働き続けることを想定した人生設計が迫られているのです。
定期的に人生をどうデザインしていくかを考える機会が従業員にあれば、このような時代の変化に自身の意識を合わせやすくなるでしょう。50代がビジネスパーソンとして「終わりが見えてきた」世代ではなく、「まだまだ働き続け、学び続ける世代」だと認識することは、勤務意欲、学習意欲の向上にもつながります。
また、理想の人生を明確にすることで、その実現に向けて行動するようになります。人生の多くを占める仕事が自己実現の場であると意識すれば、業務に主体的に取り組むようになるでしょう。企業が従業員のライフキャリアのデザインをサポートする意義はこの点にあります。
本稿では、この「ライフキャリア」について、その概念や描き方を交えて解説します。
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目次
1. ライフキャリアとは
ライフキャリアは、仕事だけでなく、家庭や趣味など日々の生活や、地域との関わり、ボランティアなど、生涯にわたる役割や経験の積み重ねを指す言葉です。
人生には、進学や就職、結婚、子育て、地域活動、介護などさまざまなライフイベントがあり、それぞれが並行しています。その中で優先順位をつけながら、自分らしい人生を選択できるようにするためには、予め起こり得るライフイベントを想定し、それに向けて準備を進めることが重要です。
ライフイベントを想定することで、従業員は企業の中で成長することが自分のライフキャリアとどう繋がるのか意味付けするようになり、業務へのモチベーション向上が期待できます。
1-1. キャリアとの違い
厚生労働省によると、キャリアの定義は次の通りです。
「キャリア」とは、過去から将来の長期にわたる職務経験やこれに伴う計画的な能力開発の連鎖を指すものです。「職業生涯」や「職務経歴」などと訳されます。
つまり、ビジネス上での能力や経験と言えます。
一方で、ライフキャリアは、「キャリア」よりも広義で解釈され、生涯を通じた「生き方」を意味します。
1-2. サニー・ハンセンの「4L」理論
ライフキャリアを考えるうえで欠かせないのが、キャリア研究の世界的権威であるサニー・ハンセン博士が提唱した「4L理論」です。博士は4L理論において、人生には以下のような4つの役割があると提唱しています。
- Labor(仕事)・・・収入を得るための活動
- Love(愛)・・・家事、育児、介護、ペットの世話など、大切な存在と過ごす時間
- Learning(学習)・・・教育や読書など、自己啓発に費やす時間
- Leisure(余暇)・・・趣味、ボランティア、地域活動など、その他の3つに該当しない活動
4つの「L」はパッチワークに例えられることが多く、どれか一つではなくそれぞれの役割をつなぎ合わせて考え、大切にすることで人生が豊かになると考えられています。
2. ライフキャリアが注目される背景
終身雇用が一般的だった時代、従業員は企業が提示するキャリア開発をこなしていけば問題なく定年を迎えられました。しかし、終身雇用が破綻しつつある現在では、大企業に勤めれば安泰という考えは過去のものです。それに伴い、企業の役割は、「雇い続ける」ことから、「社会で活躍できるよう支援を続ける」ことに変化しています。
実際に、今や多くの企業でパラレルキャリアや越境学習などの社外活動が認められ始めています。同時に、キャリア開発においても、会社がプランを提示するのではなく、従業員ひとりひとりが人生のプランを考え、会社はそれをサポートする側に移行しています。ライフキャリアが注目される背景には、このような企業に求められる役割の変化が影響していると考えられます。
企業には今、従業員一人ひとりのライフキャリアデザインを支援し、望む方向性を把握したうえで、雇用形態や業務内容を希望内容に近づけるといったサポートが求められているのです。
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3. ライフキャリアの効果
従業員がライフキャリアを描くことで、企業は従業員に次のような効果を期待できます。
モチベーション向上
ライフキャリアは、ビジネス上のキャリア開発を展望するための広角レンズとして働きます。
上司の命令だからではなく、人生経験を積むために業務に取り組む。お金のためだけではなく、人生を充実させるために仕事をする。
このように、人生における役割や使命をも見据えた上で業務に取り組むようになり、モチベーションの向上が期待できます。
エンゲージメントの向上
企業は従業員のライフキャリアを把握することで、各自の希望に合った雇用形態や業務内容を提供しやすくなります。従業員にとっては働きやすい環境が整い、企業へのエンゲージメントが強くなります。
視野の拡大
これまでの「会社が全部決める」「言われたことをやればステップアップできる」という考えから、「キャリアを自分で構築する」という意識改革が起これば、広い視野を持ち、社内外で積極的に活動するようになります。
社外で得た能力・知恵・人脈などを企業へ還元したり、今後のサービスや新しいイノベーションに繋げることも可能となるでしょう。
このように、従業員がライフキャリアを描くことによって、企業は従業員のモチベーション向上、エンゲージメント向上、視野の拡大などの効果が期待できます。
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4. ライフキャリアの描き方
ライフキャリアにはさまざまな描き方がありますが、今回はライフキャリアレインボーを活用した概念とワーク例を解説します。
4-1. ライフキャリアレインボーとは
ライフキャリアを考える上でのツールとして有名な概念がライフキャリアレインボーです。米国のD・E・スーパーが提唱したもので、「人間は、仕事に限らず、趣味や地域活動、親としての役割などさまざまなキャリアを虹のように積み重ね、複数のキャリアを使い分けながら暮らしている」という考え方です。
ライフキャリアレインボーは、次のような図を用いてライフキャリアを表します。
出典)文部科学省「高等学校キャリア教育の手引き」
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2011/11/04/1312817_05.pdf
ライフキャリアレインボーは、5つのライフステージと8種類のライフロール、そして年齢で表されます。
5つのライフステージとは、成長段階、探索段階、確立段階、維持段階、下降段階です。
また、8種類のライフロールとは、子ども、学生、労働者(職業人)、配偶者、家庭人、親、余暇人、市民です。
8種類のライフロール全てを経験する人、一部分を経験する人など、人によってライフロールの数は違います。一般的には6~9個程度を積み上げ、ライフキャリアレインボーを描きます。
スーパーは、キャリアは人生のさまざまな時期に果たすライフロールの組み合わせと考えました。仕事上の能力やスキルだけでキャリアが構築できるものではなく、他のライフロールと相互に影響し合うものだと説いています。
例えば、40代・50代は多くの役割が重なり合う年代です。「職業人」として仕事での責任の重さ、「子ども」として親の介護、「親」として子どもの教育など、それぞれの役割が重く、調整が難しくなります。ライフキャリアレインボーで可視化することで、どのようにバランスをとればよいか、何が必要なのかのヒントになるかもしれません。
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5. ライフキャリアレインボーのワーク例
ライフキャリアレインボーを用いたワーク例をご紹介します。
現状把握
現在のライフキャリアレインボーを描きます。
自分がどのライフロール(役割)に重点を置いているのか、視覚的に認識できます。
振り返り
自分が過去に経験した役割を振り返ります。「大切にしたいこと」「一生懸命になれたこと」「達成感を得たこと」などを棚卸しすることで、自分の価値観や強みが導き出されます。こうして得た気づきは、未来をどう生きるかの指針となるでしょう。
未来のライフキャリアレインボーを描く
今後想定される役割や自分の姿を描いてみましょう。漠然とした夢でもかまいませんが、「起業する」「大学院で〇〇を学ぶ」など、具体的なプランがあればより良いでしょう。ライフキャリアレインボーで視覚化することで、ビジョンを明確にできます。
将来の役割の変化に備える
将来、どの役割に重点を置くのか、どれだけの時間を投じられるのかを計算し、ビジョンを達成するための手法を考えましょう。
もし今、自分のやりたいことが達成できていない場合、①今のライフロールにおける自分の環境を変えることで達成できるのか、②他のライフロールで達成するのかを考えます。
①の場合、すぐ行動する必要があるかもしれませんし、②の場合は、例えば10年後に達成できるために取るべき行動が明らかになってくるでしょう。このようにしながら、理想的な人生に近づけることができます。
自分にとって大事な価値観は何か、それを満たすにはどうすればよいのかを考えることで、人生を満ち足りたものにすることが可能です。ライフキャリアレインボーを描くと、「仕事」が人生のひとつの役割であることが分かります。
仕事=人生と考えるか、仕事は人生の一部と考えるかで、仕事への意識や取り組み方が変わってくるものです。自分にとって一番良いバランスを考えてみましょう。
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6. まとめ
ライフキャリアは、仕事だけでなく、家庭や趣味など日々の生活や、地域との関わり、ボランティアなど、生涯にわたる役割や経験の積み重ねを指す言葉です。ビジネス上での能力や経験を表す「キャリア」よりも広義で解釈され、生涯を通じた「生き方」を意味します。
ライフキャリアを考えるうえで欠かせないのが、キャリア研究の世界的権威であるサニー・ハンセン博士が提唱した「4L理論」です。4L理論における4つの役割は以下の通りです。
- Labor(仕事)・・・収入を得るための活動
- Love(愛)・・・家事、育児、介護、ペットの世話など、大切な存在と過ごす時間
- Learning(学習)・・・教育や読書など、自己啓発に費やす時間
- Leisure(余暇)・・・趣味、ボランティア、地域活動など、その他の3つに該当しない活動
終身雇用が破綻しつつある現在、キャリア開発においても、会社がプランを提示するのではなく、従業員ひとりひとりが人生のプランを考え、会社はそれをサポートする側に移行しつつあります。企業の役割の変化に伴い、ライフキャリアが注目されるようになりました。
従業員がライフキャリアを描くことで、企業は従業員に次のような効果を期待できます。
- モチベーション向上
- エンゲージメントの向上
- 視野の拡大
ライフキャリアを描くにあたり、ライフキャリアレインボーを活用します。
ライフキャリアレインボーとは「人間は、仕事に限らず、趣味や地域活動、親としての役割などさまざまなキャリアを虹のように積み重ね、複数のキャリアを使い分けながら暮らしている」という考え方です。5つのライフステージと8種類のライフロール、そして年齢で表されます。
手順は次の通りです。
- 現状把握
- 振り返り
- 未来のライフキャリアレインボーを描く
- 将来の役割の変化に備える
人生100年時代と言われる今、「どう生きるか」を定期的に考える機会を設けることは、従業員の自立を促し、勤労意欲の向上にも繋がります。社員研修のひとつとして、ライフキャリアを導入してみてはいかがでしょうか。
参考)
厚生労働省 キャリアコンサルティング・キャリアコンサルタント
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/career_consulting.html
日本キャリア開発研究センター サニー・ハンセン先生を迎えて
https://jicd.net/wp-content/uploads/2015/04/hansen_leaflet3.pdf
リカレントCounselor 【時短勉強】L・サニー・ハンセンの統合的生涯設計理論をサクッと理解
https://www.recurrent.co.jp/career/integrative-life-planning/
リクルートワークス研究所 人生100年時代のライフキャリア
https://www.works-i.com/project/100.html
神奈川県 ライフキャリア教育支援について
http://www.pref.kanagawa.jp/docs/fz3/cnt/f532110/index.html
All Aboutビジネス・学習 ライフキャリアレインボーで描ける!あなたのキャリア
https://allabout.co.jp/gm/gc/472871/