【イベントレポート 6/13開催】「戦略人事の実現に必要なトランジションとは 〜これからの人事が歩むキャリアの描き方のヒント〜」
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近年、人的資本経営の実践のため、人事部門が経営の要となる「戦略人事」が注目されています。
株式会社ライトワークスは、2024年6月13日、「戦略人事の実現に必要なトランジションとは~これからの人事が歩むキャリアの描き方のヒント~」と題して、世界的人事コンサルティングファームであるマーサージャパン株式会社と、共催ウェビナーを開催いたしました。
軸となるテーマは「戦略人事への転換」、「人材開発の転換」、「戦略的な人事パーソンのキャリア開発」の3つです。
当記事では、このウェビナーの内容を詳しくお伝えします。
開催日時:2024年6月13日(木)15:00-16:15
費用:無料
形式:ウェビナー(Zoom)
スピーカー
・マーサージャパン株式会社 人材開発プラクティス プラクティスリーダー前川尚大氏
・株式会社ライトワークス 事業企画チーム セクションマネージャー CAREERSHIPエバンジェリスト 柴山雄太
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目次
人事を取り巻く環境変化
セミナーの前半は、マーサージャパンの人材開発領域のリーダーとして多くの企業研修で講師を務める前川氏が「戦略人事へのトランジション」をテーマに語りました。
マーサージャパン前川氏は、企業価値向上において、「人」への投資の重要性がかつてないほど高まっていると述べました。日本ではPBR(株価純資産倍率)が1倍未満の企業が39%で、欧米に比べて市場からの期待値が低い現状があります。これは、成長への期待はあるものの、企業の「稼ぐ力」が不足していることを示唆しています。
一方、日本企業の人材への投資は欧米に比べて著しく遅れており、市場の期待に応える成長実現に対する重大な経営課題となっています。
経営戦略に基づいた事業活動を担うのは結局「人」であり、企業は、経営戦略と人材戦略を連動させることが必要です。つまり、経営戦略にマッチする人材の確保が企業価値を大きく左右する時代になってきたのです。
マーサージャパン前川氏は、「人事部門に対する経営陣の期待は非常に高まっており、戦略的な人事施策が求められるようになってきました」と語ります。
戦略人事へのトランジション:従来型人事からの脱却
従来の人事機能は、社内で決められたルールに沿って人材を管理する「人材マネジメント」が中心でした。採用、配置、評価、報酬といった人事制度を軸に、従業員の処遇や評価を行う仕事です。
人事組織もこれらの機能ごとに分かれており、採用、人事企画、人材開発といったように、縦割りの構造になっていることが一般的でした。
しかし、今後は変化する事業環境と経営戦略に適合して外部競争に打ち勝つために、従来型の「人材マネジメント」から、「戦略人事」への転換が求められています。
マーサージャパン前川氏は、「戦略人事において『ワークフォースプランニング』を軸として、人事業務全体を再編していくことが重要です」と語ります。
変化の激しい事業環境においては、企業は、常に提供価値の最適化に向けた事業投資を行っていく必要があります。人事は、変化する事業戦略に適合した、タイムリーな人材マネジメントが求められるのです。
ワークフォースプランニング:事業戦略を実現する人材計画
マーサージャパン前川氏は、ワークフォースプランニングを「事業戦略を実行するために、具体的にどのような人材が、いつ、どこに、何人必要なのかを計画すること」と定義します。
従来の人事機能が、既存の人事制度や組織構造を前提としていたのに対し、戦略人事では、まず「事業戦略」を出発点とし、その実現に必要な人材を明確化していくワークフォースプランニングが肝心となります。
マーサージャパン前川氏は「事業戦略を人材面で支える施策をつくるには、まずはいつ、どこに、どのようなスペックの人材が何人必要なのかを仮説立てし、現状とのギャップを特定する必要があります」と述べ、次のように解説しました。
例えば「10年後、海外拠点にグローバル人材が50人必要だ」といった具体的な仮説を立てるとします。
続いて、現在の人材状況を確認し、人材不足が見込まれる場合は適切なタレントマネジメントを検討します。既存社員への教育を強化するのか、あるいは外部から中途採用するのかといった施策です。
このようなワークフォースプランニングを起点に、人材開発を戦略的な観点から捉え直し、企業が目指す理想の要員配置に向けて戦略的な人材マネジメントを実現していくことが戦略人事の要点となります。
マーサージャパン前川氏は「人事というのは、“転ばぬ先の杖”を用意するのが仕事です。常に、事業戦略と労働市場の先を見て動かなくてはなりません」と強調しました。
これらをふまえて、いま人事パーソンに求められる新たな役割は、人事のプロフェッショナルとしての高い専門性と同時に、経営層に対する“影響力”の発揮です。
人事プロフェッショナルとして、専門知識に裏付けされた論理性や客観性をもとに、事業戦略と人材ニーズを紐付け、しっかりとビジネスを支援、あるいは従業員を支援することが求められます。
マーサージャパン前川氏は「事業部門は人事の部下ではありません。だからこそ、『尊敬され、信頼される』人間性と専門性が重要になってきます」という表現で締めくくりました。
人材開発のトランジション
後半は、ライトワークスの柴山が、戦略人事における人材開発の転換について語ります。
従来型の研修は、企業の戦略や個人のキャリア目標との関連性が薄く、効果検証が不十分な場合も少なくありませんでした。その結果、社員のモチベーションやスキルアップに繋がりにくいという課題がありました。
一方、戦略人事においては、人材開発も従来型の「部門別研修」「階層別研修」といった画一的なものから、ワークフォースプランニングに基づいた、より戦略的なものへと転換していく必要があります。
ライトワークス柴山は「例えば、次世代の経営人材やグローバル人材など、戦略上必要となる人材を定義し、自社で計画的に育成する戦略的な要員計画が求められるでしょう」と述べました。
そのためには、まず必要な人材に求められるスキルを明確化し、重点的な教育を実施することが不可欠です。また、ワークフォースプランで見込まれる成長分野への人材シフトを想定し、スキル転換教育を展開する支援者となることも求められます。
戦略人事のキャリア開発におけるスキルマップ活用のメリット
戦略人事においては、人材開発は、単なるコストではなく「投資」として捉えられます。つまり、社員のスキルアップを通じて、企業の競争力を高めることを目指します。
ライトワークス柴山は「戦略的な人材開発には、社員が持つスキルや知識を可視化する「スキルマップ」の活用が有効です」と語ります。
スキルマップとは、従業員一人ひとりのスキルレベルを可視化するツールです。具体的には、「誰が」「どのようなスキルを」「どのレベルで保有しているのか」を一覧で確認できるようにまとめたものです。
スキルマップを作成することで、企業は、社員一人ひとりのスキルレベルを把握し、人材の偏りや不足を可視化することができます。
ライトワークス柴山「スキルマップを活用することで、企業は保有人材の可視化が可能になり、不足スキルへの教育投資の判断が容易になります。一方で個人も、キャリアビジョンを持ちやすくなり、自己学習へのモチベーションが高まります」
アサヒビール株式会社の取り組み
ここからは、実際にスキルマップを活用して成果を上げた企業事例をご紹介します。
アサヒビールでは、ライトワークスのLMSをベースにしたポータルサイト「Career Palette(キャリアパレット)」を開設し、システムのリプレイス前と比較して利用率を12倍に拡大させました。
Career Paletteでは、20職種×3ステージで体系化したスキルマップ「ジョブディビジョンスキル表」をeラーニング・研修メニューと連動させ、該当する社員に学びを届ける仕組みを構築。
各ポジションで必要とされるスキルを体系的に示すことで、社員一人ひとりが自身の強み・弱みを把握できるようにしています。さらに、社員一人ひとりの興味・関心、現在の役割に合わせて最適な学習コンテンツを自動で提示することで、自発的な学びを促進しています。
加えて、目指すべきロールモデルとなる社内の先輩社員を紹介したり、各人のスキル獲得状況を可視化したりすることで、モチベーションの向上を図っています。
このように、アサヒビールではLMSを活用して、ワークフォースプランに基づく戦略的な人材育成を推進。キャリアと学びを連動させた人事施策を展開しています。
人事向けサービス「HR LEADERS’ ACADEMY」のご紹介
セミナーの最後に、「戦略人事を推進していくためには、人事担当者自身のスキルアップも不可欠」というマーサージャパン前川氏から、新しいサービスについて説明がありました。
これまでの人事業務は、採用、評価、教育、労務など個別の領域別に分かれがちでした。しかし、戦略人事においては、これら個別領域の知見を組み合わせた総合的な専門性が不可欠になります。
加えて、経営視点を持ち、事業戦略と人材ニーズを紐付ける力も必要不可欠です。単なる制度運用からの脱却を図り、人事パーソン自らが経営の重要なパートナーとして機能することが重要になってきました。
こうした中、人事パーソン向けの研修プログラムの重要性が高まっています。マーサージャパンとライトワークスは、人事のプロフェッショナルやリーダーを目指す方を対象に、体系的な学習機会と認定資格を提供する「HR LEADERS’ ACADEMY」のサービスを開始する予定です。
(※2024年9月4日に詳細を公開しました。現在第一期申込受付中です ⇒ HR LEADERS’ ACADEMYについて詳しく見る)
同アカデミーは、戦略人事を牽引する“人事部門のリーダーおよび次世代のリーダーの育成”を目的とします。人的資本経営の重要性が高まる中、経営課題を見据えた人事施策の立案力と、プロフェッショナルとしての専門性の両立を目指します。
具体的には、以下の3つの機能を提供します。
①人事キャリア形成につながるスキル認定試験
②体系的な人事領域の学習サービス
③人事プロフェッショナル/リーダーを目指す方同士が集まるコミュニティ形成
マーサージャパン前川氏は「人事プロフェッショナルを育成する機関は世の中に不足しています。このアカデミーは、戦略人事を実現できる人材を育成する機関としてサービスを提供し、人事プロフェッショナルの認定資格の業界標準化も目指して行きたいと考えています」と抱負を語りました。
本ウェビナーでは、戦略人事を実現するための人事キャリアのあり方と、スキルマップを活用した人材開発の新たなアプローチをご紹介しました。
今後は、人事パーソン一人ひとりが高い専門性と経営に対するコンサルティング能力を兼ね備えた人材となり、時代の変化に主体的に対応していくことがより一層求められるでしょう。